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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 27回 】★      
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 2009/4/28


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
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【テーマ】行政法・審査基準
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 平成19年度過去問 

 問題12

 行政手続法による審査基準に関する次のア〜オの記述のうち、妥当
 なものはいくつあるか。

 ア 審査基準の設定は、行政手続法の委任に基づくものであり、
   申請者の権利にかかわるものであるから、審査基準も法規命令
   の一種である。

 イ 不利益処分についての処分基準の設定が努力義務にとどまる
   のに対して、申請に対する処分についての審査基準の設定は、
   法的な義務であるとされている。

 ウ 審査基準に違反して申請を拒否する処分をしても、その理由
   だけで処分が違法となることはないが、他の申請者と異なる
   取扱をすることになるため、比例原則違反として、違法となる
   ことがある。

 エ 審査基準の設定には、意見公募手続の実施が義務付けられて
   おり、それに対しては、所定の期間内であれば、何人も意見を
   提出することができる。

 オ 国の法律に基づいて地方公共団体の行政庁がする処分に
   ついては、その法律を所管する主務大臣が審査基準を設定する
   ことになる。
  

 
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■ 解説
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 ▲ 参照書籍は、前回(26回)の問題・解説欄に掲載した。
 
 
 ◎ 審査基準とは
 
  審査基準の設定・公表について行政手続法5条1項に規定がある。
 この規定は、要するに、行政庁に対し、申請に対する処分について、
  できる限り具体的な審査基準を定めること、およびそれを公にする
 ことを求めるものである。
  これは、行政庁が行政裁量を行使する際の裁量基準の一種である。
 (読本)

 ◎ 各肢の検討

 アについて。

 審査基準は通達であり、裁量基準であるから、その法的性質は、
 行政内部規範であって法規範ではなく、法的拘束力を持たない。
 したがって、行政立法の分類に従えば、「法規命令」ではなく
 「行政規則」に該当する。
 なお、この審査基準は、行手続法の委任に基づくものではないが、
 行手法に制定手続が定められていること等を理由に、正式の
 「法規命令」ではないにせよ、一定の法的拘束力を認めるべき
 ではないかという指摘がある。(読本)

 妥当でない。

 イについて。

 12条によると、不利益処分についての処分基準の設定が努力
 義務になっている。これと対比すると、「・・するものとする」
 5条1項の規定については、「行政手続法は、審査基準の設定を
 行政庁に原則として義務づけるものと解釈するのが自然である。」
(読本)審査基準の設定・公表が義務的であり、処分基準
 にあっては、両者とも努力義務となっていることは、過去問の
 他の肢で何度も問われている。


 妥当である。

 注 不利益処分は、2条4号に規定がある。営業停止命令など
 がこれに該当する。12条1項において、処分基準の設定・公表が
 努力義務にとどまる理由としては、「処分基準を公表すると、場合
 によっては、違反すれすれの行為が行われたり、処分を巧妙に
 免れる脱法行為が行われたりすることがあることに配慮したため
 である。」(読本)

 審査基準の設定・公表が義務的であり、処分基準 にあっては、両者
 とも努力義務となっていることは、過去問の 他の肢で何度も問われ
 ている。

 ウについて。

 前述したとおり、審査基準は、法的拘束力を持たないので、審査基準
 に違反しただけでは、違法となることはないという点は正しい。
 しかし、他の申請者と異なる取扱いをすれば、法の下の平等に反し、
 「平等原則」に反して、違法となることがある(第2コース第23回
 エ欄参照)。したがって、比例原則ではない。

 妥当でない。

 エについて。

 行手法は、39条以下において、「意見公募手続」を定めている。
 意見公募手続の対象となる命令等の中には、審査基準・処分基準・行政
 指導方針も含まれる(39条1項・2条8号)。この意見公募手続は、参加
 手続であって、公益のため、よりよい行政決定を行うために、行政の
 意思決定に広く国民の意思を反映させようとするものである。(読本)
 条文上も、「意見提出期間を定めて広く一般の意見を求めなければなら
 ない」と定めている(39条1項)。したがって、所定の期間内であれば、
 何人も意見を提出することができるので、この肢は全体として正しい。

