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           ★ オリジナル問題解答 《第39回 》 ★

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                 PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法

    
  【目次】  解説

                 
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 ■   オリジナル問題 解説
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   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第126号掲載してある。

 
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   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm

 
 
  ★ 参考書籍 
  
     行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行


   ● 総説

  公定力と収用裁決の関係(図示も含めて、前掲入門114頁以下
 参照)

  
     
      
          裁判所 C 
   
 
(2)Aを被告とした
    返還請求
   (民事訴訟)
    
     ↑              ↓ 判決(2)


           甲土地


          所有権移転
    X --------------------------→A
 (旧所有者)           (現所有者)


    ↓      行政行為    ↓ 取消判決(1)
  
           ↑
(1)Y県を被告
   とした取消
   訴訟       Y県
  (抗告訴訟) (地方公共団体)
    
           ↑
 
         裁判所 B

 

  公定力とは、

   特定の機関が特定の手続によって取り消すばあいを除き、いっ
  さいの者は、一度なされた行政行為に拘束されるという効力

   上図で言えば、C裁判所は、(2)のAを被告とした返還請求
 (民事訴訟)において、収用裁決の違法を理由に所有権移転の無効
  を主張し、甲土地の返還請求を行うXに対して、公定力が働くた
  め、一度なされた行政行為(収用裁決)に拘束されるから、甲土
  地の返還請求には応じられないということになる。ただし、「特
  定の機関が特定の手続によって取り消すばあいを除く」から、
  (1)のY県を被告とした取消訴訟(抗告訴訟)で収用裁決の取消
  判決(1)をもってきたら、返還請求を認める判決(2)をだして
  やろう、ということになる。
   以上は、最高裁が一貫して、採用する見解である(最判昭30
  年12月26日民集9−14−2070・最判昭31年7月18
   日民集10−7−890など)。
  
   ※ 参考事項(これもまた本試験対策として、重要論点である)

   「公定力」がはたらく範囲を必要以上に大きくさせないように
   しようという理論的な試み《学説・判例》

   (1「無効の行政行為}には、公定力は及ばない。

       (2)刑事訴訟の先決問題として行政行為の適法性・違法性
     が問題になる場合については、一般に行政行為の公定力
     はおよばない(藤本 註釈 刑法95条の職務行為≪行
     政行為≫の適法性が問題になる場合、当該刑事裁判所が、
     刑事裁判の先決として、その適法性を判断できる」
   (3)一般に判例・学説上、行政行為の違法を理由として国
      家賠償請求をおこなうばあいには、あらかじめこの行政
      行為の取消しがなされていなければならないということ
      はない・・(最判昭36年4月21日民集15−4−8
     50)。

         (以上は、基本的には、前掲書 入門から転載)


   ● 本問の検討

    本問は、最高裁判所判決1997(平成9)年10月28日
   訟月44−9−1578が基礎になっている。

    本問は、明渡しの代執行が完了したことによって、訴えの利
   益が消滅したという行訴法9条1項に焦点が当てられているこ
   とは容易に把握できるであろう。

    本問は、もう一歩進んで、訴えの利益が消滅する理由として、
   取消訴訟の目的を違法に課された義務の除去に限るかという論
   点が潜んでいるのである。どういうことかいえば、明渡しの代
   執行が完了していなければ、収用裁決によって、XからAに権
   利移転が生じるとされていても、当該裁決が違法であることに
   起因する、違法に課された明渡し義務の除去のために、収用裁
   決の取消訴訟を提起することになるのである。つまり、取消訴
   訟の目的を違法に課された義務の除去に限るとすれば、本問の
   事例のように、代執行の完了によって、XがAに対し、甲の現
   実的支配を移転する義務がなくなった場合には、違法に課され
   た義務の除去をするという取消訴訟の目的が喪失することによ
   り、訴えの利益が消滅することになるのである。

    したがって、解答例としては、以下のようになる。


    XがAに対し、

  甲の現実的支配を移転する義務がなくなったため、訴えの利益が
 消滅したので、却下判決をする。(44字)

 

  
  ※ 註 

   (1)「現実的支配を移転する義務がなくなった」ことが思い
      浮かばず(この判決を知らないときは、それが普通)辻
      褄合わせをし、例えば、「甲の返還を求めるため、取消
      訴訟を提起した場合、訴えの利益が消滅するので、却下
      判決をする。」(44字)とした場合には、点数は半減さ
      れるかもしれない。

   (2) 最高裁の見解どおり、この訴訟提起が却下されると、こ
          のあと、Aを被告とした返還請求(民事訴訟)が許されなく
     なって、Xは、甲土地を取り戻す余地はなくなる。
      結局、この収用裁決が違法である場合には、Xは、Y県を  
     被告として、損害賠償を請求することになるであろう(国家
     賠償法1条参照)。この場合には、前述したとおり(総説・
     参考事項 (3))この訴訟において、当該収用裁決の違法
     を争うことができる。

   (3)前掲書 読本は、、取消訴訟の目的を違法に課された義務
     の除去に限るとする当該最高裁判決に疑問を呈している。


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   私は、既述したとおり、本試験対策として、考えられるかぎり、
  重要論点を摘出して、できるだけ、平易に説明したつもりであるが、その
  基本的姿勢は、【平成24年版】藤本式行政書士試験直前予想問題集
  の解説でも貫徹されています。

   私としては、ひとりでも多くの方が、本書を活用され本年度の
  行政書士試験合格の栄冠に輝かれるるよう祈念しています。
 


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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