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            ★ オリジナル問題解答 《第55回 》★

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                    PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法
    
  【目次】   解説
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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    問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第154号掲載してある。
 
 
 ☆ メルマガ第154回はこちら
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 

 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 
 ◆ 各肢の検討


  
   ○ 肢1について

   行政不服審査法34条2項以下。行政事件訴訟法25条2項以下。
 
    正しい。


   
   ○ 肢2について

   正しい。行審法34条4項。行訴法25条4項。ただし、厳密に
    言うと、前者では、義務的でなくなり、後者では することができ
    なくなる という違いがあるように思われる(○ 肢4について
   ※(b)参照)

     審査庁も裁判所も、執行停止にあたり、「本案について理由がない
  とみえるとき」に該当するかどうかを判断する

  
  
   ○ 肢3について

    行審法34条2項。正しい。行訴法25条2項によれば、「申立て
  によ」る。


 
  
   ○ 肢4について

    審査庁が処分庁の上級庁である場合には、3のとおり、執行停止の
     要件は緩和されているが、「審査庁が処分庁の上級庁でない場合につ
     いても、裁判所が執行停止する場合よりはその要件が緩和されている」
   (入門)
  
  (1) 審査庁の場合は、「必要があると認めるときは」が要件になって
    いる(行審法法34条3項)。
  
 (2)裁判所の場合は、「重大な損害」「緊急の必要」が要件になって
   いる(行訴法法25条2項)。
 
   したがって、要件は同じではなくて、緩和されているので、本肢は
  誤りである。
 
 
  ※(a) ただし、次の点に注意せよ。審査庁の場合にも、「重大な
            損害」等がが掲げられているが(行審法法34条4項)、こ
            れは、義務的であるための要件である。裁判所の場合が、執
            行停止発動の要件であるのとは、異なる。

            
                             執行停止可 ○   不可 ×
              
                           
               審査庁     裁判所
    
  「必要があると認める」   ○       ×

 
   「重大な損害等」      ○(義務的)  ○(発動の要件)

 
   以上を総括して、「入門」より、以下の文章を記しておく。
 
  「行政上の不服申立てのばあいには、争いを裁断するのは裁判所では
  なくて行政機関ですから、不服申立てに対する審査も、いわば、行政
   組織内部でのコントロールとしての性格を持つことになります。そう
   だとすると、取消訴訟のばあいには、司法権としての裁判所の立場上、
  そうかんたんに認められなかった例外としての執行停止も、かなり
   ゆるやかに認めてもよい、ということになるのでしょう。」 

 
  ※(b) ついでにいっておくと、

   審査庁においては、「本案について理由がないとめるときは」義務
   的でなくなるのに対して(行審法34条4項)、裁判所においては、
 「本案について理由がないとめるときは」執行停止をすることができな
 くなるのである(行訴法25条4項)。

   さらに、「仮の義務付け・仮の差止め」では、「本案について理由
  があるとみえるとき」が、積極的要件になっている(行訴法37条の
  5第1項)。

  
 
 ○ 肢5について

   正しい。
 
  内閣総理大臣の異議は、行政事件訴訟法25条の取消訴訟の場合
(無効等確認の訴を含む・38条3項による 準用)及び 仮の義務付け・
 仮の差止めの場合(37条の5第4項による準用)である(27条)こ
 とを明確に把握しておくこと。

  内閣総理大臣の異議という制度は、行政不服審査法にはない。


------------------------------------------------------------------

  本問では、肢4が誤りであるので、正解は、4である。 


-----------------------------------------------------------------

  ◆ 付 言
  
   本問の肢4の解説にみられるように、条文に忠実に条文を丁寧に読
  むいわば条文主義という観点もまた、本試験によって要請されている
  と私は思料します。

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

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            ★ オリジナル問題解答 《第46回 》★

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                      PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法

    
  【目次】   解説
              
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 ■   オリジナル問題 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
 
  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第142号掲載してある。
 
 ☆ メルマガ第142回はこちら
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 

 [問題1]


  ● 行政上の「強制執行」とは、、 「行政処分」 によって課され
  た義務を義務者が履行しない場合に課されるものである。

   したっがて、(ア)には、強制執行が入り、(イ)には、
  行政処分が入る。

   ちなみに、(ア)群にある「行政強制」とは、強制執行制度
  間接的強制制度 即時強制 全部を総称するものであることに
  注意!!

   また、(イ)群にある「行政立法」は、行政処分と同様、権力
    的行為であり、法行為でって同類である。
    しかし、行政立法は、「不特定多数のひとびとを対象とした
  一般的・抽象的なものであって、特定の私人を対象とした個別的・
  具体的なものものでは」ない(入門141頁)から、強制執行と
  結びつかないことに注意!!
  
   次に、即時強制については、以下の記述を参照されたい。

      直接強制に類似する実力行使として、「即時強制」がある。
  これは、法令や行政行為等によってひとまず私人に義務を課し、
  その自発的な履行を待つのでなく、いきなり行政主体の実力が
  行われるのを特徴とする。「義務の履行強制を目的とするもの
  でないことを特徴とする。」(入門183頁)

      したがって、(ウ)には、直接強制ではなく「即時強制」が入る。
   
   また、後述するように、「行政調査」と「即時強制」を分かつの
  は「強制」であるから、(エ)には「強制」が入る。

  
  -------------------------------------------------------------  

    以上によれば、4が正解である。

  -------------------------------------------------------------

 

 [問題2] 


 ●  要点
   
  行政法学で特に「行政調査」というばあいには、行政機関の行う調査
  のすべてをいうのではなく、そのなかでも以下のようなものを指すとさ
  れる。
  
  「行政機関が私人に対して質問や検査をしようとするばあいで、私人
   がこれに自発的に応じないばあいには、なんらかのかたちでの公権
   力の行使がおこなわれる可能性があるもの」

  これらの「行政調査」のうち、なんらかの調査の目的でおこなわれる
  行為であっても、直接に身体や財産に手をかけるようなケースは、「即
 時強制」の方に入る。

   (以上 入門185頁)

 
 ●  各肢の検討
  
 
 ○ アについて
 
   妥当である。

  「行政上の即時強制については(行政上の代執行とは異なり)一般法は
   存在せず、従ってまた、ここで説明すべき一般的仕組みも存在しない。
  
   行政機関が行政上の即時強制を行うについては、法律の授権が必要
 である。そして、行政機関としては、法律の授権が存在すれば、授権
  を行う法律の定めるところに従って即時強制を行えば足りる

 (読本 143頁)

 ○ イについて
 
  さきに述べた要点によれば、相手方の任意の協力を求めて行われる自動車
 検問は、「即時強制」に該当しないであろう。

  妥当でない。

 
  ○   ウについて

   妥当でない。

   実際上、即時強制に際して、司法機関の令状ないし許可状をとることが
 必要であることとされている例は個別法にある(出入国管理及び難民認定
 法31条・警察官職務執行法3条3項)。

  「ただ、こういうことを一般的に定めている法律はないので、そこで、
  こういうような規定がないばあいについても(憲法の規定からして≪※
  注1≫)裁判所がまったくかかわることなしのこなわれた即時強制・行
  政調査≪※注2≫は違法となるのではないか、という問題があるわけで
  す」(入門 187頁)

   ※ 注 1 憲法35条

  ※  注 2 [問題3] 肢ウ 参照

 

