━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

            ★  【過去問解説第106回 】  ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
-------------------------------------------------------------
                   PRODUCED BY 藤本 昌一
-------------------------------------------------------------
 
  【テーマ】 行政法=行政契約

  【目 次】 過去問・解説
              
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成24年度・問題9
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
   行政契約に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。見解が
 分かれる場合は、最高裁判所の判例による。

 1 行政契約でも、その内容が国民に義務を課したり、その権利を
   制限するものについては、法律の留保の原則に関する侵害留保理
   論に立った場合、法律の根拠が必要であると解される。

 2  地方公共団体が、地方自治法上、随意契約によることができな
   い場合であるにもかかわらず、随意契約を行ったとしても、かか
   る違法な契約は、私法上、当然に無効となるものではない。

 3 地方公共団体がごみ焼却場を建設するために、建設会社と建築
  請負契約を結んだ場合、ごみ焼却場の操業によって重大な損害が
   生ずるおそれのある周辺住民は、当該契約の締結行為について、
   当該地方公共団体を被告として、抗告訴訟としての差止めの訴え
   を提起することができる。

 4  地方公共団体の長が、指名競争入札の際に行う入札参加者の指
  名に当たって、法令の趣旨に反して域内の業者のみを指名する運
  用方針の下に、当該運用方針に該当しないことのみを理由に、継
  続して入札に参加してきた業者を指名競争入札に参加させない判
  断をしたとしても、その判断は、裁量権の逸脱、濫用には当たら
  ず、違法ではない。

 5   地方公共団体が、産業廃棄物処理施設を操業する企業との間で、
  一定の期日をもって当該施設の操業を停止する旨の公害防止協定
  を結んだものの、所定の期日を過ぎても当該企業が操業を停止し
  ない場合において、当該地方公共団体が当該企業を被告として操
  業差止めを求める訴訟は、法律上の争訟に該当せず、不適法であ
    る。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■  解説 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  

  
  ★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行


 ■ 本問の位置づけ

    平成24年度過去問においては、行政法の分野においては、本問
 のほかに、最高裁判所判例と関連付けて、「行政法における信頼保
 護」(問題8)・「行政裁量」(問題26)という大きなテーマの
 出題が行われている。本問もまた、その趣旨に副った出題である。

  したがって、今後とも類似の問題が出題される蓋然性は高いと
 予測されるので、その対策として、本問を通じて、解答の要領を
 取得する必要がある。

  なお、「行政法における信頼保護」については、当サイト10
 2回において解説を行ったが、「行政裁量」については、同じく
 当サイト欄において、将来、折りをみて、解説を行うつもりであ
 る。
 
 
 ■ 本問のポイント

     肢2に注目。

  行政契約に関する肢1〜5の記述すべてについて、正しいか
 どうかの判断を適確に行うことは、かなり困難なことである。

  本問に関していえば、一般的な教科書で説明されている最高
 裁判所判例(昭和62年5月19日判決・民集41巻4号68
 7頁)の知識があれば、肢2の記述が正しいことが即座にわかる
 のであるから、今後とも、普段の本試験の準備段階において、教
 科書に載っている主要判例にはできるだけ目を通しておいて、本
 試験当日において、その判例知識が、頭の隅に留まっているよう
 に心がけたいものである。

   
 ■ 各肢の検討
  
  
 ○ 肢1について。

  侵害留保説・行政契約に関する基礎知識があれば、本肢が
 正しくないことが判明する。

 (1)侵害留保説とは、国民の権利や自由を権力的に侵害す
   る行政についてのみ法律の根拠を必要とする説であるの
    で、その妥当する分野は、権力的行政である。

 (2)これに対して、行政契約とは、行政(国・公共団体)
   が一方の当事者となって締結される契約である。非権力
   的法行為である。
  
   《読本54頁・177頁参照》
 
 (3)以上から導かれる帰結は、侵害留保説によれば、非権
   力的公行政行為である行政契約には、法律の授権は必要
   ない。このような非権力的公行政についても法律の授権
   を要するとする説は、公行政留保説である(読本55頁)。

   したがって、以上の記述に反する本肢は正しくない。

  
  ※ 参考事項

    (a)行政契約でも、その内容が国民に義務を課したり、
        その権利を制限するものについては、法律の授権を要
        するものもあるというのは、通説であるが、しかし、
        前述したとおり、侵害留保説によるかぎり、この場合
        でも法律の授権を要しないことになるのである。その
        ことに混乱を生じないことが、肝要である。
   
   (b)少々我田引水になるが、私の散見した範囲では、市販
      の解説書では、(a)に記載した混乱を脱して、侵害留
      保説の定義から導かれる当該自明の理について、明確に
      記されたものはなかった。

      (c)ついでに言っておくと、行政契約の内容よっては、強
     制の度合いの強いものは、法律の授権を要するという
     通説を疎外するのが、侵害留保説となるが、そういった
     定義ひいては理論が硬直した固定観念を生む危険をつと
     に主張されたのが故小林秀雄氏だった。


 ○ 肢2について。

    前記最高裁判所判例(昭和62年5月19日判決・民集
   41巻4号687頁)は、地方公共団体の行政契約の手続
   に関して、つぎのとおり判示した。

    入札手続をとるべきであるにもかかわらずこれをとらず
   随意契約によった公有財産の売却契約は、法令の規定の趣
   旨を没却する特段の事情がない限り、私法上無効ではない。

       本肢は、当該判例に照応するものであるから、正しいこと
   は、歴然としている。

  
  ※ 参考事項

  (a)一般的にいって、取締法規に違反した取引は無効ではな
     いとするのが最高裁の判例だという認識があれば、かりに、
     前記判例知識がなくても、本肢が正しいという結論を導く
     ことができるかもしれない。

  (b)本肢に関しては、その前提として、次のような知識の取
    得が要請される。
     地方自治法234条1項・2項によれば、「原則は一般
    競争入札であり、指名競争入札、随意契約、せり売りは政
    令に定めがある場合にのみ許される。
     しかし、一般競争入札は面倒な手続であるから行政とし
     ては指名競争入札や随意契約をとりがちである。」《読本》

     なお、それぞれの各手続の内容については、過去問平成
    19年度問題24を参考にするとよい。

     その肢1では「指名競争入札とは、・・政令に特段の定
    めのない場合にはこの方法によるものとされる」とあるが、
    前述したところにより、当該記述に相当するのは、一般競
    争入札であって、本肢は誤りであって、本肢が正解となる
    (このような過去問との連動関係を尊重する勉強≪研究≫
     方法を私は、芋づる方式と呼ぶ)。
  
  (c)関連する判例(平成昭和62年3月20日判決・民集41
    巻2号189頁)

         地方自治法施行令によると

     地方公共団体が随意契約よることのできることの要件の一
    つとして、以下のように定める。

      契約の性質又は目的が競争入札に適しないこと

    最高裁判所は、以下の場合、当該要件に該当すると判断した。

    「競争入札の方法によること自体が不可能又は著しく困難と
    は いえな」くとも随意契約の方法をとることが「当該契約の
       性質に照らし又はその目的を窮極的に達成する上でより妥当
       であり、ひいては当該地方公共団体の利益の増進につながる
       と合理的に判断される場合」

       《以上は、読本183頁参照)

     以上、本肢の判例では、法令違反の随意契約について、当該
    随意契約によった公有財産の売却契約は、特段の事情がない限
    り、私法上無効ではないとした。
     同時に前記関連判決では、法令で定める随意契約によること
    のできることの要件自体をゆるやか解釈することを認めたとい
    える。

 
    ○ 肢3について。

       地方公共団体が建設会社と結んだ建設請負契約は抗告訴訟の対象
   にならないため、当該契約の締結行為に対して、第三者である周辺
   住民は、行政事件訴訟法3条7号の抗告訴訟としての差止めの訴え
   を提起できない。以上の考え方は、当該行為について「処分」性を
   否定した最高裁判例(昭和39年10月29日民集18巻8号18
   09頁ー東京都ごみ焼却事件判決)に副うものである。

