━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第44回 】★      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
            
----------------------------------------------------------
 2009/7/21


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
----------------------------------------------------------
 
【テーマ】株式会社の設立
 

【目 次】問題・解説 
           
      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 問題
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 平成19年度過去問・問題36

   株式会社の設立に関するア〜オの記述のうち、正しいものの組合
 せはどれか。

 ア 会社の設立に際しては、発起設立または募集設立のいずれの
   方法による場合も、創立総会を開催しなければならない。

 イ 会社の設立に際して現物出資を行うことができるのは発起人
   のみであるが、財産引受については、発起人以外の者もその
   相手方となることができる。

 ウ 設立時募集株式の引受人が払込をせず、当該引受人が失権した
  場合には、発起人は、自らその株式を引き受けなければならない。

 エ 設立時取締役は、その選任の日から会社の設立の登記がなされる
   までの期間において、発起人に代わって設立中の会社のすべての
   業務を行う権限を有する。

 オ 会社の設立手続が行われたにもかかわらず会社が成立しなかった
   ときは、発起人は、連帯して、会社の設立に関してした行為について
  その責任を負い、会社の設立に関して支出した費用を負担する。 

  


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ▽ 参考書籍

 会社法 神田 秀樹 著 ・弘文堂   リーガルマインド 会社法
 
  弥永真生著 著・有斐閣


 アについて

   募集設立の場合においてのみ、創立総会を開催しなければならない。
 誤りである。

 その根拠等
 
  発起設立は、設立の企画者であり設立事務の執行者である発起人が
 設立の際に発行する株式(設立時発行株式)のすべてを引き受け、会
 社成立後の当初株主になる形態の設立方法(会社法25条1項1号)。

   募集設立は、発起人は設立の際に発行する株式の一部だけを引き受
 け、残りについては発起人以外の者に対して募集を行い、そのような
 発起人以外の者が株式の引受けを行い、発起人とそのような者とが会
 社成立後の当初株主になる設立方法(法25条1項2号)。
 (神田会社法)

   発起設立は、発起人の出資の履行(34条)後,発起人だけで設立時
 取締役等の選任を行い(38条以下)選任された設立時取締役等が、
 設立経過の調査を行う(46条・93条)。

   募集設立にあっては、発起人の出資履行(34条)・設立時募集株式
 の引受人による払込(63条)後、 創立総会(設立時株主≪設立時に
 株主となる株式 引受人≫からなる議決機関)が招集され、そこで、
 設立時取締役等の選任を行い(88条)、定められた設立経過等の調査
 を行う(93条2項・96条)。

   以上により、創立総会は、募集設立に特有なものであることが分かる。

   簡単にいうと、発起人だけだとすっと行くが、募集となると、株主の
 募集や創立総会という面倒な手続がつきまとうことになる。

 総括

  創立総会が開催されるのは、募集設立だけという結論を知っていれば
 よいともいえるが、「その根拠等」によりその流れを把握しておくと、
 知識がより強固になり、応用がきくと思う。


 イについて

  会社の設立に際しての現物出資者は、発起人に限る。財産引受について
 は第三者も相手方になることができる。
   正しい。

 その根拠等

  現物出資は、金銭以外の出資者である(28条1項)。財産引受は、
 発起人が、 設立中の会社のために、株式引受人または第三者との間で
 会社成立後に財産を譲り受けることを約することである(28条2号)。
(リーガル)
  財産引受については、当該定義から、相手方である譲渡人は、第三者
 でもよいということになる。

   いずれも、目的物を過大に評価して会社の財産的基礎を危うくしては
 ならないため、法28条の変態設立事項として、厳格な規制が設けられ
 ている
(神田会社法)。

  会社設立に際しては、現物出資者が発起人に限られるというのは、
 次のとおり条文解釈によって導かれる(リーガル)。34条と63条
 とを対照。34条1項では、発起人の現物出資に関する規定があるのに
 63条の設立時募集株式の引受人には、現物出資を想定した規定はない。
   212条1項2号・2項において、会社成立後の募集株式の引受人
 の責任に関し、現物出資財産に不足を生じた場合について規定している
 が、設立時募集株式の株式引受け人に関しては、これに相当する規定
 がない。