 ○ エについて 

  本肢のような継続的な性質を有する即時強制は、行政上の不服申立て
 の対象となる(行審法2条1項に明記)。取消訴訟も提起できるだろう
 (読本143頁)。

  妥当でない。

 ○ オについて

  義務の賦課なくいきなり強制が加えられるのが、即時強制の特徴である
 から、本肢は、即時強制に該当する。

  
  妥当である。

 ---------------------------------------------------------------------- 
   
     アとオが妥当であるので、2が正解である。

 -----------------------------------------------------------------------

  

 [問題3]


 ● 本問は、[問題2]とは異なった観点に立脚していることに注意せよ。

  [問題2]では、行政調査のうち強制行為については、「即時強制」に
  該当するとした。
  
    これに対して、本問では、「行政調査」全体について、強制行為
 (権力的)に該当するものとそうでない(非権力的)ものが存在する
   ことを認めたうえで、それぞれの規制を考察しようとするものである。
  
  むしろ、現在では、この手法が普通であろうと思われる。

 ● 各肢の検討

 
 ○ 肢アについて

  前記の観点に立てば、行政調査は、いずれの場合にも行われる。

  妥当でない。


 ○ 肢イについて

  これは、ズバリ、行手法3条1項14号の適用除外の問題である。

 「・・資料提出や出頭を命じる調査は、行政処分の形式で行われ
 るものであり、一種の不利益処分として行政手続法を適用するこ
 とも可能であるが、行政手続法は、『情報の収集を直接の目的し
 てされる処分・・』を適用除外している(行手法3条1項14号)。」
 (読本191頁)。

 妥当でない。


 ○ 肢ウについて

   ここでの論点は、以下のとおりである(読本190頁以下参照)


    行政手続においても、個別法において、憲法35条2項の令状
   主義が採用されている場合がある。

   「そこで問題になるのは、令状主義について法律に規定がない場
     合に、憲法35条2項の令状主義の適用があるかということで
     ある。」
    本来この規定は、刑事責任を追及する刑事上の手続に適用され
   るものだからである。

    最高裁判所大法廷は、1972(昭和47)年11月22日判決
 =川崎民商事件において、本肢のように述べて、「強制の性格の調
 査について憲法35条2項の令状主義の要請の及ぶ余地を認めた・・」

  妥当である。

  なお、当該判決は、よく引用される重要なものである。
   

  ○ 肢エについて。 

   これは、最高裁判所昭和55年9月22日決定からの出題である。

   当該判決によると、自動車の一斉検問は、警察法2条1項が「交通
 の取締」を警察の職務としていることを根拠にしているが、「任意」
 であって、強制力を伴わなければ、「一般的に許容されるべき」とし
 ている。

  この一斉検問は、犯罪にかかわる職務質問に付随する所持品検査に
 対して、犯罪とは関係なく無差別に行われる検問であるあるから、か
 りに任意であっても、この自動車検問自体が「法律の留保の原則」(注)
 に違反して違法ではないかという問題がある。

  注 「行政の行為のうち一定の範囲のものについては、行為の着手
     自体が行政の自由ではなく、その着手について法律の承認が必
     要であると考えられている。この一定の行為について法律の承
     認(つまり授権)が必要である、という原則を『法律の留保の
     原則』と呼ぶ。」

    これについては、前述したとおり、最高裁判所は、警察法の規定
  する「交通の取締」を根拠にしているが、学者はそれにはかなり無
  理があるとして「『法律の留保の原則』の見地からは、一斉検問を
  正面から授権する規定を法律(道路交通法になろう)の中に設ける
  ことがあるべき解決策といえる。」としている。

   (以上、読本58頁を参照した)

    以上の記述に従えば、本肢の見解は、最高裁判所の判決に反する
  ものといえる。

  妥当でない。


 ○ 肢オについて

  本問肢ウの川崎民商事件では、「所得税法の質問検査権については、
 それが『直接物理的な強制を認めるものでなく、検査を拒んだものに
 対する罰則による間接的強制をおこなうものであることにすぎないこ
 と』」(入門187頁)を理由に、令状主義による強制調査の適用外
 とした。
 
  したがって、肢オの罰則を伴う間接的強制を最高裁判所は、容認して
 いる。

  肢オは誤りである。


  換言すると、この場合、裁判所の令状がなくても違憲・違法とはいえ
 ないのは、直接物理的な強制ではなく、罰則による間接的強制をおこな
 うものだからである、というものである。

 ----------------------------------------------------------------

   本問においては、ア・イ・エ・オが妥当でないので、4が正解である。
  

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   ★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
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               ★ オリジナル問題解答 《第40回 》 ★

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                       PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政法


    
  【目次】   解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第127号掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第127回はこちら
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 
 
 
  本問の解説については、メルマガ127回/重要論点の整理・Q&A 
 を参照を願います。

 
   本問のポイントは、行訴法9条2項の準用により「処分の相手方以外
 の者」である第三者に「原告適格」があって(37条の4第4項)、3
 7条の5第2項により、「差止めの訴えの提起」があった場合において、
 という三点であると思われる。


  解答例としては、以下のようになる。


  処分の相手方以外にも原告適格があるため、差止めの訴えを提起して、
  当該申立てができる。(42字)


  
 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一
 
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             ★ オリジナル問題解答 《第30回》 ★

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                      PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  会社法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  
 
   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第116号掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第116回はこちら
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 
 
   
 ★  参考文献

    会社法 神田秀樹 著 ・ 弘文堂
 
  リーガルマインド
  会社法 弥永真生 著 ・ 有斐閣

 
 ● 各肢の検討

   
  ○ アについて

      会社法は定款で定めることを条件として、すべての株式または
  一部の種類の株式の譲渡について会社の承認を要するという形で
  株式の譲渡の制限を認めている(107条1項1号・108条1
  項4号・107条2項1号・108条2項4号)。

     しかし、相続その他の一般承継による株式の取得については、
  定款において、当該会社の承認を要する旨の定めをすることがで
  きない(なお、134条4項参照、株式会社は、そのような者の
  請求による株主名簿の記載を拒むことはできない)。

    ただし、株式会社は、当該株式会社の株式が譲渡制限株式である
    場合に限り、当該株式の取得者に対して当該株式を当該株式会社に
    売り渡すことができる旨を定款で定めることができる(174条)。

 
                             
   被相続人     当該株式会社の株式の相続        取得者(相続人)
    A-------------------------↓-------------------------B
                譲渡制限株式

                     売渡しの請求 ↑
 
                         当該株式会社

     以上の記述に照らせば、本肢は妥当である。
       


  ※ 参考事項

   

 1 平成23年度 本試験問題38 肢 1 (メルマガ116号に
    おいて解説)は、妥当でないものとして、以下のとおり記述する。 

   株式会社は、合併および会社分割などの一般承継による株式の取
   得について、定款において、当該会社の承認を要する旨の定めをす
   ることができる。

   ここで吸収合併を例にとれば(新設合併、吸収分割、新設分割も
    これに準じる)、合併の対価として、消滅会社の株主は持株数に応
    じて存続会社の株式が与えられ、存続会社の株式の取得をするが、
    これに対して当該会社である存続会社の定款において、承認を要す
    る旨の定めをすることができるかどうかは、およそ問題にならない
    と思う。
   
    ×       ○
   消滅会社    存続会社      

    ↓

   株主=存続会社の株式の取得者

   
   これは、合併等の組織再編の過程において処理される問題であっ
    て、定款において、当該会社(存続会社)の承認を要する旨の定め
    をすることが問われるものではないと思う。換言するなら、107
    条1項1号などの適用外の問題であると思う。

   これに対して、本肢における相続その他の一般承継については、
  107条1条1号にいう譲渡に相続が含まれないので、当該会社
   の承認を要する旨の定めをすることができないということでピッ
     タリくる!!

