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★ オリジナル問題解答 《第58回》★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 行政法(行政事件訴訟法)
【目次】 解説
問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
第157号掲載してある。
☆ メルマガ第157号はこちら
↓
http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
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■ 解説
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☆ 参照書籍
行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
/有斐閣
【 問題 1】
☆ 本問については、サイト69回を参照されたい。
・第69回はこちら↓
http://examination-support.livedoor.biz/archives/1355589.html
◆ 総説
行政訴訟は、主観訴訟と客観訴訟に分かれる
○ 主観訴訟=権利保護の制度・つまり救済の制度。
抗告訴訟と当事者訴訟に分かれる。
「抗告訴訟」=取消訴訟・無効等確認訴訟・不作為の違法確認
・義務付け訴訟・差止訴訟
「当事者訴訟」=実質的当事者訴訟・形式的当事者訴訟
○ 客観訴訟=権利救済のためでなく、国・公共団体の違法行為を
是正し、その活動の適法性を確保することを目的と
する。
「民衆訴訟」・「機関訴訟」
(前掲書・読本 266頁の図表を参考にした)
◆ 各肢の検討
○ ア・イについて
以下の記述を参照されたい。
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行訴法4条前段野規定は、「形式的当事者訴訟」である。
これに対比されるのが同条後段の「実質的当事者訴訟」である。
いずれも、総説の「当事者訴訟」に含まれる。
以下において、「形式的当事者訴訟」について説明する。
まず、条文の意味するところは、難解であるが、「本来は取消訴訟
であるべきところ、法律の規定により当事者訴訟とされているので
『形式的当事者訴訟』と呼ばれている。」(読本270頁)
「この訴訟の代表例は、土地収用の場合において土地所有者に支払
われる損失補償に関する争いである。損失補償は、都道府県に設
けらている収用委員会の裁決によって定められるが、、裁決は
行政処分であり・・従って土地所有者がその損失補償に不服がある
場合には、本来収用委員会を被告として取消訴訟を提起しなければ
ならないはずである。ところが、土地収用法133条3項は、損失
補償に関する訴訟は、損失補償の法律関係の当事者つまり、土地
所有者と土地所有権を取得し補償の義務を負担する起業者との間
で行われるべきものとしている。」(読本270頁)
これに対して、行訴法4後段の「実質的当事者訴訟」に関しては、
最大判H17・9・14を参照すべきである。
在外国民が「次回の衆議院の総選挙における小選挙区選出議員の
選挙および参議院の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において、
在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票できる地位にあ
ること」の確認を求める訴えは「公法上の法律関係に関する訴え」
として確認の利益が肯定され適法である。
(入門211頁以下・読本337頁以下)
なお、この他、当該訴訟の例として、「公務員の身分の確認を求
める訴訟や公務員の俸給の支払を求める訴訟などがこれに該当する。」
とされる(読本 269頁)
☆ 関連事項
過去問 平成19年度・問題19をみよ!!
行政事件訴訟法4条の当事者訴訟に当たるものの組合せとして
正しいものとして、次の肢が挙げられている。
ア 土地収用法に基づいて、土地所有者が起業者を被告として
提起する損失補償に関する訴え
オ 日本国籍を有することの確認の訴え
アが、形式的当事者訴訟であり、オが、実質的当事者訴訟である。
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以上の記述に照らせば、アは、形式的「当事者訴訟」であり、イは
実質的「当事者訴訟」であるから、後段の説明が逆になっている。
ア・イとも誤りである。
○ ウについて
以下の記述を参照されたい。
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地方自治法242条の2に定める「住民訴訟」は、行訴法5条
が規定する民衆訴訟である(総説・○客観訴訟「民衆訴訟」参照)。
選挙に関する訴訟は公職選挙法(203条以下)で定められ、
これもまた、民衆訴訟である(総説参照)。
次の指摘に注意。
「選挙に関する訴訟は公職選挙法(203条以下)で定められ、
住民訴訟は地方自治法(242条の2)で定められている。
行政事件訴訟法5条の規定は、それらの訴訟を行政訴訟に
組み込むという意味を持っている」(読本271頁)
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以上の記述に照らせば、本肢は正しい。
○ エについて
「義務付けの訴え」(行訴法3条6項)は、抗告訴訟に該当する
行訴法3条1項・総説○主観訴訟「抗告訴訟」参照」
抗告訴訟に該当するので、本肢は誤りである。
○ オについて
行訴法6条の機関訴訟(総説・○客観訴訟「機関訴訟」)に
いては、「法律が定めている場合に限り、法律で認められた者
だけが提起することができる。その理由は、行政機関が法人格
を持たず、権利義務の主体ではないことである。行政組織内部
の紛争はその 内部で解決すべきであるという観念も作用して
いるであろう」(読本271頁)
したがって、本肢は正しい。
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以上によれば、正しいのは、ウ・オであるから、正解は5である。
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【 問題2 】
◆ 参照サイト 行政事件訴訟・抗告訴訟 第36回
第36回はこちら↓
http://examination-support.livedoor.biz/archives/792006.html
◆ 各肢の検討
アにについて
行訴法3条5号によれば、「法令に基づく申請」が行われたが、行政
庁が応答しない場合において、不作為違法確認訴訟の提起が認められる。
法3条6項1号の「直接型不作為」は、当該訴訟の対象にならない。
理屈は、サイト36回・A平成19年度 肢1と同じである。
正しくない。
イについて
この「直接型不作為」に対し、義務付け訴訟を提起できる(3条6項1号)
が、肢アでみたとおり不作為違法確認訴訟は提起できない。当該訴訟を一緒
