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        ★ 過去問の詳細な解説  第72回  ★

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                    PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】
  
     地方自治法(監査制度)        


  【目次】   問題・解説


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 ■ 問題 平成21年度問題 22
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   地方自治法の定める監査制度に関する次の記述のうち、正しい
 ものはどれか。

 1 戦後、地方自治法が制定された際に、監査委員による監査
     制度のみならず、外部監査制度についても規定された。

  2 普通地方公共団体の事務の執行に関する事務監査請求は、
  当該普通地方公共団体の住民であれば、1人でも行うことが
    できる。

  3 普通地方公共団体の事務の執行に関する事務監査請求は、当
    該普通地方公共団体の住民であれば、外国人でも行うことがで
  きる。

  4 監査委員による監査は、長、議会または住民からの請求があ
    ったときにのみ行われるため、その請求がなければ監査が行わ
    れることはない。

  5 監査委員の監査の対象となる事務には、法定受託事務も含ま
    れている。

 
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 ■ 解説
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 ◆  肢1について

  現行地方自治法(昭和22年4月17日法律67号)制定に際し、
 監査委員による監査制度が制定されたとするのは、正しい。
  
  しかし、外部監査制度は、平成9年の改正によって新しく導入
 されたものであるので、本肢は誤りである。

   頭の隅に、外部監査人による監査の制度は後から導入されたもの
 だという意識さえあれば、本肢は即正解だ!

  《参考事項》

 ア 監査委員は、必要的委員(委員会)として、すべての地方公共
  団体に必ず置かなければならない(地方自治法180条の5第1
  項4号)。

 イ 外部審査制度→一定の資格等を有する外部の専門家が、地方
    公共団体との契約によって監査を行うものである。
   従来の監査委員の監査より独立性と専門性を強化したもので
   ある(地方自治法252条の28第1項)。

  注

  外部審査制度に焦点を当てた過去問として、2000(平成12)
  年・問題20がある。

  なお、以下の肢に注意!

  外部審査制度が設置された地方公共団体については、これまでの
  監査委員は、条例の定めるところにより、廃止することができる(
 前記問題20・肢4)。

   いわゆる外部審査制度の導入により、地方公共団体は、公認会計士、
 弁護士など、外部の一定の資格の資格ある者(外部監査人)と外部監
 査契約に基づいて、その者の監査を受ける場合は、従来の監査委員を
 おかないことができることになった《2005(平成17)年問題
 18・肢4》

  前記《参考事項》アの必要機関としての監査委員の地位に照らし、
 いずれも×。

 
  ◆ 肢2について

   地方自治法12条2項によれば、普通地方公共団体の住民は、その
 属する普通公共団体の事務の監査を請求する権利を有する。
 しかし、地方自治法75条1項によれば、選挙権を有する者が、有
 権者総数の50分の1の連署をもってしなければならないことになっ
 ている.

  本肢は誤りである。

  《参考事項》

  地方自治法242条の規定する住民監査請求との比較

  この住民監査請求制度は住民が1人でもできる。
 
  請求の対象については、事務の監査請求が事務の執行全般に及ぶ
  (199条1項・2項参照)のに対し、住民監査請求は、財務会計上
  の行為(242条1項参照)である。

   請求の相手方は、いずれも、監査委員である。

 注

  地方自治法の体系からすれば、事務の監査請求が「直接請求」
  制度の一つであるのに対して、住民監査請求は、「直接請求」
 以外の「直接参加」の制度として、財政コントロールを目的と
 する。

   ◎ 参考事項については、過去問で繰り返し問われている。

 
 ◆  肢3について

   地方自治法75条1項の規定する事務の執行に関する監査請求は、
   地方自治法12条2項によれば、「日本国民」に限られている。
 
  本肢は、誤りである。

 
 《参考事項》

 
   「地方公共団体の住民」の概念は整理をしておかないと、混乱
    を生ずる。

    (1) 地方自治法10条1項が基本⇒「市町村の区域内に住所
    を有する者」となる。したがって、具体的には、当該地方
        公共団体の区域内に住所を有する者となる。

     この要件を満たせば、外国人、法人も住民となる。

  (2) 本肢でみたとおり、事務の執行に関する 監査請求は、
    「日本国民」に限ることになるのに対して、 住民監査請
     求においては、日本国民に限るとされていない(地方自
         治法242条1項参照)。
        
    以上からすれば、住民監査請求では、住民なら、法人でも
      外国人でも、住民監査請求ができるのである。


 ◆  肢4について

   監査委員による監査は、定例監査(199条4項)、随時監査(同条
  5項)があるので、本肢は正しくない。


 ◆ 肢5について。

   地方自治法上、法定受託事務全般を対象外とする規定はない。
    地方自治法199条2項によれば、一定の場合を除き、法定受託事務
  に及ぶことになっている。
  
    したがって、本肢は正しい。

 
 《参考事項》

 
 ☆ 法定受託事務
 
   国などから地方公共団体に委託するものである。

  地方自治法において、第1号法定事務と第2号法定事務について
 定義されている(同法2条9号)。

   第1号は、「国が本来果たすべき役割に係るもの」であり、第2号
 は、「都道府県が本来果たすべき役割に係るもの」である。

 
 ☆ 類似の過去問

   監査委員の権限は、地方公共団体の事務のうち、いわゆる自治事務
 を対象とするものであって、法律に特別の定めのない限り、法定受託
 事務には及ばない《2005(平成17)年問題18・肢1)。

  当然×

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   以上、本問に関しては、類似の過去問もあり、基礎知識さえあれば、
 難なく正解である5を導くことができる。

 しかし、この際、関連事項に関する知識もしっかり把握しておきたい。

 
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       ★ 過去問の詳細な解説  第71回 ★

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  【テーマ】 国家賠償法=営造物管理責任(前回の続き)
  
             地方自治法


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 ■ 問題 平成19年度問題20 肢3・4抜粋
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   国家賠償法2条の定める営造物管理責任に関する次の記述のうち、
 妥当なものはどれか。

 3 営造物の管理責任は、営造物の物理的瑕疵を問うものであり、
  営造物を管理する公務員の管理義務違反は国家賠償法1条の責
    任であって、同法2条の責任が問われることはない。

 4  営造物の瑕疵は、営造物そのものに物理的瑕疵がある場合を
   元来指すが、第三者の行為により営造物が瑕疵がある状態にな
   った場合にも、その状態を速やかに改善して瑕疵のない状態に
  回復させる責任が営造物管理者にはある。

  
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 ■ 問題 平成21年度問題21
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   以下の記述のうち、地方自治法に規定されている内容として、誤
 っているものはどれか。