   もうひとつ重要な論点がある。財産引受けは、通常の売買契約で
 あるから、会社成立後は、一般の業務執行になる。会社成立後の
 募集株式の発行の際、現物出資に関する規制がある(207条等)
 のに対して、募集株式の発行等の関連では、財産引受けにあたる
 制度はない。(リーガル)

  総括

  本肢についても、結論だけ覚えておけばよいともいえるが、その
 根拠を知っておくことに越したことはない。また、関連部分は、本
 試験の射程距離であると思う。


 ウについて

  株式引受人が失権した場合、発起人は、その株式を引き受けなくても
 よい。誤りである。

 その根拠等

  設立時募集株式の引受人が払込をしなかった場合は、当然に失権する
 (63条3項)。当然失権することの意味は、条文にあるとおり、「設立時
 募集株式の株主となる権利を失う」ことである。発起人の引受け責任は
 ない。払込があった分だけで会社の設立をしてよい(神田会社法)。

  この点には沿革がある。旧商法では、発起人等に引受け・払込み責任
 が認められていたのを新法である会社法では、これを廃止したのである。
  「 旧商法においては、設立に際して発行する株式総数が定款の絶対的
 記載事項とされており、設立時に発行する株式全部の引受や払込がなさ
 れていない場合は、定款違反として設立無効の原因となるため、その
 ような場合に発起人らに引受・払込責任を負わせて設立の瑕疵を治癒し、
 会社の設立が無効とならないように」していたたのである(非公開会社
 のための新会社法・商事法務)。
 しかし、現行法では、前述のとおり、当然失権とし、払込のあった分
 だけで、設立手続の続行を認めたのである。

 関連事項として、以下の3つを掲げる(神田会社法参照)。

 (1) 発起人が払込をしなかった場合は、失権予告付で払込みを催告
   し、払込がなければ引受人を失権させる(36条)。
(2) 発起人・設立時募集株式の引受人の失権があった場合、他の
      出資者により出資された財産の価格が定款で定めた「設立に際して
      出資される財産の価格またはその最低額」(27条4号)を満たして
   いないときは、設立手続を続行できない。ないしは、設立無効事由
      になる。
 (3) 失権により発起人が1株も権利を取得しなくなるような場合には、
     法25条2項に反するので、設立無効事由となる。

 総括

 本肢に関し、結論だけではなく、沿革も知っていれば、知識は強固になる。
 また、関連事項は、本試験の射程距離にある。

 エについて

   発起人は、会社の設立の企画者であって、設立事務を執行し、会社の
 成立を目指す(神田会社法)のであるから、設立時取締役が、設立中の
  会社のすべての業務を行う権限を有するものではない。
  誤りである。

  設立時取締役(会社の設立に際して取締役となる者)の設立中の業務は、
  以下のとおり、一定ものである。
    法46条1項・93条1項の設立事項の調査である。募集設立にあって
 は、 当該調査結果の創立総会への報告を行う(93条2項)。

  なお、本肢は、設立中の会社に関する基本的理解を問うものであり、
 誤ってはならない。

 
 オについて

  会社不成立の場合における、発起人の責任は、法56条に規定がある。
 発起人がした設立に必要な行為はすべて発起人の連帯責任になる。設立
 費用として支出したものは、・・すべて発起人の負担となる(神田会社法)。
   本肢は正しい。

  なお、会社の[不成立」について付言しておく。
 
     会社の設立が途中で挫折し設立の登記まで至らなかった場合を、会社の
 「不成立」という。設立無効の訴えによるまでもなく、誰でもいつでも会社
  が存在しないことを主張できる(神田会社法)

 
 以上、正しいものは、イとオであり、正解は4である。


   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 23:10コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第43回】★      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
            
-----------------------------------------------------------
 2009/7/16


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
-----------------------------------------------------------
 
【テーマ】続・行政不服審査法
 

【目 次】問題・解説 
           
      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 問題
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

