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        ★ 過去問の詳細な解説  第72回  ★

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                    PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】
  
     地方自治法(監査制度)        


  【目次】   問題・解説


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 ■ 問題 平成21年度問題 22
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   地方自治法の定める監査制度に関する次の記述のうち、正しい
 ものはどれか。

 1 戦後、地方自治法が制定された際に、監査委員による監査
     制度のみならず、外部監査制度についても規定された。

  2 普通地方公共団体の事務の執行に関する事務監査請求は、
  当該普通地方公共団体の住民であれば、1人でも行うことが
    できる。

  3 普通地方公共団体の事務の執行に関する事務監査請求は、当
    該普通地方公共団体の住民であれば、外国人でも行うことがで
  きる。

  4 監査委員による監査は、長、議会または住民からの請求があ
    ったときにのみ行われるため、その請求がなければ監査が行わ
    れることはない。

  5 監査委員の監査の対象となる事務には、法定受託事務も含ま
    れている。

 
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 ■ 解説
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 ◆  肢1について

  現行地方自治法(昭和22年4月17日法律67号)制定に際し、
 監査委員による監査制度が制定されたとするのは、正しい。
  
  しかし、外部監査制度は、平成9年の改正によって新しく導入
 されたものであるので、本肢は誤りである。

   頭の隅に、外部監査人による監査の制度は後から導入されたもの
 だという意識さえあれば、本肢は即正解だ!

  《参考事項》

 ア 監査委員は、必要的委員(委員会)として、すべての地方公共
  団体に必ず置かなければならない(地方自治法180条の5第1
  項4号)。

 イ 外部審査制度→一定の資格等を有する外部の専門家が、地方
    公共団体との契約によって監査を行うものである。
   従来の監査委員の監査より独立性と専門性を強化したもので
   ある(地方自治法252条の28第1項)。

  注

  外部審査制度に焦点を当てた過去問として、2000(平成12)
  年・問題20がある。

  なお、以下の肢に注意!

  外部審査制度が設置された地方公共団体については、これまでの
  監査委員は、条例の定めるところにより、廃止することができる(
 前記問題20・肢4)。

   いわゆる外部審査制度の導入により、地方公共団体は、公認会計士、
 弁護士など、外部の一定の資格の資格ある者(外部監査人)と外部監
 査契約に基づいて、その者の監査を受ける場合は、従来の監査委員を
 おかないことができることになった《2005(平成17)年問題
 18・肢4》

  前記《参考事項》アの必要機関としての監査委員の地位に照らし、
 いずれも×。

 
  ◆ 肢2について

   地方自治法12条2項によれば、普通地方公共団体の住民は、その
 属する普通公共団体の事務の監査を請求する権利を有する。
 しかし、地方自治法75条1項によれば、選挙権を有する者が、有
 権者総数の50分の1の連署をもってしなければならないことになっ
 ている.

  本肢は誤りである。

  《参考事項》

  地方自治法242条の規定する住民監査請求との比較

  この住民監査請求制度は住民が1人でもできる。
 
  請求の対象については、事務の監査請求が事務の執行全般に及ぶ
  (199条1項・2項参照)のに対し、住民監査請求は、財務会計上
  の行為(242条1項参照)である。

   請求の相手方は、いずれも、監査委員である。

 注

  地方自治法の体系からすれば、事務の監査請求が「直接請求」
  制度の一つであるのに対して、住民監査請求は、「直接請求」
 以外の「直接参加」の制度として、財政コントロールを目的と
 する。

   ◎ 参考事項については、過去問で繰り返し問われている。

 
 ◆  肢3について

   地方自治法75条1項の規定する事務の執行に関する監査請求は、
   地方自治法12条2項によれば、「日本国民」に限られている。
 
  本肢は、誤りである。

 
 《参考事項》

 
   「地方公共団体の住民」の概念は整理をしておかないと、混乱
    を生ずる。

    (1) 地方自治法10条1項が基本⇒「市町村の区域内に住所
    を有する者」となる。したがって、具体的には、当該地方
        公共団体の区域内に住所を有する者となる。

     この要件を満たせば、外国人、法人も住民となる。

  (2) 本肢でみたとおり、事務の執行に関する 監査請求は、
    「日本国民」に限ることになるのに対して、 住民監査請
     求においては、日本国民に限るとされていない(地方自
         治法242条1項参照)。
        
    以上からすれば、住民監査請求では、住民なら、法人でも
      外国人でも、住民監査請求ができるのである。


 ◆  肢4について

   監査委員による監査は、定例監査(199条4項)、随時監査(同条
  5項)があるので、本肢は正しくない。


 ◆ 肢5について。

   地方自治法上、法定受託事務全般を対象外とする規定はない。
    地方自治法199条2項によれば、一定の場合を除き、法定受託事務
  に及ぶことになっている。
  
    したがって、本肢は正しい。

 
 《参考事項》

 
 ☆ 法定受託事務
 
   国などから地方公共団体に委託するものである。

  地方自治法において、第1号法定事務と第2号法定事務について
 定義されている(同法2条9号)。

   第1号は、「国が本来果たすべき役割に係るもの」であり、第2号
 は、「都道府県が本来果たすべき役割に係るもの」である。

 
 ☆ 類似の過去問

   監査委員の権限は、地方公共団体の事務のうち、いわゆる自治事務
 を対象とするものであって、法律に特別の定めのない限り、法定受託
 事務には及ばない《2005(平成17)年問題18・肢1)。

  当然×

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   以上、本問に関しては、類似の過去問もあり、基礎知識さえあれば、
 難なく正解である5を導くことができる。

 しかし、この際、関連事項に関する知識もしっかり把握しておきたい。

 
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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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     ★ 過去問の詳細な解説《第2コース》第64回★
      
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 【テーマ】 行政行為の取消しと撤回(続)
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           「サイト32回」に掲載がある。
           ↓
  http://examination-support.livedoor.biz/archives/729085.html  
       
      本過去問に即して、理解しやすいように当該サイトを整理
      し、所要事項を付加した。
    
      平成19年度以降におけるこのテーマからの出題は、20
      年度 問題8がズバリ!! そろそろ、将来の本試験で問
      われる可能性あり。
 
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 【目次】   問題・解説

 

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■ 問題 平成18年度問題10
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   行政行為の職権取消と撤回に関する次の記述のうち、妥当なもの
 はどれか。

 1 行政行為の撤回は、処分庁が、当該行政行為が違法になされた
  ことを理由にその効力を消滅させる行為であるが、効力の消滅が
   将来に向かってなされる点で職権取消と異なる。

 2 旅館業法8条が定める許可の取消は、営業者の行為の違法性を
  理由とするものであるから、行政行為の職権取消にあたる。

 3 公務員の懲戒免職処分は、当該公務員の個別の行為に対しその
  責任を追及し、公務員に制裁を課すものであるから、任命行為の
  職権取消にあたる。

 4 行政行為の職権取消は、私人が既に有している権利や法的地位
   を変動(消滅)させる行為であるから、当該行政行為の根拠法令
    において個別に法律上の根拠を必要とする。

 5 行政行為の職権取消は、行政活動の適法性ないし合目的性の
  回復を目的とするものであるが、私人の信頼保護の要請等との
   比較衡量により制限されることがある。
    
 (参考)旅館業法8条「都道府県知事は、営業者が、この法律
    若しくはこの法律に基づく処分に違反したとき、又は第
    三条第二項第三号に該当するに至ったときは、同条第一
    項の許可を取り消し、又は期間を定めて営業の停止を命
    ずることができる(以下略)」

 


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■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣
  

 
 ○ 総説

  行政行為の職権取消と撤回に関しては、以下の要点を把握しておき
 たい(一部再説)。


 1 行政行為の取消しと撤回の違い

 (1) 行政行為の取消しは、行政行為成立時の違法性を理由に取り
      消すものであり、
      
    効果としては、原則として遡及効あり(行政行為の効果を行政
     行為時にさかのぼって失わせる)。

  (2) 行政行為の撤回とは、行政行為が行われた後に発生した事情
  (事後的事情・後発的事情)を理由として、当該行政行為を破棄
     することを言う。

    効果としては、遡及効なし。

 (3) 法律の中では、撤回は「取消し」と表現されている。

 

 2 行政行為の取消しの種別

 (1)職権取消し
 
       行政庁が行政行為の違法性を認めた場合におこなわれる。
 
     当該職権取消しをなしうるのは、行政庁(処分庁)のみである。


 (2)争訟取消し

    行政行為には「公定力」があるから、行政行為は一応有効なもの
    として通用する。
     したがって、相手方や第三者がこの行政行為の存在を否定するため
  には、行政上の不服申立てをしたり、取消訴訟を提起して、その行政
   行為を散り消してもらう必要がある。
 
    これらが、「争訟取消し」である。

   当該「争訟取消し」をなしうるのは、訴訟については裁判所であり、
  行政不服申立てについては、行政庁である。


  以上のとおり、1において、行政行為の取消しと撤回の違いについて、
 その要件としては、行政行為時の違法性の有無、その効果として、
  遡及効の有無にあることが分かった。

  2において、行政行為の取消しの種別として、処分庁の行う
 「職権取消し」と裁判所と行政庁の行う「争訟取消し」があることが
   判明した。

 
 ○ 各説

 
 肢1・2・3については、以上の理解があれば、難なく解答できる。


 ☆ 肢1について

  行政行為の撤回は、事後的事情を理由になされるものであり、効力は
 将来に向かってなされるから,前段は誤りであり、後段は正しい。全体
 として、誤り。

  処分庁が、違法を理由に取り消すのは、職権取消である
 
  また、当該行政行為を破棄しうるのは、処分庁であることにも注目。

  したがって、サイト63回(平成10年問34 肢4)の次の肢も
 誤りである。

   行政行為の撤回をなし得るのは、処分庁又は裁判所である。

 

 ☆ 肢2について 

  行政行為の撤回は、瑕疵なく成立した行政行為を後発的事情
 を理由に破棄することであり、本肢は、営業者の法律違反等を
 理由とする後発的事情を理由とする営業許可の撤回に該当する。

 本肢は、職権取消しではなく、撤回であるから、誤りである。

 
 
 ☆  肢3について
  
  公務員の任命行為という行政行為について、その後に発生した懲戒
 事由を理由に破棄するものであるから、撤回に該当する.

  誤り。 

 
  肢4・5については、前回(63回)(平成10年問34 肢2)の
 問題・ 解説欄において述べたところと連動する。

  再説する。       

                        ↓

 問題  

    授益的行政行為については、これを取り消すことによって当該
   行政行為の相手方の権利又は利益を侵害することにならない場合
   に限り、取り消すことができる。

 解説

  ここでは、「授益的行政行為」の概念を把握することが大切である。
  そのためには、これと反対の概念である侵害処分と対比することに
 より「授益的行政行為」の理解が深まる。

  以下の記述に注意せよ!!