    ここでいう「処分」性については、種々の議論があるようである
   が、本肢については、以上の正確な知識があればよしとして、これ
   以上深入りしない。

    以上の記述に反する本肢は、正しくない。

 
   ○ 肢4について。

       本肢については、判例(最判平18・10・26判時1953−
  122)があって、それによれば、「指名競走入札に長年指名を受
    けて継続的に参加していた建設業者を特定年度以降全く指名せず参
    加させなかった措置の理由として、上記業者が域外業者であること
    のみである場合は違法である」とするものである。
 
   本肢は、当該判例に基づくものと思われるが、その記述内容が必
  ずしも明確でないこと、さらに一般に疎遠と思われる当該判例の知
  識まで要求されることに違和感があるが、常識に照らして、本肢は
  正しくないと判断せざるを得ないでろう。

  
  ○ 肢5について。

     行政契約の一つとしての公害防止協定は、事業者に対しては安全
  確保などのため義務を課することになるが、違法操業に対して、当
  該協約の当事者の一方である地方公共団体が訴訟で操業差止めなど
  の法的措置を求めることができるかという問題がある。
  しかし、協定は、行政処分ではないため、行政上の強制執行はで
 きないので、民事訴訟を提起せざるを得ないが、当該訴訟が、法律
 上の争訟に該当するかが、さらに問題となる。

  本肢は、以上の問題点を提起した記述であるが、公害防止協定に
  は、契約としての効力があるとして、当該協定に基づく義務の履行
 を求める訴訟を認めたのが最判平成21年7月10日判決のようで
 ある。

  したがって、当該訴訟が不適法であるとする本肢は、以上の記述
 に反するので、妥当でない。

  なお、細かい当該判例知識がないのは、一般的にいって極めて普
 通のことであるから、以上のような訴訟が認められなければ、「協
 定は法的意味を失うであろう」(読本183頁)という法常識(私
 は、これをリーガルマインドと呼びたい)があれば、本肢は正しく
 ないという判断が即座に可能となるであろう。

 ※ 参考判例

 ● 国または地方公共団体がもっぱら行政権の主体として(つまり
   公権力の行使の主体として)行政上の義務の履行を求める訴訟は、
  そういったことを認める特別の規定がない限り許されない(最判
  平14年7月9日民集56巻6号1134頁。いわゆる「宝塚パ
  チンコ条例事件判決」)。《入門173頁》

 ● 本件は、「ある市が、パチンコ店の建築に着手した者に対して、
  条例に基づき建築工事中止命令を発したが、相手方がそれに従わ
  なかったので、さらに工事の続行の禁止を求めて裁判所に出訴し 
  た事件」である。「市としては、法律上も条例上も、行政上の
  強制執行(この事件の場合は直接強制か執行罰)、刑罰、行政
  的措置のいずれも認められていなかったので、最後の手段とし
  て訴訟を提起したのであるが、最高裁判所は、・・現行の法律
  には「特別の規定」が存在しないことを認定して、理屈抜きで
  一刀両断的にこの訴訟が「法律上の争訟」に当たらないとした
  のである(読本141頁以下)。

 ● 「学説。判例は、従来一般に、行政庁であっても、行政法上の
  強制執行手段がないばあいには、私人とおなじように、通常の
  民事執行の手続によって、裁判所の手を借りた強制執行をする
  ことができるのだ、と考えてきました」が、最高裁判所は当該
  判決によって、これを覆したのである(入門173頁)。

 ● 当該判決によると、「訴訟で義務の履行を強制できるのは財
  産上の義務だけである」(読本184頁)ということになる。

  《当該判決は、大きな議論を招いた有名なものであるので、理
   解が深められるように、参考図書から該当箇所を引用し、列
   記した》

-------------------------------------------------------------
 
 ◆ 以上の参考判例に対して、本肢の判例では、本件公害防止協
  定(行政契約)については、義務の履行を求める訴訟が認めら
  れたので、裁判所による強制執行が行われることになる。

  私の記憶では、当該参考判例もまた、いずれかの過去問で出題
 されていたように思う。もし、私の記憶に誤りがあったとしても、
 当該判決は、将来の本試験で出題される可能性大であるといえる。
  そういう観点に立った場合、以上で述べた「本肢と参考判例の
 対比」もまた、前述した、過去問の連動関係を尊重する芋づる方
 式勉強方法に相当するであろう。

--------------------------------------------------------------

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  以上によれば、本問の正解は、肢2である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ★ 付 言


  私は、本問の解説には、丸3日間を要したのであり、みなさま
 の熟読を祈念いたします。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
  ▽本文に記載されている内容の無断での転載は禁じます。
 
  ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。
       
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 17:23コメント(0) 
     
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

             ★ オリジナル問題解答 《第57回》★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
-------------------------------------------------------------
                    PRODUCED BY 藤本 昌一
-------------------------------------------------------------

 
  【テーマ】 行政法

   
  【目次】   解説
    
  
   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第156号掲載してある。
 
 
 ☆ メルマガ第156回はこちら
           ↓
 
 
 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  ☆ 参考書籍

  「行政法入門」藤田 宙靖 著 ・「行政法読本」芝池 義一 著
  ・ともに有斐閣発行


  ☆ 参考サイト

  行政事件法第38回
  
  ■  サイト第38回はこちら
                ↓


 ◆ 各肢の検討

  
  ○ アについて

   本肢は、行訴法8条1項の「自由選択主義」に対する例外の同条同
    同項のただし書きが規定する「不服申立ての前置」が取消訴訟の要件
    になっている場合である。

   8条2項各号により、例外として、前置なく取り消し訴訟が提起で
    きる場合が規定されている。 本肢は、同条同項二号に規定がある。

   以上のとおり、本肢は妥当である。

  ★ 参考事項

    行政不服審査法によると、異義申立てには決定がなされ、審査
   請求には裁決がなされることになっているが、行政事件訴訟法では、
     両者を含めて、「審査請求」「裁決」という言葉に統一されている
     ことに注意せよ。

  
  ○ イについて

   法8条第1項ただし書きによれば、不服申立ての「前置」は「処分
    取消しの訴」 に該当する。
     法38条は、法8条1項ただし書きを無効確認訴訟に 準用していな
   い。

     無効確認訴訟については、まさに「前置」といった制限を設けず、
   いつ でも起こせる抗告訴訟であるところにこそ、この訴訟のほんら
   いの意味があるからである。(入門参照)したがって、個別の法に
   おいて、前置の規定があっても、無効確認訴訟には適用がない。

     以上の記述に反する本肢は妥当でない。


    ○ ウについて

      本肢では、前置が処分取消訴訟の要件とされていない場合において、
  いきなり処分取消訴訟を提起しないで、審査請求を選択した場合に相
   当する。
    換言すると、「自由選択主義」に基づいて、行政上の不服申立てを先
  行させた場合である。

  審査請求があったときの出訴期間に関する14条3項の規定は、前置
 の場合に限っていないので、この場合にも適用されることになる。
    したがって、この場合にも、処分取消訴訟の出訴期間は裁決の時点を
  基準として判断されることになる。
  おそらく、当該規定は、裁決の結果 をみて、原処分の取消訴訟を提
  起しようとする相手方の意思を尊重したものであろう。そうであれば、
 前置に限定する必要はない。
  
  なお、これは、教科書では一般に触れられていないので、常識によ
  って判断することになるだろう。

  以上の記述に従えば、本肢は妥当である。


 ○ エについて

   原則は、「原処分主義」である。
   例外としての「裁決主義」は次のとおりである。

   個別法が裁決主義を採用している場合においては、元の処分に対
    する取消訴訟は提起できず、裁決取消訴訟のみが提起でき、元の処
    分の違法についても、そこで主張すべきこととなる。

     以上の記述に反する本肢は、妥当でない。


 ○ オについて

     前段は妥当である。しかし、原処分主義が採用されている場合で
   も、裁決に対しても取消訴訟を提起することは許されている。

    なお、「裁決の取消の訴え」を「処分の取消しの訴え」と併合し
  て提起することも許されている。

  以上の記述に従えば、後段が妥当でない。



--------------------------------------------------------------------

   以上に従えば、アとウが妥当であるので、正解は1である

--------------------------------------------------------------------


  ◆ 付 言

    本試験でも散見される組合せ問題については、1〜5の組合せ自体
  に時間短縮のヒントが伏在していることに思いをいたすべきである。
   自分で確信のもてる肢があれば、たとえば、それが、アであれば、
  その相棒は、ウかエの選択に絞られる。また、確信のもてる肢が、ウ
  であれば、アかオの選択にかぎられる。
   もしも、どの肢にも確信がなければ、1〜5の組合せの比較による
  相対比較によることになるが、この場合でも、1〜5の組合せの探索
  が先行することになる。

