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                 ★ オリジナル問題解答 《第58回》★

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                         PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法(行政事件訴訟法)

   
  【目次】   解説

 
   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第157号掲載してある。
 
 ☆ メルマガ第157号はこちら
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm


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■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣


  
 【 問題 1】


 ☆ 本問については、サイト69回を参照されたい。
 
 ・第69回はこちら↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/1355589.html

  ◆ 総説

  
  行政訴訟は、主観訴訟と客観訴訟に分かれる

 
 ○ 主観訴訟=権利保護の制度・つまり救済の制度。

  
    抗告訴訟と当事者訴訟に分かれる。

    「抗告訴訟」=取消訴訟・無効等確認訴訟・不作為の違法確認
           ・義務付け訴訟・差止訴訟


     「当事者訴訟」=実質的当事者訴訟・形式的当事者訴訟


 ○ 客観訴訟=権利救済のためでなく、国・公共団体の違法行為を
                是正し、その活動の適法性を確保することを目的と
                する。


     「民衆訴訟」・「機関訴訟」


 (前掲書・読本 266頁の図表を参考にした)

 
 ◆ 各肢の検討


  ○ ア・イについて

   
    以下の記述を参照されたい。

--------------------------------------------------------------

    行訴法4条前段野規定は、「形式的当事者訴訟」である。
  これに対比されるのが同条後段の「実質的当事者訴訟」である。 

  いずれも、総説の「当事者訴訟」に含まれる。

   以下において、「形式的当事者訴訟」について説明する。
  
    まず、条文の意味するところは、難解であるが、「本来は取消訴訟
  であるべきところ、法律の規定により当事者訴訟とされているので
  『形式的当事者訴訟』と呼ばれている。」(読本270頁)

 「この訴訟の代表例は、土地収用の場合において土地所有者に支払
   われる損失補償に関する争いである。損失補償は、都道府県に設
   けらている収用委員会の裁決によって定められるが、、裁決は
   行政処分であり・・従って土地所有者がその損失補償に不服がある
   場合には、本来収用委員会を被告として取消訴訟を提起しなければ
   ならないはずである。ところが、土地収用法133条3項は、損失
  補償に関する訴訟は、損失補償の法律関係の当事者つまり、土地
   所有者と土地所有権を取得し補償の義務を負担する起業者との間
   で行われるべきものとしている。」(読本270頁)

 
    これに対して、行訴法4後段の「実質的当事者訴訟」に関しては、
  最大判H17・9・14を参照すべきである。

   在外国民が「次回の衆議院の総選挙における小選挙区選出議員の
選挙および参議院の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において、
在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票できる地位にあ
ること」の確認を求める訴えは「公法上の法律関係に関する訴え」
として確認の利益が肯定され適法である。

 (入門211頁以下・読本337頁以下)

  なお、この他、当該訴訟の例として、「公務員の身分の確認を求
める訴訟や公務員の俸給の支払を求める訴訟などがこれに該当する。」
とされる(読本 269頁)

 
  ☆  関連事項

   過去問 平成19年度・問題19をみよ!!

  行政事件訴訟法4条の当事者訴訟に当たるものの組合せとして
正しいものとして、次の肢が挙げられている。

  ア  土地収用法に基づいて、土地所有者が起業者を被告として
  提起する損失補償に関する訴え

 オ 日本国籍を有することの確認の訴え


 アが、形式的当事者訴訟であり、オが、実質的当事者訴訟である。

-------------------------------------------------------------
 
  以上の記述に照らせば、アは、形式的「当事者訴訟」であり、イは
  実質的「当事者訴訟」であるから、後段の説明が逆になっている。

  ア・イとも誤りである。

 
 ○ ウについて

   
    以下の記述を参照されたい。

  ---------------------------------------------------------------- 

    地方自治法242条の2に定める「住民訴訟」は、行訴法5条
  が規定する民衆訴訟である(総説・○客観訴訟「民衆訴訟」参照)。

   
   選挙に関する訴訟は公職選挙法(203条以下)で定められ、
   これもまた、民衆訴訟である(総説参照)。
  
  
   次の指摘に注意。

   「選挙に関する訴訟は公職選挙法(203条以下)で定められ、
    住民訴訟は地方自治法(242条の2)で定められている。
    行政事件訴訟法5条の規定は、それらの訴訟を行政訴訟に
    組み込むという意味を持っている」(読本271頁)