          
 (1)侵害処分とは、その相手方の権利や利益を侵害するものである
     から、申請によらず、職権によって行われる。
   
(2)これに対し、申請に基づいて行われる処分のほとんどは、その
   性質上授益処分である。

(3)行政手続法の規定によれば、(1)が第3章の不利益処分であり
 (2)が第2章の申請に対する処分である。

(4)建築確認が(2)に該当する授益処分であるのに対して、税務署
  の課税処分が(1)に該当する侵害処分の典型である。

 注 授益的行政行為と授益処分は同義である。

 
   ここで、建築確認(授益的行政行為の典型)を例にとって、本肢に
 即して説明する。

  行政庁が後から当該建築確認の違法性を認めて取り消しをすれば、
 必ず、「当該行政行為の相手方の権利又は利益を侵害することに
 なる」から、この肢は、事実上、授益処分についての「職権取消し
 否認説」に立っていることになる。

 しかし、この説は、次のように批判される(読本)。
 
「法治主義の原則から生じる違法状態の解消よりも、相手方の被る
 であろう不利益を重視するものであって・・・一面的な考え方」
 である。
 
   職権取消しを肯定する説は、次のように述べる(読本)。
 
「授益処分については、行政処分の違法性がどの程度か、職権取消し
 をすれば相手方に生じる不利益はどの程度のものか、不利益を緩和
 する措置をとることができないかどうか、といったことを総合的に
 考慮して 職権取消しが認められるどうか判断すべきである。」

  以上のとおり、本問は微妙な問題であるが、相手方の利益などを
 侵害すれば、取り消しができないとするのは、一面的であって、
 相手方の権利を侵害しても、総合的判断により取り消し得るという
 のが正しい。

 本肢は誤りである。

           ・ 
 ☆ 以上を前提に本肢4を検討する。


 私人が既に有している権利などを消滅させるという点から、ここで
 取り上げられている職権取消しも授益処分が対象になっている。
 ちなみに侵害処分であると、課税処分を例にとれば、分かるように
 その取消は、相手方の利益になることであるから、行政庁が違法性を
 認めて職権取消しを行うのに一々法律の授権を要しないという回答は、
 すっと出てくる。
 しかし、授益処分である建築確認であっても、もともと行政庁に
 処分権限が与えられているから、改めて法律の授権を要しないで、
 職権取り消しができる。
 
  したがって、本旨4は誤りである。

  ただし、さきの記述にあるように、その職権取消には制限があること
 になる。

 

  ☆ 肢5について

  行政行為の職権取消は、「行政庁が行政行為の違法性を認めた場合に
 おこなわれる」のであるから、「行政行為の適法性の回復を目的とする」
 という前段は正しい。
  しかし、授益処分の職権取消 については、相手方の信頼を侵害する
 ことになるから、全体的な考察による比較衡量が重要になる。後段も
 正しい。

 これはさきに述べた議論の結論そのものである。

  したがって、肢5が正しく、これが正解である。

 


 ○ 付言

 
   本問・肢4に関連して、授益処分の撤回について、法律の授権を
 要するかという問題がある。これについては、以下のように2点を
 把握しておくべきである(読本 123頁以下参照)

 (1) 最高裁判所1988(昭和63)年6月17日判決において、医師会
     における、母体保護法上の指定(妊婦中絶手術をできる医師
   としての指定)の撤回に関連して、次のように判示された。
  
   法律の授権がなくても、撤回を行うべき社会的必要性が高ければ、
    撤回をすることが認められる。

 (2) しかし、自動車の運転免許や宅地建物取引業の免許について
     考えると、制裁としての撤回には、法律の根拠が必要であり、
   これが、職権取消しとの違いであるという学者の指摘がある。

 以上については、これ以上深入りしないが、その他この分野
 については、侵害処分もからみ、把握しておくべき論点
(将来本試験でも踏み込んで問われる可能性あり)がある。
 
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  ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第56回 】★      
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【テーマ】 「行政調査」「行政計画」・次回に続く。


【目次】  問題・解説

 

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 ■ 平成20年度・同21年度過去問
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 ○ 平成20年度問題26

   行政調査に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しい
 ものはどれか。

 1 保健所職員が行う飲食店に対する食品衛生法に基づく調査の手続は、
   行政手続法の定めるところに従って行わなければならない。

 2 税務調査については、質問検査の範囲・程度・時期・場所等について
   法律に明らかに規定しておかなければならない。

 3 警察官職務執行法2条1項の職務質問に付随して行う所持品検査は、
  検査の必要性・緊急性があれば、強制にわたることがあったとしても
  許される。

 4 自動車検問は国民の自由の干渉にわたる可能性があるが、相手方の
   任意の協力を求める形で、運転手の自由を不当に制約するものでなけれ
   ば、適法と解される。

 5 税務調査の質問・検査権限は、犯罪の証拠資料の収集などの捜査のため
   の手段として行使することも許される。

 

 ○ 平成21年度問題8

   行政計画に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

 1 土地利用を制限する用途地域などの都市計画の決定についても、侵害
   留保説によれば法律の根拠が必要である。

 2 広範な計画裁量については裁判所による十分な統制を期待することが
   できないため、計画の策定は、行政手続法に基づく意見公募手続の対象
   となっている。

 3 計画策定権者に広範な裁量が認められるのが行政計画の特徴であるので、
   裁判所による計画裁量の統制は、重大な事実誤認の有無の審査に限られる。

 4 都市計画法上の土地利用制限は、当然に受忍すべきとはいえない特別の
   犠牲であるから、損失補償が一般的に認められている。

 5 多数の利害関係者に不利益をもたらしうる拘束的な計画については、
  行政事件訴訟法において、それを争うための特別の訴訟類型が法定
   されている。

 

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 ■ 解説
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 ● 参考図書

 行政法読本・芝池義一著 行政法入門・藤田宙靖著 / 有斐閣発行 
 
 
 ● 序論

  平成20年度までは、「行政調査」「行政計画」が正面から問われる
 ことはなかった。しかし、ここ2年続けて、この分野からの出題になった
 のが、近年の本試験の特徴である。
   みなさまが所持されている教科書でも、とくに後者については、記述の
 ないもの、前者についても簡単な記述に留まるものが大半であるように
 思われる。本試験では、このように隙間を突いてくることもある。
  留意すべきである。
 
   しかし、この分野に目を向けてみれば、実際には、重要論点が存在する
 のである。


 ● 本論

  両試験につき、本物の(正しくて、妥当な)肢を捜すという観点にたてば、
 基本的事項を把握さえしていれば、出題意図に沿って、正解をあてることは、
 それほど困難なことではない。

 まず、「行政調査」と「行政計画」の共通性が問題になる。これらは、
 権力的に行われることもあれば、非権力に行われることもある。また、法行為
 に当たるものもあれば、事実行為に当たるものもある(読本)。

 「行政計画」について、国民の土地利用を制限する用途地域の決定のように、
 権力的な法行為には、法律の根拠が必要であることが自然に導かれる。
  
  平成21年度問題8の正解は、肢1である。

 「行政調査」が権力的に行われる強制調査(相手方の抵抗を排して行うことが
 できる調査)は、原則的に裁判官の令状を要するという基本知識さえあれば、
 平成20年度 の問題についても、自然に解答が導かれる。

  平成20年度問題26について、
 
 肢3の強制にわたることは許されず、肢4の任意の自動車検問が許されること
 になり、肢3は誤りで、肢4が正しいことになり、肢4が正解である。
 逐一、判例を知っている必要はない。

 それでは、それぞれについて、各肢を検討しておく。

 ○ 平成20年度問題26

   全体的考察
  
   行政調査とは、行政による情報の収集活動を指す(読本)。以下の肢は全部
 この概念に相当することを明確にしよう。
 
  この行政調査は、行政処分などの個別行為を行うに当って行われる場合と
 行政処分を行うかどうかとは無関係に情報収集を行う場合があるが、以下の
 肢はいずれも、前者が問題になっている。

  各肢の検討

  肢1について。誤り。

   これは、ズバリ、行手法3条1項14号の適用除外の問題である。
 
 「・・資料提出や出頭を命じる調査は、行政処分の形式で行われるもの
  であり、(注)一種の不利益処分として行政手続法を適用することも
 可能であるが、行政手続法は、『情報の収集を直接の目的してされる
 処分・・』を適用除外している(行手法3条1項14号)。」
 (読本)

 注・ ここでいう「行政処分の形式で行われる」というのは、冒頭で述べた、
「行政調査」が権力的に法行為として行われ得ることに照応することに注意
 せよ。


 肢2について。誤り。

  これは、行政調査についての事前の手続として、事前の通知や理由の開示
 が必要かどうかが、論点になったものである。
 
 「最高裁判所は、所得税法上の質問検査に関し、実定法上特段の定めのない
 実施の細目については、税務職員の合理的な選択に委ねられているものとし、
 『実施の日時場所の事前通知、調査の理由および必要性の個別的、具体定な
 告知のごときも、質問検査を行ううえの法律上一律の要件とされているもの
 ものではない』としている」(最高裁判所1973(昭和48)年7月10日決定=
 荒川民商事件)。(読本)

  本肢が、当該決定に基づいて出題されていることは疑いない。
 しかし、本決定は、実定法に定めがない場合でも、手続上、税務職員は、
 本肢に掲げてあるような細目を事前に通知しなくてはならないかどうか
 が争点になり、それは、税務職員の合理的な選択に任されているという
 判断が示されたのである。本肢が当決定に反するという出題意図であると
 すれば、設問の仕方がおかしいようにも思う。
  
  もし個別法において、行政庁職員に対して、調査の事前手続として、
 事前の通告等が義務づけられていれば、その者はその手続に従わなければ
 ならないことに注意せよ。立法例はある(読本参照)。

  いずれにせよ、誤り。

 肢3について。誤り。

   これは、最判昭和53・6・20からの出題である。以下に判旨を掲げて
 おく。

   職務質問に付随して行う所持品検査は、所持人の承諾を得て、その限度に
 おいて行うのが原則であるが、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたら
 ない限り、所持品検査の必要性、緊急性、これによって侵害される個人の法益
 と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況の下で相当
 と認められる限度で許容される場合がある。

  この問題は、一般の「行政法」の教科書では、「刑事訴訟法の教科書など
 における説明に譲ることにしたい。」(読本)とされているところでもあり、
 一般の受験生に対し、当該判決の知識まで問うのは要求過多とも思われる。

 しかし、
 強制にわたる場合には、憲法第35条2項による裁判官の令状を要すると
 いうこと(前述したとおり)が、頭に入っていれば、本肢の「強制にわたる
 ことがあったとしても許される。」が誤りであることが分かる。

 肢4について。正しい。
 
  これは、最高裁判所昭和55年9月22日決定からの出題である。

   当該判決によると、自動車の一斉検問は、警察法2条1項が
「交通の取締」を警察の職務としていることを根拠にしているが、
 本肢のとおり、「任意」であって、強制力を伴わなければ、
「一般的に許容されるべき」としている。したがって、本肢は正しい。