   したがって、さきに掲げた平成23年度の肢は、本来は、つぎの
    ように改められるべきであろう。
   
   株式会社は、相続などの一般承継による株式の取得について、定
    款において、当該会社の承認を要する旨の定めをすることができる。

 2 本肢の場合には、自己株式を取得することができる場合に該当す
    る(155条6号)が、自己株式の取得については、後述する。


  ○ イについて

  承認を受けないでなされた譲渡制限株式の譲渡は、当該株式会社に対
  する関係では効力を生じないが、譲渡の当事者間では有効であるという
 という点については、判例 (最判昭和48・6・15民集27−6−
 700)がある。

  判例(最判昭和63・3・15判時1273−124、最判平成9・
 9・9判時1618−138)《前掲 神田 会社法第14版)は、こ
  れを進めて、本肢のとおり、会社は必ず譲渡前の株主を株主として取
  り扱わなければならないとする。

  
    以上の記述によれば、本肢は判例に照らし、妥当である。

  
  なお、当該株式の譲受け人が、譲渡の当事者間では有効であるというこ
 とを生かしたければ、当該株式会社に対し、当該株式を取得したことにつ
 いて、承認請求をし、承認を受け、その者の請求により、当該株式会社の
 株主名簿に記載してもらい、株式の譲渡について、株式会社に対抗するこ
 とである(137条以下・134条2号・133条・130条1項)。


 ○ ウについて

    株式会社が特定の株主から自己株式を取得する場合には、株主総会
  の特別決議を要する(156条1項・309条2項2号)が、子会社
  から自己株式を取得する場合は、取締役会設置会社にあっては、取締
  役会の決議で足りる。ただし、非取締役会設置会社では、株主総会の
  決議を要するが、この場合は、普通決議で足りる(163条・156
  条1項・309条1項・なお、309条2項2号( )内参照)。         
                  
    
 以上の記述に照らせば、本肢は妥当である。

 

 ※ 参考事項

    1 自己株式とは「株式会社が有する自己の株式」と定義されて
     いる(113条4項)。会社が自社の株式(自己株式)を取得
     するとその結果その株式は自己株式となる。会社法は、株式会
     社が自己株式を取得できる場合を規定する(155条・本肢の
     場合は、同条3号である)《前掲 神田・会社法》

    2 自己株式は出資の払戻しとなり、また会計上自己株式の資産
     性を認め配当規制をしないと債権者を害する等の弊害があるこ
      とが指摘されている(その他の弊害が前掲書神田96頁に3個
     掲載されているが、ここでは省略する)。
    
        3  子会社の定義は、2条3号に規定がある。要するに、親会社
     によって、総株主の議決権の過半数を所有される株式会社を子
          会社という。なお、親会社の定義は、2条4号に規定がある。


 ○ エについて

       親会社をAとし、事業譲渡の譲渡会社をBとし、譲受会社である子
     会社をCとすると、CがBの有するAの株式を譲り受けると、子会社
     であるCが、親会社Aの株式を取得することになり、子会社による親
     会社株式取得の規制に服するようにもみえる(135条1項)。
       しかし、本肢の場合には、135条2項1号の規定する例外事由に
      該当することになるが、135条3項の適用を受けることになる。
   
   
     譲渡会社      事業譲渡        譲受会社
     B---------------------------------------C
                                            (子会社)
     ↓所有
     
    A会社株式
  (親会社)

       
    以上の記述によれば、本肢は、会社法の規定に照らし、妥当で
   ある。
  
  
   ※ 参考事項

   1 前述したように、子会社による親会社の株式取得は原則的に禁
    止されているが(135条1項)、「子会社株式は親会社の資産
    に含まれるから、子会社による親会社株式取得は資本充実(会社
    財産確保)の点から問題がある・・子会社に対する支配力・・
    株価操作や投機的行為・・などの弊害を生ずるおそれがある」
    (前掲リーガルマインド 会社法 65頁)

   2 他の会社の事業の全部の譲渡については、譲渡会社・譲受会社
        いずれにおいても、株主総会の特別決議が必要になる(467条
        1項1号・3号・309条2項11号)。


  ○ オについて

     吸収合併においては、合併後の存続会社が、合併により消滅する会
     社の権利義務を承継することになる(2条29号)。

    本肢において、存続会社をAとし、消滅会社をBとすると、BがAの
   株式を所有していたとすると、合併により、AはBの権利を承継するこ
   とにより自己株式を取得することになる。


                吸収合併
    消滅会社B--------------------------------存続会社A
    
    ↓所有                  ↓
  
   A株式---------------------------------→自己株式

  
  本肢の場合は、155条11号に該当するので、自己株式を取得する
 ことができるが、「相当の時期にその有する自己会社株式を処分しなけ
 ればならない 」という規制はない。
  このような規制があるのは、子会社による親会社株式の取得の場合で
 ある(135条2項)。

  したがって、本肢は、会社法の規定に照らして、妥当でない。

  なお、吸収分割の場合も、本肢に準じて考察できる。

 

---------------------------------------------------------------
 
  妥当でないのは、オのみであるので、本問は、1が正解である。
 
---------------------------------------------------------------

 
 ● 付 言


  本問では、過去問形式に従えば、「妥当でないものはどれか」と問
 われオ(通常は5)が正解ということになるであろう。しかし、本講
 座では、練習のために、正確な知識を試される本形式によった。今の
 段階では、答えが合った、違ったは問題でなく、すこしでも正確な知
 識を取得するように努めるべきだと思う。
  

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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             ★ オリジナル問題解答 《第29回》 ★

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                     PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  会社法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第115号掲載してある。

 
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   ★  参考文献

    会社法 神田秀樹 著 ・ 弘文堂
 
  リーガルマインド
  会社法 弥永真生 著 ・ 有斐閣

 
  【問題1】

   
  ○ アについて

   発起設立は、設立の企画者であり設立事務の執行者である発起
    人が設立の際に発行する株式(設立時発行株式)のすべてを引き
    受け、会社成立後の当初株主になる形態の設立方法(会社法25
    条1項1号)。

    募集設立は、発起人は設立の際に発行する株式の一部だけを引
   き受け、残りについては発起人以外の者に対して募集を行い、そ
   のような発起人以外の者が株式の引受けを行い、発起人とそのよ
   うな者とが会社成立後の当初株主になる設立方法(法25条1項
   2号)。
 

    発起設立は、発起人の出資の履行(34条)後,発起人だけで設
   立時取締役等の選任を行い(38条以下)選任された設立時取締
   役等が、設立経過の調査を行う(46条・93条)。

    募集設立にあっては、発起人の出資履行(34条)・設立時募集
   株式の引受人による払込(63条)後、 創立総会(設立時株主≪設
   立時に株主となる株式 引受人≫からなる議決機関)が招集され、そ
   こで、設立時取締役等の選任を行い(88条)、定められた設立経
   過等の調査を行う(93条2項・96条)。

   以上の記述から以下のようにいえる。

   募集設立は、発起人だけで当初の出資をまかなうことが困難な大
   規模な株式会社を設立するのに適してるといえるが、反面、発起設
   立にはない株主の募集や創立総会の手続を必要とする点で面倒であ
   る。