----------------------------------------------------------------

    以上の記述に照らせば、本肢は正しい。


 ○ エについて

  「義務付けの訴え」(行訴法3条6項)は、抗告訴訟に該当する
  行訴法3条1項・総説○主観訴訟「抗告訴訟」参照」

  抗告訴訟に該当するので、本肢は誤りである。

 ○ オについて
               
        行訴法6条の機関訴訟(総説・○客観訴訟「機関訴訟」)に
   いては、「法律が定めている場合に限り、法律で認められた者
      だけが提起することができる。その理由は、行政機関が法人格
   を持たず、権利義務の主体ではないことである。行政組織内部
      の紛争はその 内部で解決すべきであるという観念も作用して
   いるであろう」(読本271頁)

   したがって、本肢は正しい。


=================================

 以上によれば、正しいのは、ウ・オであるから、正解は5である。

=================================

 
 【 問題2 】


 ◆ 参照サイト 行政事件訴訟・抗告訴訟 第36回

  第36回はこちら↓
  http://examination-support.livedoor.biz/archives/792006.html

 ◆ 各肢の検討

  アにについて

   行訴法3条5号によれば、「法令に基づく申請」が行われたが、行政
 庁が応答しない場合において、不作為違法確認訴訟の提起が認められる。
  法3条6項1号の「直接型不作為」は、当該訴訟の対象にならない。
 
  理屈は、サイト36回・A平成19年度 肢1と同じである。
 
 正しくない。


 イについて

   この「直接型不作為」に対し、義務付け訴訟を提起できる(3条6項1号)
 が、肢アでみたとおり不作為違法確認訴訟は提起できない。当該訴訟を一緒
 に起こす必要はない。しかし、37条の2第1項で厳格な要件が規定されて
 いる。 

 正しくない。


  ウについて。

   法3条6項2号の「申請型不作為」に対する義務付け訴訟にあっては、
  不作為違法確認訴訟も一緒に起こさなければならない(法37条の3
 第3項第1号)。

 正しい。


  エ について

   法3条6項2号の「申請型不作為」に対する義務付け訴訟にあっては、
 申請に対してすでに拒否処分がなされている場合には、この拒否処分
 に対する取消訴訟または無効確認訴訟を一緒に起こさなければならない
 (法37条の3第3項2号)。

 正しい。


 オについて

   差止訴訟とは、行政庁が行政処分を行おうとしている場合において、
 行政庁がその行政処分をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟
 である(法3条7項)から、その行政処分がなされた後に提起される
 取消訴訟の併合は、要求されていない。

 正しくない。

===============================

 正しいのは、ウとエであるから、正解は4である。

===============================
                           

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
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       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

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            ★ オリジナル問題解答 《第55回 》★

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                    PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法
    
  【目次】   解説
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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    問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第154号掲載してある。
 
 
 ☆ メルマガ第154回はこちら
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 

 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 
 ◆ 各肢の検討


  
   ○ 肢1について

   行政不服審査法34条2項以下。行政事件訴訟法25条2項以下。
 
    正しい。


   
   ○ 肢2について

   正しい。行審法34条4項。行訴法25条4項。ただし、厳密に
    言うと、前者では、義務的でなくなり、後者では することができ
    なくなる という違いがあるように思われる(○ 肢4について
   ※(b)参照)

     審査庁も裁判所も、執行停止にあたり、「本案について理由がない
  とみえるとき」に該当するかどうかを判断する

  
  
   ○ 肢3について

    行審法34条2項。正しい。行訴法25条2項によれば、「申立て
  によ」る。


 
  
   ○ 肢4について

    審査庁が処分庁の上級庁である場合には、3のとおり、執行停止の
     要件は緩和されているが、「審査庁が処分庁の上級庁でない場合につ
     いても、裁判所が執行停止する場合よりはその要件が緩和されている」
   (入門)
  