 肢3と肢4の対照

  肢3は、警察官職務執行法2条1項を見れば分かるように、犯罪
 にかかわる職務質問に付随する所持品検査であるのに対して、肢4は、
 犯罪とは関係なく無差別に行われる検問であるあるから、かりに任意で
 あっても、この自動車検問自体が「法律の留保の原則」(注)に違反
 して違法ではないかという問題がある(読本参照)。

  注 「行政の行為のうち一定の範囲のものについては、行為の着手自体が
  行政の自由ではなく、その着手について法律の承認が必要であると
    考えられている。この一定の行為について法律の承認(つまり授権)
  が必要である、という原則を『法律の留保の原則』と呼ぶ。」(読本)。

   これについては、前述したとおり、最高裁判所は、警察法の規定する
「交通の取締」を根拠にしているが、学者はそれにはかなり無理がある
 として「『法律の留保の原則』の見地からは、一斉検問を正面から授権
 する規定を法律(道路交通法になろう)の中に設けることがあるべき
 解決策といえる。」(読本)としている。

  
   肢5について。誤り。

  
   これも普段考えたことのない問題であろう。一読しただけでは、題意も
 掴み難い。

  つまり、税務署が取得した課税調査情報を国税局が行う国税犯則取締り
  に用いることは許容されるか(読本)、という問題である。
  
  ここでいう課税調査情報というのは、肢5のいう税務調査の質問・検査
  権限の行使という「行政調査」によって得られた情報である。
  
  これについては、所得税法234条2項・法人税法156条の規定が参考
  になる。いずれにおいても、「(税務調査)による質問又は検査の権限は、
  犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」と規定する。
  これは、「犯罪の証拠資料の収集などの捜査のための手段として行使
  することは許されない」ことを意味する。判例がこのような違法な行為
  を認める筈もない。
  
  判例とは、最決平16・1・20であるが、当該行政庁の行政調査が、
 「捜査のための手段として行使されたことにはならない」と判断された
   ということである。ここではそれ以上判例に深入りしない。

   平成21年度の「行政計画」は次号に続く。

 

 ● 付言

   肢3・4の事案について、 裁判所は、事後的に警察官の行政調査が、
「任意」だったか「強制」だったのかを判断することになるが、その
 個別行為における両者の境界の画定は困難であろうと推定される。

  もし、あなたがこの講座を学んだ後に、ご自分の運転する自動車が
 一斉検問の対象になったとすれば、さまざまな思いが去来するだろう。
  そのとき、「行政法」的観点からみて、はたして、その 警察官は、
  確りとした意識のもとに公務を遂行しているかどうか。質問してみる
 のも面白いかもしれない。ただし、公務執行妨害罪で強制的に連行
  されないようにご用心を!!!


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第53回 】★      
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 2009/8/26


             
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【テーマ】株式会社の設立・株式
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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  ○ 株式会社の設立

 (1)  平成17年度・問題32

   株式会社の設立に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつ
 あるか。
 

 ア 定款に発起人として署名していない場合であっても、株式募集の
  文書において賛同者として氏名を掲げることを承諾した者は、発起
  人と同一の責任を負う。

 イ 発起人が会社の成立を条件として成立後の会社のために一定の
  営業用の財産を譲り受ける契約をする場合には、譲渡の対象となる
 財産、その価格、譲渡人の氏名ならびにこれに対して付与する
 株式の種類および数を定款に記載または記録しなければならない。

 ウ 設立に際して作成される定款は、公証人の認証を受けなければ
  効力を有しないが、会社成立後に定款を変更する場合は、公証人
  の認証は不要である。


 エ 募集設立の場合には、発起人以外の者が、設立に際して発行され
  る株式の全部を引き受けることができる。

 オ 設立に際して発行される株式については、その総数の引受けならび
   に発行価格の全額の払込および現物出資の目的となる財産の全部
   の給付が必要である。


 1 一つ

 2  二つ

 3 三つ

 4 四つ

 5 五つ
 
 
 
 ○ 株式

 
 (2)平成16年度・問題33

  
   株式に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。


 ア 株式発行の際、株式の実際の払込額(現物出資の場合は給付額)
  の 総額の2分の1を超えない額については、資本に組み入れず
  に資本準備金とすることができる。

 イ 完全無議決権株式は、利益配当に関して優先的な内容を有する株式
   としてのみ発行することができる。

 ウ 株式の引受けによる権利の譲渡は、会社に対してその効力を生じない。

 エ 株式の分割を行う場合には、株主総会の特別決議によるその承認が
   必要である。

 オ 自己株式を取得した場合には、相当の時期に当該自己株式を処分
   または消却 しなければならない。

 
 1 ア・ウ

 2 ア・エ

 3 イ・エ

 4 イ・オ

 5 ウ・オ
 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━   

 ▽ 参考書籍

 会社法 神田 秀樹 著 ・弘文堂   リーガルマインド 会社法
 
  弥永真生著 著・有斐閣
 

 (1)平成17年度・問32

   平成17年度行政書士試験は、平成17年4月1日現在施行されて
 いる法令に関して出題されていると思われる。平成17年制定の会社
 法は、平成18年5月1日施行であるから、本問は、その狭間にあって、
 旧商法の条文 が基準になっていると思われる。本問については、現行
 の会社法に照らして正誤の判断をすることにした。そのため、整合性を
 保持できない場合には、私が問題を改めた。


 アについて

   擬似発起人に関する問題である。「定款に発起人として署名しない者
 は発起人ではないが、株式募集に関する文書等に賛助者等として自己の
 氏名を掲げること等を承諾した者(擬似発起人という)は、発起人と
 同様の責任を負う(103条2項)」(神田会社法)。

 正しい。

 
 イについて

   財産引受け(28条2号)の問題である。発起人が会社のため会社の成立
 を条件として特定の財産を譲り受ける旨の契約をいう。これは、通常の
 売買契約であって、現物出資(28条1号)とは異なるから、付与する株式
 数を定款で定める必要はない。譲渡の対象となる財産、その価格、譲渡人
 の氏名を定款に記載することで足りる(28条2号)。

 誤りである。

  財産引受については、第2・44回イの解説および第1・29号オリジ
 ナル【問題1】イの解説でふれた。

 ウについて

  設立の第1段階は、発起人による定款の作成(26条1項)である。定款
 の作成 とは、株式会社の組織と活動に関する根本規則を実質的に確定し、
 これを形式的に記載するか、または電磁的記録することを意味する。
  定款の方式について は、発起人が署名または記名押印(いわゆる電子
 署名でもよい)することに加えて(26条1項・2項)、公証人の認証が
 必要である(30条1項)。この認証は、定款の内容を明確にして後日
 の紛争や不正行為を 防止するためであるが、その後に定款を変更する
 場合には認証は不要とされ ている(神田会社法)。
  最初の定款を「原始定款」というが、公証人の認証を要するするのは、
「原始定款」のみと覚えておくとよい。

 正しい。

 エについて

   募集設立は、発起人は設立の際に発行する株式の一部だけを引き受け、
 残りについては発起人以外の者に対して募集を行い、そのような発起人
 以外の者 が株式の引受けを行い、発起人とそのような者とが会社成立後
 の当初株主になる形態の設立方法をいう(25条1項2号)《神田会社法》。
 つまり、常に(発起人が設立時発行株式すべてを引き受ける発起設立
 ≪251項1号≫の場合も含めて)各発起人は、設立時株式を一株以上引き
 受けなければならないのである(25条2項)。

 誤りである。


 オについて

  「 旧商法において、設立に際して発行する株式総数が定款の絶対的記載
 事項であり、会社を成立させるためには、定款に定められた設立時発行
 株式のすべてが引き受けられ払込みが為されることを要した」(非公開
 会社のための新会社法・商事法務)。本肢は旧商法に基づいている。
 「 会社法では、失権者が出て引受のない株式があった場合でも、原始
 定款に定めた『設立に際して出資される財産の価格又はその最低額』
(27条4号)以上の出資がなされているときは、そのまま設立手続を続ける
 ことができるものとなった」(前掲書)。44回ウの解説を参照して、
 当該個所を確りと頭に入れておく要あり。

 会社法を基準にすれば、誤りである(旧商法に基づく出題当時は正し
 かった が・・・)。

 なお、本肢では、「発行価格」がその基準として用いられているが、
 それは 旧商法時代に通用していたものであって、現在では株式の実際
 の払込額が基準になっていることに注意する必要がある(445条1項・
 神田会社法)。


 以上誤りは、イ・エ・オの三つであるから、3が正解である。


 (2)平成16年度・問33

   本問もまた、旧商法の条文に基づいて出題されているため、会社法に
 適合するように改めた。なお、旧商法と比較して、新会社法でどのよう
 に改められたかを知ることは、会社法の重要論点探索の端緒になる。

 アについて

   本肢においても、(1)オと同様「発行価格」が基準とされていた
 ので、その文言を会社法に適合するように改めた。
  資本金の額は、原則は株式の実際の払込額(現物出資の場合は給付額)
 の総額であるが(445条1項)であるが、株式発行の際にその2分の1
 までの 額(払込剰余金)は、資本金としないことが認められ(445条2項)、
 その場合には、それは資本準備金としなければならない(445条3項)
(神田会社法)。

 以上に照らせば、本肢は正しい。


 イについて

   議決権制限種類株式とは、株主の全部または一部の事項について議決権
 を行使できない株式をいう(108条1項3号)。
  平成13年11月改正前の商法は、定款で株主総会のすべての事項に
 ついて議決を有しないと定めた株式のみを認め、配当優先株式について
 のみ無議決権株式とすることを認めていた。
  平成13年11月改正は、総会のすべての事項について議決を行使
 できない株式だけでなくその一部の事項についてだけ議決権を行使で
 きないような種類も認めることとし、これら「議決権制限株式」は、
 配当優先株式についてだけ でなく、普通株式等についても発行できる
 とした。会社法はこれを引き継いでいる(前掲書)。

 以上に照らせば、本肢は、平成13年改正前の商法を基準とした
 ものであって、会社法に基づけば、誤りである。

 ウについて

   会社法は、原則として株式の自由譲渡性を認めるが(127条)、その例外
 として、法律による株式の譲渡の制限がある。本肢は時期による制限の例
 である。
   会社成立前または新株発行前の株式引受人の地位(権利株)の譲渡は、
 当事者間では有効であるが、会社には対抗できない≪発起設立・35条1項
 募集設立・63条2項 新株発行・208条4項≫。(神田会社法)

   以上によれば、本肢は正しい。


 関連事項

    株券発行前の株式譲渡
   
    株券発行会社では、会社成立後または新株発行後でも株券発行前
   における株式の譲渡は、当事者間では有効であるが、会社との関係
     では効力が否定される(128条2項)。会社法は、株券発行会社に
   ついては、会社との法律関係を簡明に処理するため株式を有価証券化
     することを求めるため、それまでの間に株式が譲渡されたのでは会社
     との関係では困るからである。
       しかし、会社が遅滞なく株券を発行しないなど会社に帰責事由がある
     ような場合には、株式の譲渡を認めないのは不合理であるので、判例上、
     当事者間の意思表示で株式の譲渡ができ、会社はその効力を否定する
     ことはできず、会社は譲受人を株主として取り扱わなければならない
     と認められている(最大判昭47・11・8・・・)(神田会社法)。