  本肢は妥当である。


  《以上は、神田会社法から抜粋》

 

   ○ イについて

  
    設立時募集株式の引受人が払込をしなかった場合は、当然に失権
  する(63条3項)。当然失権することの意味は、条文にあるとお
  り、「設立時募集株式の株主となる権利を失う」ことである。
 
  発起人が払込をしなかった場合は、失権予告付で払込みを催告し、
  払 込がなければ引受人を失権させる(36条)。

  以上のとおり、発起人が払込をしなかった場合にも、失権する。

  本肢は妥当でない。
 

  
  ○ ウについて

  会社設立に際しては、現物出資者が発起人に限られるというのは、
 次のとおり条文解釈によって導かれる(前掲書リーガル参照)。

  34条と63条とを対照。

  34条1項では、発起人の現物出資に関する規定があるのに、63
  条の設立時募集株式の引受人には、現物出資を想定した規定はない。

   212条1項2号・2項において、会社成立後の募集株式の引受人の
 責任に関し、現物出資財産に不足を生じた場合について規定しているが、
 設立時募集株式の株式引受人に関しては、これに相当する規定がない。

  設立時

  34条1項→発起人の現物出資の規定あり。○
  63条1項→設立時募集株式の引受人に現物出資の規定なし×

  設立後

  212条1項2号・2項→募集株式の引受人に現物出資の規定あり○

   ◎ 会社成立に際しては、現物出資が発起人に限られる。

 しかし、会社成立後の募集株式の発行の際には、現物出資者の資格に
 ついて制限はない。

  本肢は妥当である。

 
  ○ エについて

     発起人・設立時募集株式の引受人の失権があった場合、他の出資者
   により出資された財産の価格が定款で定めた「設立に際して出資され
   る財産の価格またはその最低額」(27条4号)を満たしているとき
   は、設立手続を続行できる。
   しかし、失権により発起人が1株も権利を取得しなくなるような場
   合には、法25条2項に反するので、設立無効事由となる。

      本肢は、以上の記述に反するので、妥当でない。

  ○ オについて

   現物出資者は、金銭以外の出資者である(28条1項)。

  財産引受は、発起人が、 設立中の会社のために、株式引受人または
  第三者との間で会社成立後に財産を譲り受けることを約することである
 (28条2号)。

  財産引受については、当該定義から、相手方である譲渡人は、第三者
 でもよいということになる。

   いずれも、目的物を過大に評価して会社の財産的基礎を危うくしては
 ならないため、法28条の変態設立事項として、厳格な規制が設けられ
 ている。

  他方財産引受けは、通常の売買契約であるから、会社成立後は、一般
  の業務執行になる。
   会社成立後の募集株式の発行の際、現物出資に関する規制がある
(207条など)のに対して、募集株式の発行等の関連では、財産引受け
 にあたる制度はない。

   以上のとおり、財産引受けは、会社成立後は、通常の業務執行であって、
 会社成立後の募集株式の発行に際しては、財産引受けにあたる制度はない。

   本肢は、妥当である。


----------------------------------------------------------------
 
 以上、妥当であるのは。ア・ウ・オであるから、3が正解である。
 
----------------------------------------------------------------

 
  【問題2】


  
 ○ アについて

  発起人は、会社の設立の企画者であって、設立事務を執行し、会社の
 成立を目指す(神田会社法)のであるから、設立時取締役が、設立中の
 会社のすべての業務を行う権限を有するものではない。

  設立時取締役(会社の設立に際して取締役となる者)の設立中の業務
  は、以下のとおり、一定ものである。

   法46条1項・93条1項の設立事項の調査である。募集設立にあって
 は、 当該調査結果の創立総会への報告を行う(93条2項)。

   以上の記述に反するので、本肢は妥当でない。


  ○ イについて
 
    発起人とは、会社の設立の企画者として定款に署名または記名押印
(いわゆる電子署名を含む)をした者である(定款に発起人として署
 名した者は、実質的には会社設立の企画者でなくても法律上は発起人
 とされる一方、定款に発起人として署名しない者は、実質的には会社
 設立 の企画者であったとしても法律上は発起人ではない)。
 (神田会社法)

   ただし、「[定款に発起人として署名しない者は発起人ではないが、
 株式募集に関する文書等に賛助者等として自己の氏名を掲げること等
 を承諾した者(擬似発起人という)は、発起人と 同様の責任を負う
(103条2項)」。(前掲書)

  以上の記述に反するので、本肢は妥当でない。

 
 ○ ウについて
  
     発起人は、募集株式の払込期日または払込期間経過後、遅滞なく、
  創立総会を招集しなければならない(65条1項)。

  設立時取締役等は、創立総会で選任される(88条)。

  以上の記述に反する本肢は、妥当でない。
  
 
 ○ エについて

   
  【問題1】○アで述べたとおりであり、本肢は妥当である。


 ○ オについて

  
  設立の第1段階は、発起人による定款の作成(26条1項)である。

   定款の作成とは、株式会社の組織と活動に関する根本規則を実質的
 に確定し、これを形式的に記載するか、または電磁的記録することを
 意味する。
   定款の方式について は、発起人が署名または記名押印(いわゆる電子
 署名でもよい)することに加えて(26条1項・2項)、公証人の認証が
 必要である(30条1項)。この認証は、定款の内容を明確にして後日
 の紛争や不正行為を 防止するためであるが、その後に定款を変更する
 場合には認証は不要とされ ている。(前掲書)

  最初の定款を「原始定款」というが、公証人の認証を要するするのは、
「原始定款」のみと覚えておくとよい。

   以上のとおり、定款の変更には、公証人の認証は要しないので、本肢
 は妥当である。


----------------------------------------------------------------

 以上のとおり、妥当であるのは、エ・オであるから、正解は2である。

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             ★ オリジナル問題解答 《第28回》★

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                   PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  行政法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
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  ★ 参考図書
 
    行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行
 
    
 [問題1]

 
 ● 各肢の検討


   ○ アについて

      差止訴訟とは、行政庁が行政処分を行おうとしている場合に
  おいて、行政庁がその行政処分をしてはならない旨を命ずるこ
  ことを求める訴訟を言う(行訴法3条7号)。
   したがって、本肢のように、運転者(事業者)に対して、
  原子炉施設の運転の差止めを求めるのは、行政処分を差し止め
  る訴訟ではなく、民事上の差止訴訟(民事訴訟)である。

   本肢は、妥当でない。

  
  ※ 参考事項

   1 行訴法は、本来、行政処分が行われたのちに事後的に提起
    すべきもの(取消訴訟・行訴法3条2項)とされているが、
    平成16年改正法によって、義務付け訴訟(行訴法3条6号)
    とともに、事前の手段として法定されたものが差止訴訟であ
    る。

   2 差止訴訟の要件は、厳格なものであり、行訴法37条の4
    にその規定がある。

   3 本肢は、行政処分の許可があった後の事例であるが、周辺
    住民が当該許可処分を事前に差止めることができるかという
    問題がある。

     平成16年改正法は、処分の取消し訴訟の原告適格の拡大
    を図り、処分の相手方以外に原告適格を認めるための基準を
    示した(行訴法9条2項)。
     そして、この9条2項の規定は、差止訴訟にも準用されて
    いる(行訴法37条の4第4項)。
     したがって、処分の相手方ではない第三者(周辺住民)が、
    許認可を差止める訴訟は可能であることになった。