 妥当である。

 注 行政指導方針の定義は、2条8号ニの括弧内。

 
 オ 審査基準は、処分を行う行政庁によって設定されることになっている
 ので、本肢は誤り。

 妥当でない。
 


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第8回 】★      
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 2009/1/27

             
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【テーマ】 民法・総則

【目 次】 1 民法・総則(無権代理に相続がからむ)
      
      2 解説


 
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■ 民法総則・問題(無権代理と相続))
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 (平成20年度過去問)

 問題 28
 
 
 Aの子Bが、Aに無断でAの代理人としてA所有の土地をCに売却する
 契約を結んだ。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定
 および判例に照らし、妥当なものはどれか。


 1 CはAが追認した後であっても、この売買契約を取り消すことが
できる。

 2 Bが未成年者である場合、Aがこの売買契約の追認を拒絶した
 ならば、CはBに対して履行の請求をすることはできるが、損害賠償
 の請求をすることはできない。

 3 Aがこの売買契約の追認を拒絶した後に死亡した場合、BがAを
 単独相続したとしても無権代理行為は有効にはならない。

 4 Aが追認または追認拒絶をしないまま死亡してBがAを相続した
 場合、共同相続人の有無にかかわらず、この売買契約は当然に
 有効になる。

 5 Cが相当の期間を定めてこの売買契約を追認するかどうかをAに
 対して回答するよう催告したが、Aからは期間中に回答がなかった
 場合、Aは追認を拒絶したものと推定される。
 

 

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■ 解説
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 ◎ 状況把握
 
   
 A所有の土地--------Aの子B------C

 
本人   無権代理人  売買契約
   AーーーーーB−−−−−ーーーC

 ○ BがAに無断でAの代理人としてA所有の土地をCに売却するのは、
 無権代理。(子が、委任状を偽造して親の代理人として、不動産を
 売却するのは、実務上よく生じる事例)

 条文
      
 (無権代理)
                                  ・・
 民法113条1項・代理を有しない者が他人の代理人としてした契約は、
 本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
(親子は他人じゃない、などと、余計なことを考えないこと。
 ここでは、無権代理人たる者以外の者という意味)

 追認・本人は、無権代理人の行為によって、何らの法律効果を
 受けないが、この追認により、代理権があったと同様の効果を生
 じさせることができる。(実際にも、本人にとって、有利だと後
 から分かったなら、追認する方が得。実務上は、親子間で実際に
 代理権の付与があったかどうかは微妙。親は後から、自分の得に
 なれば、追認・不利なら、黙秘して、無権代理により効果を
 受けないということもありがち)


 1と5について。

 無権代理の相手方であるCの取消権は、本人であるAが追認しない
 間である(民法115条本文)から、CはAが追認した後は、取り消
 すことはできない。相手方の取消権は、本人の追認する可能性を
 なくすることだから、本人が追認してしまえば、その可能性をなく
 することもできない。
 
 1の肢は、妥当でない。

 関連事項
 
 (1)相手方が悪意であった(無権代理であることを知っていた)
 場合には、取消権を持たない(115条ただし書き)。

 (2) 相手方には、取消権のほかに催告権が認められている
 (114条)。相手方は本人に対して催告をして法律関係を確定
 させることができる。この相当の期間を定めてする催告に
 対して、回答がなかった場合には、追認を拒絶したものと
 みなされる。

 肢5では、追認を拒絶したものと「推定」されるとなって
 いますが、法文上は「みなす」となっています。
 
 したがって5も妥当ではありません。
 
 みなすは反証を許さないのであって、
 そこが、推定と異なります。
 この点は、「基礎法学」の問題として、過去問平成10年度
 問題47肢1において、問われています。
 