  このように考えると、普段の勉強において、あいまいな知識を排除
 して、いかにして正確なる知識を構築できるかが、本試験合格の要諦
 であると言えると思う。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
        
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp> 
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

examination_support at 18:03コメント(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

               ★ 【過去問解説第105回】 ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
-------------------------------------------------------------
                              PRODUCED BY 藤本 昌一
-------------------------------------------------------------
 
  【テーマ】 行政法=行政不服審査法
    
  【目 次】 過去問・解説
              
    
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成24年度・問題15
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
  行政不服審査法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 1 審査請求が法定の期間経過後にされたものであるとき、その他不
 適法であるときは、審査庁は、棄却裁決を行う。

 2 処分についての審査請求に理由があるときは、審査庁は、当該処
  分の取消しのみならず、処分庁に代わって一定の処分を行うことが
  できる。

 3 不作為についての審査請求に理由があるときは、審査庁は、当該
  不作為庁に対しすみやかに申請に対するなんらかの行為をすべきこ
  とを命ずるとともに、裁決でその旨を宣言する。

 4 不作為について異議申立てがなされた場合、不作為庁は、当該異
 議申立てが不適法でない限り、不作為の違法を確認する決定を行う
 かうか、 異議申立てを棄却する決定を行う。

 5 事情裁決は、行政事件訴訟法の定める事情判決と同様、処分が違
  法であるときに一定の要件の下で行われるものであって、処分が違
  法ではなく、不当であるにとどまる場合において行われることはな
  い。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■  解説 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  

  
 ★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行
 
 
 ◆ 本問のポイント

   各肢いずれにおいても、条文知識が試されているので、特に
 行審法においては、条文を丁寧に読むことが求められている。

 ◆  各肢の検討

 
 ○ 肢1について。

  行審法40条1項では、本肢の場合には、審査庁は、裁決で
 却下する。

  行政上の不服申立ての場合にも、行政訴訟の場合の訴訟要件
 に対応する不服申立要件を満たしていない不服申立ては、本案
 の審理をしてもらうことができず、いわゆる門前払い(却下)
 をされてしまうのであるが(前掲入門237頁)、本肢はこれ
 に該当する。

  これに対し、棄却裁決とは、本案に理由がないときに行われ
 るものである(40条2項)。

  したがって、本肢は正しくない。

  なお、これらに対応する決定については、47条1項・2項
 を参照すること。


 ○ 肢2について。

  処分についての審査請求に理由があるときは、審査庁は、当該
 処分を取消す(40条3項)。この場合には、裁決の拘束力に基
 づき、、処分庁は、裁決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分
 をしなければならない(43条1項・2項)のであって、審査庁
 が、処分庁に代わって一定の処分を行うことができるのではない。

  したがって、本肢は正しくない。

  なお、審査庁が処分庁の上級行政庁であるときは、審査庁は、
 裁決で当該処分を変更できることに注意(40条5項)。

  さらに、事実行為については、審査庁は処分庁に対し撤廃を命
 じ、その旨を宣言し、また同様に変更を命じ、その旨宣言するこ
 とにも注目(40条4項・5項)。

  ※ 決定における処分の取消し・変更は、47条3項をみよ。
   また事実行為の撤廃・変更については、47条4項をみよ。

 
  ○ 肢3について。

  51条3項の条文どおりであり、本肢は正しい。

  なお、51条1項・2項の審査請求の却下・同請求の棄却に
 ついても、注意。

 
  ※ 51条3項については、次の記述を参考にされたい(前掲
   書入門237頁参照)
 
    不服申立てについては、裁判所でなく行政機関が裁断を行
   うものであるということから、私人がもらえる(主張できる)
   決定や裁決の内容が、訴訟の場合に裁判所からもらえる判決
   の内容より少し広いものになることが、注目されてよいでし
   ょう。たとえば、不作為の違法確認訴訟(行訴法3条5項)
   の場合には、裁判所の司法機関としての性格から、行政庁
   の不作為に対しては、はなはだ消極的なコトロールしかで
   きなかったわけですが、不作為の審査請求の場合には、審
   査庁は、訴訟の場合のようにただ不作為が違法であること
   を確認するにとどまるのではなく、さらに積極的に、不作
   為庁に対して「すみやかに申請に対するなんらかの行為を
   すべきこと命ずる」ことができる、とされています(行政
   不服審査法51条3項)。


 ○ 肢4について。

    50条2項によれば、不作為庁は、当該異議申立てが不適法で
  ない限り、一定期間内に申請に対するなんらかの行為をするか、
 または書面で不作為の理由を示さなければならないことになって
 いるので、これに反する肢4の記述は正しくない。

  なお、不作為の異議申立がなされた場合には、認容するにも
 棄却するにも、「なんらかの行為をする」(認容)・「書面
 で不作為の理由を示」す(棄却)のであって、決定を行わない
 ことに注意せよ。

  決定をするのは、同条1項に基づく不適法による却下のみで
 ある。

  
  ※ 過去問平成22年度問題15肢4において、行政不服審
   査法における手続の終了に関する記述として、正しいもの
   として、次の分章がある。 
   
   不作為に関する異議申立てが適法になされた場合、不作為庁は、
  一定の期間内に、申請に対する何らかの行為をするかまたは書面
  で不作為の理由を示さなければならない。


  ○ 肢5について。

  事情裁決は、40条6項に規定があり、事情判決は、行訴法3
 1条1項に規定がある。
  
    事情判決は、裁判所が、行政処分が違法であることを認めなが
 ら、行政処分を取り消すことが公共の福祉に適合しない場合に、
 原告の請求を棄却するという判決であるのに対して、事情裁決と
 は、審査庁が行政処分が違法または不当であることを認めながら、
 行政処分を取り消しまたは撤廃することが公共の福祉に適合しな
 い場合に、審査請求人の請求を棄却するするという裁決である。

  以上の記述に従えば、事情裁決は、事情判決とは異なって、処
 分が違法ではなく、不当である場合にも行われることになるので、
 本肢は正しくない。

  
  ※ 参考事項

  (1)事情裁決と事情判決の以上の差異は、裁判所が審理で
    きるのは、行政処分の違法性であるのに対し、行政上の
    不服申立ての場合には、行政不服審査法1条1項に規定
    されるように、その適用対象が「行政庁の違法又は不当
    な処分」であることに起因することに注意せよ。

  (2)事情判決においては、裁判所は、判決主文において、
    処分が違法であることを宣言しなければしなければなら
    ない(行訴法31条)のに対して、事情裁決では、審査
    庁は、裁決で処分が違法または不当であることを宣言し
    なければならない(行審法40条6項)。

  (3) 事情裁決の規定は、処分についての異議申立ての決定
    ・再審査請求にも準用されていることに注意せよ(48
    条・56条)。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

   本問では、正しいのは肢3であるから、正解は3である。

 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
  ▽本文に記載されている内容の無断での転載は禁じます。
 
  ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。
       
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 09:40コメント(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

         ★ 【過去問解説第104回 】  ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
-------------------------------------------------------------
             PRODUCED BY 藤本 昌一
-------------------------------------------------------------
 
  【テーマ】 行政法=行政不服審査法

        
  【目 次】 過去問・解説 

    
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成24年度・問題14
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
   行政不服審査法に基づく不服申立てに関する次の記述のうち、法令
 または判例に照らし、妥当なものはどれか。

  1 行政不服申立てにおいては、行政処分の取消しを求めることだ
  けではなく、公法上の法律関係の確認を求めることも許される。

 2 行政不服審査法は、不服申立ての対象となる行政処分について
  は、いわゆる一般概括主義を採用しており、不服申立てをするこ
  とができない処分を列挙してはいない。