    《ここは、今日的問題として、重要なポイントである》

    なお、平成16年改正法をポイントに、この原告適格を問
   題にしたものが、過去問・平成22年度問題43の多岐選択
   式である。

 

  ○ イについて

      不作為違法確認訴訟とは、申請に対する相当の期間内に応答し
  ない場合であるから(行訴法3条5号)、本肢では、これに該当
  しない。申請者でない隣地の者は、不作為の違法確認訴訟を提起
  することはできない。

   本肢は妥当でない。

   ※ 参考事項

    本肢事案については、平成16年改正法によって、非申請型義
   務付け訴訟が認められたことにより、隣地に居住する者は、行政
   庁に規制権限の行使を義務づける判決を求める訴訟を提起できる
   ことになったことに注意!(行訴法3条6項1号)
    
    具体的に言えば、その者は、建築基準法に違反した建築物に対
   する是正命令を行政庁に義務付ける判決を求めることができるこ
   とになる(ただし、当該是正命令が行政庁の権限に属することが、
   建築基準法上明確であることを要する)。


   ○ ウについて

      本肢事案は、申請型義務付け訴訟に該当する(行訴法3条6項2
  号)。また、当該事案は、申請が拒否されたのであるから、行訴法
  37条の3第1項2号に該当し、この場合の義務付け訴訟の手続は、
  同時に拒否処分の取消訴訟または無効確認訴訟も併合しなければな  
  らない(行訴法37条の3第3項2号)。

   本肢は妥当である。

   ※ 参考事項

   1 本肢事案は、申請が拒否された場合であるが、申請に対し相
    当期間内に応答がない場合には、申請型義務付け訴訟の提起を
        する場合は、不作為違法確認訴訟を併合しなければならない
       (行訴法37条の3第1項1号・同条の3第3項1号)。

   2 非申請型義務付け訴訟(前記イの事案について、義務付け訴
    訟を行うばあい)には、他の訴訟の併合の手続を要しないが、
    要件が厳格であることに注意(行訴法37条の2)。

 
  ○  エについて

    ○ イ ※ 参考事項で述べたとおり、「平成16年改正法は、処
    分の取消し訴訟の原告適格の拡大を図り、処分の相手方以外に原
       告適格を認めるための基準を示した(行訴法9条2項)」。

        以上の条文に照らして、本肢では、二つの論点を考察する必要が
   ある。まず、近隣の飲食店営業者は処分の相手方以外に該当する。
   しかし、次に、食品衛生法は、その名のとおり、食品の衛生を目的
   にするものであって、既存業者の営業上の利益を目的とするもので
   はない点を考慮すると、行訴法9条2項に照らし、原告は、法律上
   の利益を有せず、原告適格を欠くという理由で、却下の判決を受け
   ることになる。


    本肢は、妥当である。

  
   ※ 参考事項

    本肢は、過去問・平成18年問題44《記述式》に基づく出題で
   ある。また、前述したように、この原告適格を問題にしたものとし
   て、過去問・平成22年度問題43の多岐選択式がある。
    当該論点については、今後とも、かたちを変えて、出題される可
   能性がある。

  
  ○ オについて

   仮の義務付けは、義務付け訴訟の提起があった場合において、申立
  てができる(行訴法37の5第1項)。
 
   本肢は妥当でない。

   なお、仮の差止めもまた、差止め訴訟の提起があった場合に申立て
  できるのは、同様である(同37条の5第2項)。

 -------------------------------------------------------------------
   
  以上妥当であるのは、ウとエであるから、正解は2である。

 ---------------------------------------------------------------------
 


 [問題2]

 
 
 ● 出題の意図

    本問は、過去問・平成20年問題44に類似する。

    前記問題[1]○ ウ を参照すれば、明らかなように、過去問は、申
 請型義務付け訴訟に該当し、申請が拒否されたのであるから、この場合の
 義務付け訴訟の手続は、同時に拒否処分の取消訴訟または無効確認訴訟も
 併合しなければならない。

  これに対し、本問は、同様に申請型義務付け訴訟に該当するが、この場
 合は、申請に対し相当期間内に応答がなかったのであるから、義務付け訴
 訟を提起をするには、不作為違法確認訴訟を併合しなければならない。
      
  (以上、条文省略)
 
  なお、誰を被告とするかについては、Y県知事の処分のに対しては、
 Y県である(行訴法11条1項1号・38条)。

 

 ● 解答例

 
    Y県を被告として、設置許可の義務付け訴訟に処分不作為違法確認訴
  訟を併合して提起する。(42字)

 

 
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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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            ★ オリジナル問題解答 《第22回》 ★

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                    PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  民法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第108号に掲載してある。

 
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  ★ 参考図書
 
     民法 1・ 我妻栄/有泉亨著・勁草書房
 

 
 ◆ 図示
 
  
     A

     ↓ 抵当権《登記》

    甲土地(所有者B)→ C(第三取得者)
                《登記》

  ◆ 論点
 
 
 (1)前者の場合について。

   ズバリ本問前者では、396条の適用の問題になる。すなわち、
  前者のCは、債務者・抵当権設定者以外の抵当不動産の第三取得者
  に該当するため、この者との関係では、抵当権はその担保する債権
  から独立して時効消滅に係る。
   その時効期間は、20年である(167条2項)。

   ※ 参考事項

    ア 前記本文の記述は、396条の解釈によって、自然に導
     くことができるが、同趣旨の判例があることに注意(大判
     昭15・11・26民集19ー2100)。

    イ 396条について、もう少し分析してみると、以下のと
     おりである。
      
      担保物権はその担保する債権が時効消滅しない間は独立
     に消滅時効にかからないのが原則である。抵当権は債務者
     および抵当権設定者に対する関係においてはその原則に従
     うが、前記本文に明らかなように、その他の者である第三
     取得者・後順位権者などの他の債権者に対する関係におい
     ては、債権が消滅時効にかからない間においても、独立に
     消滅時効にかかるものとされるのである。

    ウ 本問の事例では、「被担保債権について時効中断を生じ
     た場合」に限定している それは、以下のような趣旨を含
     むものであることに注意すべきである。

      債権は一般に10年で消滅時効にかかるから(167条
          1項)、本事例のように抵当権が20年で時効消滅するの
          は、債権について時効中断の行われた場合に生ずることに
          なる(147条以下・特に157条参照)。

  (2)後者の場合について

    ズバリ本問後者では、397条の適用の問題になる。すなわち、
      後者のCも、債務者または抵当権設定者以外の者に該当するため、
      Cが抵当不動産について取得時効に必要な条件を具備する占有を
      したときは、抵当権はこれによって消滅する(397条)。

    本事例では、Cは無効であることに善意無過失であった場合に
      該当するので、その時効期間は、10年である(162条2項)。
     
   ※ 参考事項

    ア 397条について、もう少し分析してみると、以下のとお
     りである。  
     
     取得時効は原始取得として完全な所有権を取得させるものだ
        から抵当不動産について取得時効が完成した場合には、抵当権
        を消滅させることにしたのである。また、債務者または抵当権
        設定者を例外としたのは、「みずから債務を負担し、またはみ
        ずから抵当権の負担を受けた者について取得時効による抵当権
        の消滅を認めるのは不穏当だからである」(前掲書)。

    イ 162条2項の適用については、「善意・無過失」である
           ことが要件になっているが、そこで言う「善意」とは、占
           有者が自分の所有に属すると信ずることであり、「 無過失」
          とはこのように信じることについて過失のないことを意味す
     る。
      本事例では、売買に無効原因があるため、所有権は移転し
     ていないが、Cがそのことを知らなかったというのであるか
     ら、以後、甲土地を占有するCは当該土地が自分の所有に属
     すると信じていたのであり、そのように信じることに過失が
     なかったとされているので、本事例では、その点について、
     162条2項適用の要件を満たしていることになる。

