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★ 過去問の詳細な解説 第 84 回 ★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 会社法
【目次】 問題・解説
【ピックアップ】
本年9月末頃を目途に、過去問の分析に加え、近時の傾向も取り
入れた「オリジナル模擬試験問題」(有料)を発行する予定をして
います。
とくに、関連部分に言及した解説にも力を込め、よりよいものを
目差して、目下準備中です。
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■ 平成18年度・問題38
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株主総会に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当
でないものはどれか。
1 招集権者による株主総会の招集の手続を欠く場合であっても、株主
全員がその開催に同意して出席したいわゆる全員出席総会において、
株主総会の権限に属する事項について決議したときには、この決議は
株主総会の決議として有効に成立する。
2 株主総会において議決権を行使する代理人を株主に限る旨の定款の
規定は、株主総会が第三者により撹乱されることを防止して、会社の
利益を保護する趣旨にでた合理的理由による相当程度の制限であって、
有効である。
3 株主は、自己に対する株主総会の招集手続に瑕疵がなくとも、他の
株主対する招集手続に瑕疵がある場合には、株主総会の決議取消の訴
えを提起することができる。
4 株主総会の決議取消しの訴えを提起した場合において、その提訴期
間が経過した後であっても、新たな取消事由を追加して主張すること
ができる。
5 株主総会の決議の内容自体に法令または定款違背の瑕疵がなく、単
に決議の動機または目的において公序良俗に反する不法がある場合は、
その株主総会の決議は無効とならない。
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■ 解説
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☆ 参照書籍
会社法 神田 秀樹著 弘文堂
◆ 各肢の検討
○ 1について
株主総会は、取締役が株主を招集して開催する(296条3項)。
ただし、最判昭和60・12・20・・によれば、本肢で記述さ
れている「全員出席総会」(代理人でも可とされていることに注意)
おいては、招集の必要はないとされた。
したがって、当該決議は、株主総会の決議として有効に成立する
ので、本肢は妥当である。
★ 関連事項
平成14年改正は、議決権を行使できる株主全員が同意した
場合には、招集手続なしで開催できることを明文で認め、会社
法もこれを引き継でいる(300条本文。なお同ただし書)。
《前掲書》
○ 2について
株主は代理人により議決権を行使できる(310条1項前段)。
多くの会社では、定款で代理人の資格を株主である旨を限定し
ているが、最判昭和43・11・1・・は、本肢で記述されてい
る合理的理由があるとして、代理人を株主に限るという定款の規
定は、有効であるとした。
したがって、本肢は、妥当である。
★ 関連事項
次の判例にも注意!
定款で議決行使の代理人資格を株主に限定している会社が、
株主である地方公共団体または会社の職員または従業員に議
決権を代理行使させても、違法ではない(最判昭和51・
12・24・・・)。
次の点と混同しないように!!
定款で取締役の資格を株主に限定することはできない[公開
会社は別](331条2項)。
○ 3について
株主総会の招集通知もれは、831条1項1号により、株主総会
の決議取消の訴えの取消事由になる。
招集通知が他の株主になされず自分に来ている場合に取消しの訴
えを起こせるかについては、株主は自分にとっての瑕疵だけを問題
にできるとしてこれを否定する見解も有力であるが、これを肯定す
るのが多数説・判例である(最判昭和42・9・28・・・)。
(前掲書)
以上の記述に照らせば、本肢は、妥当である。
○ 4について
判例(最判昭和51・12・24・・)株主総会決議取消しの訴え
を提起した後、831条1項の期間経過後に新たな取消事由を追加主
張することは許されない。
本肢は、以上の判例に反するので、妥当でない。
○ 5について
830条2項の決議無効確認の訴えの無効事由については、本肢の
記述どおりの判例がある(最判昭和35・1・12・・)。
本肢は妥当である。
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以上、妥当でないのは、4であるから、4が正解である。
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注・判例に関しては、判決時期からして、旧商法の条文が該当する
が、すべて会社法の該当条文を掲げた。
◆ 付 言
すべての判例について、正確な知識がなくても、各肢の比較衡量に
より正解を導くことができるだけの「会社法」の素養を身に着けてお
きたい。
そのためには、過去問等の各肢を検討しながら、できるだけ多くの
問題に接することが大切である。おそらくは、その過程において、
素養を獲得できると思う。
あわただしい、条文の走り読みや薄い教科書の通読だけでは、会社
法の膨大な量からして、点数を稼ぎだすのは困難かもしれない。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
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★ 過去問の詳細な解説 第73回 ★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】
(1) 地方自治法=地方公共団体の組合
(2) 地方自治法(住民監査請求)
【目次】 問題・解説
【ピックアップ】
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■ 問題
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(1) 平成21年度問題23
一部事務組合についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。
1 一部事務組合は、地方公共団体がその一部を共同して処理する
ために設けられる組織であるが、その例として、土地区画整理組
合、市街地再開発組合などがある。
2 市町村や特別区は、一部事務組合に加入できるが、都道府県は、
これに加入することができない。
3 一部事務組合には議会が設置されることはないので、その独自
の条例が制定されることもない。
4 地方自治法の定める「地方公共団体の組合」には、一部事務組合
のほか、広域連合などがある。
5 一部事務組合自体は、地方公共団体ではないから、その活動につ
いて、住民監査請求や住民訴訟が認められることはない。
(2) 平成21年度問題24
住民監査請求についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。
1 住民監査請求をすることができる者は、当該地方公共団体の住民
に限られ、それ以外の者が請求することは認められていない。
2 住民監査請求の対象は、公金の支出などの地方公共団体の職員等
の作為に限られ、公金の賦課徴収を怠るなどの不作為は、対象とな
らない。
3 地方公共団体の長の行為についての住民監査請求は、長に対して
なすべきこととなるが、長は、監査委員の意見を聴いて、監査結果
を通知すべきこととされている。
4 住民監査請求によって請求できる内容は、当該行為の差止めなど、
法定された4類型に限定されている。
5 監査結果などに不服がある場合は、請求人に限らず、何人もこれ
に対する住民訴訟を提起することが認められている。
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■ 解説
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【問題1】
○ 総 説
地方自治法は、本試験において、相当のウエイトを占めるので、
決しておろそかにしてはならない。
しかし、試験対策である以上、戦略があるはずだ。とくに「地方
自治法」に興味があり、その道の専門家になろうとする者のほかは、
極めて基本的事項をしかも、試験日から遠くない日に頭に入れてお
くことで足りる。
○ ズバリ!