 1 地方自治法に定める「自治事務」とは、地方公共団体が処理
  する事務のうち、法定受託事務以外のものをいう。

  2 地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の
    福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げ
  るようにしなければならない。

  3 地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努めると
    ともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を
  図らなければならない。

  4 市町村が当該都道府県の条例に違反して事務を処理した場合
    には、その市町村の行為は無効とされる。

  5 市町村は、その事務を処理するに当たり、当該都道府県知事
    の認可を得て、総合的かつ計画的な行政の運営を図るための基
    本構想を定めなければならない。

 

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 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
  ■ 平成19年度問題・解説

   前回やり残した問題について、解説を行う

 
 ○ 肢3について

  国家賠償法2条の「設置・管理の瑕疵」の文言の意味

                    ・・
  行為瑕疵説→営造物の設置・管理という行為に瑕疵がある。

  営造物瑕疵説→営造物それ自体に瑕疵がある場合に営造物管理
         責任が認められる。

   本肢は、営造物瑕疵説に基づく見解であるが、以下の説明に
  注目!

  「営造物に物的欠陥はあるがその設置・管理上の措置に落ち度
      がないということはあまりないであろう。・・・
   他方、営造物に物的欠陥がなくてもその設置・管理に落ち度
   があるという事態は十分に考えられる。・・・
   従って、行為瑕疵説の方が、国家賠償法の文言に忠実である
      上、被害者救済を広く認めるという点でも優れていると言え
   る。」

   (前掲読本 391頁)

   以上の記述からすれば、「営造物の設置・管理という行為」
    に落ち度がある「営造物を管理する公務員の管理義務違反」は、
  国賠法2条の責任が問われることはあり得る。

   以上によれば、本肢は妥当でない。

  ★ 付 言

   営造物の管理行為について、「公権力の行使」に当たるものは、
  国賠法1条の適用をし、そうでない管理行為には、同法2条1項
    が適用されるのかという問題がある。

   以下の説に注目!
  
  「むしろ、営造物の管理行為である以上『公権力の行使』に当
   たるものであっても、同法2条1項を適用するという考え方
   が穏当ではないだろうか。」
   
   (読本 393頁)


   本肢の短い文言の中には、以上の論点がつまっている。将来の
 本試験対策のためには、このあたりまできっちりと、把握してお
 くことが望ましい。

 
 
 ○ 肢4について

   本肢は、肢3において、説明した「行為瑕疵説」に立つもので、
 妥当である。

  前回(70回)において、引用した判例を再度掲げておく.。

    判例としては、道路中央線付近に故障した大型自動車が長時間に
  わたって放置された事例について、最高裁は、道路管理に瑕疵が
    あったとして、国賠法2条の適用を認めている(最判昭50年
    7月25日)。(前掲入門 268頁)

  
 
  ■ 平成21年度問題・解説

   ○ 総説

    本問は、すべて、条文どおりの設問であるが、条文を知らなくても
  肢4・5に絞られるであろう。
  
  都道府県と市町村の関係は基本的には、協力・対等な関係にあり、
 都道府県が市町村を統括する事務を行うことはできない。

  という認識があれば、5が誤りであることを容易に見抜くことが
  できるあろう。

  ○ 各肢の検討

  
 ◆ 1について

  地方自治法22条8項のとおりであり、正しい。

  現実に地方公共団体が処理する事務は多種多様にわたるため、積極
 に定義することができないからであろう。

 参考事項

 ☆ 法定受託事務
 
   国などから地方公共団体に委託するものである。

  地方自治法において、第1号法定事務と第2号法定事務について
 定義されている(同法2条9号)。

   第1号は、「国が本来果たすべき役割に係るもの」であり、第2号
 は、「都道府県が本来果たすべき役割に係るもの」である。
  その概念を把握しておく必要がある。


 ◆ 2について

   同法2条14号のとおりであり、正しい。

  同法1条の目的規定では、「能率的な行政の確保」が記されている。
 
  同法1条の2の役割規定では、「住民の福祉の増進を図ること」が
 記されている。

 私は、以上の3つの条文は連動していると思う。

 ◆ 3について

 
 同法2条15号のとおりであり、正しい。

 参考事項

 ☆ 同法7条の市町村の廃置分合

 ☆ 市町村の合併の特例等に関する法律(平成16年法律59号・
  平成22年3月31日限りで失効する限時法)

  市町村の規模の適正化を目的とする。特に後者においては、条文で
  明記されている。

  7条の廃置分合→分割・分立・合体・編入を意味するが、平成の大
  合併は、合体と編入が行われた。両者を合わせて、合併という。


 ◆ 4について 

  同法2条16号・17号のとおりで正しい。

  その根拠は以下のとおりである。

  都道府県は市町村を包括する広域の地方公共団体として、市町村
  の連絡調整に関する機能を有している(同法2条5項)ことから、
  都道府県の条例に違反したす市町村の行為は無効になる。


  ◆ 5について

  同法2条4号によれば、「都道府県知事の認可」ではなく、「議会
  の議決を経て」となっている。誤りである。

  その根拠は、総説において記したが、以下の点も考慮すべきであろう。

  市町村優先の原則→普通公共団体の事務は、まず基礎的な普通地方公
 共団体である市町村が処理することになる(同法2条3項)。


   参考事項

   都道府県と市町村の関係

 
  市町村優先の原則(同法2条3号)

   都道府県→  広域事務・連絡調整事務・補完的な事務(同法2条5号)

   

 以上のとおり、正解は5である。


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        ★ 過去問の詳細な解説・第68回 ★

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  【テーマ】 行政事件訴訟法

     
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 ■ 問題 平成21年度問題17
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   行政事件訴訟法に定められた仮の救済制度に関する次の記述の
 うち、正しいものはどれか。

   1 行政庁の処分その他の公権力の行使に当たる行為については、
   行政事件訴訟法の定める執行停止、仮の義務付けおよび仮の差
   止めのほか、民事保全法に規定する仮処分を行うことができる。
   
   2 仮の義務付けおよび仮の差止めは、それぞれ義務付け訴訟ないし
   差止め訴訟を提起しなければ申し立てることができないが、執行
     停止については、取消訴訟または無効等確認訴訟を提起しなくても、
     単独でこれを申し立てることができる

   3 申請に対する拒否処分に対して執行停止を申し立て、それが認め
     られた場合、当該申請が認められたのと同じ状態をもたらすことに
     なるので、その限りにおいて当該処分についての仮の義務付けが認
     められたのと変わりがない。

  4 執行停止は、本案について理由がないとみえるときはすることが
     できないのに対して、仮の義務付けおよび仮の差止は、本案について
   理由があるとみえるときでなければすることができない。