  
   ◆ 解答例

    前に掲げた(1)(2)の本文を要約すると、本問の回答例が
   導かれることになる。以下、その過程を示しながら、最後に解答
   例を示すことにする。

    問題文は、「それぞれの場合において、CはAに対して、どの
   ような根拠に基づき、いかなる請求をすればよいか」ということ
   であるから、その質問内容に添って忠実に答えなくてはならない。

    まず、前者の場合については、CはA対して、Aが20年抵当
   権を行使しないことを根拠にして、抵当権の消滅を主張すればよ
   い(厳密には145条の時効の援用である)。

    次に、後者の場合については、Cが平穏に、かつ、公然と甲土
   地を占有したことを根拠にして、所有権の時効取得を主張する
  (前記と同様に145条の時効の援用をする)ことにより、抵当権
   の消滅を主張することになる。

    以上について、文言を省略して、解答例を示すと、以下のとお
   りである。
   
 
   Aが20年抵当権の不行使ため、抵当権の消滅時効。Cが10年甲
      占有のため、所有権の取得時効。(45字)
     

   ◆ 付言

     本問については、1、20年間抵当権を行使しないこと 
    2、抵当権の消滅時効 3、10年間甲土地を占有 4、
    所有権の取得時効 という4つのポイントが記載されてい
    れば、満点ないしはそれに近い点数を稼ぎだすことができ
    るであろう。

     なお、過去問としては、第三者が、抵当不動産の所有権
    を時効 によって取得した場合には、当該抵当権は確定的に
    消滅する(397条)という肢が、妥当なものとして呈示
    されている(平成21年度問題29肢エ)。
  

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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             ★ オリジナル問題解答 《第20回 》 ★

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  【テーマ】  行政法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第106号に掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第106回はこち 
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  ★ 参考図書
 
     行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行 

 
  ※ 本問については、メルマガ第106号■ 過去問 解説欄も
  参照されたい。
 
 
 ▲ 各肢の検討 


  ○ 肢アについて

    内閣府設置法64条によれば、内閣府に置かれる委員会及び
  庁は、公正取引委員会・国家委員会・金融庁・消費者庁である
  ので、その点においては、前段は正しい。

   しかし、金融庁長官・消費者庁長官と並んで各委員会には、
  別に法律の定めるとろにより、独自の規則制定権がある(内閣
  設置法58条4項)ので、その点は妥当でない。

  
  ○ 肢イについて

   国家行政組織法別表第一によれば、いずれの委員会も、各省の
  外局として置かれている。しかし、国家行政組織法13条1項に
  より、各委員会には、独自の規則制定権がある。その点、妥当で
  ない。
 
 
  ※ 肢ア、肢イに関する参考事項

 (1) 内閣に置かれる内閣府は、各省庁・各委員会に適用される
    国家行政組織法が適用外になっているため(同法1条)、
    国家行政組織法13条1項に相当する規定が、内閣設置法
    58条4項に規定されていることに注意せよ。
 
 (2) ここで取り上げられている行政委員会の特徴は(a)複数
    の委員で構成される合議制行政機関であること、(b)審議
        会とは異なり、対外的行為権限を行使することを予定されて
    いて、行政庁として行為する権限を与えられていること、
    (c)大臣との関係で、職権行使の独立性が認められている
    こと、 である。

  (3)行政委員会は、国家行政組織法の適用を受けるが、このほか
       に、同法の適用を受けない会計検査院・人事院(独立行政機
       関)が存することにも注意せよ(メルマガ第106号■ 過
       去問 解説欄   ● 総説 参照)。

  
  ○ 肢ウについて

   地方自治法138条の4第2項によれば、普通地方公共団体の委
    員会は、法律の定めるところにより、規則制定権があるので、本肢
    は正しい。本肢は妥当である。
 
   なお、地方公共団体の行政委員会は、地方自治法180条の5に
  おいて、それぞれ列挙されていて、その特徴は、前記※ 肢ア、肢
  イに関する参考事項(2)に掲げた国の行政委員会と同様である。

 
   ○ 肢エについて 

      地方公共団体の長は、法令に違反しない限り、その権限に属する
    事務に関し、規則を制定することができる(地方自治法15条1項)。
     この場合には、法律の授権は必要ではないので、本肢は妥当でな
  い。


   ○ 肢オについて 

      政令については、憲法73条6号但し書き。省令については、国家
    行政組織法12条3項。外局規則については、同法13条2項。内閣
    府令については、内閣府設置法7条4項により、法律の委任がなけれ
    ば、刑罰を設ける規定を置くことがきない。

     地方自治法14条3項によれば、条例において、法律の個別的委任が
  なくても、一定の範囲の刑罰を科する旨の規定を設けることできるとし
    ている。

     したがって、本肢は妥当である。


 ※ 参考事項

 
 (1) 条例における罰則を定めた地方自治法14条3項については、
   「地方公共団体はもともと罰則を定める権限を有しないので、この
      規定により罰則制定が委任されているという説と、この規定は、
      地方公共団体が本来有する罰則制定権を制限したものであるという
      説がある」(前掲 読本)。

 (2) 条例に対し、地方公共団体の長の定める規則には、原則として、
   5万円以下の過料(行政上の秩序罰)を科する規定しか設けるこ
   とができないことに注意せよ(地方自治法15条2項)

 (3) 本肢で列挙された政令・内閣府令・省令・外局規則は、行政手続
   法2条8号イ前段に規定する「政省令」に該当することに注意せよ
   (メルマガ第106号■ 過去問 解説欄   ● 総説 参照)。

 -----------------------------------------------------------------
 
    以上により、妥当でないものは、ア・イ・エであるから、3が正解で
  ある。

 -------------------------------------------------------------------

 ▲ 付 言


  本問は、本年度本試験から過去問をへと辿り、法令に関しては、憲法・
 行政手続法・国家行政組織法・内閣府設置法・地方自治法を網羅すると同
 時に国と地方公共団体の行政委員会の関係・あるいは政省令と条例との比
 較までをも考察したものであり、しかもここで採用された論点は、いずれ
 も重要度の高いものばかりである。
  そのバック・ボーンにあるのは、条文であり、過去問であり、そして
 極めて定評のある学術書である。
  このささやかな問題・解説が再スタートをきられた皆様の勉強の一助と
 なることを祈念するばかりである。
 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
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             ★ オリジナル問題解答 《第18回 》 ★

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                     PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  会社法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第104号に掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第104回はこちら
            ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 
 
 ★ 参考文献
   
  会社法 弘文堂 / 会社法入門 岩波新書 ・ 神田秀樹著

 
 
 ▲  問題 1

 
 ○ 1について

  本肢は、取締役等の第三者に対する損害賠償責任を規定した会
 社法429条からの出題である。

   本条の趣旨

  取締役等がその任務に違反した場合には、本来は会社に対する
  関係で責任を負うにすぎないが、その結果、株主や会社債権者が
  損害を受ける場合を想定し、会社法は、取締役等に会社以外の第
  三者に対する特別の責任を認めたものである(前掲書 会社法)。