  株主の会社に対する権利行使

   株券発行会社では、株式を譲渡するには、譲渡当事者間では株券の
  交付が必要十分条件であるが(128条1項本文)、会社との関係では、
  株式を譲り受けた者は株主名簿上の名義を自己の名義に書き換えてもらう
  必要がある(130条1項・2項)。
  これに対して、株券不発行会社では、株主名簿上の名義書き換えが
  株式譲渡の 会社および第三者に対する対抗要件である(130条1項)
   なお、株券不発行の場合、譲渡当事者間では、株式の譲渡は意思表示
  で効力が生じると解される。(以上前掲書)

 以下の条文に注目

  130条2項においては、株券発行会社においては、株主名簿上の名義
 書き換え が株式譲渡の会社に対する対抗要件であることが規定されている。
   ここでは、第三者に対する対抗要件は、株式の交付であることが前提に
 なっている。
  130条1項は、株券不発行会社に関するものであって、、原則的規定に
 なって いる。
   214条では、会社は原則として株券を発行しないものとし、株券の発行
 を定款で定めた場合に限って株券を発行することとした。

   しかし、130条1項・2項の規定のしかたは、もってまわった言い方で混乱
 を生じる。株券発行会社は・・・・・。 株券不発行会社は・・・・・。という
 ように、なぜ、単純な規定にできないのだろう。

 エについて

   株式の分割とは、既存の株式を細分化して従来の株式よりも多数の株式
 とすることである(183条)。新株がいわば無償で発行されることになるので、
 既存の株主に対してその持株数に応じて交付されなければならない。既存株主
 の利益に実質的影響が少ないので、取締役会設置会社では取締役会決議で行う
 ことが できる。 (183条2項)(神田会社法)取締役会設置会社以外では、
 株主総会決議による(183条2項)が、これは309条1項の普通決議でよい。
 特別決議とは、309条2項に列挙されてある一定の重要な事項の決議であって、
 より厳格な決議要件になっている。ここには、183条の株式分割は掲げられて
 いない。
 なお、309条3項・4項は、特殊の決議と呼ばれることに注意せよ。

 したがって、株式分割は、特別決議でないので、本肢は誤りである。

 オについて

   旧商法では、自己株式の取得は、例外的な場合を除いて禁止されていた。
 また、取得した自己株式の保有期間を制限していたが、平成13年6月
 改正は、「金庫株の解禁」といわれるように、金庫株(会社が自己株式を
 期間制限なくその金庫に入れておくこと)を認めるための改正も行われた。
 会社法は、金庫株の解禁を引き継ぐとともに、自己株の取得についても
 改正を加え、全体として規制を整理しなおした(神田会社法参照)。

  したがって、本肢は、平成13年改正前の金庫株解禁前の旧商法に
 基づいているので、誤っている。

 注 金庫株については、52回解説エ参照。
     
     旧商法時代、自己株式が厳格に規制されていた実状は、名著(会社法
   ・鈴木竹雄著 弘文堂)によって、名文で記されているので、参考に
   されたい。現在にも通じるのだと思う。

   「・・(自己株式の取得を)自由に認めると、株主に出資を払い戻した
    のと実質的に同様の結果を生じ会社の財産的基礎を危うくするほか、会社
    が自己株式によって投機を行い一般の者を害する等の弊害があるので、法
    は政策的見地からこのように禁止したのである。そのためこのような弊害
    のない場合には自己株式の取得を認めてもさしつかえないが、その場合でも
   自己株式の保有状態をできるだけ早く解消することが要求されている210条 
    211条)。」


 本問は、ア・ウが正しい肢であるので、正解は1である。
 
 
 

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第51回 】★      
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 2009/8/18


             
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【テーマ】株式会社における剰余金の配当
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 平成20年度過去問・問題38

   株式会社における剰余金の配当に関する次のア〜オの記述のうち、
 誤っているものの組合せはどれか。

 ア  剰余金の配当により株主に交付される金銭等の帳簿価格の
    総額は、剰余金の配当が効力を生ずる日における分配可能額
    を超えてはならない。

 イ   剰余金の配当においては、株主総会の決議により、当該会社
  の株式、新株予約権または社債を配当財産とすることができる。

 ウ 取締役会設置会社は、1事業年度の途中において1回に限り、
  取締役会決議により剰余金の配当(中間配当)をすることができる
   旨を定款で定めることができる。

 エ 純資産の額が300万円を下回る場合には、剰余金の配当をする
  ことができない。

 オ 会社が自己株式を有する場合には、株主とともに当該会社も剰余金
  の配当を受けることができるが、配当財産の額は利益準備金に計上
   しなければならない。

 1 ア・ウ

 2 ア・エ

 3 イ・エ

 4 イ・オ

 5 ウ・オ

 
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■ 解説
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 ▽ 参考書籍

 会社法 神田 秀樹 著 ・弘文堂   リーガルマインド 会社法
 
  弥永真生著 著・有斐閣

 本問では、順序不同で解説を行う。
  
 (1)原則として、剰余金の配当は、株主総会決議により行われる
(453条・454条参照)。剰余金の配当とは、株主に対する配当である。
 自己株式とは、「株式会社が有する自己の株式」(113条4項参照)
 であるが、法は、自己株式には配当できないことにしている
(453条括弧書き)。

   したがって、自己株式への配当を前提にしているオは誤りである。

   会社は、株主総会の決議によって、現物配当(配当財産を金銭以外の
 財産とすること)も認められる(神田会社法・454条4項)。
  したがって、会社は、株主総会の決議によって、配当する財産の種類
 を定める必要がある(454条1項1号前段)。その際、当該株式会社の
 株式等は、配当財産から除かれる(454条1項1号括弧書き)。自己株式
 が除かれる財産に該当することは明らかであるが、その他のものが、
 社債・新株予約権を意味することは、107条2項2項ホ括弧書きに
 よって明らかになる。

   したがって、当該会社の株式、新株予約権または社債を配当財産と
 するこたとができるとするイは、明らかに誤りである。

   あっさりとしたもので、ここで、イ・オが誤りで4が正解であることが
 確定する。括弧の3連続で決まりといったところか。
  なお、「新株予約権」「社債」については、第52回において説明する。

 あとの残りの肢が正しいことを追認する作業になるが、以降、順次説明
 する。

 (2)以上述べたとおり、剰余金配当は原則として、株主総会の権限で
 あるが、会計監査人設置会社かつ監査役設置会社および委員会設置会社
 では、一定の要件に該当し、定款で特例を設ければ、取締役会の権限と
 することが認められる。459条に定めがあるが、ここでは詳しく説明
 しない。

 (3)(2)の特例を設けていない会社であっても、取締役会設置会社
 は、一事業年度の途中で1回に限り取締役会の決議によって剰余金の
 配当(金銭配当に限る)をすることができる旨を定款で定めることが
 できる(神田会社法・454条5項)。

    これが、肢ウに記された中間配当である。本肢は正しい。

 (4)最後に剰余金配当の要件を示す(神田会社法)

   まず、第1に、会社の純資産額が300万円を下回る場合には、配当
 できない(458条)。

  これは、肢エ記載のとおりであり、この肢は正しい。
 
   第2に、配当(について)は、会社法は「分配可能額」を算出し、その
 限度内でのみ株主への配当およびその他の剰余金分配を認める(461条)。

  肢アは、当該461条本文をそのまま引用しているので、この肢も
  正しい。

   第3に、配当をする場合には、法務省令で定めるところにより、配当
 により減少する剰余金の額の10分の1を資本準備金または利益準備金と
 して積み立てなければならない(445条4項)。

  以上、やはりイ・オが誤りで、正解は4である。

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第49回 】★      
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 2009/8/12


             
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【テーマ】株式買取請求権
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 平成19年度過去問・問題37

   株式買取請求権に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているもの
 の組合わせはどれか。

 ア 単元未満株式を有する者は、投下資本の回収を保証するため、いつ
   でも会社に対して単元未満株式の買取りを請求できる。

 イ 議決制限株式を発行する旨の定款変更決議に反対する株主は、株式
  買取請求権を行使することができる。

 ウ 株主総会決議に反対する株主が買取請求権を行使するには、原則
   として、その決議に先立ち反対の旨を会社に通知し、かつ、その
   その総会のおいて反対しなければならない。

 エ 株式の買取りを会社に対して請求した株主であっても、会社の承諾
   があれば、買取請求を撤回することができる。

 オ 合併承認決議に反対する株主からの買取請求により支払った金額が
   分配可能額を超えた場合には、取締役はその超過額について責任を
   負う。

 1 ア・ウ

 2 ア・オ

 3 イ・エ

 4 イ・オ

 5 ウ・エ
 

  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ▽ 参考書籍

 会社法 神田 秀樹 著 ・弘文堂   リーガルマインド 会社法
 
  弥永真生著 著・有斐閣


 アについて

   単元株制度とは、株式の一定数をまとめたものを1単元とし、株主の
 議決権は1単元に1個とする制度である(188条1項)。
 
 沿革

  この制度は、平成13年商法改正により創設されたものであり、現在
 の会社法にも引き継がれている。平成13年以前は、単位株制度が採用
 されていたが、その形の変わったものが、この単元株制度であるという
 認識があればよいであろう。

 実益

  1株に1議決権を与えるのが原則であるが、そうすると、株主の招集
 手続等会社の株主管理費用が膨大になるため、この制度が採用されて
 いるのである。1番簡単なのは、ひとまとめにした1単元を1株と
 すればよいが、これもまた、厄介な株式併合手続を伴うため、この
 制度の創設に至ったのである。
 

 本肢への接近

  たとえば、1,000株をひとまとめにして1単元として、1議決権
 を与えることにすれば、200株の株主は、単元未満株主として、議決
 権を行使できない(189条1項)。しかし、単元未満株式を有する者の
 投下資本の回収については、最大限保証されなくてはならない。
   平たく言えば、勝手に会社の都合で議決権を奪ったのであるから、
 つべこべ言わず、単元未満株式を買い取れといえなくてはおかしい。
 以上の現状認識があれば、本肢が正しいことは、見えてくるのである。

 本肢の解答(条文による追認)

   192条1項によれば、本肢のとおり、単元未満株主の会社に対する
 株式買取り請求が認められている。しかし、もっと、突っ込んで考えると、
 本肢のいうように、「いつでも」でもできるのか。189条2項4号に
 注目。当該買取を請求する権利を会社は、定款の規定によっても奪うこと
 はできないのである。したがって、「いつでも」できるのである。
 本肢は正しい。

 関連事項

 1 この単元株制度を設けることは、会社の任意であって、188条1項
  も「定款で定めることができる」と規定している。
 2 単元未満株主の自益権(会社から直接経済的な利益を受けることを
  目的とする権利)は保証されなくてはならないので、当該買取請求権
  を含めこれら権利を定款で奪うことができないことに注意(189条2項)。