 3 行政処分について審査請求の申立適格を有するのは、処分の相
  手方に限られ、それ以外の第三者は、他の法律に特別の定めがな
  い限り、申立適格を有しない。

  4 憲法による適正手続の保障の趣旨は、不服申立ての審理手続に
  も及ぶので、その手続においても、口頭弁論主義が原則とされて
  いる。

 5 審査請求の裁決は、書面でしなければならず、緊急を要する場
  合であっても、口頭ですることは認められていない。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■  解説 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  

  
 ★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行
 
 
 ◆ 本問のポイント

    本講座メルマガ第155回・行政法オリジナル問題56回に
  おいて、肢イでは、以下のような記述になっている。
 
 ------------------------------------------------------------
   裁決は書面で行わなければならないが、決定にあっては、緊
   急を要する場合は、口頭ですることもできる。
 ------------------------------------------------------------
   
    行審法41条1項によれば、裁決は、書面で行い、理由を附さ
 なければならないことになっており、当該規定は、異議申立ての
 決定にも準用されている(47条・48条)。
    緊急を要する場合は、口頭ですることができるという例外規定
 はない。
  したがって、本肢は、妥当でないことになる。

  以上の確実な知識があれば、本問では、5が妥当でなく、5が
 正解であることが即答ができる。

  
  ※ 参考事項

  理由の提示と緊急性との関係では、この際、行政手続法の以下の
 条文知識を明確にしておくことが、行政不服審査法との混乱を避け
 る意味でも肝要であると思われる。

  申請に対する許認可を拒否する処分をする場合には、理由を書面
 で示さなければならないが(行手法8条)、不利益処分の場合には、
 原則は以上のとおりであるとしても、当該理由を示さないで処分す
 べき差し迫った必要がある場合は、この限りでないという例外規定
 が設けられている(同法14条1項・3項)。なお、この例外の場
 合においても、原則として、処分後相当の期間内に、理由を示さな
 けばならないこと注意せよ(同法14条2項)。

 
 ◆ 各肢の検討

    
  ○ 肢1について。

   本肢では、不服申立ての内容を主題にしているが、教科書では、
  一般に詳しく論じられていないので、この際、今後の本試験対策と
  しても要点を把握しておくべきである。

   第1に本肢では「行政不服申立てにおいては、行政処分の取消し
  を求めることだけではなく」とされているが、ならば、行政不服申
  立てでは、行政処分の取消し以外にどのような内容の不服を申立て
  ることができるのかが問題になる。

   第2に、かりに「行政不服申立てにおいては、公法上の法律関係
  の確認を求めることも許される」という本肢の記述が妥当でないと
  した場合、その根拠はなんであろうか。

   これらの点について考えるには、下記の記述が出発点になる
  (前掲書 読本 254頁参照)
   
   行政不服審査法第1条について、「この規定が示しているように、
  行政不服審査の制度の適用があるのは『行政庁の処分その他の公権
  力の行使に当たる行為』(行審法1条2項ではこれと同じ文言が使
  われている。)についてだけである。行政指導などについてはこの
  制度は適用されない。行政処分が適用対象である点は、行政訴訟の
  うちの抗告訴訟(とくに取消訴訟)とほぼ同じである《行訴法3条
  2項参照》(『ほぼ』というのは、取消訴訟においては、行政処分
  に加え、行政不服審査の裁決・決定もその対象になるからである
  《行訴法3条3項参照》)。
   

   それでは、第1の行政不服申立てでは、行政処分の取消し以外に
  どのような内容の不服を申立てることができるのかという点につい
  て検討しよう。

   抗告訴訟では、行訴法3条において、訴訟類型が定められている
  のに対し、行審法では、「異議申立て」「審査請求」という不服申
  立ての種類が定められているだけで(行審法2条参照)その内容に
  ついては、行訴法のように類型したものの定めがない。
   さきに掲げた行審法1条を中心に考えると、行政処分が適用対象
  になるのだから、処分の取消しを求める異議申立てや審査請求が認
  められのは当然であろう(同法40条・47条参照)。またこれに
  準じて、処分の無効の確認を求める異議申立てや審査請求もありう
  るであろう。また、行審法は、不作為について、不服申立てをでき
  ることになっているので(同法3条、7条、50条、51条参照・
  なお、50条・51条に焦点を当てたのが、平成24年度・問題1
  5肢3・4である)、不作為の違法確認を求める異議申立てや審査
  請求もできる。
   
     次に第2の行政不服申立てにおいては、公法上の法律関係の確認
  を求めることも許されるかという主題に移行しよう。

   ここでいう「公法上の法律関係の確認を求める」とは、行訴法に
  おいては「公法上の当事者訴訟としての確認訴訟」(同法4条後段
  の実質的当事者訴訟)に該当するが、当該訴訟では、行政処分には、
  適用されず、適用されるのは、公法上の法律関係である。
   他方、前述したとおり、行政不服審査の制度の適用があるのは
 『行政庁の処分その他の公権力の行使に当たる行為』であるから、
  行審法では、「公法上の法律関係の確認」を求めることはできない。
   前述したところによると、行政処分ではない行政指導などについ
   ては行審法は適用されないことになるが、たとえば、行政指導につ
   いて争うには、「公法上の当事者訴訟としての確認訴訟」としての
  当該実質的訴訟によるべきだと解することもできる。

  以上の記述により、行審法では、「公法上の法律関係の確認」を
 求めることはできないということの論拠と結論は、明確であるので、
 本肢は妥当でない。

  
  ※  行審法では、行訴法における「義務付けの訴え」・「差止めの
   訴え」(3条6号・同7号)に相当する内容の不服申立ても認め
   られるのか一考の余地がある。

   以下のように考えられる。
    
   「義務付けの訴え」
     
    このなかには、許可の申請などに対して行政庁が処分をすべき
   であるにもかかわらずしない場合(法3条6項2号「申請型不作
   為」)とそれ以外の場合(同1号「直接型不作為」)に起こすも
   のあるが、行審法2条2項に照らすと、申請型不作為については、
   義務付けを求める異議申立てや審査請求を認める可能性はあると
   しても、直接型不作為には、これらは認められないであろう。
    たとえば、隣の土地の建物が違法建築で、きわめて危険なもの
   であるのに行政庁が不作為の場合、改善命令を出したり、取壊し
   命令を出すことを求める異議申立てや審査請求は認められないこ
   とになる。


   「差止めの訴え」

    この訴えは、処分まだなされていないにかかわらず、まえもっ
   て裁判所に判断してもらおうとする行訴法に特有の制度であるか
   ら、明文のない行審法では認められないと考えるべきであろう。

   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    以上のとおり、長い記述になったが、ずばりの文献もなく、困
   難な作業だったが、行訴法と対比しながら、行審法の理解を深め
   るという意味において、将来の本試験対策としても有益であると
   思われたので、あえて、詳しい解説を試みたしだいである。

       ただし、第1の行政不服申立てでは、どのような内容の不服
   を申立てることができるのかという点については、前掲書読本
   では以下のとおりの簡潔な記載があるだけであった(実は、うん
   うんと云いながら前記解説文を書いた後、読本に当該記載を発見
   したのである)《読本255頁》

   行政不服審査制度においては、許認可などの申請に対する行政
  庁の不作為についても不服申立てが認められている(行審法7条)。
  従って、厳密には、行政不服審査制度は、抗告訴訟のうちの取消
  訴訟および不作為違法確認訴訟に対応するものである。

   もっとも、前掲書入門では、処分の無効の確認を求める異議申
  立や審査請求を認めているようである(入門236頁)。

   となると、私が前述したとろによれば、「申請型不作為について
  は、義務付けを求める異議申立てや審査請求を認める可能性はある」
  という記述の妥当性が検討課題になるのみである。
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー   

  
  ○ 肢2について。

    本肢では、不服申立事項が主題になっている。下記の記述を参
   照されたい。

    訴願法の時代には、どんな行政処分に対しても訴願ができたと
   いうわけではなくて、法律で定められた一定の処分に対してしか
   できなっかった(列記主義)のですが、行政不服審査法はこれを
   やめて、いわゆる概括主義をとりました(同法4条1項)。それ
   でも、例外的に、同法4条1項1号から11号までに掲げるもの
   については、その処分の性質上、行政不服審査法に基づく不服申
   立てはできないことにしていますし、それ以外にも、個別法律で、
   不服申立てを許さないことにしているばあいがあります。