  (1) 審査庁の場合は、「必要があると認めるときは」が要件になって
    いる(行審法法34条3項)。
  
 (2)裁判所の場合は、「重大な損害」「緊急の必要」が要件になって
   いる(行訴法法25条2項)。
 
   したがって、要件は同じではなくて、緩和されているので、本肢は
  誤りである。
 
 
  ※(a) ただし、次の点に注意せよ。審査庁の場合にも、「重大な
            損害」等がが掲げられているが(行審法法34条4項)、こ
            れは、義務的であるための要件である。裁判所の場合が、執
            行停止発動の要件であるのとは、異なる。

            
                             執行停止可 ○   不可 ×
              
                           
               審査庁     裁判所
    
  「必要があると認める」   ○       ×

 
   「重大な損害等」      ○(義務的)  ○(発動の要件)

 
   以上を総括して、「入門」より、以下の文章を記しておく。
 
  「行政上の不服申立てのばあいには、争いを裁断するのは裁判所では
  なくて行政機関ですから、不服申立てに対する審査も、いわば、行政
   組織内部でのコントロールとしての性格を持つことになります。そう
   だとすると、取消訴訟のばあいには、司法権としての裁判所の立場上、
  そうかんたんに認められなかった例外としての執行停止も、かなり
   ゆるやかに認めてもよい、ということになるのでしょう。」 

 
  ※(b) ついでにいっておくと、

   審査庁においては、「本案について理由がないとめるときは」義務
   的でなくなるのに対して(行審法34条4項)、裁判所においては、
 「本案について理由がないとめるときは」執行停止をすることができな
 くなるのである(行訴法25条4項)。

   さらに、「仮の義務付け・仮の差止め」では、「本案について理由
  があるとみえるとき」が、積極的要件になっている(行訴法37条の
  5第1項)。

  
 
 ○ 肢5について

   正しい。
 
  内閣総理大臣の異議は、行政事件訴訟法25条の取消訴訟の場合
(無効等確認の訴を含む・38条3項による 準用)及び 仮の義務付け・
 仮の差止めの場合(37条の5第4項による準用)である(27条)こ
 とを明確に把握しておくこと。

  内閣総理大臣の異議という制度は、行政不服審査法にはない。


------------------------------------------------------------------

  本問では、肢4が誤りであるので、正解は、4である。 


-----------------------------------------------------------------

  ◆ 付 言
  
   本問の肢4の解説にみられるように、条文に忠実に条文を丁寧に読
  むいわば条文主義という観点もまた、本試験によって要請されている
  と私は思料します。

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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             ★  【過去問解説第99回 】  ★

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                     PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法/行政処分 その1
    
  【目 次】 過去問・解説
              
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 ■ 平成24年度問題18 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
 
  行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当
 たる行為」(以下「行政処分」という。)に関する次の記述のうち、最
 高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

 1 医療法の規定に基づき都道府県知事が行う病院開設中止の勧告は、
  行政処分に該当しない。

 2 地方公共団体が営む簡易水道事業につき、水道料金の改定を内容と
  する条例の制定行為は、行政処分に該当する。

 3 都市計画法の規定に基づき都道府県知事が行う用途地域の指定は、
  行政処分に該当する。

 4 (旧)関税定率法の規定に基づき税関長が行う「輸入禁制品に該当す
  る貨物と認めるのに相当の理由がある」旨の通知は、行政処分に該当
  しない。

 5 地方公共団体の設置する保育所について、その廃止を定める条例の
 制定行為は、行政処分に該当する。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■  解説 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  

  ◆ 総説

 (1) 行政処分とは、「行政機関が、公権力の行使として、対外
    的に行う具体的な法行為」である。
    
     「例としては、課税処分、食中毒を出した食品取り扱い業
    者に対する営業停止命令、自動車の運転免許、建築基準法上
    の建築確認、違法建築物の除去や改善を命じる行為、鉄砲刀
    剣類の所持の許可、公共料金の値上げの認可、公有水面の埋
    立ての免許といったものがある」
    