  429条1項の前身である改正前商法266条ノ3第1項につ
  いて、最高裁の大法廷判決(最大判昭和44・11・26民集
  23−11−2150)は、取締役の任務懈怠と第三者の損害の
  因果関係について、本肢のように判示しているので、本肢は正し
  い。

  なお、当該判決は、重要判例であるので、その他の判示事項に
  も目を通しておくべきである。

    ちなみに、当該取締役の責任は、第三者に対する責任であるか
   ら、総株主の同意があっても免除できないのは当然である
  (424条参照)。

 
 ○ 2について

    本肢は、847条が規定する株主代表訴訟からの出題である。

   本条の趣旨

  株主代表訴訟とは、
  
  「取締役等の責任は本来会社自身が追及すべきものであるが、
    取締役間の同僚意識などからその責任追及が行われない可能
    性があり、その結果会社すなわち株主の利益が害されるおそ
    れがある。そこで、会社法は、個々の株主に、みずから会社
    のために取締役等に対する会社の権利を行使し訴えを提起す
    ることを認め、この訴訟は『株主代表訴訟』と呼ばれる」

   代表訴訟の対象になるのは、

   取締役等の責任追及(423条1項)・「違法な利益供与が
    なされた場合の利益供与がなされた場合の利益供与を受けた者
    からの利益の返還(120条3項参照)・不公正価格での株式
   ・新株予約権引受の場合の出資者からの差額支払い(212条
   1項・285条1項)である(847条1項)。」
  
  (以上は前掲書)

    本肢では、その対象になっているのは、取締役等の責任追及
  (423条1項)である。

   原告適格として、公開会社以外の会社では6箇月の要件はなく、
  単独株主でよい(847条1項・3項)が、委員会設置会社以外
    の監査役の設置されていない会社が、非公開会社に該当すること
    については、メルマガ104号《   ■  過去問 ・解説 
    ● 総説  B 》 に譲る。

   ただし、その手続として、原則は、会社にその訴えを提起する
    ことを請求することを要するが、その待機期間である60日の期
    間の経過により株式会社に回復することができない損害を生ずる
    おそれがある場合には、株主は代表訴訟を提起できる。

   以上のとおり、直ちに訴えを提起することができる場合がある
    ので、本肢は誤りである。本肢が正解である。


 ○ 3について

   本肢は、株主の権利としての株主の監督是正権・単独株主権に
    該当する取締役等の違法行為差止権が問われている(360条)。

   論点は二つある。

   その一つは、監査役又は委員会が設置されている株式会社は、
    公開会社である場合と非公開会社があるが、本肢の会社は非公
    開会社であるとされているので、行使前6か月の保有期間の要
    件のない単独株主が当該違法行為差止権を行使できる(360
    条2項)。

   その二つは、360条1項によれば、「著しい損害」が生ず
    るおそれがあれば、当該請求ができるが、同条3項によれば、
    監査役設置会社又は委員会設置会社は、「回復することができ
    ない損害」がおそれがある場合にしか、株主は当該請求ができ
    ない。
   その理由は、監査役設置会社又は委員会設置会社では、「著
    しい損 害」が生じるおそれがある場合には、監査役または監査
    委員が差止請求をする権限を有するからである。

   以上により、本肢は正しい。

 
 ○ 4について

   取締役等の責任は、423条1項の任務懈怠が原則であるが、
   特別のルールとして、同条2項において、本肢を内容とする規
   定が規定されているので、本肢は正しい。

 
 ○ 5について

  本肢もまた、423条の任務懈怠の原則に対して、特別ルール
  として規定されたものを列挙したものである。条文を掲げると、
  428条1項・120条4項(  )書き・462条第1項 
  第2項となる。
  
  本肢は正しい。

  その他の特別ルールとしては、利益相反取引をした場合は、取締
  役等について任務懈怠が推定される(423条3項)

 -----------------------------------------------------------------

  以上、誤っている肢は、2であるから、正解は2である。


-------------------------------------------------------------------
   

  ▲  問題 2


  ○ 肢アについて

  328条1項によれば、委員会設置会社以外の大会社で公開会社
 は監査役会を置かなければならないことになっているので、本肢の
 前段は、設置強制であって、「できる」ということではない。
  なお、327条4項参照。ここでいう「監査役」には当然「監査
 役会」も含む。

  また、326条2項によれば、株式会社は、定款の定めによって、
 任意に監査役・監査役会を設置できるので、それ以外の会社では、
「監査役会を置くことはできない」とする本肢は、この点でも正しく
 ない。

  本肢は、正しくない。

  なお、本肢では、以下の重要論点が伏在していることに注意せよ!

   これ(『大会社かつ公開会社』は監査役会設置が義務づけられ
    るの)は、改正前商法で認められていたことでもあり、上場会社
    などの大規模会社ではこのパターンに属することになる。問題は、
   『大会社かつ非公開会社』について、会社法では監査役会をを設
    置 しない道が開かれたことに意義が ある。改正前商法では、大
    会社は必ず監査役会を置かなければならなかったのを改めたので
    ある。例えば、100パーセント子会社などで規模が大きいため
    に大会社に該当するような会社は結構存在するが、そのような会
    社の場合は、 定款で全部株式譲渡制限を定めれば、つまり、非
    公開会社になれば、監査役会を置かなくてもよくなったのである。
    335条3項・390条3項によれば、監査役設置会社では、
    監査役3名以上、半数以上は社外監査役 1名以上は、常勤監査
    役であることが要求されるが、 非公開会社になれば、そのよう
    な負担から解放されるのである (メルマガ104号・余禄欄)。

 ○ 肢イについて

  327条2項により正しい。
   
     本肢では、以下の「余禄欄」参照

 
 美里「はい。327条2項本文では、取締役会設置会社は、(委員
       会設置会社を除いて)監査役を置かなくてはならないことに
       なっていますが、これは監査役会 が設置さ れていても監査
       役が置かれていること相違ありませんから、監査役会設置会
       社を含む 趣旨ですね。しかし、同条ただ し書きでは、公開
       会社でない、会計参与設置会社では監査役を置かなくてもよ
       いのですね」

 先生「すべての会社では、会計参与の設置は任意に可能であるから、
       取締役会+会計参与というパターンはある。しかし、このパ
       ターンが許されるのは、公開会社ではないことのほかに大会
       社でない ことが要求される。大会社の定義は、2条6号に
       規定されているから、これをみておくとよい。それでは、こ
       の大会社でないことはどこから導かれるか?」

 美里「ううん!・・328条2項によれば、公開会社でない大会社
       は、会計監査人設置会社でなくてはなりません。そして、3
       27条3項によれば、会計監査人設置会社は監査役設置会社
       でなくて はなりません。だから、監査役の設置をしなくて
       もよいのは、大会社以外になります」
 
 先生「つまり、取締役会+監査役(監査役会を含む)の例外として、
       取締役会+ 会計参与のパターンが許されるのは、非公開会社
       であって 非大会社である場合にしか許されないことになる。
       改正前商法では、株式会社においては、常に、取締役会+監
       査役が要求されていたが、 会社法が認めるその例外措置に
       ついては、このように限定したものになっていることに注意
       する必要がある・・・・・・・・・」

 ○ 肢ウについて

  監査役の権限

   原則・監査役は、取締役(会計参与設置会社では会計参与を
            含む)の職務の執行を監査する機関である(381条
             1項)。したがって、その職務と権限は、会計の監査
            をを含む業務全般の監査に及ぶ(会計監査を除いた部
            分を「業務監査」と呼ぶこともある)。(前掲会社法)

   例外・公開会社以外の会社(監査役設置会社または会計監査
            人設置会社を除く)では、定款で、監査役の監査権限
            の範囲を会計監査に限定することが認められる
            (389条1項)。

       本肢は、例外の389条1項(  )がきに反する
      ので、正しくない。

 ○ 肢エについて

  本肢は、335条3項の規定どおりであり、正しい。
  「その半数以上」とあるのは、過半数でないことに注意!