 イについて

  1 議決権制限権株式を発行する旨の定款変更決議について。
   
   議決権制限(種類)株式とは、株主総会の全部または一部の事項に
  ついて議決権を行使することができない株式をいう(108条1項・3号)。
    議決権制限株式は、配当等に期待し議決権の行使には関心のない
   ような株主のニーズにこたえた制度である(神田会社法)。
    そのような議決権制限株式を発行するには、発行可能種類株式
     総数等を定款で定めなければならない(108条2項3号)。
       したがって、議決権制限株式を発行するには、定款の変更を
   要する。
 
 2  反対株主の株式買取請求
     
   定款の変更には株主総会の特別決議を要する(466条・309条2項11号)。
  株主総会決議の場合、一定の基礎的変更の場合に、多数決で決議が成立
    したときには、反対株主に、投下資本を回収して経済的救済を与える
  ため、会社に対して その所有する株式を公正な価格で買い取ることを
    請求する権利が認められる(神田会社法)。しかし、条文上、議決権制限
  株式を発行する旨の定款決議に反対する株主には、株式買取請求権は
    認められていない(116条1項のなかには、108条1項3号に掲げる事項に
  ついての定めを設ける定款の変更をする場合は入っていない)。
   したがって、本肢は誤りである。
   以上に対して、株式譲渡制限の定めを設ける定款変更決議の場合には、
    反対株主の株式買取請求が認められていることに注意せよ(116条1項
  1号・116条1項2号前段)。さらに、当該株主総会の決議要件は、厳格な
  特殊決議である。(309条3項1号)である。

  3 全体的考察
   
   全体的には条文に忠実に解説したので、難しく思われたかもしれ
    ないが、 以下のとおり覚えておけばよいであろう。

   議決権制限株式については、309条2項(11号)の特別決議。
   反対株主の買取請求なし。
    
   株式譲渡制限株式については、309条3項の厳格な特殊決議。
   反対株主の買取請求あり。

  4 関連事項

   株主総会決議の場合、反対株主の株式買取請求権が認められる主
    だった場合を列挙しておく。
   前記株式譲渡制限のほか、1事業の全部または重要な一部の譲渡
  等の決議、2合併の決議、3新設分割・吸収分割の決議、5株式交換・
    株式移転の決議等の場合。

 ウについて

  株主総会決議に反対の株主の株式買取請求権の行使要件は、イ・4
  いずれの場合も共通である。ここでは、株式譲渡制限の定めを設ける
 定款変更決議を例にとる。116条1項1号・同2号前段の定款変更
  決議に反対する株主 は、1総会前に会社に反対の意思を表示し、
 2総会で反対することが必要である(116条2項1号イ)。しかし、
  議決権を行使できない株主は1・2は不要である(116条2項ロ)。
 したがって、原則として、1・2の行為を要するとするウの肢は正しい。

   

 エについて

   本肢では、株式の買取請求とあるだけで、ア・イ・ウのように限定がない。
  株式買取請求が認められるのは、アの単元未満株式の場合、イ・ウの株主
 総会の決議の場合、そのほかに、「略式事業譲渡・略式合併等の場合と簡易
 事業全部の譲受け・簡易合併等の場合には、総会決議は不要であるが、反対
 する株主にはやはり株式買取請求権が認められる。」
  その手続面では、三者は共通するところがあり、いずれにおいても、本肢
 のような撤回を許す規定がある(116条6項・192条3項・469条6項)。

 オについて

  本肢は、重要な事項ではあるが、あらかじめ知識の蓄積がないと
 太刀打ちできない。ア・イ・ウ・エで勝負すべきか。
  ここでは、順次関連事項も含めて解説する(神田会社法参照)
  
 1 会社の合併とは、2つ以上の会社が契約によって一つの会社に合体
  することである。合併には、吸収合併(2条27号)と新設合併(2条28号)
  がある。
 2 合併にあたっては、株主総会の承認を要し(吸収合併・783条1項・
    795条1項 新設合併・804条1項)、合併に反対する株主には、株式買取
  請求権 がある(785条1項・797条1項・806条)。
 3 本肢にいう分配可能額についての規定(461条2項)は、複雑で細かい
    ので、ここでは、株式会社が株主に対して交付する金銭等につき、
  分配可能額を超えた場合、剰余金の違法分配になり、取締役の責任が
    認められるということが分かっていればよい(461条・462条)。
 4 株式買取行使の場合には、464条に特別の規定を設けて、取締役の
  超過額の支払い責任を規定している。株主の株式買取請求に応じて、
  株式会社が自己株式を取得すると言うのは、その対価としての金銭が
    会社 から流出することになるので、分配可能額の規制を受けること
  になる。
  5 しかし、464条によると、116条1項に規定される株式譲渡制限
    の定めを設ける定款の変更をする場合における自己株式の取得にしか適用
  されない。したがって、合併承認決議にも464条の責任を認める本肢
    は誤りである。本解説について、合併には464条が不適用であること
    の記述にとどめれば、簡単であったが、この際、最少限度の把握すべき
    要点を記した。
  6 なお、合併等における株式買取請求による自己株式の取得は、分配
     可能額を超えたとしても、464条の責任を負わないのと同時に 自己
     株式の取得そのものも有効であることにも注意せよ。

  本問は、イとオが誤りであるから、4が正解である。


 
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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第47回 】★      
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 2009/8/4


             
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【テーマ】株式会社の機関
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 平成20年度過去問・問題37

   会社法上の公開会社であって取締役会設置会社の代表取締役の権限
 に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

 ア 取締役会は3ケ月に1回以上招集しなければならないが、その
  招集権者を代表取締役とすることができる。

 イ 取締役の職務の執行が法令および定款に適合するための体制
   (いわゆる内部統制システム)の整備については、代表取締役が
   決定する。

 ウ 代表取締役は、会社の業務に関する一切の裁判上の権限を有する
  るため、取締役の義務違反により会社に損害が生じた場合に、当該
    取締役に対する責任追及のための訴訟を提起する。
 
 エ 代表取締役は、取締役会決議に基づいて、代表権の一部を他の
   取締役に移譲することができる。

 オ 取締役会は、法定事項や重要な業務執行について決定権限を有
   するが、それ以外については、代表取締役に、業務執行の決定を
   委任することができる。

 1 ア・ウ

 2 ア・オ

 3 イ・エ

 4 イ・オ

 5 ウ・エ

 
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■ 解説
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 ▽ 参考書籍

 会社法 神田 秀樹 著 ・弘文堂   リーガルマインド 会社法
 
  弥永真生著 著・有斐閣


 ○  最初に冒頭の設問に「会社法上の公開会社であって取締役会設置
   会社の代表取締役の権限」とある点が問題になる。
   公開会社はすべてにおいて、取締役会が必要である(327条1項1号)。
   しかし、非公開会社においても、任意に取締役会を置くことができる
  (326条2号)。その場合と公開会社の場合とで、代表取締役の権限に
   差異があるとは思われない。その点は、知識として、認識しておいた
   方がよいと思う。

 ○  第1コース第30号【問題2】肢1解説において、説明したが、
   公開会社(2条5号)とは、全部株式譲渡制限会社以外の会社である。
   つまり、一部の種類の株式についてだけ譲渡制限がある会社も公開
   会社となる。しかし、次のような指摘がある。「・・一部の種類の
   株式にだけ譲渡制限がある会社はこれまで存在せず、会社法のもとで
   新しく認められるに至ったものなので、特別な場合を除いてそのような
   会社はあまり登場しないとも推測される。したがって、当面は、公開
   会社とは株式譲渡制限がない会社と考えておけばよい。」(神田・
   会社法入門・岩波新書)

 ○ 前記解説欄において指摘したとおり、取締役会設置会社では、取締役
   は3名以上であることを要する(331条4項)。それ以外は、一人又は
   2人以上である(326条1項)。


  
 アについて

   これは、すこし難しい。「取締役会は常設の機関ではなく、必要に応じ
 て開催される」(神田会社法)という固定観念があると、363条2項
 の条文に気がつき難い。これに気づいたとしても、報告だから、一々招集
 する必要はないとも考えられるが、372条2項により、この報告のため
 の取締役会の開催を省略することができないとされる(リーガル)。
   したがって、3ケ月に1回以上招集しなければならないことになる。
   このように考えると、細かい知識を要求されているようであるが、他の
 肢との比較により、この条文の存在に気づけば、おぼろげながら、定期的
 に 開催が要求されているのだと考えが及べばよいことになる。
  したがって、本肢前段は正しい。
   なお、この際、1点、指摘しておきたい。それは、取締役会は、取締役
 の職務執行を監督する権限を有する(362条2項2号)が、当該報告は、
 取締役会 の監督機能の実効性を確保するためである(リーガル)。
 なるほど、 だから、 定期的招集なのかとここでも納得がゆく。
 なお、ここでいう、取締役は、363条1項にいう、代表取締役および
 業務執行取締役である。
 
  後段も正しい。取締役会の招集権は、原則として、個々の取締役にある
(366条本文)。ただし、招集権者である取締役を定款又は取締役会で定める
 こともできる(366条ただし書き)。この特定の取締役を代表取締役とする
 ことができる。以上本肢は、全体として、正しい肢に該当する。

  なお、以下の2点に注意せよ。一つは、招集権者を特定したときでも、
 366条2項、3項の規定により、「それ以外の取締役も法定の要件に
 従って招集できる。」(神田会社法)
  もうひとつは、368条2項の規定に従い、その全員が同意すれば、
 招集手続を省略できることである。

 
 イについて

   本肢の「内部統制システムの整備」については、362条4項6号に
 規定がある。これは、「法律で取締役会で必ず決定しなければならない
 と定められている事項」に該当し、「定款によってもその決定を代表
 取締役にゆだねることはできない(362条本文)」(神田会社法)。
   本肢は、誤っている。

 ウについて

   前段については、349条4項に規定がある。しかし、会社・取締役
 間の訴訟は、その例外である。353条・364条に規定によれば、
 当該訴訟においては、本肢のような取締役会設置会社の場合、会社を
 代表する者は、株主総会で定めたときを除いて取締役会で定めることが
 できる。本肢は誤りである。

   なお、以下に注意。「ただし、監査役設置会社では監査役が代表し
 (386条1項)、委員会設置会社では監査委員会が選定する監査委員
 または取締役会が定める者が代表する(408条1項・2項)。」
 (神田会社法)