≪基礎知識≫
地方自治法の構造
地方公共団体の種類
(1) 都道府県、市町村の二種類の普通地方公共団体
(2) 特別地方公共団体⇒自治政策の見地から、特定の目的のため
に設けられたもの
この中には、「地方公共団体の組合」がある。
「地方公共団体の組合」には、
・・・・・・ ・・・・
一部事務組合、広域連合、全部事務組合、役場事務組合
の4つがある。
注
☆ 関連条文・地方自治法1条の3・同法284条1項
☆ 以上は、決して断片的知識ではない。体系的知識である。
AにはB(1)とC(2)の二つの種類がある。
Cには、D・E・F・Gの4つがある。
(普通の説明で頻繁に使用される公式)
《本問の正解》
注の ☆印二つの説明を省いても、《基礎知識》の理解があれば、
4が正解であることは歴然としている。
ひとつ、注意してほしい。「広域連合」だけは「組合」という名
称を冠せられていない。しかし、お前だけ、よそへ行けというわけ
にはいかない(出題意図を感ずるのは、私だけではあるまい)。
注
時間があれば、それぞれについて、インターネットで検索してみる
のも面白い。実際の地方自治の活動が分かると同時に「一般知識」の
取得にも役立つ。
関西では、橋下大阪府知事主導による「広域連合」が話題になること
も多い。
○ その他の各肢の検討
★ 1について
前段における「事務の一部・共同・処理・組織」というのは正しい
(地方自治法284条2項前段)。
しかし、その例として掲げられてものは、誤りである。
土地区画整理組合は、土地区画整理法に基づき、土地区画整理
事業の施行者として法定されている者
市街地再開発組合は、都市開発法に基づき、、市街地再開発事
業の施行者として設立が認められている者
両者とも、組合であっても、一部事務組合とは無関係である
(地方公共団体の一部事務組合の従事者にすれば、一笑に付して、
×に付する 問題。蛇足ながら、前記両組合従事者も同様)
本問の具体例としては、隣接する地方公共団体が、共同してゴミ
処理、消防、火葬場、学校などを運営することを目的として設置
する組織。略称は一組(いちくみ)。
注 事務の全部を共同処理を行うものとして、全部事務組合
(地方自治法284条5項前段)がある。
★ 2について
一部事務組合に加入できるのは、普通地方公共団体及び特別区
であるから、都道府県も含む(地方自治法284条2項前段)。
本肢は妥当でない。
注 全部事務組合(284条5項前段)、役場事務組合(同条
6項前段)の場合には、町村のみが加入できる。
前者は、全部の事務処理であるから、町村に限るのだろう
(284条5項後段)。
後者は、「役場」の名称から、町村に限られる。
広域連合については、普通公共団体及び特別区が加入できる
(284条3項前段)。広域にわたる事務の特質から、導かれる。
★ 3について
一部事務組合もまた、(特別)地方公共団体であるから、議会が
設置される(287条2項・287条の2以下)。
本肢は妥当でない。
注 他の地方公共団体の組合にも、議会の設置の規定がある。
★ 5について
《基礎知識》に明らかなように、一部事務組合もまた、地方公共
団体であるから、本肢は妥当でない。
【問題2】
◆ 肢1について
地方自治法242条1項によれば、住民監査請求ができる者は、
「普通地方公共団体の住民」であり、当該普通公共団体の長等の行
為等に対して、請求できる。
したがって、「当該地方公共団体の住民に限られ」るとする
本肢は、妥当である。
◎ 参考事項
「地方公共団体の住民」の概念は整理をしておかないと、混乱
を生ずる。
(1) 地方自治法10条1項が基本⇒「市町村の区域内に住所
を有する者」となる。したがって、肢1では、具体的には、
当該地方公共団体の区域内に住所を有する者となる。
この要件を満たせば、外国人、法人も住民となる。
(2) 地方自治法75条1項のの規定する事務の執行に関する
監査請求は、「日本国民」に限ることになることに注意
(同法12条2項参照)。
つまり、住民監査請求では、住民なら、法人でも外国人でも、
住民監査請求ができるのである。
◆ 肢2について
地方自治法242条1項によれば、住民監査請求の対象は、財務会計
上の行為または不作為が違法・不当であることを要件としているので、
「怠るなどの不作為」も対象になる。
したがって、本肢は、妥当でない。
◆ 肢3について
地方自治法法242条1項によれば、地方公共団体の長の行為等について、
監査委員についてなすべきこととなっている。本肢も妥当でない。
なお、当該請求のあった場合の監査委員の処置については、同法242条
4項に規定がある。
◆ 肢4について
法定された4類型に限定されるのは、242条の2第1項で規定される
「住民訴訟」である。妥当でない。
この点、正確な知識が要求される。
◆ 肢5について
地方自治法242条の2第1項によれば、住民監査請求前置主義が採用
されているので、監査請求に不服がある請求人に限り、住民請求を提起で
きる。 妥当でない。
以上のとおり、肢1が正解である。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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