   5 処分の執行停止は、当該処分の相手方のほか、一定の第三者も申し
     立てることができるが、処分の仮の義務付けおよび仮の差止めは、
     当該処分の相手方に限り申し立てることができる。
 
  

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 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 
 ◆ 各肢の検討


  ● 肢1について。

  行訴法44条によれば、「行政庁の処分その他の公権力の行使に
 当たる行為」ついては、仮処分が許されないとしている。

  したがって、本肢は誤りである。

   なお、次の指摘は大切である。

   「・・この仮処分制限の代償として、抗告訴訟について執行停止
   、仮の義務付け、仮の差止めという仮の救済制度が設けられて
  いる」(前掲 読本354頁)
 
   ここにおいて、本問のテーマの導入部分が提示されたことになる。

 
 ● 肢2について。

 (1)仮の義務付けの積極的要件として、義務付け訴訟の提起を
    要する(行訴法37条の5第1項)。

     この点において、本肢は正しい。

 (2)仮の差止めいついても、同様に差止め訴訟の提起を要する
    (行訴法37条の5第2項)。

     この点も、本肢は正しい。
  
 (3)執行停止の形式的要件として、「処分の取消しの訴えの提起
   があること、すなわち本案訴訟である取り消し訴訟が適法に裁
   判所に提起されていることが必要である」(行訴法25条2項)
    
  (前掲 読本 348頁)

   なお、当該規定は、無効等確認訴訟にも準用されていること
  にも注意すべきである(行訴法38条3項)。
 
     (3)に反する本肢は、全体として、正しくない。


   ○ 関連事項

   義務付け訴訟に関連して、平成19年度過去問・問題17肢3(正しい)
 とその解説を掲げておく(サイト36回)。

   
    Xが市立保育園に長女Aの入園を申込んだところ拒否された場合
  において、Xが入園承諾の義務付訴訟を提起する場合には、同時に
    拒否処分の取消訴訟または無効確認訴訟も併合して提起しなければ
    ならない。

  《解説》 

  不作為の違法確認では、違法だということの「確認」を求めるだけで
  あるから、有効であるとはいえないため、裁判所が行政庁に何らかの
  行為をすべきことを命ずる判決することが要請される。これが3条6号
  の義務付け訴訟である。
  この義務付け訴訟の場合(3条6項2号=申請型不作為≪入門≫)には、
 不作為の違法確認訴訟も併合して行わなければならない
(37条の3第3項1号)。
  つまり、建築確認申請に対し、行政庁の不作為のあった場合、これに
 応答するよう求める訴えがこれに該当する。
 
   これに対し、本肢のように、申請に対して、すでに拒否処分がなされた
 場合(入園の拒否)において、義務付け(入園の承諾)訴訟を提起する
 場合には、同時に拒否処分の取消訴訟または無効確認訴訟も併合して
 提起しな ければならない(37条の3第3項2号)。注(1)(2)

 したがって、本肢が正しい。

  注
(1) 義務付け訴訟は、不作為違法確認訴訟・取消訴訟・無効確認訴訟の
    補充的な制度である(入門)。だから、当該訴訟には、以上いづれかの
    抗告訴訟を併合する必要があるといえる。

 (2)義務付け訴訟にはもうひとつある。これが、3条6項1号に該当する
    「直接型不作為」(入門)である。これは、隣地の建物が違法建築で
    ある場合に、行政庁に対し、改善命令を訴求するものであるから、肢1
    に相当する事案である。つまり、肢1のような申請型不作為でないもの
    には、不作為違法確認訴訟の提起はできないが、義務付け訴訟はできる
    のである。

   参考 肢1とその解説
 
  Xの家の隣地にある建築物が建築基準法に違反した危険なもので
   あるにもかかわらず、建築基準法上の規制権限の発動がなされない
  場合、Xは、当該規制権限の不行使につき、不作為違法確認訴訟
   を提起することができる。

  ≪解説≫
  
   3条5項による不作為の違法確認の訴えとは、建築確認の申請をした
 のにいつまでも返事がない、あるいはなんらかの営業許可の申請をした
 のだけれど、いつまでたっても行政庁からの返事がない、というような
 場合に、裁判所に、なんらの返事もしないのは違法である、といことを
 確認してもらうのがこの訴え、ということになる(入門)。
 本肢のように、近隣の者が、規制権限の不行使(たとえば、取り壊しを
 命ずる処分の不行使)を理由にして当該訴えを提起することはできない。

  正しくない。

 

 
  ● 肢3について。

   本肢は題意が掴みにくいが、生活保護の申請の拒否処分を例に説明
 する。

  当該拒否処分に対して、取消判決があれば、判決の拘束力に基づいて
 行政庁は、判決の趣旨に従って、生活保護の給付決定をしなければな
 らない。(行訴法33条2項)。
  しかし、執行停止の決定には行訴法33条2項の準用がないので、
 裁判所が執行停止の決定をしても、行政庁は何らの措置をとることも
 義務づけられない。
  もし、取消判決前に行政庁を義務づけようとすると、肢2で述べた
 「仮の義務付け」を申し立てることになる。
  すなわち、当該拒否処分については、取消訴訟と義務付け訴訟を
 併合提起し、仮の救済である「仮の義務付け」を用いることになる
  のである。
 (以上 前掲 読本 351頁 参照)


   上記記述は、「執行停止が認められた場合、当該処分についての
 仮の義務付けが認められたのと変わりがない」という本肢の趣旨に
 明らかに反する。
 

 誤りである。

   ちなみに、本講座では、第43回F 平成18年度過去問・問題15
 肢 3 の解説において、上記テーマについて説明しているので、
 本講座を丁寧に受講されていれば、平成21年度本試験・本肢の
  題意を把握できたと思う。
  
 
  
 ● 肢4について。

   執行停止については、25条4項に規定がある。仮の義務付け
  および仮の差止めについては、37条の5第1項・2項に規定が
  ある。

   本肢が正しくて、正解である。

  ただし、次の2点に注意せよ。

   (1) 本案について理由がない=行政処分に、取消事由に当たる
       違法性がない。

 (2) 「本案について理由がないとみえる」は、執行停止にあって
   は、消極要件であり、仮の義務付けおよび仮の差止にあっては
   積極要件である。(前掲書 読本348頁 353頁)
    
        つまり、本肢は、ここに焦点を当てている。
      あるいは、「仮の義務付け」等にあっては、厳格な要件が
   設けられているということがが頭の隅にあれば、この肢が
      正しいという見当がついたかもしれない。