    《以上、後掲読本 95頁》

 (2) ここで、本問の主題である行政事件訴訟法3条2項の「行政
    庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」は、(1)の行政
    処分(講学上の行政処分ないしは実体的行政処分と呼ばれる)
    がこれに該当するが、これ以外のものである政省令・条例など
    の行政立法、行政計画、行政指導等が「処分性」があるものと
    して、取消訴訟の対象になるかが問題になる。
    
    本問は、ここに焦点をあてている。

 (3) 本問について(2)の焦点に絞り、具体的に考察するとし
    よう。
      
     まず、肢2・肢5は条例という行政立法が、「処分性」が
    あるとして、取消訴訟の対象になるかが問題になる。
     
     つぎに、肢3では、当該行政計画が、同様に取消訴訟の対
    象になるかが問題となる。

     さらに、肢1では、当該行政指導が、取消訴訟の対象にな
    るかが問われている。

     最後に、肢4では、当該通知が、(1)の行政処分に該当
    するかが問われている。

 (4) これらに共通する論点は、「処分性についての個別的判断」
    ということになるが、そのためには、最高裁判所の判決を見
     る必要がある。最高裁判決によると、5については、処分性
    を認めるので、妥当であるが、その他の1〜4の肢について
    は、その処分性について、各肢と反対の判示をするので、各
     肢は妥当でない。

     結論として、5が妥当な肢である。

  
 ◆ 各肢の検討     

 
  ○ 肢1について

      行政法オリジナル問題49回・解説◆各肢の検討 5 ※ 参
  考事項(2)において、下記のとおり記述したが、当該記述が本
  肢に連動する。


   強い強制力を持った行政指導について、判例(最高裁2005
  《平成17》年7月15日判決・民集59−6−1661)が処分
  性を認めた例として、病院の開設の中止を求める 医療法に基づく
    勧告が、行訴法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力に当
    たる行為」に当たると解するのが相当であるとしたものがある。

   当該判例の要点を抜粋すると、当該「病院開設中止の勧告は、
  医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待
  してされる行政指導として定められているけれども、当該勧告
  を受けた者に対し、これに従わない場合には、相当程度の確実
   さをもって、病院を開設しても保険医療機関の指定を受けるこ
  とができなくなるという結果をもたらすものということができ
  る。・・・後に保険医療機関の指定処分の効力を抗告訴訟によ
  って争うことができるとしても、そのことは、(この 勧告が、
  行政事件訴訴法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力に
  当たる行為」に当たると解するのが相当である)という結論を
  左右するものではない。

   本肢は、上記判例に反するので、妥当でない。
 

 ○ 肢2・肢5について

    条例の制定という行政立法が行政処分と異なるのは、行政
   立法が一般的抽象的な規範の制定にとどまり、権利義務に具
   体的な変動をもたらさないことである(読本23頁参照)。


    したがって、「通例は、直接条例に対して取消訴訟を提起
   することは認められないと言わざるを得ない。なぜなら、一
   般に、条例は一般的抽象的な法規範であり、それを執行する
   行政処分において初めて誰にどのような権利義務が生じるか
   が決まるからである。もっとも、条例の中には、その適用を
   受ける人の範囲が比較的に限定されており、かつ具体的な執
   行行為たる行政処分をまたず直接にその人たちの権利義務に
   影響を与えるものがある。このような条例は、形は行政立法
   であるが、実質的には行政処分に近い性質を持つと言える。
   このような条例については、処分性を認めることが可能で
   ある。」(読本283頁)

    そのような観点に立って、最高裁判所判例をみると、同じ
   条例の制定行為であっても、肢2は、行政処分に該当せず、
   肢5は、行政処分に該当するとする。

    以下において、それぞれの判決内容を掲げておく。

    
  ▲  肢2について

   普通地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金
  を改定する条例の制定行為は、同条例が水道料金を一般的に改
  定するものであって、限られた特定の者に対してのみ適用され
  るものではなく、同条例の制定行為をもって行政庁が法の執行
  として行う処分と実質的に同視することはできないから行政処
  分には該当しない(最判平成18年7月14日民集60−6−
  2369)。