に起こす必要はない。しかし、37条の2第1項で厳格な要件が規定されて
いる。
正しくない。
ウについて。
法3条6項2号の「申請型不作為」に対する義務付け訴訟にあっては、
不作為違法確認訴訟も一緒に起こさなければならない(法37条の3
第3項第1号)。
正しい。
エ について
法3条6項2号の「申請型不作為」に対する義務付け訴訟にあっては、
申請に対してすでに拒否処分がなされている場合には、この拒否処分
に対する取消訴訟または無効確認訴訟を一緒に起こさなければならない
(法37条の3第3項2号)。
正しい。
オについて
差止訴訟とは、行政庁が行政処分を行おうとしている場合において、
行政庁がその行政処分をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟
である(法3条7項)から、その行政処分がなされた後に提起される
取消訴訟の併合は、要求されていない。
正しくない。
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正しいのは、ウとエであるから、正解は4である。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
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★ オリジナル問題解答 《第54回 》★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 行政法
【目次】 解説
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■ オリジナル問題 解説
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問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
第153号掲載してある。
☆ メルマガ第153回はこちら
↓
http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
☆ 参照書籍
行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
/有斐閣
本問は、サイト第68回が基本となっているので、これを参照願い
たい。
☆サイト68回はコチラです↓
http://examination-support.livedoor.biz/archives/1342578.html
◆ 各肢の検討
○ 肢アについて
本肢は、正しい。このとおり、覚えておくとよい。
本肢は、本問のテーマの導入部門である。
参照条文 行訴法44条
○ 肢イについて
参照条文 執行停止=25条4項
仮の義務付け・仮の差止め=37条の5第1項・2項
本案に理由がないとは、行政処分に、取消事由に当たる違法性が
がないことである。
本案に理由があるときは、行政処分に、取消事由に当たる違法
性があることである。
執行停止は処分の執行を停止するのに対して、仮の義務付け等は、
義務付けを行うのであるから、厳格な要件を要する。
したがって、仮の義務付け等は、本案に違法性があるとみえると
きでなければ、することはできない。
これに対して、執行停止は、本案について違法性がないとみえる
ときには、することができない。
「本案について理由がないとみえる」は、執行停止にあっては、
消極要件であり、仮の義務付けおよび仮の差止にあっては積極要
件である。(前掲書 読本348頁 353頁)
本肢の記述は逆になっているので、誤っている。
○ 肢ウについて
本肢は題意が掴みにくいが、生活保護の申請の拒否処分を例に説明
する。
当該拒否処分に対して、取消判決があれば、判決の拘束力に基づい
て行政庁は、判決の趣旨に従って、生活保護の給付決定をしなければ
ならない。(行訴法33条2項)。
しかし、執行停止の決定には行訴法33条2項の準用がないので、
裁判所が執行停止の決定をしても、行政庁は何らの措置をとることも
義務づけられない。
もし、取消判決前に行政庁を義務づけようとすると、「仮の義務付け」
を申し立てることになる。
すなわち、当該拒否処分については、取消訴訟と義務付け訴訟を
併合提起し、仮の救済である「仮の義務付け」を用いることになる
のである≪肢オ参照≫。
(以上 前掲 読本 351頁 参照)
以上の記述は、本肢に相応するので、本肢は正しい。
○ 肢エについて
(1)執行停止について
行訴法25条2項によれば、執行停止を申立てるには、本案訴訟
である取消訴訟が適法に裁判所に提起されていることが必要である。
取消訴訟の原告適格について、行訴法9条2項は、処分の相手方
以外の第三者利害関係人にもその適格を認める
たとえば、マンションの建設についての建築確認に対し、第三者で
ある近隣の住民が取消訴訟を起こす場合である。この場合、その者
が執行停止を求めることができる。
(2)仮の義務付けについて
行訴法3条6項1号に該当する「直接型不作為」に基づく「義務付
けの訴え」の提起があった場合において、「仮の義務付け」ができる。
さきのマンション建設についていえば、第三者が、改善命令を訴求
し、「仮の義務付け」ができることになる(37条5第1項)。
(3)仮の差止め
行訴法3条7号の「差止めの訴え」の提起があった場合において、
「仮の差止め」ができる。第三者が違法建築の差止めの訴えを提起
し、「仮の差止め」ができる(37条の5第2項)。
いずれも、当該処分の相手方のほか、一定の第三者も申し立てるこ
と ができるので、本肢は正しい。
○ オについて
(1)仮の義務付けの積極的要件として、義務付け訴訟の提起を
要する(行訴法37条の5第1項)。
この点において、本肢は正しい。
(2)仮の差止めいついても、同様に差止め訴訟の提起を要する
(行訴法37条の5第2項)。
この点も、本肢は正しい。
(3)執行停止の形式的要件として、「処分の取消しの訴えの提起
があること、すなわち本案訴訟である取り消し訴訟が適法に裁
判所に提起されていることが必要である」(行訴法25条2項)
(前掲 読本 348頁)
なお、当該規定は、無効等確認訴訟にも準用されていること
にも注意すべきである(行訴法38条3項)。
本肢は、(3)の なお以下に反するので、正しくない。
☆ 付 言
これら、すべては、本案という義務付け訴訟・差止え訴訟・
ないしは取消訴訟・無効確認訴訟を前提とする仮の救済制度で
あることをはっきり認識する必要がある。
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以上、本問は、イとオが正しくないので、正解は5である。
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【発行者】司法書士 藤本 昌一
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使用されたことによって損害が生じた場合でも、
一切責任を負いかねますことをご了承ください。
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