    以上の記述に照らすと、本肢前段は妥当であるが、後段が妥当
   でない。

   ※ 参考事項

   (1)本肢の一般概括主義の例外と行政手続法3条の適用除外を
     混同しないようにすべきである。

    (a) 前者に関する過去問としては、以下の平成17年度問
       題14がある。
      
      ▲ 次のア〜オの記述で、行政不服審査法の不服申立ての対
       象とならないものが二つある。その組合せとして、正しい
       ものはどれか。

       ア 都市計画法に基づく開発許可処分
    
       イ 外国人の出入国に関する処分

       ウ 人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有
        する事実行為

       エ 建築基準法上の建築確認処分

       オ 国税犯則事件に関する法令に基づき、国税庁長官が行
        う処分


       1 ア・ウ
    
       2 ア・オ

       3 イ・エ

       4 イ・オ

       5 ウ・オ

    
      ≪正解は4である。》


      (b) 後者に関する過去問としては、以下の平成13年度問
        題12がある。
      
       ▲ 次のうち、行政手続法の適用がないものは、いくつあ
        るか。

        
        ア 外国人の出入国、難民の認定または帰化に関する処
         分

        イ 人の学識技能に関する試験または検定の結果につい
         ての処分

        ウ 審査請求、異議申立てに対する行政庁の裁決または
         決定

        エ 公務員に対してその職務または身分に関して行われ
         る不利益処分

        オ 法令に基づき相反する利害を有する者の間の利害の
         調整を目的とし、その双方を名あて人として行われる
         処分

        1  一つ

               2 二つ

        3  三つ
       
               4 四つ

        5  五つ

           
       ≪正解は5である。》


        
      ★ 以上については、本試験直前において、念のため、過去
       問を通じて条文に触れておくのも一考であろう。


   (2) また、過去問としては、平成19年度問題14肢2において、
      以下のとおりの本肢とほぼ同じ記述のある肢が出題されている。

            行政不服審査法は、不服申立ての対象となる「行政庁の処分」
          につき、いわゆる一般概括主義をとっており、不服申立てをす
     ることができない処分を、同法は列挙していない。

       もちろん、本肢は妥当でない!

  
  ○ 肢3について。

   本肢でとりあげられている不服申立資格については、以下の記述を
  参照されたい。

   不服申立ての資格については、行政不服審査法は、「行政庁の処分
   (・・)に不服があるもの」と定めるだけであるが(4条1項)、最高
  裁判所1978(昭和53)年3月14日判決=主婦連ジュース不当
    表示事件によると、それは「当該処分について不服申立をする法律上
    の利益がある者、すなわち、当該処分により自己の権利若しくは法律
    上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」
  である。

   したがって、判例によると、申立適格を有するのは、処分の相手方
  に限られず、それ以外の第三者についても、「当該処分について不服
  申立をする法律上の利益がある者」も含まれることになるので、本肢
  は妥当でない。

  
  ※ 参考事項


    ▲ 行政事件訴訟法9条1項の定める「法律上の利益」の解釈と前記
   昭和53年判決との関係(前記読本291頁以下参照)

  (1)行訴法9条1項の定める「法律上の利益」の解釈としては、
    主には「法律上保護された利益」説と「法的な保護に値する利
    益」説とが対立していた。
     「法律上保護された利益」説とは、法律の規定にょって保護さ
    れた利益をもって「法律上の利益」と解する説である。すなわち、
    「法律上の利益」の有無を法律の規定から、つまり「法律」の解
    釈によって決定しようとする説である。
     「法的な保護に値する利益」とは、法的な保護つまり裁判上の
    保護に値すると考えられる利益をもって「法律上の利益」と解す
    る説である。この説の特徴は、「法律上の利益」の範囲を「法律」
    によって判断するのではなく、利害の実態に着眼し「理論」によ
    って決定しょうとする点にある。

  (2)最高裁判所が以上の諸説のうちの「法律上保護された利益」説
    をとることを明確にしたのは、前記昭和53年判決である。

  (3)この基準は、この判決では行政不服申立資格の基準として示さ
    れたものであったが、その後、下級裁判所のみならず最高裁判所
    自身によっても、行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益」の
    解釈を示すものとして適用されてきている。この主婦ジュース不
    当表示事件判決の最高裁判決により、取消訴訟の原告適格につい
    て、「法律上保護された利益」説が確立したと言ってよいであろ
    う。

   ▲ 2004年の行政事件訴訟法改正による新規定と「法律上保護さ
    れた利益」説と「法的な保護に値する利益」説との関係(前記読本
       293頁参照)

   
    (1)主婦連ジュース不当表示事件の最高裁が提示した「法律上保護
    された利益」説は、訴訟実務の中では、とくに地方裁判所や高等
       裁判所にレベルにおいてであるが、原告適格を否定するために用
    いられ、猛威を振るってきたと言ってもよいほどである。この状
    況を打破するため、2004年の行政事件訴訟法改正では、同法
    9条に2項が付け加えられたのである。

  (2)従前の裁判例では、原告適格の有無を判断する場合、争われてい 
   る行政処分の根拠となる規定だけを見るという判断方法があった。
    行政事件訴訟法9条2項は、当該法令のみならず関係法令を、し
   かもその趣旨目的まで見る(「参酌する」)ことを要求しているの
   である。
    他方「法令」のみならず、「利益」を見る(「勘案する」)こと
   が要求されていることも新しい点である。この点では、行政事件訴
   訟法9条2項は、「法律上保護された利益」説に立ちつつ、「法的
   な保護に値する利益」説を取り入れていると見ることができる。

 
   ▲ 平成24年度問題17について。

   
   行政事件訴訟法9条2項は、平成16年改正において、取消訴訟の
  原告適格に関して新設されたものであるとして、当該条文の前段がそ
  のまま呈示され、空欄を埋める問題が出題された。


-------------------------------------------------------------------
  以上長い引用と記述になったが、本肢については、判例と条文と過去
 問を結ぶ背景知識として、必要不可欠であると考えたため、あえて当該
 解説を行ったものである。
-------------------------------------------------------------------  

  なお、併せて、以上の記述をもって、平成24年度問題17の解説に
 換える。
 


 ○ 肢4について。

  
  行審法25条1項によれば、審理は書面によることになっているので、
 本肢は妥当でない(なお、48条・56条の準用規定にも注意せよ)。
  なお、同法同条同項では、ただし、審査請求人などの申立てがあつた
 ときは、審査庁は、申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければな
 らないとしていることにも注意せよ。


 ※ 参考事項

    過去問平成20年度問題14 肢5は、以下のとおり本肢とほぼ
   同一の文言である。
   
   憲法による法定手続の保障の趣旨は、行政上の不服申立ての手続に
  も及ぶので、その手続においても、口頭弁論主義が原則とされている。

   なお、同じ過去問肢1では、「行政上の不服申立ての道を開くこと
  は、憲法上の要請ではないので、この制度を廃止しても、憲法違反と
  はならない」となっており、これを妥当な肢とするのが、過去問の立
  場であるから、「憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑
  事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続
  ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外
  にあると判断することは相当ではない」とする判例(最大判平4・7
  ・1民集46−5−437)が行審法の審理手続に及ぶかどうかは疑
  問である。つまり、この制度を廃止しても、憲法違反とはならない立
  場に立てば、当該判決の趣旨は、行審法の審理手続に及ばないとも考
  えられるからである。もし及ぶとしても、その審理手続は口頭弁論主
  義を原則とすべきとする要請には直結しないであろう。

 
 ○ 肢5について。

   ◆ 本問のポイント欄で述べたとおり、本肢は妥当である。

    なお、審査請求と書面については、本肢の裁決の方式(41条
     1項)のほか、肢4に関連する審理の方式(25条1項)・不服の
   申立ての方式(9条・なお16条)があり、いずれも異議申立て
   と共通である(48条)ことを銘記すべきである。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
  ▽本文に記載されている内容の無断での転載は禁じます。
 
  ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。
       
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 16:59コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

            ★ オリジナル問題解答 《第55回 》★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
-------------------------------------------------------------
                    PRODUCED BY 藤本 昌一
-------------------------------------------------------------

  【テーマ】 行政法
    
  【目次】   解説
   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■   オリジナル問題 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
 
 
    問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第154号掲載してある。
 
 
 ☆ メルマガ第154回はこちら
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 

 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 
 ◆ 各肢の検討


  
   ○ 肢1について

   行政不服審査法34条2項以下。行政事件訴訟法25条2項以下。
 
    正しい。


   
   ○ 肢2について

   正しい。行審法34条4項。行訴法25条4項。ただし、厳密に
    言うと、前者では、義務的でなくなり、後者では することができ
    なくなる という違いがあるように思われる(○ 肢4について
   ※(b)参照)

     審査庁も裁判所も、執行停止にあたり、「本案について理由がない
  とみえるとき」に該当するかどうかを判断する

  
  
   ○ 肢3について

    行審法34条2項。正しい。行訴法25条2項によれば、「申立て
  によ」る。


 
  
   ○ 肢4について

    審査庁が処分庁の上級庁である場合には、3のとおり、執行停止の
     要件は緩和されているが、「審査庁が処分庁の上級庁でない場合につ
     いても、裁判所が執行停止する場合よりはその要件が緩和されている」
   (入門)
  
  (1) 審査庁の場合は、「必要があると認めるときは」が要件になって
    いる(行審法法34条3項)。
  
 (2)裁判所の場合は、「重大な損害」「緊急の必要」が要件になって
   いる(行訴法法25条2項)。
 
   したがって、要件は同じではなくて、緩和されているので、本肢は
  誤りである。
 
 
  ※(a) ただし、次の点に注意せよ。審査庁の場合にも、「重大な
            損害」等がが掲げられているが(行審法法34条4項)、こ
            れは、義務的であるための要件である。裁判所の場合が、執
            行停止発動の要件であるのとは、異なる。

            
                             執行停止可 ○   不可 ×
              
                           
               審査庁     裁判所
    
  「必要があると認める」   ○       ×

 
   「重大な損害等」      ○(義務的)  ○(発動の要件)

 
   以上を総括して、「入門」より、以下の文章を記しておく。
 
  「行政上の不服申立てのばあいには、争いを裁断するのは裁判所では
  なくて行政機関ですから、不服申立てに対する審査も、いわば、行政
   組織内部でのコントロールとしての性格を持つことになります。そう
   だとすると、取消訴訟のばあいには、司法権としての裁判所の立場上、
  そうかんたんに認められなかった例外としての執行停止も、かなり
   ゆるやかに認めてもよい、ということになるのでしょう。」 

 
  ※(b) ついでにいっておくと、

   審査庁においては、「本案について理由がないとめるときは」義務
   的でなくなるのに対して(行審法34条4項)、裁判所においては、
 「本案について理由がないとめるときは」執行停止をすることができな
 くなるのである(行訴法25条4項)。

   さらに、「仮の義務付け・仮の差止め」では、「本案について理由
  があるとみえるとき」が、積極的要件になっている(行訴法37条の
  5第1項)。

  
 
 ○ 肢5について

   正しい。
 
  内閣総理大臣の異議は、行政事件訴訟法25条の取消訴訟の場合
(無効等確認の訴を含む・38条3項による 準用)及び 仮の義務付け・
 仮の差止めの場合(37条の5第4項による準用)である(27条)こ
 とを明確に把握しておくこと。

  内閣総理大臣の異議という制度は、行政不服審査法にはない。


------------------------------------------------------------------

  本問では、肢4が誤りであるので、正解は、4である。 


-----------------------------------------------------------------

  ◆ 付 言
  
   本問の肢4の解説にみられるように、条文に忠実に条文を丁寧に読
  むいわば条文主義という観点もまた、本試験によって要請されている
  と私は思料します。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 15:48コメント(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

            ★ オリジナル問題解答 《第53回 》★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
-------------------------------------------------------------
                   PRODUCED BY 藤本 昌一
-------------------------------------------------------------

  【テーマ】 行政法
    
  【目次】   解説              
   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■   オリジナル問題 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
 
 
    問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第151号掲載してある。
 
 
  ☆ メルマガ第151回はこちら
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 


 ◆  参考書籍 
  
 行政法入門 藤田 宙靖著・ 行政法読本 芝池 義一 /有斐閣


 
  【問題1】


 
 ◆ サイト30回に掲載の平成18年度過去問・問題11及び解説参照

 
    第30回はコチラです
              ↓
  http://examination-support.livedoor.biz/archives/683857.html


  ◆ 各肢の検討

  
  ○ アについて

   平成21年度問題11の肢4の以下の記述をみてほしい。

   聴聞において、当事者が利害関係者の参加を求めたにもかかわらず、
  行政庁がこれを不許可とした場合には、行政不服審査法に基づく不服
  申立てをすることができる。

   妥当でない。

   条文は、行手法17条1項・同法27条1項である。
   つまり、同法17条1項に違反する違法な処分(行審法1条の行政
   庁の違法処分に該当する)は、行手法27条1項により、行審法による
  不服申立てをすることはできない。

  同様に行手法18条1項の文書等の閲覧規定に反する行政庁の処分も
  また、行審法の不服申立ての対象にならない。

   以上、本肢は妥当である。

  ○ イについて

  聴聞を経てなされた不利益処分については、行政不服審査法に基づく
  異議申立てはできないが、弁明の機会付与の不利益処分にはこうした
  制限がないので、本肢は妥当である(27条2項・29条以下にはこ
 うした規定もなく、準用もされていない)。

   しかし、27条2項によれば「審査請求」はできることになっている
  ことに注意。
  「異議申立て」は処分庁に対する不服申立てであるから(不服審査法
  3条2項)、聴聞という丁寧な手続を経た処分が覆る可能性がほとんど
  ないことが立法趣旨である。

  以上、本肢は妥当である。


 ○ ウについて

   行手法29条と同法20条の比較。なお、同法20条3項の審理の
 非公開原則に注意。これについては、学者の批判がある。

   以上、本肢も妥当である。

 ○ エについて
              ・・・・・・・・・
  丁寧な手続である聴聞は、許認可を撤回したり 資格 または地位
  を 剥奪するといった相手方に重大な不利益を与える不利益処分に
 ついて行われる。これが「特定不利益処分」であり、行手法13条
1項1号に列挙されている。
   この不利益処分には、行政法学上の取消しと撤回の双方が含まれる
 (同旨・平成21年度問題11・肢2)。

    以上に反する本肢は妥当でない。


 ○ オについて

  行政庁が、相手方から、申請により求められた許認可等を拒否する
 処分は、申請に対する処分(行手法2条3号)であるから、不利益処
  分に該当しないので、聴聞ないしは弁明が実施されることはない

  以上に反する本肢は、妥当でない。


-----------------------------------------------------------------

   以上により、妥当でないのは、エとオであるから、4が正解である。

-----------------------------------------------------------------


 ◆  付 言

   エとオの対比を通じて、「特定不利益処分」の概念をはっきりと把握
 することが肝要だ!

  一度行政庁がした許認可を取り消したり、撤回するのが、「特定不利益
 処分」であり、申請者から求められた許認可を拒否するのは、それが、い
 かに申請者の重大な利益に関わることであっても、「不利益処分」ではな
 く、「申請に対する処分」である。

   以上は、行政手続法の根幹をなすものであり、過去問でも繰り返し問わ
 れている。混同しないように!