 ● 肢5について


   行訴法25条2項によれば、執行停止を申立てるには、本案訴訟
 である取消訴訟が適法に裁判所に提起されていることが必要である。
  
   取消訴訟の原告適格について、行訴法9条2項は、処分の相手方以外
 の第三者利害関係人にもその適格を認める

 ○  たとえば、マンションの建設についての建築確認に対し、第三者で
  ある近隣の住民が取消訴訟を起こす場合である。この場合、その者
  が執行停止を求めることができる。

 × 行訴法3条6項1号に該当する「直接型不作為」に基づく「義務付け
  の訴え」の提起があった場合において、[仮の義務付け]ができる。
  さきのマンション建設についていえば、第三者が、改善命令を訴求し、
 「仮の義務付け」ができることになる(37条5第1項)。    
     

 × 行訴法3条7号の「差止めの訴え」の提起があった場合において、
  「仮の差止め」ができる。第三者が違法建築の差止めの訴えを提起
  し、「仮の差止め」ができる(37条の5第2項)。

  以上○の記述は、本肢に合致するが、×の記述は、本肢に反する。
 全体として、誤りである。

  この肢を正確に理解しようとすれば、本案訴訟を考察の対象とする
 と同時に条文も錯綜していて、大変である。しかし、一度時間をかけ
 てその仕組みを把握しておく必要がある。これらは、行政法の中枢
 部分であり、これからの本試験で繰り返し問われる可能性がある。


  ◆ 付 言

   本問は、新型の問題であり、過去問とは重なり難い。しかし、前述
 したように、一部重なる。
  そのほかにも、下記のサイトでも、一部重なりがある。

     第36回・第41回・第43回

 ◇第36回はコチラ↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/792006.html
 ◇第41回はコチラ↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/854713.html
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 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
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    ★ 過去問の詳細な解説《第2コース》第67回 ★

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  【テーマ】 行政事件訴訟法

     
  【目次】   問題・解説


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 ■ 問題 平成21年度問題16
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   行政事件訴訟法に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものは
 いくつあるか。

 
 ア  国の行政庁がした処分に関する取消訴訟の被告は、国である。

 イ 国の行政庁が行うべき処分に関する不作為の違法確認訴訟の被告
  は、当該行政庁である。

 ウ 国の行政庁が行うべき処分に関する義務付け訴訟の被告は、当該
   行政庁である。

 エ 国の行政庁が行おうとしている処分に関する差止め訴訟の被告は、
   当該行政庁である。

 オ 国又は地方公共団体に所属しない行政庁がした処分に関する取消
   訴訟の被告は、当該行政庁である。

  
 1 一つ

 2  二つ

 3 三つ

 4 四つ

 5 五つ


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 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 
  ◆ 序説

   サイト41回を参照すれば、本問は容易に正解に達するはずである。

 ☆サイト第41回はコチラです↓
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 したがって、過去において、当講座に参加されていた方は、該当箇所
 に目を通していただいておれば、21年度のこの問題は、即座に正解
 に達したはずである。

  とはいっても、当該論点は、普通の教科書には、普通に掲載されて
 いるのだろう。

 

 ◆ 本論

   以下において、本問と関連する箇所について、過去問と対照しながら、
 要点を再説する。

 (1)平成17年度過去問・問題16

   平成16年の行政事件訴訟法改正では、行政訴訟における国民の救済
 範囲の拡大と国民にとっての利用しやすさの増進がはかられた。次の
 記述のうち、改正法でなお実現されなかったものはどれか。

 肢1
 
   従来、抗告訴訟における被告は行政庁とされていたが、改正後
 は、国家賠償法と同様に、国または公共団体を被告とすることに
 なった。

 《解答欄》
 
  これは、被告適格の問題である。改正法で実現されたものであるから、
 肢としては、正しくないことになる。
 
 平成16年に改正された行政事件訴訟法11条1項によると、
 処分または裁決をした行政庁が国または公共団体に所属する場合
 には、取消訴訟は、それぞれ、国またはその公共団体を被告として
 提起しなければならないことになっている。

   なお、この11条の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟 にも適用
 されることになっていることに注意せよ!!(同法38条1項)。

   内容を明確にするため、「入門」(224頁以下)から、次の文章
 を引用する。
 
 「民事訴訟法の原則からいえば、これはあたりまえのことですが、
  じつは今回の法改正の以前においては、『処分の取消しの訴えは、
 処分をした行政庁を、裁決の取消しの訴えは、裁決をした行政庁
 を被告として提起しなければならない」とされてたのでした
 (改正前11条)。
  ・・・・・・・・
 『行政庁』は、『処分または裁決をおこなう権限を与えられている行政
 機関』のことだ、と考えておけばよいでしょう。
 
 こうして旧法のもとでは、 たとえば、課税処分の取消訴訟だったら、
『国』を相手として訴えを起こすのではなく、その課税処分をした税務
 署長 を相手としなければならない。

  運転免許取消処分の取消訴訟だったら、知事ではなくて、免許を取り消し
 た公安委員会を被告として訴えを起こさなければならない、という状態
 でした。

  これは大変まぎらわしいことですが、ここのところをまちがえると、
 それだけで訴えは門前払い(却下)になってしまったわけで、国民の
 権利救済制度という見地からは、大きな問題がありました。

  そこで、 今回の法改正では、これを改めて、民事訴訟の原則に戻す
 ことにした・・」
 
   本肢では、国家賠償法が挙がっているが、これは民事訴訟法の適用
 を受けるので、以上述べたことは、国家賠償法にも妥当する。
 
   なお、「入門」による次の指摘にも注意せよ。

  「国または公共団体が被告になる場合でも、訴訟において、実質的には
   行政庁が主体となって活動することとなっています(法11条4項〜6項を
   参照)。」
 
                        ↓
 ◎ 本問のア・イ・ウ・エについて。

 アの取消訴訟の被告が「国」であることは、前述したとろにより正しい。

 行訴法3条各号によれば、「不作為の違法確認の訴え」(5号)、
「義務付けの訴え」(6号)、「差止めの訴え」(7号)はいずれも、
 抗告訴訟であるから、前述したところから明らかなように、行訴法38
 条1項の規定の準用により、いずれも、被告は「国」である。
 
  したがって、被告を「当該行政庁」とするイ・ウ・エはいずれも誤り
 である。

  


 (2) 平成18年度・問題18

  平成16年の行政事件訴訟法改正後の行政事件訴訟制度の記述として、
 正しいものはどれか。

 肢 3

   処分が、国または公共団体に所属しない行政庁によって行われた
 場合、 当該処分の取消しを求める訴えは、処分取消訴訟に替わり、
 民事訴訟によることとなった。

 《解答欄》

  これもまた、被告適格に関する問題であるが、以下により、正しくない。

  法11条1項では当該行政庁の所属する国または公共団体に被告適格
 があるが、本肢の場合には、11条2項により、当該行政庁を被告とす
 る抗告訴訟を提起することになる。平成16年の改正により追加された
 条項である。

                    ↓

 ◎ したがって、本問の肢オは正しい。


 ◆  総括

   以上により、本問は、アとオが正しいことになるので、正解は2である。

  本問は、行訴法11条と38条1項の適用により正解に達する問題では
  あるが、解説欄において述べたことを把握しておけば、応用力がつく。
 
    この問題については、関連部分に関し、将来とも出題される可能性が
 ある。本講座においても、将来有料メルマガで出題する見込みだ!!