  ▲  肢5について

   各保育所の廃止のみを内容とする本件改正条例は、他に行政庁
  の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発
  生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限
  られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受
  けることを期待し得る法的地位を奪う結果が生じるから、行政処
  分に該当する(最判平成21年11月26日民集63−9−21
  24)。

   以上の判例に照らせば、肢2は妥当でなく、肢5が妥当である。

   
  ※ 参考事項

   小学校の統廃合を図る条例が、抗告訴訟の対象にならないとす
  る判決もある(最判平成14年4月25日判事229号52頁)。

 
  
 ○ 肢3について

  最判昭和57年4月22日民集36−4−705は、用途地域の
 指定に対しての訴訟の可能性を否定し、後続の処分、つまり、建築
 確認が用途地域の指定との関係で拒否された段階で、建築確認に対
 して取消訴訟を起こし、その訴訟の中で用途地域の違法を主張すれ
 ばよいとした。

  本肢は、上記判例に反するので、妥当でない。

  ※ 参考事項

    これに対して、 土地区画整理事業計画については、「実効
   的な権利関係を図るという観点」から事業計画の処分性を肯定
   する判決がある(最判平成20年9月10日裁時1467号1
   頁)。
   

 

 ○ 肢4について


  最判昭和54年12月25日民集33ー7−753は、税関長
 が行った(旧)関税定率法による通知が、申告にかかる貨物を適
 法に輸入することができなくなるという法律上の効果を申告者に
 及ぼすものとして、行政処分であるとした。

  本肢は、上記判例に反するので、妥当でない。


-------------------------------------------------------------
 
  以上によれば、妥当であるのは、5であるので、正解は5である。

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  ★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行
 
 
  なお、次回においても、引き続き「行政処分」に関する過去問
 の解説を行うことにします。


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 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
  ▽本文に記載されている内容の無断での転載は禁じます。
 
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                ★  【過去問解説第97回 】  ★

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                 PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法

    
  【目 次】 過去問・解説
              
   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成24年度問題44・記述式  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
 
    Xは、A県 B市内に土地を所有していたが、B市による市道の
  拡張工事のために、当該土地の買収の打診を受けた。Xは、土地
  を手放すこと自体には異議がなかったものの、B市から提示された
   買収価格に不満があったため、買収に応じなかった。ところが、B
  市の申請を受けたA県収用委員会は、当該土地について土地収用法
  48条に基づく収用裁決(権利取得裁決)をした。しかし、Xは、こ
  の裁決において決定された損失補償の額についても、低額にすぎる
   として、不服である。より高額な補償を求めるためには、Xは、だ
  れを被告として、どのような訴訟を提起を提起すべきか。また、こ
  のような訴訟を行政法学において何と呼ぶか。40字程度で記述し
   なさい。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
 
 
 ●  総説

 
 本問では、ズバリ、形式的当事者訴訟について問われている。


 1 形式的当事者訴訟の占める位置

   
  ○ 抗告訴訟(行政事件訴訟法第3条第1項・第
   2項)

  ○ 形式的当事者訴訟(行政事件訴訟法第4条前段)

  ○ 実質的当事者訴訟(行政事件訴訟法第4条後段)

  ○ 民事訴訟

 
  以上の訴訟形態の中において、中心的なテーマになるのは、抗告
 訴訟・実質的当事者訴訟・民事訴訟である。

  
    その区別は以下のとおりである。
    
   
   ▲   行政「処分の取消しの訴」は、「行政庁の公権力の行使に関す
      る不服の訴訟」である抗告訴訟である(行政事件訴訟法第3条第
      1項・第2項)から、「行政主体と一般市民との間における対等
       当事者としての法律関係に関する訴訟]ではない。※1

   ▲  「行政主体と一般市民との間における対等当事者としての法律関
   係に関する訴訟」のうち、公法上の法律関係に関する訴訟が実質
      的当事者訴訟であり、私法上の法律関係に関する訴訟は民事訴訟
      となる。※2