   また、アとイの混同も回避すべき。

   アは、聴聞の手続そのものに対する不服。イは、聴聞・弁明を経て
 なされた不利益処分に対する不服申立ての問題。
   

 
 【問題2】

 

 ◆   参照サイト  行政法・審査基準 第27回

  ☆第27回はコチラです↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/640603.html


  ◆ 総 説

     審査基準とは

      「申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定め
     に従って判断するために必要とされる基準」である(行手法2条8
     号ロ)。

    処分基準とは

   「不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかに
  についてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準」
    である(行手法2条8号ハ)。

   裁量基準

     これらは、「法律で裁量権が認められ、または政令・省令などにも
   十分に具体的な規定がない場合に、行政庁に行政裁量の基準つまり裁
  量基準を作らせ、それを手がかりに審査をするという方法である。」

 ( 前掲読本76頁等参照 )

◆ 各肢の検討 

 ◎ 肢アについて 
  

  審査基準は、行政立法の一つである。
  
  その行政立法には、2種類がある。その一つが「法規命令」であって、
 これは、法的拘束力を有する。
  もう一つは、「行政規則」であって、法的拘束力を有しない。
 
  審査基準は、「行政規則」に該当する


   したがって、本肢の「処分が違法となることはない」という記述は
 正しい。

  この場合には、憲法14条の平等原則違反に反し、違法となることが
 あるので、本肢の後段の記述も正しい。

   本肢は、全体として、正しい。

   
  ☆ 参考事項

  (1)平成19年度過去問 問題12・肢ウに注目!

   審査基準に違反して申請を拒否する処分をしても、その理由
    だけで処分が違法となることはないが、他の申請者と異なる
    取扱をすることになるため、比例原則違反として、違法となる
    ことがある。

      誤りである。

   比例原則違反ではない。平等原則違反である。

     ※ 比例原則は、公務員に対する懲戒処分でよく問題になるが、
   「処分の原因となる行為の悪質さとそれに対する処分の強さと
     の間には、合理的な比例関係がなければならなという原則で
     ある」(読本71頁)。


   (2)処分を行う際の裁量基準(処分基準)の「平等原則」をズバリ
   問うたものとして、平成19年度過去問・問題42がある。

   サイト23回参照

  ☆第23回はコチラです
      ↓
   http://examination-support.livedoor.biz/archives/592220.html

   なお、サイト22回も参照

   ☆第22回はコチラです
      ↓
   http://examination-support.livedoor.biz/archives/592202.html


 ◎ 肢イについて

   
    本問は、題意が掴みにくい。
  
  平成21年度問題11・肢エにおいて、以下の肢が出題された。

   「 審査基準には、法律に基づき処分の要件を定める政省令は含まれ
  ない。」

    正しい。

   行手法2条8号イ・ロが手がかりになる。
    まず、イの法律に基づく命令が、「法律に基づき処分の要件を定める
  政省令」に該当する。
  次に、ロには、審査基準が掲げてある。

  イとロが並列して列記されている以上、イには、ロは含まれないことに
   なり正しい。それにしても、なんとも紛らわしい記述である。

  端的に言えば、政省令は、「法規命令」であり、審査基準は、「行政
  規則」であるから、両者は厳然と区別される。


  本肢に戻ろう。ハには、処分基準が掲げらているので、審査基準も処
 分基準も、政省令には含まれないので、本肢は誤りである。

 
 ◎ 肢ウについて

   行手法5条1項と同法12条1項の対比から、審査基準が法的義務と
  されるのに対して、処分基準の設定が努力義務であって、逆である。

   本肢は誤りである。

 
   ☆ 参考事項

  (1) それぞれの公表義務についても、同様に、審査基準が法的義務
     であり(5条2項)、処分基準が努力義務である(12条1項)。

  (2) 行手法5条1項の「・・・とする」文言は、通例は義務づけを
     回避するために用いられるものであるが、処分基準の「・・・・
     努めなければならない」という文言と比較すると、審査基準の
     設定を行政庁に原則として義務づけるものと解釈するのが自然
     である。」(読本220頁参照)

  (3) 処分基準の公表が努力義務にとどまるのは、「処分基準を公表
         すると、場合によっては、違反すれすれの行為が行われたり、処
     分を巧妙に免れる脱法行為が行われたりすることがあることに配
         慮し   たためである。」(読本225頁)。

 

  ◎ 肢エについて

       肢ア・エで述べたとおり、両者とも、行政規則に該当するので、正
     しい。

 
  ◎ 肢オについて

      行手法法2条8号ロ・ハによれば、審査基準も処分基準も、 同法3
    9 条1項のいう「命令等」に該当する。
    したがって、両者を設定するには、行政庁は、原則として、意見公募
   手続を実施しなければならないが、同法39条4項各号に該当するとき
   は、これを実施しなくてもよいとされる。

   以上によれば、本肢は、明らかに誤りである。


-------------------------------------------------------------------
  

    本問は、アとエが正しいので、正解は1である。

-------------------------------------------------------------------
 
   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】司法書士 藤本 昌一
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 12:26コメント(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

                ★  【過去問解説第97回 】  ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
-------------------------------------------------------------
                 PRODUCED BY 藤本 昌一
-------------------------------------------------------------
 
  【テーマ】 行政法

    
  【目 次】 過去問・解説
              
   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成24年度問題44・記述式  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
 
    Xは、A県 B市内に土地を所有していたが、B市による市道の
  拡張工事のために、当該土地の買収の打診を受けた。Xは、土地
  を手放すこと自体には異議がなかったものの、B市から提示された
   買収価格に不満があったため、買収に応じなかった。ところが、B
  市の申請を受けたA県収用委員会は、当該土地について土地収用法
  48条に基づく収用裁決(権利取得裁決)をした。しかし、Xは、こ
  の裁決において決定された損失補償の額についても、低額にすぎる
   として、不服である。より高額な補償を求めるためには、Xは、だ
  れを被告として、どのような訴訟を提起を提起すべきか。また、こ
  のような訴訟を行政法学において何と呼ぶか。40字程度で記述し
   なさい。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
 
 
 ●  総説

 
 本問では、ズバリ、形式的当事者訴訟について問われている。


 1 形式的当事者訴訟の占める位置

   
  ○ 抗告訴訟(行政事件訴訟法第3条第1項・第
   2項)

  ○ 形式的当事者訴訟(行政事件訴訟法第4条前段)

  ○ 実質的当事者訴訟(行政事件訴訟法第4条後段)

  ○ 民事訴訟

 
  以上の訴訟形態の中において、中心的なテーマになるのは、抗告
 訴訟・実質的当事者訴訟・民事訴訟である。

  
    その区別は以下のとおりである。
    
   
   ▲   行政「処分の取消しの訴」は、「行政庁の公権力の行使に関す
      る不服の訴訟」である抗告訴訟である(行政事件訴訟法第3条第
      1項・第2項)から、「行政主体と一般市民との間における対等
       当事者としての法律関係に関する訴訟]ではない。※1

   ▲  「行政主体と一般市民との間における対等当事者としての法律関
   係に関する訴訟」のうち、公法上の法律関係に関する訴訟が実質
      的当事者訴訟であり、私法上の法律関係に関する訴訟は民事訴訟
      となる。※2

   
    ※1「対等当事者としての法律関係」とは、「公権力を行使し
        ない」行政主体との関係というほどの意味として捉えるべきで
        あろう。   

    ※2 その具体例

     行政指導は、一般に「公権力の行使」に該当しないので、「処
        分の取消の訴」の対象にはならない。したがって、行政指導が違
        法である場合には、行政指導の違法の確認を求める訴訟形態を認
        める必要がある。これが、行政事件訴訟法4条後段で規定される
       「実質的当事者訴訟」なのである。

     以上に対して、「例えば、水道料金のような私法上の債務の不
        存在確認訴訟(民事確認訴訟)」(読本 参照)は、「私法上の
        法律関係に関する」ものとして、民事訴訟になる。

     (本講座メルマガ 2011/ 12 /26・107号を要約した)

  ▲ 以上のメンテーマに比較して、形式的当事者とは、特殊・例外的な
   訴訟形態である。

    後掲書「読本」によると、以下のような記述により、その説明が省
   かれている。あえて、そこを、記述式によって、突いてくるところに
   本試験の特徴があるといってもよいのかもしれない。

    ・・この訴えが実質的に見ると「公権力の行使に対する不服の訴訟」
    つまり「抗告訴訟」としての性質を持っているのだけれども、法形
    式の上では対等な当事者の間での訴訟というかたちになっている、
        ということなのです。ただ、こういった例」はそもそもほんとうに
        例外的にしか認められていませんし(例として、土地収用法133
        条3項、特許法については略 藤本)、行政法入門の段階では、こ
        ういうものがあるということについてあまり気にする必要はないと
        思います。