  
 ◆ 付言

   以上の体験を通じて、過去問の肢の一つひとつの検討の重要性が痛感
 される。いうならば、過去問を素材として、「行政法の体系的理解」が
 肝要であるということである。
 

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    ★ 過去問の詳細な解説《第2コース》第66回 ★

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  【テーマ】 行政不服審査に関する問題点

     
  【目次】   問題・解説


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■ 問題 平成21年度問題15
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   次の記述のうち、行政不服審査法に関する問題点として、次の
 解説文中の空欄 A に挿入すべきでないものはどれか。  


   1962(昭和37)年制定の現行行政不服審査法は、それ以前
 の訴願法と比べれば、権利救済制度として大きく改善されたが、
 現在では、 A  という問題点も指摘されている。また、
 1993 (平成5)年の行政手続法の制定や2004(平成16)
 年の行政事件訴訟法改正などとの関係で、見直しが必要だと考え
 られるようになった。このため、行政不服審査法の抜本的な改正が
 検討されることとなったのである。

 1 行政不服審査法によらない不服申立ての仕組みが多数あるため、
  一般国民にとってわかりづらく、利用しづらい制度になっている

 2 取消訴訟を提起するためには不服申立てに対する裁決または
   決定を経ることが原則とされているため、権利救済の途が狭め
   られている

 3 審理にかなり時間を要しているのが実態であるため、簡易迅速
   という特色が生かされていない

 4 行政権の自己審査であるため、審理手続の運用において公平さに
  欠けるところが多い

 5 不服申立て期間が短いため、権利救済の機会が狭められている
 
  (なぜか、本問では、各肢についてすべて、文末の 。 が省略
   されているが、特別の意味があるとは思われない)

 

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■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 ◆   ズバリ、本問については、以下に記述する「自由選択主義」と
  いう1点を知っていれば、容易に正解に達する。順序として、
    正解の肢2から解説を行う。

 ◆   各肢の検討

   肢2について。

   かつて、本講座では、根本問題・用語解説と題して、該当部分の
 解説も行った(サイト38回参照)。

 ◇第38回
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/814527.html
 
 以下において、再説する。

 ○不服申立ての前置

 「訴願前置主義」  
  
   昭和37年に現在の行政事件訴訟法が制定される前の制度である。
  行政庁に対して、異義などができる場合には、それを行ってから
  でなければ処分の取消訴訟を起こすことはできない。

 「自由選択主義」
 
   行政上の不服申立てを先にするかいきなり訴訟を提起するか、両者
  を平行して行うかすべて私人の自由な選択に任せるべきである。
    行政事件訴訟法8条1項が規定する現在の制度。

   同法8条1項ただし書きは、例外を認めている。個別の法が例外を
  定めている場合がたいへん多くなっていて、「その結果、現実には
 不服申立ての前置という要件がふたたび取消訴訟の重要な訴訟要件
  となってしまっているということを否定できない状況」(入門220
 頁)である。

   以上のとおり、現行法では、末尾のような問題点があるにせよ、
 「自由選択主義」が原則であるから、本肢は、現行法に対する問題点
 にはなりえない。
  Aに挿入すべきものとしては、本肢が正解である。

 ○ 類似の過去問の肢

  行政事件訴訟法によれば、取消訴訟は、必ず審査請求を経てからで
 なければ提起することはできない。
 (平成12年問11肢4)
 
  正しくない。
  
  
   審査請求できる処分については、それについての裁決を経ること
 なく取消訴訟を提起することはできないとするのが行政事件訴訟法
  の原則であるが、審査請求から3か月を経過しても裁決がなされ
 ないときは、裁決を経ることなく取消訴訟を提起できる。
  (平成18年問17肢3)

  正しくない。

  前半が正しくないことで勝負はつくが、この際、後半についても、条文
 知識を整理しておきたい。
  
  個別の法が不服申立ての前置を認めている場合には、当該記述は妥当
 する(行訴法8条2項1号)。本肢の前半を修正すれば、「正しい」へ
  と即座に移行する。
  このように遊ぶことも、過去問を解く妙味と言えよう。
  みなさま、「余裕」デスヨ!!

 
 ◆  その他の肢について
 
 ○ 肢1・3・4・5等の問題点があるため、行政不服審査法改正案が
    上程されたが、衆議院解散で審議未了廃案となった。
   
   いずれ、この法案が成立すれば、我々は、この法律を勉強しなければ
   ならないことになる。

 肢1について

  行審法1条2項によると、「行政上の不服申立て」については、個別の
 法で定め得るので、行審法によらない不服申立ての仕組みが多数あること
 になる。

 ○ 類似の過去問

 「不服申立て」に関する法律の定めは、行政不服審査法にしか存在して
 いない。
 (平成14年問15肢1)

  正しくない。

   法は、不服申立制度全般について統一的、整合的に規律することを
 目的とするので、別に個別の法令で特別な不服申立制度を規定すること
 はできない。(平成20年問15 肢4)

  正しくない。


 肢3・4・5について。

   行審法に関し、以上の問題点があることに注目せよ!!