 エについて

   代表取締役の代表権は、会社の業務に関する包括的な権利であるから、
 その一部を他の取締役に移譲することは、法349条4項に反すると
 私は思う。誤りである。

 オについて

   イとも関連する。取締役会は、業務執行に関する意思決定を行う
 (362条2項1号)。そして、362条4項各号の法定事項は必ず取締
 役会で決定しなければならない。この決定権限のなかには、本肢が
 指摘するように、「具体的な法定事項のほか『重要な業務執行』を
 含む」(神田会社法)ことに注意する必要がある。
 「362条4項以外にも、会社法が取締役会の決議事項と定めて
 いる事項は多数ある。以上のような法定事項以外の事項についても
 取締役会で決定することはできるが(決定すれば代表取締役を拘束
 する)、取締役は招集によって会合する機関にすぎないため、
 それらの事項(日常的事項)の決定は代表取締役等に委譲されて
 いると考えられる」(神田会社法)。また、定款によって、法定
 事項以外を代表取締役にゆだねることもできる。以上のとおり、
 オは正しい。

 よって、正しいのは、アとオであり、正解は2である。
 

  
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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第46回 】★      
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 2009/7/29


             
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【テーマ】株式会社の機関等
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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  平成19年度・問題38

  株式会社の機関等に関する次の記述のうち、誤っているものは
 どれか。

 1 株主総会の招集手続および決議方法を調査するため、総会検査役
   が選任されることがある。
 
 2 取締役が6名以上で、1名以上の社外取締役がいる会社は、特別
  取締役を取締会決議で選定することができる。
 
 3 委員会設置会社の業務を執行し代表権を有する執行役は、指名
   委員会が指名する候補者の中から株主総会で選任される。
 
 4 会計参与は、会計監査人と異なる会社役員であり、取締役と共同
   して計算書類等を作成する。
 
 5 取締役会または監査役を設置していない株式会社も設立すること
   ができる。


 
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■ 解説
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 ▽ 参考書籍

 会社法 神田 秀樹 著 ・弘文堂   リーガルマインド 会社法
 
  弥永真生著 著・有斐閣


 △ 会社法については、制度なり機関の設けられた根拠について、考察
   しておくと、応用力がつき、本試験において、正解を導くための武器
   になり得るであろう。

  平成19年度過去問

 1について

   総会検査役の定めは、306条に規定がある。本肢は、306条1項
  の条文どおりであり、正しい。

  以下、今後のため、要点をかかげておく。

    総会検査役の設けられた根拠
      経営権に関する争いがあり、(株主)総会の混乱が予想される場合
  等に、総会の招集手続と決議方法の公正を調査し、決議の正否について
  の証拠を保全するために認められた制度である(神田会社法)。

     裁判所に対し、検査役の選任の申立てをなし得る者
       会社または少数株主である。306条2項以下に細かい規定が
  あるが、これは省いてもよいだろう。
   これは、要するに、少数株主の要件が定めてある。(飛ばしても
    よいが、 一応説明しておく)
   公開会社以外の会社の場合には、引き続き6箇月の保有期間要件は
  課されていない。
   総株主から除く株主として、取締役会設置会社以外では、完全無議
    決権株式を有する株主だけを対象にすればよい。
  (リーガル)
  注 以上の点にもそれぞれ理由があり、それは、教科書にも載ってい
  ないため、私なりに考察したが、深入りを避けるために省く。
   公開会社・取締役設置会社・完全無議決権株式の用語説明は、今後、
    これらが主題になった場合に譲る。

   その仕組み(これは、把握しておくべきであろう)

   検査役は、調査の結果を裁判所に報告し、裁判所は必要があれば
  改めて取締役に総会を招集させることができ、この総会で前の総会
 の手続の瑕疵が是正される。(307条1項1号の定めるところで
 あり、検査役制度の主題)

  307条1項2号は、「・・総会招集に多大な費用や時間を要する
 ことになるため、総会の招集を行わずに検査役の調査結果を開示する
 制度を認める必要がある」(リーガル)ために設けられ規定である。

   307条2項・3項は、取締役の開示・調査、報告義務である。


 2について

   特別取締役による取締役会決議の認められる要件は、373条1項
 1号・2号において、本肢のとおり規定されているので、正しい。

   以下に要点を記す。

  当該制度の概要
     この制度は、取締役会のメンバーの一部を特別取締役としてあら
   かじめ選定しておき、取締役会で決定すべき事項のうちで迅速な
   意思決定が必要と考えられる重要な財産の処分・譲受けと多額の
   借財(362条4項1号 2号)について特別取締役により決議し、それ
   を取締役会決議とすることを認める制度である。(神田会社法)

   
  その要件等373条1項の解釈
     369条1項は、通常の取締役会決議であるから、その例外が
    認められる。取締役会設置会社は、2条7号に規定されている。
  通常、定款の定めによって置かれる(326条2項)。取締役会決議
    が問題になっているから、ここでは、取締役会設置会社が対象に
  なる。
     1号が要件になっているのは、迅速な意思決定が必要なのは、
  大規模な会社であるためである。
   2号については、意志決定が特別取締役に委任されるため、社外
    取締役が1名以上の会社とすることによって、取締役会の監督機能
    を強化する必要がある。ただし、特別取締役は、社外取締役である
    必要はない。(神田会社法)

  注 社外取締役の概念を把握しておく必要がある。2条15号が
   規定するところである。現在及び過去において、子会社を含めて
   その会社の一定の役員等になっていない者である。執行役は、
      肢3で登場する。問題になるのは、業務執行取締役である。
   363条1項によれば、取締役会設置会社において、1号の代表
   取締役の外に2号に選定業務執行取締役(取締役会において、
   業務執行取締役として選定された者)が掲げられている。これら
      以外の取締役に業務執行権限を付与することも禁止されるわけ
   ではない。(神田会社法)。社外取締役の関係では、この最後の者
   も、除かれるのである(2条15号 ()内)。
    
    373条2項・3項
      2項は、招集手続についての条文引用について、「特別取締役」に
    合わせたに過ぎないが、複雑になる。それならば、言い換えをしないで、
  修正後の条文を載せてもらえば、すっきりすると思うが、それは、駄目
    なのだろうか。
   3項は、取締役会の監督機能の確保のため報告させることにしたもの
    である。

 3について

   委員会設置会社の執行役は、取締役会の決議によって選任される(402条
 2項)ので、本肢は誤りである。

   要点

   委員会設置会社の概要(神田会社法)
    
   取締役会と会計監査人を置く会社は、定款により委員会設置会社
    となることを選択することができる。条文としては、327条1項
  3号。327条5項。326条2項。
   
      必要な機関としては、1指名委員会 2監査委員会 3報酬委員会
   (2条 12号)4一人または数人の執行役である。なお、当該委員会では、
   監査委員会がその役割を果たすので、監査役を置くことはできない
  (327条4項)。

      取締役会の役割は、基本的事項の決定と委員会メンバーおよび執行役
  の選任等の監督機能が中心。各委員会(社外取締役がメンバーの過半数
  を要す  ≪400条3項≫)が監査・監督というガバナンスの重要な地位を
    占める。

      監督と執行が制度的に分離している。業務執行は執行役が担当し、
  会社を代表する者も代表執行役である。業務の意思決定も大幅に
    執行役に委ねられる。

 
   執行役
     当該会社と執行役の関係は委任関係である(402条3項)。
   執行役は、広汎な範囲の業務執行を行う(418条)。
   本肢の主題である選任は、取締役会の選任による(402条・なお1項も)。
 
  各委員会
  404条以下に規定があるが、本肢に現れた指名委員会の権限は、
 404条1項 のとおりであり、執行役候補者の指名は、真っ赤な嘘で
 あり、かすってもいない。

 4について

  会計参与は、取締役(委員会設置会社では執行役)と共同して、計算
 書類等を作成する者である。(374条前段・6項)。
   会計監査人は、計算書類等の監査(会計監査)をする者である(396条
 1項前段)。以上本肢のとおりであり、正しい。

  関連事項

     会計参与の設置(2条8号)は、任意である(326条2項)。これに
   対し、大会社(2条6号)および委員会設置会社は、会計監査人を
  置くことが強制される(327条5項・328条・2条11号後段はその
   強制を示す)。

 5について

   すべての株式会社は、株主総会以外の機関として、取締役を置かなく
 てはならない(326条1項)。わたし達が実務上よく扱うケースとして、
 一人会社がある。株主が一人で、その者が取締役になる場合である。
   まさに個人万能を示す好例ではある。原則として、取締役会・
 監査役の設置は任意である(326条2項)。現在の会社法のもとでは、
 小規模ないし零細企業が大多数を占める状況下、圧倒的に、株主と
 取締役だけの会社が多い。本肢は、正しい。

   関連事項

     一人会社の株主総会について、以下の判例がある。
     株主が1人の会社では、その者が望めば、招集手続は不要でいつでも
   どこでも株主総会を開催できると解すべきである(最判昭和46・6・24)

     少しややこしいが、取締役会設置会社(2条7号)と監査役設置会社
 (2条9号)については、以下の点に注意する必要がある。
  
     公開会社(全部株式譲渡制限のない会社または一部株式譲渡制限の
   ない会社つまり全部株式譲渡制限会社以外の会社・2条5項)は、
   取締役 会の設置が義務づけられている(327条1項1号)。
  
   委員会設置会社が、取締役会の設置を義務づけられているのは、
  前述したとおりである(327条1項3号)。

   取締役会設置会社は、監査役の設置が義務づけられている(327条
 2項)。ただ、委員会設置会社は取締役会設置会社であるが、前述した
  とおり、監査役を置いてはならない(327条2項()内。327条4項)。
   ただし、取締役会設置会社が、公開会社でなく、会計参与を置いて
 いる場合には、監査役をおかなくてもよい(327条2項ただし書き)。

     機関が交錯して、何とも複雑ですが、現行の会社法の機関設計の
 選択肢がこうなっている以上、あきらめるしかない。ただしこのあたりが、
  今後の本試験の射程距離になるのかどうかは、皆様の判断におまかせする。
   

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第42回 】★      
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 2009/7/16


             
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【テーマ】国家賠償法
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題・解説
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 ● 参考書籍

  行政法入門・藤田 宙靖  行政法読本・芝池 義一
 ともに有斐閣発行

 ● 国家賠償に関する過去問につき、各テーマごとに類似問題を掲げた。
   ○×で答えよ。(例により、一々出典を明らかにしない)。
 
 A 公権力の行使


 【問題】

 
 a群
 
 1 国家賠償法第1条に規定する「公権力の行使」は権力的な行政作用
   に限られ、公立学校における教師の教育活動は「公権力の行使」には
  当たらないとするのが判例の立場である。

 以下もすべて判例の立場からして○か×を問うもの。

 2 公立学校のプールにおける飛込みで事故が起きた場合、国家賠償法
   1条にいう「公権力の行使」とは、「行政庁の処分その他公権力の
  行使に当たる行為」を意味するから、国家賠償法1条は適用 されず、
    民法上の不法行為 として損害賠償を求めることになる。