  なお、監査役会は、少なくても一人は常勤の監査役を選定しな
  けれ ばならない(390条3項)ことにも注意。

 ○ 肢オについて

  取締役会を置かない場合には、監査役会設置会社にも委員会設置
  会社になることもできない(327条1項2号・3号)ので、本肢
  は正しくない。

 ----------------------------------------------------------------

    以上により、正しいのは、イとエであるから、正解は3である。
    
------------------------------------------------------------------   
 
 
 ▲  問題 3

 
 1について

   公開会社の定義(2条5号)はすこし、ややこしいが、要するに、
 全部株式譲渡制限会社以外の会社である。このような公開会社は、
 327条1項1号によって取締役会設置会社であることが義務づけ
 られている。ちなみに、 この場合、取締役は3名以上であることを
 要する(331条4項)。正しい。

 2について

   327条1項3号により、取締役会設置会社は、委員会設置会社を
 選択できる。ただし、委員会設置会社は、監査役を置くことができ
 ない(327条4項)ので、監査役を置いた取締役会設置会社は、
 委員会設置会社を選択できない。本肢は正しい。
 
 3について

   327条2項によると、委員会設置会社を除いて、取締役会設置
 会社は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でなく
 て、会計参与を置いている取締役会設置会社は、監査役を置く必要
 はない。なお、当該会社は、大会社以外であることを要する。
  
  その論拠については、前記 ▲  問題 2 ○ 肢イ について
 参照

 本肢は正しい。

 
 4について

    3のとおり、取締役会設置会社は、委員会設置会社を除いて、原
  則として、監査役を置かなくてはならないが、 監査役を置いたた
  め、取締役会設置が義務づけられることはない。
 
   本肢が誤りであり、正解である。

  ただし、監査役会設置会社の場合には、取締役会設置が義務づけ
 られる(327条1項2号)ことに注意。


 5について

  すべての株式会社は、株主総会と取締役が最少限度必要である
(295条以下・236条)が、取締役会または監査役を設置して
  いなくても設立できる。

  本肢は正しい。

 
------------------------------------------------------------------
 

  本問では、誤っているのは4であるから、正解は4である。


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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              ★ オリジナル問題解答 《第17回 》 ★

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                                   PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  行政法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第103号に掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第103回はこちら↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 
 
 ◆ 参考文献
   
  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行
 


 
 ▲  問題 1

  
   ☆ 参考サイト

  行政事件法第38回
 
 ■サイト第38回はこちら↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/814527.html


 ◆ 各肢の検討

  
  ○ アについて

   本肢は、行訴法8条1項の「自由選択主義」に対する例外の同条
    同項のただし書きが規定する「不服申立ての前置」が取消訴訟の要
    件になっている場合である。

   8条2項各号により、例外として、前置なく取り消し訴訟が提起
    できる場合が規定されている。 本肢は、同条同項二号に規定があ
    る。

   以上のとおり、本肢は妥当である。

   ★ 参考事項

   行政不服審査法によると、異義申立てには決定がなされ、審査請
    求には裁決がなされることになっているが、行政事件訴訟法では、
    両者を含めて、「審査請求」「裁決」という言葉に統一されている
    ことに注意せよ。

  
  ○ イについて

   法8条第1項ただし書きによれば、不服申立ての「前置」は「処
    分取消しの訴」 に該当する。
     法38条は、法8条1項ただし書きを無効確認訴訟に 準用してい
   ない。

     無効確認訴訟については、まさに「前置」といった制限を設けず、
   いつでも起こせる抗告訴訟であるところにこそ、この訴訟のほんら
   いの意味があるからである。(入門参照)したがって、個別の法に
   おいて、前置の規定があっても、無効確認訴訟には適用がない。

     以上の記述に反する本肢は妥当でない。


    ○ ウについて

     本肢では、前置が処分取消訴訟の要件とされていない場合におい
   て、いきなり処分取消訴訟を提起しないで、審査請求を選択した場
   合に相当する。
    換言すると、「自由選択主義」に基づいて、行政上の不服申立て
  を先行させた場合である。

  審査請求があったときの出訴期間に関する14条3項の規定は、
  前置の場合に限っていないので、この場合にも適用されることになる。
   したがって、この場合にも、処分取消訴訟の出訴期間は裁決の時点を
  基 準として判断されることになる。
  おそらく、当該規定は、裁決の結果 をみて、原処分の取消訴訟を提
  起 しようとする相手方の意思を尊重したものであろう。そうであれば、
 前置に限定する必要はない。
  
  なお、これは、教科書では一般に触れられていないので、常識によ
  っ て判断することになるだろう。

  以上の記述に従えば、本肢は妥当である。


 ○ エについて

   原則は、「原処分主義」である。
   例外としての「裁決主義」は次のとおりである。

   個別法が裁決主義を採用している場合においては、元の処分に対
    する取消訴訟は提起できず、裁決取消訴訟のみが提起でき、元の処
    分の違法についても、そこで主張すべきこととなる。

     以上の記述に反する本肢は、妥当でない。


 ○ オについて

     前段は妥当である。しかし、原処分主義が採用されている場合
   でも、裁決に対しても取消訴訟を提起することは許されている。
 
    なお、「裁決の取消の訴え」を「処分の取消しの訴え」と併合し
  て提起することも許されている。

  以上の記述に従えば、後段が妥当でない。

 

 ------------------------------------------------------------------

   以上に従えば、アとウが妥当であるので、正解は1である

 ------------------------------------------------------------------


   ▲  問題 2

   アが、10。イが、19。ウが、4。エが、16。
   
   アが裁決。イが原処分。ウが修正裁決。エが原処分主義。

   メルマガ第103回《余禄》欄参照のこと。
 

  ▲  問題 3

 
   法3条によれば、不服申立ての種類は、アのとおり、3種類
    であり、正しい。エは40条2項により正しい     

    イについては、以下のとおりであるから、誤りである。
   
   再審査請求とは、一度審査請求を終えた後にさらに行う例外的
    な不服申立てである(法3条1項)。この申立ては、当該審査請
    求の裁決に不服がある場合、当然にすることができるのではない。
    行政不服審査法自体が定めている特定の場合・法律または条例
    によって特に定められている場合にだけ、その法律、条例が特に
    定める行政庁へ申立てができる(法8条)。したがって、法律に
   「再審査をすることができる旨」の定めがある場合に当該申立てが
    できるのである。
 

  ウは47条1項で「裁決」が「決定」である。誤り。
  オは、47条2項で、「却下」が「棄却」である。誤り。
      
   したがって、ア・エが正しくて、正解は3である。
          
   公式として、不服申立て要件をみたさないときは、門前払いの
 「却下」。 本案の審理がなされたうえ、言い分を認めないときは、
 「棄却」。異議申立てに対する裁断行為が「決定」であり、審査
  請求に対しては「裁決」である。 
   結局、これらの組合わせの問題である。

 
  ▲  問題 4

   解答例

   審査庁は、審査請求が不適法であることを理由として、裁決で
    当該審査請求を却下する。   
               
             40字

 
     法40条参照

 

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