                              
  E  平成19年度過去問・問題15                 

  次の文章の空欄 ア〜キ のうち空欄 A と同じ言葉が入るものは
 いくつあるか。

  行政不服審査法に基づき審査請求がなされたとき、処分の効力、処分の
 執行、手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置を行うか行わない
 かに関して、行政不服審査法34条1項は、行政事件訴訟法と同様、
 A  原則を選択している。私人の権利利益救済の観点からは、 ア 
 原則が望ましく、公益を重視する観点からは  イ  原則が望ましい
 といえる。
 行政不服審査法の下においては、行政庁の上級庁である審査庁は職権
 により  ウ  をすることができる。これに対して、処分庁の上級行
 政庁以外の審査庁は、審査請求人の申立てにより   エ   とする
 ことができるのみであり、裁判所と同様、職権により  オ  とする
 ことはできない。これは、処分庁の上級行政庁である審査庁は、処分庁
 に対して一般的指揮監督権を有するから、職権に基づく カ    も
 一般的指揮権 の発動として正当化されるという認識による。
 なお、国税通則法105条1項のように、個別法において  キ  
 原則に修正が加えられている場合もある。

 
 1 一つ

 2 二つ

 3 三つ

 4 四つ

 5 五つ

 (参考) 国税通則法105条1項(省略・各自で条文を参照されたい)

 

  F 平成18年度過去問・問題15


  行政不服審査法による審査請求における執行停止に関する記述として、
 妥当なものはどれか。

 1 従来、執行停止の要件としては、「重大な損害」が必要とされていた
   が、 平成16年の法改正により、「回復困難な損害」で足りることと
  された。

 2 審査庁は、「本案について理由がないとみえるとき」には、執行停止
   をしないことができる。

 3 申請拒否処分に対する審査請求については、平成16年の法改正に
  より、執行停止制度に加えて、「仮の義務付け」と「仮の差止め」の
  制度が明文化された。

 4 執行停止の決定がなされた場合において、それに内閣総理大臣が
   異議を述べたときは、審査庁は、執行停止を取消さなければならない
   こととされている。

 5 処分庁の上級庁である審査庁は、審査請求人の申立てによること
  なく職権により執行停止することは許されない。

 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  △ 参考書籍は、第2コース第42回に掲げた。

 △  今回は、行政不服審査法の続編として、EFとして、審査請求に
     おける執行停止を採用した。第2コース第41回B肢2において、
     行政事件訴訟法における執行停止を掲げたので、参照されたい。
    私は、当該解説欄において、「許可申請したデモの日時より
    遅い取消しでは無意味である」と述べたが、実は、訴えの利益が失
  われて却下されるのである。

  次の過去問の肢をみてほしい。

  特定の日に予定された公園使用の不許可処分の取消訴訟の係属中に
  その特定の日が経過した場合であっても、訴えの利益は失われない。

    ×で、理由は、訴えの利益はないため、却下される。私は、「無意味」
  と述べたが、だから却下されるのだ!言い訳にもならぬが・・・。


 Eの平成19年度過去問

   本問は、執行停止に関する原則が理解されていれば、容易に正解に達し
 得る。細かい条文の知識は必要ないかもしれない。
  本問に則して、原則を追ってみる。

 1 行政不服審査法は、行政事件訴訟法と同様 Aの執行不停止 原則を
   選択している。条文としては、行政不服審査法34条1項・行政事件訴訟法
   25条1項。その根拠は行政処分の公定力にある。

 2 当該執行不停止が、公益重視の観点に立ち、執行停止原則は、逆に
    私人の権利利益救済の観点に立つことはいうまでもない。したがって、
   アが執行停止 原則であり、 イが執行不停止 原則である。

 3 行政不服審査法上、処分庁の上級庁である審査庁は、職権により執行
   停止をすることができる。法34条2項。 ウは執行停止。

 4 処分庁の上級庁以外の審査庁は、職権で執行停止ができない。法34条
   3項により申立てのみ。エは執行停止

 5 裁判所による執行停止も、申立があった場合にかぎられる(行政事件
   訴訟法25条2項)。オも執行停止。

 6 3の根拠は、上級庁の処分庁に対する一般的指揮監督権である。カも
  執行停止。

 7 参考として掲げられた個別法は、本文において、執行不停止原則を規定
   しながら、ただし書きで、その原則に修正が加えられ、限定的に執行停止 
   がなされることを規定している。 キは 執行不停止 原則である。

  したがって、「執行不停止」は、イ・キの二つであり、正解は2である。

  執行停止全体が見渡すことのできる良い問題だ!