 3 公立学校における教員の教育活動は、行政処分ではなく体罰等の
  事実行為であっても国家賠償法での公権力の行使にあたる。  

 4 国家賠償法における公権力の概念は非常に広く、法的行為のみならず、
  警察官による有形力の行使の行使等の事実行為をも対象とするが、教育 
  活動や公共施設管理などのサービス行政に関わる行為など民法709条
   の不法行為責任を問うことができる場合については、国家賠償法に基づ
  く責任をとうことはできない。

 b群

 1 国家賠償法第1条第1項に規定する「公権力の行使」は、行政作用に
   限られ、立法作用及び司法作用は含まれない。

 2 裁判官がした争訟の裁判については、当該裁判官の単なる過失では
  なく、違法又は不当な目的をもって裁判をしたなどの特別の事情が
  なければ国 の賠償責任の問題は生じないとするのが判例の立場で
  ある。

 以下もすべて判例の立場からして○か×を問うもの。

 3 国家賠償法は、国・公共団体の個別具体的な公権力の行使の行使に関
   する賠償責任であるから、執行権としての行政機関の行為が対象となる。
  これに対して、議会の立法は抽象的な法規範を定めるものであり、個別
   具体的に個人の権利を侵害するものではないので、そもそも国家賠償法
   に基づく賠償責任の対象とはならない。

 4 裁判官の裁判過程における行為は、司法作用にかかわる行為なので、
   「公権力の行使」には該当しない。

 5 国会議員の立法過程における行為は、国の統治作用にかかわる行為な
  ので、「公権力の行使」には該当しない。 

 c群
 
 以下すべて、判例の立場から○か×を問うもの。
 
 1 国家賠償法は国・公共団体の不法行為責任にかかる一般法であること
   から、国公立病院の医療過誤に関する責任も、民法709条以下の不法
   行為責任に関する法理は適用されることなく、国家賠償法第1条が適用
   される。

 2 国家公務員の定期健康診断における国嘱託の保健所勤務医師による
   検診は、医師の一般的診断行為と異ならない行為なので、「公権力の
   行使」には該当しない。

 3 国による国民健康保険上の被保険者資格の基準に関する通知の発出
   は、行政組織内部の行為なので、「公権力の行使」には該当しない。

 4 勾留されている患者に対して拘置所職員たる医師が行う医療行為は、
  部分社会内部の行為なので、「公権力の行使」には該当しない。

 

 【解説】

 Aa群

 1について

  国公立学校での学校事故については、最高裁判所は、そこでの教育
 活動を「公権力の行使」と見て、国家賠償法1条1項の適用があると
 している。昭和62年2月6日判決は、理由を示していないが、このこと
 をきっぱりと明言しているので、おそらく国公立学校での学校事故には
 同条1項を適用する実務は今後もかわらないであろう(但し、学校事故
 のうち物的設備の欠陥による事故については、同法2条が適用される)。
(読本) ×

 2について

  1と類似 ×

 3について

  1と2に類似 ○

 4について

   前述のとおり、教育活動のような非権力的公行政は「公権力の行使」と
 解する(広義説)のが最高裁の立場。×


 
 Ab群

 1について

  立法権および司法権の行使も国家賠償法1条1項の「公権力の行使」に
 当たる。×

 2について

  判例の立場は、裁判官に対し国家賠償責任が肯定されるには、本肢に
 いう「特別の事情」を要する(最判昭57・3・12・・H21模範六法383頁 
 42)のであり、○

 3について

 1で述べたとおり、立法権も賠償責任の対象になるので、×。
 しかし、例外的に、国会議員の立法行為等が、違法の評価を受けること
 に注意(最大判平17・9・14…H21模六 382頁 5)。

 4・5について

 これらは、いずれも、平成20年度の肢であるが、それ以前の過去問
 1・2・3により、いずれも×は明白である。

 
 Ac群

 1について

  国公立病院での医療事故については、民法の規定を適用するという
 実務が、最高裁判所昭和36年2月16日判決=東大病院梅毒輸血事件以来
 定着している(但し、予防接種被害については、国家賠償法1条1項が
 適用されている。東京高等裁判所平成4年12月18日判決)。(読本)
   以上により×。

 2・3・4について

   これらは、難問であると思えば、いずれも平成20年度の同一問題
 の中の肢三つである。行政書士合格講座>行政書士試験の過去問分析
 のサイトを引くと、2は、最判昭和57・4・1 3は、最判平成16・1
 ・15 4は、最判平成17・12.8の判決文がその出典であるとのことで
 る。しかし、いずれも、模範六法にも掲載されてない。
   したがって、無数にある判決の中で、これらの判決について、受験
 前に頭に入れておくことは、至難の技である。この肢の中に○がある
 として、どれを○にすべきかで考えてみよう。
   1で見たとおり、国公立病院での医療事故については、民法の規定
 を適用するという実務が定着している。これに準じて、2が○。
 そのとおりです!! したがって、3 4は×。

   3については、「公表が『公権力の行使』に当たるとして国家賠償法
 1条1項を適用する裁判例もあるが、民法を適用する裁判例もある」
 (読本)
   そして、3は、実は、「公権力の行使」には該当しないとする判決
 であるが、その理由とする「行政組織内部の行為なので」というところ
 が×だ!!!というのである。(前掲サイト解説参照)。当該実務の
 担当者が研究熱心で、この判決文を隅々まで読んでいたとして、
 初めて正解に達するという筋合いの問題だ。

 4については、拘置所職員たる医師による医療行為は、3と比較する
 と「公権力の行使」と見るのも自然である。

 

  
  B 公務員

 
 【問題】


 1 国家賠償法第1条第1項に規定する「公務員」は、国家公務員法又は
   地方公務員法に基づく公務員に限られ、公庫、公団などのいわゆる特殊
   法人の職員は含まれない。

 2は、判例に照らした場合○か×で答えよ
 
 2 国家賠償法の責任は、公務員の違法な公権力の行使についての制度で
  あることから、行為者は国家公務員法もしくは地方公務員法上の常勤の
   公務員であることを要する。これに対し、一時的に公務を行う非常勤
   公務員の行為に起因する損害は、民法の不法行為責任の対象となり、
   国家賠償責任の対象外である。  

 
 【解説】

  国家賠償法1条1項を見ると、加害者が正規の公務員であることが
 公権力行使責任が認められるための要件であるように見える。しかし、
 裁判例ではそうは考えられていない。加害行為が行政の仕事、つまり
 公務であればよいと考えることができる。(読本)
   したがって、特殊法人の職員であっても、公務に従事していれば、
 法1条1条1項の「公務員」に該当する。1は×。
   以上の趣旨に従えば、判例は、一時的に公務を行う非常勤公務員
 を法1条の「公務員」とみるので、この者の行為に起因する損害は、
 国家賠償責任の対象である。2も×。


  C 公務関連行為・外形主義

 
 【問題】


 1 国家賠償法第1条第1項に規定する「公務員がその職務を行うに
  ついて」には、公務員が私人として行った行為は、それが客観的に
  みて職務行為の外形を備えている場合には、含まれる。 

  以下、判例に照らした場合、○か×で答えよ。

 2 非番の警察官が、管轄区域外で犯罪を行った場合でも、それが職務
   執行に名を借りて行ったものである以上、当該警察官の行為は国家賠
   償法第1条にいう職務の遂行につきなされた違法な公権力の行使であり、
   当該警察官の所属する地方公共団体が賠償責任を負う。95−5

 3 職務を行うについてという要件の範囲は非常に広く、勤務時間外に
  行われた、公共団体にとってはおよそ直接監督することのできない、
   職務とは 関わりのない行為でも、それが制服を着用していたり、公務
  であることを騙ったりして、外見上職務であるように見えれば、国家
   賠償法上の職務関連行為として認定されることがある。

 4  公務員が主観的には職務権限行使の意思を有しなかったとしても、
  客観的に職務行為の外形を備える行為であれば、国家賠償法第1条
   の職務を行うについてという要件をみたし、損害が発生している場合
   には、国または公共団体は損害賠償責任を負担する。

 5 警察官でない者が、公務執行中の警察官であるかのような外観を
   装い、 他人を殺傷した場合、当該被害者ないしその遺族は、いわゆる
   外形理論 により国又は公共団体に対して国家賠償法1条に基づき損害
   賠償を求めることができる。

 
 【解説】

  国家賠償法1条1項の「公務員が、その職務を行うについて」という
 規定は、加害行為が厳密に公務そのものに該当しない場合であっても公務
 との間に一定の関連性を持つ行為(公務関連行為)による被害についても
 公権力行使責任が認められるという意味である。(読本)
   最高裁判所はその適用の場面として、「客観的に職務執行の外形をそな
 える行為」について、国・公共団体の賠償責任を認めるという外形主義の
 考え方をとる。(読本)判例としては、最判昭31・11・30・・(H21模
 六法382頁 20)がある。
  
   したがって、1は○。2も外形主義の考え方であって、○。3も○。
 4も○。

   この外形主義による国・公共団体の賠償責任が認められるためには、
 加害公務員が正規の公務員でなければならないし、また加害行為はその
 公務員の職務の範囲内でなければならないとするのが定説である。
  したがって、正規の公務員でない者が警察官を装って私人に損害を
 与えても、都道府県の責任は認められない。(読本)
   5は、この場合に該当するので、外形理論により、損害賠償を求める
 ことはできない。×。

  また公務員ではあるが警察官ではない者が警察官を装って損害を与えた
 場合も都道府県の責任は認められないことにも注意せよ(読本)。

 

 D  国賠違法と取消訴訟

 

 【問題】


 1 違法な行政庁の処分に対し国家賠償請求訴訟を提起して勝訴する
   ため には、あらかじめ当該処分に対して取消訴訟または無効確認
   訴訟を提起し、取消しないし無効確認の判決を得て、当該処分が
   違法であることを確定しておかなければならない。

 2 行政事件訴訟法は、行政庁が取消訴訟の対象となる処分をする
  場合には、当該処分の相手方に対し、取消訴訟と併せて国家賠償法
  1条に基づいて国家賠償訴訟を提起することができる旨教示する義務
  を規定している。   

 3は、判例に照らして、○か×で答えよ。

 3 行政処分の違法性を理由とする国家賠償法上の訴えを提起するに
   あたって は、その前提としてあらかじめその行政処分の取消または
   無効確認の判決を得ておく必要はない。   

 
 【解説】

  1と3については、本講座では何度もとりあげている。基本は、行政
 処分の公定力が働く範囲を拡大させないためという目的があるが、再説
 しない。第2コース第36回A肢5解説・参照。
   1が×であり、3が○である。なお、1は直近の平成20年度の肢
 である。

  2については、行政事件訴訟法が定めているのは、取消訴訟等の提起
 に関する事項の教示であって、国家賠償法の提起の教示は含まれていない。
 (行政事件訴訟法46条)。考えてみると、行政事件訴訟法の定めである
 から、自らの法律によって規定される訴訟類型に限るのは当然であろう。
  惑はされてはならない。×
  ちなみに、本肢も20年度の肢である。
 


  E 加害公務員の特定の要否

 
 【問題】


 以下、判例に照らして、○か×で答えよ。

 1 国家賠償法第1条の責任は、公務員の違法な公権力の行使があった
   場合について国・公共団体が代位する責任であることから、違法な
   公権力の行使がなされたとしても、その公権力の行使者たる公務員
   が特定されない場合には、国家賠償責任が成立することはない。