  
 2 形式的当事者訴訟(行政事件訴訟法第4条前段)

   行政事件訴訟法第4条前段が規定する。この訴えは実質的にみると
    「公権力の行使に対する不服の訴訟」つまり「抗告訴訟」としての性
     質を持っているが、法形式の上では対等な当事者での訴訟というか
     たちをとる(入門)。

   代表例としては、土地収用の場合において土地所有者に支払われる
    損失補償に関する争いである。訴訟の対象は、都道府県に設けられて
    いる収用委員会の裁決という行政処分であるため、この争いの実質は、
   「抗告訴訟」である。ところが、土地収用法は、「損失補償に関する
    訴訟は、損失補償の法律関係の当事者つまり土地所有者と土地所有権
    を取得し補償の義務を負担する起業者との間で行われるべきものとし
    ている」(読本)

  (本講座メルマガ 2011/ 12 /26・107号から抜粋)

   
     参照条文としては、土地収用法133条2項・3項 が重要である。
  


   ●  本問の検討

    前記総説 2 をそのまま、あてはめればよい。
  
    
   すなわち、

   損失補償の法律関係の当事者(土地収用法113条3項)
   
   X=土地所有者

   B市=土地所有権を取得し補償の義務を負担する起業者

   
   どのような訴訟=A収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する
           訴え(同法113条2項)・具体的には、「損
           失補償の増額請求の訴え」

   このような訴訟を行政法学において、形式的当事者訴訟と呼ぶ
  (行政事件訴訟法第4条前段)。

    したがって、本問の正解例は、次のとおりになる。

  --------------------------------------------------------------
   
     B市を被告として、損失補償の増額請求の訴えを提起すべきで、
   これを形式的当事者訴訟と呼ぶ。(44字)

  ---------------------------------------------------------------
   
       つまり、(1) B市を被告とすること (2)損失補償の増額
   請求の訴え (3)形式的当事者訴訟 の三つの記載がされていれ
   ば満点になるのだろう

  
   ●  付言 

   (1) 本問に関しては、当該本試験前において、前述のとおり、
      メルマガ107号で解説が実施されていることに、私は、
      ほっとしている。

   (2) 当事者訴訟とくに実質的当事者訴訟については、論点は多
      岐に渡っているので、将来の本試験対策として、メルマガ135号
     の「オリジナル問題出題・解説」において、詳述した。
          


     ★  参考図書

     
       行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

      ・有斐閣発行

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】 司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】 行政書士試験独学合格を助ける講座
 
  ▽本文に記載されている内容の無断での転載は禁じます。
 
  ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。
       
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 18:38コメント(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

           ★ オリジナル問題解答 《第26回》 ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

-------------------------------------------------------------
          PRODUCED BY 藤本 昌一
-------------------------------------------------------------

 
  【テーマ】  行政法

   
    
  【目次】    解説

              
   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■   オリジナル問題 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
 
   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第112号掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第112回はこちら
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 
 
   
  ★ 参考図書
 
    行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行

  ● 各肢の検討

 
  ○ アについて

      本肢は、平成23年度 問題8 ・肢2(メルマガ第112号
  参照)を参考にしたものである。
  
    いわゆる「宝塚市パチンコ条例事件判決」(最判平14年7月
    9日民集56巻6号1134頁)は、によれば、最高裁は、以下
  のように判決している。

    国または地方公共団体がもっぱら行政権の主体として(つまり
     公権力の行使の主体として)行政上の義務の履行を求める訴訟は、
     そういったことを認める特別の法律の規定がない限り許されない。

 
    当該判決に照らし、本肢は妥当である。

 

  ○ イについて

   本肢は、平成23年度 問題8 ・肢4(メルマガ第112号
  参照)を参考にしたものである。

      行政手続法上、 聴聞・弁明の機会の付与の対象にとされてい
   るのは、処分のうち「不利益処分」であるが、法的拘束力のない
   公表は、「不利益処分」に該当しない。したがって、聴聞はもち
   ろん、「弁明の機会の付与」の対象とされるということはあり得
   ない。

    したがって、以上の記述に従えば、本肢は妥当でない。

  
   ※ 参考事項

    行政手続法上、「弁明の機会の付与」の対象とされている処
   分について。

     処分については、申請に対する処分と不利益処分があるが、
    聴聞の対象になるのは、不利益処分のうちの特定不利益処分
    に限られる(行政手続法第二章・第三章・特に第13条第1
    項第一号イ〜ニ各号)。
    
     これに対し、「弁明の機会の付与」の対象になるのは、
    不利益処分のうちの特定不利益処分以外のものに限られる
    ことに注意(行政手続法第13条第1項第二号・第29条
    以下)。

   ○ ウについて

    本肢は、平成23年度 問題8 ・肢5(メルマガ第112号
   参照)を参考にしたものである。

       「二重処罰の禁止」 は、憲法39条が規定する「重ねて刑事上
      の責任を問はれない」ことを意味すると解されるところ、課徴金
      は、刑罰とは異なる行政上の不利益措置であるから、課徴金と刑
      罰の併科が、「二重処罰の禁止」に抵触することはない。

        以上の記述に従えば、本肢は妥当である。

  
  ○ エについて

        執行罰とは、義務を履行しない義務者に対して心理的強制を加
   えるために、金銭的な罰を科する方法であるが、行政上の強制執
   行の1種類であるから、罰金などの刑罰を併科することが二重処
   罰の禁止に抵触することはなく、許される。

    これに反する本肢は妥当でない。

  ○ オについて

   ここでは、平成21年度問題42・同18年度43(いずれも多
  岐選択式)について、実際に穴埋めを果したえで、本肢と関連する
  ところを抜粋する。

   ▲ 平成21年度

   行政上の義務違反に対し、一般統治権に基づいて、制裁として科
  せられる罰を行政罰という。
  
   行政罰には、行政上の義務違反に対し刑法典に刑名のある罰を科
  すものと、行政上の義務違反ではあるが、軽微な形式的違反行為に
  対し科す行政上の秩序罰とがある。

   秩序罰としては、届出義務違反などに科される過料がある。

   
   ▲ 平成18年度

   ・・行政上の義務の履行確保手段には、間接的強制手段として、
   行政罰がある。その中で秩序罰は、届出、通知、登記等の義務
   を懈怠した場合などに科される罰である。

   
    本肢は、前段は妥当であるが、最後尾の科料が過料であるべ
   きである。科料は刑事罰である(刑法9条参照)。本肢は妥当
   でない。

   ※ 参考事項

   1 平成21年度の文言を要約、図示すると、以下のとおりで
    る。

         
           行政刑罰
    行政罰=
           行政上の秩序罰

   
   2 平成21年度は、行政罰を「制裁として科される罰」として、
    捉えているが、平成18年度は、行政罰を「行政上の義務の履
    行確保手段」としての「間接的強制手段」とみている。
     本肢もまた、後者と同様の立場に立っている。

      3 行政刑罰と秩序罰の手続の違いについては、本欄《第25回》
    で述べたが、再説しておく。


     過料は、刑法に定められている「刑(罰)」ではありません
    から、刑法総則の規定は適用されないと考えられていますし
   (参照、同法8条)、また、その手続も、行政刑罰のばあいの刑
    事訴訟法によるのではなくて、法令に特別の定めがないかぎり、
      「非訴訟事件手続法」161条以下が定めているところによって
       おこなわれるものとされます。また、過料は、そもそも裁判所に
       ゆくことなく行政行為によって一方的に科されることもあります。
       たとえば地方自治法に定める過料がそのよい例です(参照 地方
       自治法15条2項、149条3号、231条の3第3項、255
       条の3など)

       《以上、入門から抜粋》

    
    なお、以上の理解のもとに、もう1度、平成21年度問題42
   全体を読み返せば、スッキリとするであろう。

    
  -----------------------------------------------------------------

     本問では、妥当なものは、アとウであるから、正解は2である。

 -----------------------------------------------------------------


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 16:21コメント(0) 
記事検索
  • ライブドアブログ