 Fの平成18年度過去問

  
 1について

  平成16年の行政事件訴訟法の改正に伴い行政不服審査法においても、
 執行停止をより行いやすくしようとの目的で、「回復困難な損害」を
「重大な損害」で足りるよう要件を緩和した。「回復困難な損害」と
「重大な損害」の順序が逆である(行政不服審査法34条4項5項・行政事件
 訴訟法2項3項)。×

 2について

  法34条4項により正しい。執行停止は本案の審理を待たないで行わ
 れるが、「本案について理由がないとみえるとき」まで、これを許す
 べきではないからである。行政事件も同様である(法25条4項)。○

 これが正解である。

 3について

  これは、難しい問題であり、題意が把握し難い。例えば、申請拒否
 処分として、生活保護却下処分をとりあげる。裁決によって、当該
 処分が取消されると、処分庁は、裁決の趣旨に従って、生活保護決定
 をしなければならない(法43条1項・2項)。
  それでは、この裁決の前に審査庁が執行停止を行ったら、どうなるか。
 処分庁は、生活保護決定を義務付けらるのではないというのが、実際の
 取扱であるから、拒否処分についての執行停止の決定はやっても意味は
 なく、結局、執行停止の申立の利益がないということになる。
  もし、裁決の前に、義務付け(生活保護決定)をさせるためには、仮
 の義務付けを認める必要がある。(以上「読本」参照)
  以上の前提知識があって初めて、本肢の趣旨が把握できると思う。
   本肢が言いたいのは、平成16年の改正により、不服審査法上、執行
 停止制度によって、義務付けが可能になった。これに加えて、「仮の
 差止め」は付け足しとしても、「仮の義務付け」が明文化されたという
 のである。これは、全部でたらめである。前段が誤りであると同時に
 後段の「仮の義務付け」等は、行政事件訴訟法に該当することである
 (法37条の5)。この問題は、「仮の・・」が行政事件訴訟法に特有の
 制度であることが分かっていれば、すぐに誤りであることに気づくが、
 本肢を通じて、全体の理解に到達するために、詳しく説明した。
 ×


 4について

   内閣総理大臣の異議という制度は、行政不服審査法にはない。これが
 認められるのは、行政事件訴訟法における執行停止(法27条)と仮の
 義務付け及び仮の差止め(法37条の5第4項による27条の準用)の場合
 である。後者については、第2第41回・B肢2解説参照。


 5について

 法34条2項により×。前掲Aにおいての主題であった。
 
  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 14:04コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第40回 】★      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
            
-------------------------------------------------------------
 2009/7/9


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
-------------------------------------------------------------
 

【テーマ】続・行政不服審査法
 

【目 次】問題・解説 
           
      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 問題
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  G 不服申立て要件として、異議申立てと審査請求のいずれを行う
   べきかなど。 

  ○ 不作為についての不服申立ての場合

 
 1 行政不服審査法によると、行政庁の不作為については、申請者は、
   異議申立てまたは審査請求のいずれかをすることができる。

 2 行政庁の不作為についての不服申立ては、不作為庁が主任の大臣等
   である場合を除くと、不作為庁への異議申立てと直近上級行政庁へ
   の審査請求のいずれかをすることができる。 

 3 不作為に対する不服申立が認められるのは、行政庁が法令に基づく
   申請に対し、相当の期間内に何らかの処分をすべきにもかかわらず、
  これをしない場合である。 

 4 行政不服審査法にいう「処分」には、「不作為」も含まれる。

 5 法における「不作為」には、申請が法令に定められた形式上の
  要件に適合しないとの理由で、実質的審査を経ずに拒否処分が
 なされた場合も含まれる。

    
    ○ 処分に対する不服申立ての場合

 
 1 行政不服審査法によると、行政庁の処分についての異議申立ては、
  「処分庁に上級行政庁があるとき」にすることができる。

 2 処分について、審査請求が認められている場合には、異議申立て
  はできないのが原則である。

 3 審査請求と異議申立ての両方が認められている処分については、
   そのいずれかを自由に選択できるのが原則である。
 
 4 審査請求は、処分庁または不作為庁に対してする。

 5 取消訴訟は他の民事訴訟と同じく3審制であるが、行政不服申立て
   の場合、異議申し立てに対する決定に不服があるものは、第三者機関
   に審査請求ができる2審制が原則として取られている。
 