 2 国家賠償法1条に定める公共団体の責任とは、公共団体自体の責任
  を問うものではなく、加害公務員の責任を代位するといういわゆる
 代位責任であるから、具体的に損害を与えた加害公務員の特定が常に
  必要とされる。


 
 【解説】

  「代置責任説は、公権力行使責任を、加害者である公務員が負うべき
 賠償責任を国・公共団体が代位したものと捉える。この説によると、国・
 公共団体の賠償責任が認められるためには、加害公務員を特定しその
 公務員に過失があったことを証明する必要があると言えそうである。
   他方、自己責任説(公権力責任を本来的に国・公共団体が負うべき
 責任として理解しようとする説)に立つとこの必要性はない。ここに、
 代置責任説と自己責任説の対立の一つの意味があると言える。
   もっとも、今日では、・・過失は客観的に捉えられ、組織過失・・が
 認められるようになっているので、代位責任説に立っても、加害公務員
 を特定してその公務員に過失があったことを証明する必要はないだろう。
 (読本)。判例も同様の立場に立つ。最判昭57・4・1・(H21模六385頁 
  95)

   1・2は、いずれも、代位責任説に引っ張られたたものであり、判例
 では加害公務員の特定を要しないとするから、1・2とも×。

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第41回 】★      
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 2009/7/9


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
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【テーマ】行政事件訴訟法
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 A  平成17年度過去問・問題16

  平成16年の行政事件訴訟法改正では、行政訴訟における国民の救済
 範囲の拡大と国民にとっての利用しやすさの増進がはかられた。次の
 記述のうち、改正法でのなお実現されなかったものはどれか。


 1  従来、抗告訴訟における被告は行政庁とされていたが、改正後
   は、国家賠償法と同様に、国または公共団体を被告とすることに
   なった。 

 2  従来、無名抗告訴訟の一種として位置づけられたてきた義務付け
   訴訟や差止訴訟が、改正後は法定抗告訴訟とされたのにともない、
   仮の義務付けおよび仮の差止めの制度が設けられた。

 3  従来、きわめて厳格であった「回復の困難な損害を避けるため緊急
   の必要があるとき」という執行停止の要件が「重大な損害を避ける
   ため緊急の必要があるとき」とされ、改正前に比べ緩和された。

 4  従来、原告適格の要件としての「法律上の利益」が厳格に解釈され
   て いたが、当該法令と目的を共通にする関係法令も参酌すべきこと
  などとされ、その拡大がはかられた。
 
 5  従来、厳格に解釈されてきた取消訴訟における処分性について、
   具体的な効果など諸事情を総合的に考慮し判断すべきとの解釈規定
  が加えられ、その拡大がはかられた。

 

 B  平成18年度・問題18

  平成16年の行政事件訴訟法改正後の行政事件訴訟制度の記述として、
 正しいものはどれか。

 
1  従来、法令に基づく申請についてのみ認められていた不作為違法
   確認訴訟が、規制権限の不行使についても認められることになった。

 2  仮の義務付けまたは仮の差止めは、処分の執行停止と同様の機能を
   有するので、内閣総理大臣の異議の制度が準用されている。

 3 処分が、国または公共団体に所属しない行政庁によって行われた
   場合、 当該処分の取消しを求める訴えは、処分取消訴訟に替わり、
  民事訴訟によることとなった。

 4  法令に基づく申請に対して相当の期間内に何らの処分もなされない
  場合は、原告の判断により、不作為違法確認訴訟または義務付け
    訴訟のいずれかを選択して提起することができる。

 5  処分もしくは裁決の存否またはその効力の有無を確認する判決
 (無効等の確認判決)は、第三者に対しても効力を有することが
  明文上認められた。
 

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■ 解説
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 ▼ 参考書籍は、第2コース第40回に掲載した。

 ▼ 今回、A・Bで取り上げたのは、Aでいう「救済範囲の拡大と利用
  しやすさの増進」のため、平成16年に改正(同17年4月1日から
   施行)された行政事件訴訟法である。これからもここに焦点を当てた
   出題は当然予想されるのであり、この際、当該改正の内容を把握して
   おくべきである。

 Aの17年度過去問

 1について

  これは、被告適格の問題である。
  改正された行政事件訴訟法11条1項によると、処分または裁決をした
 行政庁が国または公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、それぞれ、
 国またはその公共団体を被告として提起しなければならないことになって
 いるので、正しい。なお、この11条の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟
 にも適用されることになっていることに注意せよ!!(同法38条1項)。
 内容を明確にするため、「入門」から次の文章を引用する。
 
 「民事訴訟法の原則からいえば、これはあたりまえのことですが、じつは
 今回の法改正の以前においては、『処分の取消しの訴えは、処分をした
 行政庁を、裁決の取消しの訴えは、裁決をした行政庁を被告として提起
 しなければならない」とされてたのでした(改正前11条)。・・
 『行政庁』は、『処分または裁決をおこなう権限を与えられている行政
 機関』のことだ、と考えておけばよいでしょう。こうして旧法のもとでは、
 たとえば、課税処分の取消訴訟だったら、『国』を相手として訴えを起こ
 すのではなく、その課税処分をした税務署長を相手としなければならない。
 運転免許取消処分の取消訴訟だったら、知事ではなくて、免許を取り消し
 た公安委員会を被告として訴えを起こさなければならない、という状態
 でした。これは大変まぎらわしいことですが、ここのところをまちがえ
 ると、それだけで訴えは門前払い(却下)になってしまったわけで、
 国民の権利救済制度という見地からは、大きな問題がありました。そこで、
 今回の法改正では、これを改めて、民事訴訟の原則に戻すことにした・・」
 本肢では、国家賠償法が挙がっているが、これは民事訴訟法の適用を受け
 るので、以上述べたことは、国家賠償法にも妥当する。
  なお、「入門」による次の指摘にも注意せよ。
  「国または公共団体が被告になる場合でも、訴訟において、実質的には
 行政庁が主体となって活動することとなっています(法11条4項〜6項を
 参照)。」
 

 2について

  法律上明文で定められていないが、従来から理論的に可能であると
 考えられてきた「無名抗告訴訟」が当該法改正によって、法律上正面
 から認められた(法3条6号の「義務付け訴訟」・法3条7号の「差
 し止め訴訟」)。これに伴い、37条の5により「仮の義務付け及び
 仮の差し止め」も認められることになった。注1・2

 正しい。

 注1・「義務付け訴訟」の概念については、第2コース第36回A・
        肢3の解説で述べたので、再説しない。また、「差し止め
        訴訟」については、同 肢2で述べた。
 注2・「仮の義務付け等」とは、仮の処置であって、緊急性など
       厳格な要件のもとに、裁判所は、本案の審理の前に行政庁に
    仮の義務付けを命じ得るとしたものである。

 3について
 
  法25条1項は、取消訴訟につき、執行不停止原則を定めているが、
 同法2項において、取消訴訟のほかに、特別に「執行停止の申立」を
 すれば、例外的に裁判所がこれを認めることがある。この執行停止の
 要件が当該改正により、本肢のとおり、緩和された。

 正しい。

 
 4について

  法9条1項に原告適格の規定があり、その要件としての「法律上の
 利益」については、最高裁判所の判例により緩められてきた。当該
 改正によって、法9条2項が、考慮事項として、最高裁の判例が示
 した内容をとりいれた。そこでは、「関係法令の参酌」も規定され
 た(入門)。注

 正しい。

 注・ここで規定されているのは、第三者が訴えを起こす場合である。
  処分の相手方自身が起こす場合には、取消しについて原則的に
    「法律上の利益」があるのは、処分が不利益なものである限り
  当然のことだからである(入門)。

 5について

  取消訴訟における処分性についての本肢の見解は、最高裁判所の
 判例の立場であるが、これは、4と異なって、当該法改正により
 解釈規定として加えられたという事実はない。

  したがって、平成16年の改正法で実現されていないので、これが
 正解である。

 
 Bの18年度過去問

 
 1について

  法3条5項によれば、不作為違法確認訴訟は、「法令に基づく申請」
 のみにしか認められていない。規制権限の不行使にまで拡大されたと
 いう事実はない。注

 正しくない。

 注 規制権限の不行使についての不作為違法確認訴訟の内容は、第2
   コース第36回A・肢1の解説参照。

 2について

  内閣総理大臣の異議といえば、私には、懐かしい。時は、昭和40年
 代後半。若かった私は、法務省勤務で、当該業務の一端に関わった。
  学生のデモで国会周辺が騒然となった時代。学生らは、東京都公安委
 員会に対し、デモの許可申請。不許可になる。そこで、彼らは、取消
 訴訟提起。同時に、不許可処分の執行停止の申立を行う。許可申請した
 デモの日時より遅い取消しでは無意味であるから、「回復の困難な損
 害を避けるため」(平成16年改正前の要件)処分の効力・執行の停止
 を申し立てる(法25条2項)。そこで、当該異議の登場。このデモの
 不許可を続行しなければ、国会周辺の治安は維持できない(法27条3項
 の「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれ」を理由にする)。この
 起案の作業が、法務省職員によって遂行されるのである。これは、デモ
 の開始前までに行われなくてはならないので、たいてい、徹夜作業だ
 った。この内閣総理大臣の異議があれば、執行停止をすることは
 できない(法27条4項)。
  それデモ、学生らは、デモを強行。そこで、治安当局は、当該異議
 を楯に、楯をもって無許可デモの取り締まり。騒然の度合の増大。
 その繰り返し。
  さて、本題。何らかの不許可処分のあった場合、仮の義務付けにより
 本案の審理なしで、許可を義務付けるのだから、不許可処分の執行停止
 と同様の機能を有する。また、本案の審理なしに、行政処分の差し止め
 が行われると、処分の執行停止の機能を有するというのは、もっと分か
 りやすい。そこで、当該異議の制度の登場となることは、前述したとおり。
 条文でいえば、法37条の5第4項による27条の準用である。
 平16年の改正により、仮の義務付けなどが認められたことにより、
 当該規定が設けられた。

 正しい。これが正解である。


 3について

  これは、被告適格に関するAの肢1と連動する。法11条1項では
 当該行政庁の所属する国または公共団体に被告適格があるが、本肢
 の場合には、11条2項により、当該行政庁を被告とする抗告訴訟
 を提起することになる。平成16年の改正により追加された条項で
 ある。

 したがって、本肢は正しくない。


 4について

 法3条6項2号の「申請型不作為」に対する義務付け訴訟にあっては、
 不作為違法確認訴訟も一緒に起こさなければならない(法37条の3第3項第
 1号)。これが16年改正法である。選択の問題ではない。詳しくは、第
 2コース第38回C肢2の解説参照。

 正しくない。


 5について

  本肢は、判決の第三者効の問題であって、訴訟法として、高度な
 テーマ。理論的には確認判決に第三者効はないといわれている。
  16年改正により、第三者効が明文化された事実はない。
   これについては、これ以上深入りする必要はない。

 正しくない。
 


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