 なお、この催告権は、(1)と異なって、悪意 の相手方にも
 認められていることに注意。

 (以上は、一粒社 民法1参照)

 (3)反対に、相手方が取り消した後、本人は、追認ができるか。
 否であろう。相手方の取り消しは、本人の追認の可能性を
 なくすることだから。


 2について。

 117条2項後段により、履行請求、損害賠償請求もできない。
 この肢は、前回(第3号)のオリジナル問題 問題3の肢4
 と重なりますね。


 
 3と4について。

 これらは、無権代理と相続がテーマになっているので、同時に
 解説することにします。
 
 
 まず、判決(最判昭和37・4・20 模範六法 113条 6 989頁
 前段部分)によりますと、「無権代理人が本人を相続した場合
 には、その無権代理行為は相続とともに当然有効となる」と
 しています。
 つまり、もともと、無権代理人Bは、本人Aの代理人として、
 売買契約を結んだのですから、Aが死亡してAを相続した以上、
 はじめから代理権のある者が行為したのと同視すべきである
 というのが、判例の立場です。考え方としては、Bは、相続
 により本人の追認拒絶権を引き継ぎ、これを行使して、契約
 を無効にするということもできそうです。
 しかし、判例は、信義則上、無権代理人に対し、そのような
 行為を認めませんでした。
 
 
 本人の死亡
 
 ×本人の追認拒絶権を引き継がない。

 ○無権代理人の契約=代理権のある者が行為したのと同視
  
 これを基本判例(当然有効説)として、肢3と4をみて
 みましょう。

 肢3

 BがAを単独相続した場合において、基本判例は、当然有効と
 みますが、これは、本人が追認も追認拒絶もしないままに死亡
 した場合です。生前に、本人Aが追認拒絶していた(113条)
 場合には、無効に確定しこれを、Bが引き継ぐと考えると、
 「無権代理行為が有効になるものではない」ということに
 なります。判例(最判平10・7・17 模六 113条 989頁)
 は、この考えに立ちます。

 したがって、3は妥当であり、これが正解です。
 
 
 なお、本人が生前に追認していた場合には、どうなる
 でしょう。
 この場合には、当然有効ですね。

 

 肢4

 これは、Aが追認または追認拒絶をしないまま死亡した
 場合ですから、基本判例の事例ですが、基本判例が単独
 相続であるのに対し、これは、共同相続の場合です。

 図示します。


 単独相続(基本判例)             

 
             売買契約当然有効
 
 本人A      無権代理人 BーーーーC


 
 
 共同相続
                売買契約当然に有効にならない
                (相続分に相当する部分)
 
 本人A           無権代理人 B−−−−−C
                                 D
                                 E

                  ※BDEは共同相続人

 
 以上の共同相続を判例(最判平5・1・21 模六 113条 9)
 にあてはめますと、下記のとおりです。

 無権代理人Bが、本人Aを、他の共同相続人D・Eとともに
 共同相続した場合、無権代理行為の追認は、共同相続人
 全員B・D・Eが共同して行う必要があるので、無権代理人
 Bの相続分に相当する部分についても無権代理行為が
 当然に有効となることはない。

 つまり、単独相続の場合には、追認があったのと同様の
 効果が認められるが、共同相続の場合には、全員が共同
 して追認を行う必要があることが重視されたのであろう。

 したがって、共同相続人のある場合には、この売買契約
 は当然に有効とならないので、肢4は妥当でない。

 最後に、本問とは直接関係ないですが、さきに掲げた
 基本判例(模六・113条 6)の後段部分が問題
 になります。
 
 それは、「本人が無権代理人を相続した場合」です。
 この場合には「被相続人の無権代理行為は本人の相続に
 より、当然には有効とはならない」ということです。
 つまり、本人は、無権代理人を相続しても、なお、
 追認を拒絶できるということなのでしょう。

 今回は、折角作成した原稿を操作ミスで飛ばしてしまい、
 やり直しに時間がかかりました。その意味では、これは、
 苦心の作です(笑)
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