  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ▼ 参考書籍

  行政法入門・藤田 宙靖 行政法読本・芝池 義一
    ともに有斐閣 発行

 ▼ 前回、行政上の申立てにつき、AからFまで過去問の抜粋をしたので、
 今回は、Gを掲げる。○×で解答してください。出典を明らかにしないの
 も同様である。

 ▼ 不服申立て要件となっているのは、×の場合は、その要件を欠くため
 に原則として却下されるからである。

 
 ▼ 各肢の検討

 ○ 不作為について

 1について

  7条本文のとおり。○

 2について

  7条の条文どおり。○

 3について

 2条2項のとおり。○

 4について

  2条によると、不服申立ての種類として、「処分」と「不作為」という
 二つの概念に分けているから、「処分」に「不作為」は含まれない。×

 5について

  これは平成20年度過去問であるが、題意を明確に把握することが大切
 である。行政不服審査法第2条第2項によると、行政庁が法令に基づく
 申請に対し、「なんらかの処分」をしないことが不作為に該当することに
 なる。本肢のように形式上の要件に適合しないことを理由に拒否する
 ことも、申請に対する拒否処分にに該当する(行政手続法第2章・同7条)
  したがって、すでに行政庁の処分があったことになり、行政不服審査法
 7条に基づく不作為についての不服申立ては許されないことになる。


 ○ 処分に対する場合

 1について

  法6条本文1号。×

 2・3について

  この2と3の関係は複雑である。ここで、全体的な説明を行う。
 
 ア 不作為についての不服申立ての場合には、原則として、異議申立て
   でも審査請求でも選択できる(7条)
 
 イ 審査請求をするのが原則で、異議申立ては、審査請求ができない場合
 にだけ 、してもよい(5条・6条1号、2号参照)。

 ウ 法律上、どちらでもできる場合には、原則として、まず異議申立てを
   してからでなければ、審査請求はできない(6条3号・20条)。

  アは別として、2と3に対応するイとウの関係が複雑である。以下、
 各肢について検討する(これは、私独自の思考により考察したもの
 であり、皆さんもそれぞれに考察してください。実際、途中で頭髪
 をかきむしりたくなる・・・)。

 2について考えると、6条1号によると、処分庁に上級行政庁がない
 ときは、異議の申立てが原則である。しかし、処分庁に上級行政庁が
 ないとき(異議申立てが原則の場合でも)、5条2号・同2項によれば、
 法律に審査請求できる規定があれば、この法律の定める行政庁に審査
 請求ができる。この場合には原則として、審査請求が優先し、異議申
 立てはできない(6条ただし書き)。
 つまり、法の建前としては、処分庁に上級行政庁がないときは、処分
 庁に異議申し立て(3条2項)、処分庁に上級行政庁があるときは、上級
 行政庁に審査請求をする(法5条1号)のが大原則。しかし、処分庁に
 上級行政庁がないときでも、個別法において、審査請求が認められている
 場合には、異議申立てはできない。2は○。

  3について考えると、処分庁に上級行政庁がある場合には、審査請求が
 原則。しかし、個別法で異議申立てができることになっていると、不服
 審査法では審査請求・個別法では異議申立てができる。このように、法律
 上は、どちらでもできることになっている場合には、原則として、まず
 処分庁に異議申立てをしてからでなければ、審査請求はできないことに
 なっている(6条3号・20条)。したがって、この場合には、自由選択では
 なく、異議申立てが前置になるので、×。

  2と3を比較すると、2の場合、審査請求と異議申立てのいずれしか行う
 ことができないという問題であるのに対して、3の場合には、審査請求が
 異議を前置とするという問題であることに注意。また、実際には、3の
 ケースが多いようである(入門)。

 4 審査請求は、処分庁または不作為庁以外の行政庁に対して行い、異議
   申立ては、処分庁または不作為庁に行う(法3条2項)。これには例外
  はない。×

 5  前段の3審制は正しい。後段は、処分庁以外の行政庁を第三者機関
   というのであれば、この点は正しいが、行政不服審査法は、「異議
   申立て」と「審査請求」を異なった種類の不服申立てとしている。
    前者 の決定に不服のあるものに後者の申立てをするという2審制
   を同法は採用していない。×

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 17:20コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 12回 】★      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
            