   
    ※1「対等当事者としての法律関係」とは、「公権力を行使し
        ない」行政主体との関係というほどの意味として捉えるべきで
        あろう。   

    ※2 その具体例

     行政指導は、一般に「公権力の行使」に該当しないので、「処
        分の取消の訴」の対象にはならない。したがって、行政指導が違
        法である場合には、行政指導の違法の確認を求める訴訟形態を認
        める必要がある。これが、行政事件訴訟法4条後段で規定される
       「実質的当事者訴訟」なのである。

     以上に対して、「例えば、水道料金のような私法上の債務の不
        存在確認訴訟(民事確認訴訟)」(読本 参照)は、「私法上の
        法律関係に関する」ものとして、民事訴訟になる。

     (本講座メルマガ 2011/ 12 /26・107号を要約した)

  ▲ 以上のメンテーマに比較して、形式的当事者とは、特殊・例外的な
   訴訟形態である。

    後掲書「読本」によると、以下のような記述により、その説明が省
   かれている。あえて、そこを、記述式によって、突いてくるところに
   本試験の特徴があるといってもよいのかもしれない。

    ・・この訴えが実質的に見ると「公権力の行使に対する不服の訴訟」
    つまり「抗告訴訟」としての性質を持っているのだけれども、法形
    式の上では対等な当事者の間での訴訟というかたちになっている、
        ということなのです。ただ、こういった例」はそもそもほんとうに
        例外的にしか認められていませんし(例として、土地収用法133
        条3項、特許法については略 藤本)、行政法入門の段階では、こ
        ういうものがあるということについてあまり気にする必要はないと
        思います。

  
 2 形式的当事者訴訟(行政事件訴訟法第4条前段)

   行政事件訴訟法第4条前段が規定する。この訴えは実質的にみると
    「公権力の行使に対する不服の訴訟」つまり「抗告訴訟」としての性
     質を持っているが、法形式の上では対等な当事者での訴訟というか
     たちをとる(入門)。

   代表例としては、土地収用の場合において土地所有者に支払われる
    損失補償に関する争いである。訴訟の対象は、都道府県に設けられて
    いる収用委員会の裁決という行政処分であるため、この争いの実質は、
   「抗告訴訟」である。ところが、土地収用法は、「損失補償に関する
    訴訟は、損失補償の法律関係の当事者つまり土地所有者と土地所有権
    を取得し補償の義務を負担する起業者との間で行われるべきものとし
    ている」(読本)

  (本講座メルマガ 2011/ 12 /26・107号から抜粋)

   
     参照条文としては、土地収用法133条2項・3項 が重要である。
  


   ●  本問の検討

    前記総説 2 をそのまま、あてはめればよい。
  
    
   すなわち、

   損失補償の法律関係の当事者(土地収用法113条3項)
   
   X=土地所有者

   B市=土地所有権を取得し補償の義務を負担する起業者

   
   どのような訴訟=A収用委員会の裁決のうち損失の補償に関する
           訴え(同法113条2項)・具体的には、「損
           失補償の増額請求の訴え」

   このような訴訟を行政法学において、形式的当事者訴訟と呼ぶ
  (行政事件訴訟法第4条前段)。

    したがって、本問の正解例は、次のとおりになる。

  --------------------------------------------------------------
   
     B市を被告として、損失補償の増額請求の訴えを提起すべきで、
   これを形式的当事者訴訟と呼ぶ。(44字)

  ---------------------------------------------------------------
   
       つまり、(1) B市を被告とすること (2)損失補償の増額
   請求の訴え (3)形式的当事者訴訟 の三つの記載がされていれ
   ば満点になるのだろう

  
   ●  付言 

   (1) 本問に関しては、当該本試験前において、前述のとおり、
      メルマガ107号で解説が実施されていることに、私は、
      ほっとしている。

   (2) 当事者訴訟とくに実質的当事者訴訟については、論点は多
      岐に渡っているので、将来の本試験対策として、メルマガ135号
     の「オリジナル問題出題・解説」において、詳述した。
          


     ★  参考図書

     
       行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

      ・有斐閣発行

 

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 【発行者】 司法書士 藤本 昌一

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