   なお、5について、行審法に不服申立て期間の定めがある。
   (面倒であれば、飛ばしてもらっても差し支えないかもしれない)

 14条1項・45条・53条→第1回目の不服申立は60日以内、
 2度目の申立て30日以内

 14条3項→この1年の期間は、異議申立ておよび再審査請求にも
 準用(48条・56条)

  前者の60日・30日の期間は天災その他「やむをえない理由」
 があるとき、後者の1年の期間は「正当な理由」があるときは、
 「この限りではない」(14条1項但書・3項但書・48条・
 56条)。

 (以上、読本259頁参照)
  
  
 ◆ 付 言

   問題文の中で、平成16年の行政事件訴訟法改正についてふれられ
 いるが、、当該テーマに基づいて出題された過去問として、平成17
 年度・問題16および平成18年度・問題18がある。
 
  これら問題については、サイト41回で解説がされているので、
  参照されたい。

 ◇第41回
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        ★ 過去問の詳細な解説《第2コース》第65回 ★
       
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   【テーマ】 処分についての審査請求
 
      
   【目次】   問題・解説
 
 
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 ■ 問題 平成21年度問題14
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
    処分についての審査請求に対する裁決に関する次の記述のうち、
  妥当なものはどれか。
 
   1 裁決には理由を附することとされているが、これが附されて
   いなくとも、裁決が違法となることはない。
 
   2 裁決においては、違法を理由として処分を取消すことはできる
   が、不当を理由として取消すことはできない。
 
   3 裁決は、書面ですることが原則であるが、緊急を要する場合は、
     口頭ですることも許される。
 
   4 裁決に対して不服がある場合でも、これに対して行政事件訴訟法
   による取消訴訟を提起することはできない。
 
   5 裁決においては、処分を変更することが許される場合でも、これを
   審査請求人の不利益に変更することはできない。
 
  
 
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 ■ 解説
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  ☆ 参照書籍
 
     行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
   /有斐閣
 
  ◆ 序論
 
   不服申立ての種類
 
    行政不服審査法は、不服申立ての種類として、「異議申立て」
  「審査請求」「再審査請求」の三つのものを定めている。
   
   「異議申立て」というのは、問題となっている処分をした
   (またはしなかった)行政庁それ自体(処分庁または不作為庁)
     に対する不服申立てである。
 
    これに対して「審査請求」 とは、それ以外の行政庁
    (上級監督庁であるのが普通であるが、 そのための特別
    の機関が設けられているケースもある)に対する不服
      申立てである。(同法3条2項)。
    
    また「再審査請求」というのは一度審査請求をおえたのち
     にさらにおこなう、例外的な不服申立てなのであるが(同法3条
   1項)、行政不服審査法自体が定めている特定のばあいのほか
     は、法律または条例によって特に定められているばあいにだけ、
   その法律・条例が特にに定める行政庁に申立てできる(同法8条
   1項および2項参照)
 
    異議申立てに対して行われる裁断行為は「決定」とよばれ
     同法47条)審査請求および再審査請求に対するそれは、「裁決」
   とよばれている(同法40条、55条)。
   (以上、入門235頁以下参照)。
 
    本問は、以上の記述のうち、(再)審査請求に対する「裁決」
     に関して問うている。
 
 
 
   
    
  ◆ 本論
 
   1・3について
 
    行審法41条1項によれば、裁決の方式として、書面で行い、
   かつ理由を附すことになっている。
   
    1について、条文の上で、「しなければならない」と規定され
  ていることからすれば、裁決に理由が附されていなければ違法
  になる。
   行手法の規定によく見られる「努めなければならない」が
  努力義務であることと対比される。
 
   1はここが論点だ!!
 
   3について、書面で行うことの例外規定は設けられていない。
 
   以上1・3も誤りである。
 
    以下、2点に注意。
 
  ア 序論2で明らかにしたように、「決定」の方式も同様である
  (48条)。
 
  イ 書面に関して、不服申立て方式(9条1項)がある。
     他の法律・条例に 口頭ですることができる旨の定めがある場合
   を除き、書面の提出が義務づけられている。
   
   この場合も、「裁決」「決定」共通である(9条は通則)
 
   なお、口頭による請求手続は、「裁決」も「決定」も行審法
   16条の規定による(48条参照)。
    
   
   以上の点は過去問で度々問われている。
 
   行政不服審査法によると、不服申立ては、他の法律に口頭で
   することができる旨の定めがある場合を除き、書面を提出して
    しなければならない。○
  (平成12年度問16 肢1)
 
   審査請求は、口頭ではすることができない。× 例外あり。
   (平成13年度問15 肢3)
 
   審査請求は、書面によりなすことが原則であるが、審査請求人が
   求めたときは、口頭による審査請求も認めなければならない。
    (平成18年度問14 肢1)
   
     × 審査請求人の請求の制度はない。
    
 
  ウ 審理の方式は、行審法25条1項による。書面による。
   ただし書きがある。
 
    この場合も、裁決・決定とも共通である(48条参照)。
 
    以上の点は、過去問で度々問われている。
 
   審査請求においては、口頭審理が原則であるが、異議申立てに
   おいては、書面審理が原則である。× 両者とも書面審理が原則。
   (平成19年度問16肢4)
 
   審査請求の審理は、書面による。ただし、審査庁は、必要がある
  と認めるときは、審査請求人又は参加人の申立てにより、申立人に
  口頭で意見を述べる機会を与えることができる。
  (平成10年度問49 肢4)
   
  × ただし以下が、義務的である。
   
 
   審査請求の審理は、書面によってなされるが、とくに審査庁が
   必要と認めた場合に限り、審査請求人は、口頭で意見を述べること
  ができる。(平成18年問14 肢2)
 
  × 後段誤り
 
 
   不服申立ての審理は書面によるのが原則で、不服申立人に口頭意見
   陳述の機会を与えるのは、不服申立てを審査する行政庁が必要と認めた
  場合である。 × 後段誤り。
  (平成15年度問16 オ)
 
   注 3問続けて、ただし以下が義務的であるかどうかに、本試験が
    拘泥するのは、すこし不思議でもある。
 
 
  エ 以上、審査請求と書面については、裁決の方式(41条1項)
   ・不服申立ての方式(9条)審理の方式(25条1項)があること、
    いずれも「裁決」・[決定」に共通であることを銘記すべきである。
 
    裁決の方式についての出題は、私の知る限り、平成21年度が初め
   てである。
   
    
     2について
            
 
    行審法第1条1項によると、「不当な処分」も不服申立ての
   対象としている。
  
  以下の記述にも注意。
 
  「・・裁判所というのは、もっぱら、紛争を法的に解決することをその
  任務とする機関ですから、裁判所が審理できるのは、とうぜんに法問題
 ( 行政処分の違法性)にかぎられ、自由裁量行為のばあいに行政庁がおこ
  なった裁量が不当ではなかったかどうか、といったような判断はできない
  わけですが、行政上の不服申立てのばあいだったらそういった制限はない、
  ということになります」(入門233頁)。
 
   したがって、本肢は誤りである。
 
  なお、この場合も不服申立てには、審査請求と異議申立てを含むので、
  本肢では、「決定」にも当てはまる。
 
  以上と類似の過去問は、下記のとおりである。
  
      行政不服審査法は、「行政庁の違法な処分その他公権力の行使に当
    たる行為」に限り不服申立てのみちを開いている。 
   (平成14年問15 肢2)
           