-------------------------------------------------------------
 2009/2/16

             
             PRODUCED by  藤本 昌一
-------------------------------------------------------------
 
【テーマ】 民法・物権変動と登記


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 過去問を中心とした「物権変動と登記」 問題と解説(その3)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ◆ 今回も前回に引き続き「物権変動と登記」をテーマにして、
 過去10年間の過去問を題材に、問題提出と解説を行います。
 
 過去問の肢の出典を省くのも、いままで同様です。

 以下、○か×かで答えてください。


 [問題1]


 A所有の甲地につきBの取得時効が完成した後に、Aが甲地を
 Cに譲渡した場合、Bは登記なくしてCに対抗できる。


 [解説]

                  ( )内の数字は、
 甲地                時系列の順序を示す。
   
          (1)       
          時効完成  162条・20年間ないし10年間
  A----------B        の占有継続により取得時効
                   完成=所有権取得。    
      (2)           
      譲 渡
   ----------C

 
 ア 144条によると、時効の効力は、その起算日にさかのぼるため、
 Bは占有開始時において、所有権を取得したことになります。

 イ しかし、177条により、Bは取得時効にる不動産所有権を
 第三者に対抗するには、登記をしなければならないことになります。

 ウ 本問におけるCは、時効完成後、当該不動産につき旧所有者
 から所有権を取得した者に該当しますが、この者も、177条の
 第三者に該当します。

 エ 以上の原理は、177条の典型的適用例である二重売買の場合
 と同じことですね。

 オ 判例もあります(最判昭和33・8・28・・H21模六 177条
 14 1003頁)。

 以上から、Bは登記なくしてCに対抗できないので、本問は、
 ×です。

 なお、市販の解説書をみますと、「判例があります」で事足れり
 
 としていますが、理屈とか原理が先行すると思います。判例
 は、原理適用の結果なのです。判例がありますではなくて、
 判例もありますという勉強をしよう。

 
 [問題2]


 Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却し、B
 は、その後10年以上にわたり占有を継続して現在に
 至っているが、Bが占有を開始してから5年が経過した
 ときにAが甲土地をCに売却した場合に、Bは、Cに
 対して登記をしなくては時効による所有権の取得を対抗
 することはできない。

 
 甲土地       ( )内は前記同様順序
          
    

    売却    10年以上占有継続   
                (2)
 A----------B 162条 取得時効完成
                 =所有権取得

        (1)
     5年 売却 
 A   ----C


 イ 本問では、いくつか気になることがあります。
 
 ここで、時効を除外して考えますと、二重売買になり、
 BはCに対して登記なくしては所有権を対抗できません。
 
 しかし、本問では、 売買が無効となったため、Bは時効
 を主張しているのでしょう。ここでは、10年の占有継続が
 問題になっていますから、162条2項の適用が適用され、Bが
 売買契約の瑕疵について、善意無過失であったと思われます。

 ロ ここから、本題です。だから、皆さんは、イの余計な
 考察は省略して、ズバリここから突入してください。
 [問題1」が、時系列からして、Bの時効完成後にCに譲渡
 されたのに対して、本問は、Bの時効期間進行の中途にCに
 譲渡されています。この場合どのように考えるかについては、
 難しい問題がありますので、この場合は、判例が頼りです。

 判例を、上記事例をあてはめますと、

 時効期間進行の中途にAからCへの譲渡があり、登記がなされ、
 その後にBの時効期間が満了した場合にも、Cは時効による
 権利変動の当事者であるから、Bは登記なくしてこれに対抗
 できる。(最判昭和35・7・27ほか多数・・一粒社 民法 1)

 要点が二つあります。
 
 一つには、[問題1]では、BとCが177条の対抗関係に立つ
 ため、Cに登記を要するのに対して、本問では両者が当事者
 の関係に立つため、Cに登記を要しないことになります。

 二つには、本問では、Cに登記が具備されても、BはCに
 対抗できます。

 したっがて、本問では、BはCに対し登記なくして、時効
 による所有権取得を対抗できることになりますので、×です。

 ハ 本問は、二重売買において、引き渡しを受けた未登記の
 第一の買主が、占有を継続し、時効を主張することにより、
 登記を具備した第2の買主(本来177条により、優先)
 に対抗し得ることの不当性が問題になる事例ですが、深入り
 する必要はありません。問題意識としては、大切ですが・・。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 10:36コメント(0)トラックバック(0) 
記事検索
  • ライブドアブログ