     取消訴訟においては処分の適法性のみを争うことができるが、行政
    不服申立てにおいては処分の適法性のみならず、処分の不当性をも
    争うことができる。                                                
   (平成18年度問16 肢5)
 
    前者では、「不当な処分」がも含まれるので、誤りで、後者が正しい。
 
  4について
 
   行政事件訴訟法3条1項2号によると、裁決に対して不服がある場合、
  抗告訴訟の対象になる。 誤りである。
   
   なお、当該規定によると、当然「決定」も対象になる。
 
  注
    また当該規定によれば、行訴法上の用法に従えば、「異議申立ての決定」
  に対する取消しも含めて、単に「審査請求の裁決」の取消しとよばれる
   ことに十分注意を要する。
 
   この点、行政事件訴訟法では、行政審査法上の用語とは異なっている
  ので、初学者を惑わせるこの用語法は法律で是正されることが望ましい
  という指摘がある。(読本260頁)
 
   
 
  5について
 
    40条5項によれば、審査庁が、処分庁の上級行政庁であるとき
  における「裁決」において、処分の変更が許される。
  この場合には、審査請求人の不利益変更禁止の原則が働く(同条
  同項ただしがき)。
 
  したがって、本肢は正しい。本肢が正解である
 
 
  以上と類似の過去問は、以下のとおりである。
 
  行政不服審査法は、行政の適正な運営も目的としているので、
  裁決で処分を変更する場合、審査庁は、審査請求人の不利益に
  当該処分を変更することを命じることもできる。
 (平成19年問14 肢4)
 
  前述したところにより、これは×である。
 
 
  ◆ 付言
 
    本問肢5の正解を導くには、過去問にふれていればよかったのである。
 
   行政不服審査法に関しては、本試験日とそう遠くない日に、じっくりと
  条文と過去問を対照しておけばよい。
 
  なお、当該解説欄の記述では、類書とは異なった観点から多角的な分析
  を試みている。
 
    それは、本講座が、「オリジナル解説」のゆえんであるが、その評価は
   皆様に委ねる。
 
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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第55回 】★      
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【テーマ】 国家機関の実質的権限


【目次】  問題・解説

 

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 ■ 平成20年度問題5
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   国家機関の権限について次のア〜エの記述のうち、妥当なものをすべて
 挙げた組合せはどれか。

 ア 内閣は、実質的にみて、立法権を行使することがある。

 イ 最高裁判所は、実質的にみて、行政権を行使することがある。

 ウ 衆議院は、実質的にみて、司法権を行使することがある。

 エ 国会は、実質的にみて、司法権を行使することがある。

 1 ア・ウ

 2 ア・イ・エ

 3 ア・ウ・エ

 4 イ・ウ・エ

 5 ア・イ・ウ・エ
  
 
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
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 ○ 参考図書

 芦部信喜著 憲法 岩波書店
 
 
 ○ 序論

  「実質的」な考察は、は、前回の問題と共通性があるので、ここでとり
 あげた。

 
 ○ 本論

   肢1について。正

  立法の意味について、形式的意味の立法と実質的意味の立法という二つ
 の意味がある。
 形式的意味の立法とは、規範の中身が何であるかを問わず「法律」と
 いう形式だけを問題にする。
  実質的意味の立法は、規範の形式が法律であると命令であるとを問わず
 中身を問題にする。
  憲法41条が規定するのは、実質的意味の立法であるため、不特定多数の
 の人に対して、不特定多数の事件に適用される法規範は、国会が定立する
 ことになる(前掲書)。
 しかし、憲法のもとでは、内閣の発する政令によって、法律を執行する
 ためのもの(執行命令)ないし法律の具体的は委任に基づくもの(委任命令)
 を 定立することができる(憲法73条6号)。
 したがって、「内閣は、実質的にみて、立法権を行使することがある」と
 いうのは正しい。
 
 ここで、以上記述したところを要約するとともに、関連事項を述べておき
 たい。

 (1)実質的意味の法律の概念は、もともと「国民の権利を直接に制限し、
    義務を課する法規範」と考えられてきたが、現在では、前述したように
   「不特定多数の人に対して、不特定多数の事件に適用される法規範」である
   というように広く解釈されるようになった(前掲書)。
 
              ↓

 (2)したがって、以上のような実質的意味の法律は、国会において、法律
   という形式でしか定められないというのが、国会は、唯一の立法機関
     であるとする憲法41条の帰結である。
 
              ↓

 (3)しかし、法律の個別的・具体的な委任があれば、 その限度で政令
 (委任命令)において、実質的意味の立法を行うことを憲法が許容して
   いる。


 派生原理

 (1)(2)と民主・自由の結びつき

 「国民が権力の支配から自由であるためには、国民自らが能動的に統治に
  参加するという民主制度を必要とするから、自由の確保は、国民の国政
  への積極的な参加が確立している体制においてはじめて現実のものとなる」
 (前掲書)。
 
   その他、憲法31条の「罪刑法定主義」・憲法84条の「租税法律主義」
 憲法29条2項の「財産権の法律による一般的制限」も(1)(2)から
 の帰結。

 (3)の政令との関連では、条例による財産権の制限が許されるかが争点
    になったものとして、奈良県ため池条例事件(最大判昭和38・6・26)
    がある。なお、これは、憲法29条2項も関連する。

  次のとおり判示。

   本条例は堤とうを使用する財産上の権利の行使をほとんど全面的に
    禁止するが、これは当然に受忍されるべき制約であるから、ため池の
  破損、決かいの原因となる堤とうの使用行為は、憲法・民法の保障する
  財産権の行使のらち外にあり、そのような行為は条例によって禁止、
    処罰することができる。

   これに関連する学説として、「条例は住民の代表機関である議会の
    議決によって成立する民主的立法であり、実質的には法律に準ずるもの
  であるという点に、条例による(財産権の)内容の規制も許される根拠が
  ある、と解するのが妥当である」とするものがある(前掲書)。

      後記に連動
     ↓
   その他に、条例によって罰則を定めることができるか否かが争われた
  ものとして、最大判昭和37・5・30がある。

  次のとおり、判示。

     刑罰を法律の授権によって法律以下の法令で定めることもできる
  (憲法73条6号但し書の政令)としたうえで、条例は、法律以下
   の法令といっても、公選の議員をもって組織する地方公共団体の
  議会をを経て制定される自治立法であって、行政府の制定する命令
   等とは性質を異にし、むしろ国民の公選した議員をもって組織する
  国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例に
  よって刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的
   であり、限定されておればたりると解するのが正当である。

  ここでは、次の点に注目。

  委任命令の場合には、前述したとおり、「法律の個別的・具体的な
  委任」を要するのに対して、条例については、「法律の授権が相当な
 程度に具体的であり、限定されておればたりる」とされる。

  
   肢2について。正


   最高裁判所は下記の司法行政事務を行う。
  
 下級裁判所の裁判官指名権(憲法80条第1項)・下級裁判所および
 裁判所職員を監督する司法行政監督権(裁判所法80条。裁判官会議の
 議によって行う。同12条)《前掲書》

 なお、これらは、明治憲法では司法省(現在の法務省)の所管に属して
 いた行政事務であって、裁判作用とあわせて行政事務を行使する点で、
 最高裁判所の地位と機能は、戦前の大審院と大きく異なる(前掲書)。

   したがって、肢2は明らかに正しい。

   肢3について。 正

  議院の機能の一つである内部組織に関する自律権として、議員の資格
 争訟の裁判権(憲法55条)がある。これが、実質的にみて、司法権
 の行使であることは疑いない。肢3は正しい。
  
   なお、次の点に注意。

   当該裁判権は、議員の資格の有無についての判断をもっぱら議院の自律的
 審査に委ねる趣旨のものであるから、その結論を通常裁判所で争うことは
 できない(前掲書)。

  肢4について。正。疑問あり。

  これは、弾劾裁判(64条)を問題にしていることは、疑いない。しかし、
 次の指摘には、注意を要する。

  国会の権限に属するのは、弾劾裁判所を設けることだけであって、弾劾裁判
 を行うのは弾劾裁判所の権限であり、弾劾裁判所は、国会の機関ではないこと
 は注意を要する(清宮四郎著・憲法1・有斐閣発行)。

  ここに注目すると、実質的にみて、司法権を行使するのは、国会ではなくて、
 国会の設置した弾劾裁判所ということになる。
 しかし、国会において、両議院で組織された訴追委員会が、裁判官の罷免を
 訴追することになっている(国会法126条)。これも司法権の行使だとみれば、
 この肢は正しいことになるのだろうか。あるいは、弾劾裁判所の設置自体も
 実質的にみて、司法権の行使になるのだろうか。いずれにしても、疑問の残る
 肢である。

  全体としては、全部正しい肢となるので、5が正解である。

 ○ 付言

   前回と同様、このような圧縮した肢については、正誤の判断に苦慮
 することになるが、受け身に立つ者としては、どこかでスパッと割り切る
 必要がある。そこで、出題者の意図と食い違えば、仕方がない。
 もっと、正統なほかの問題で正解を重ねればよいと、こちらの方でも、
 割り切りが肝要。

  ただし、本問については、自然な流れからすれば、諸機関は、実質的には、
 他の機関の行使し得る権限を行使し得るという出題意図も読み取れるので、
 正解としては、全部の肢が正しいということになるのだろう。

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第51回 】★      
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 2009/8/18


             
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【テーマ】株式会社における剰余金の配当
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 平成20年度過去問・問題38

   株式会社における剰余金の配当に関する次のア〜オの記述のうち、
 誤っているものの組合せはどれか。

 ア  剰余金の配当により株主に交付される金銭等の帳簿価格の
    総額は、剰余金の配当が効力を生ずる日における分配可能額
    を超えてはならない。

 イ   剰余金の配当においては、株主総会の決議により、当該会社
  の株式、新株予約権または社債を配当財産とすることができる。

 ウ 取締役会設置会社は、1事業年度の途中において1回に限り、
  取締役会決議により剰余金の配当(中間配当)をすることができる
   旨を定款で定めることができる。

 エ 純資産の額が300万円を下回る場合には、剰余金の配当をする
  ことができない。

 オ 会社が自己株式を有する場合には、株主とともに当該会社も剰余金
  の配当を受けることができるが、配当財産の額は利益準備金に計上
   しなければならない。

 1 ア・ウ

 2 ア・エ

 3 イ・エ

 4 イ・オ

 5 ウ・オ

 
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■ 解説
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 ▽ 参考書籍

 会社法 神田 秀樹 著 ・弘文堂   リーガルマインド 会社法
 
  弥永真生著 著・有斐閣

 本問では、順序不同で解説を行う。
  
 (1)原則として、剰余金の配当は、株主総会決議により行われる
(453条・454条参照)。剰余金の配当とは、株主に対する配当である。
 自己株式とは、「株式会社が有する自己の株式」(113条4項参照)
 であるが、法は、自己株式には配当できないことにしている
(453条括弧書き)。

   したがって、自己株式への配当を前提にしているオは誤りである。

   会社は、株主総会の決議によって、現物配当(配当財産を金銭以外の
 財産とすること)も認められる(神田会社法・454条4項)。
  したがって、会社は、株主総会の決議によって、配当する財産の種類
 を定める必要がある(454条1項1号前段)。その際、当該株式会社の
 株式等は、配当財産から除かれる(454条1項1号括弧書き)。自己株式
 が除かれる財産に該当することは明らかであるが、その他のものが、
 社債・新株予約権を意味することは、107条2項2項ホ括弧書きに
 よって明らかになる。

   したがって、当該会社の株式、新株予約権または社債を配当財産と
 するこたとができるとするイは、明らかに誤りである。

   あっさりとしたもので、ここで、イ・オが誤りで4が正解であることが
 確定する。括弧の3連続で決まりといったところか。
  なお、「新株予約権」「社債」については、第52回において説明する。

 あとの残りの肢が正しいことを追認する作業になるが、以降、順次説明
 する。

 (2)以上述べたとおり、剰余金配当は原則として、株主総会の権限で
 あるが、会計監査人設置会社かつ監査役設置会社および委員会設置会社
 では、一定の要件に該当し、定款で特例を設ければ、取締役会の権限と
 することが認められる。459条に定めがあるが、ここでは詳しく説明
 しない。

 (3)(2)の特例を設けていない会社であっても、取締役会設置会社
 は、一事業年度の途中で1回に限り取締役会の決議によって剰余金の
 配当(金銭配当に限る)をすることができる旨を定款で定めることが
 できる(神田会社法・454条5項)。

    これが、肢ウに記された中間配当である。本肢は正しい。

 (4)最後に剰余金配当の要件を示す(神田会社法)

   まず、第1に、会社の純資産額が300万円を下回る場合には、配当
 できない(458条)。

  これは、肢エ記載のとおりであり、この肢は正しい。
 
   第2に、配当(について)は、会社法は「分配可能額」を算出し、その
 限度内でのみ株主への配当およびその他の剰余金分配を認める(461条)。

  肢アは、当該461条本文をそのまま引用しているので、この肢も
  正しい。

   第3に、配当をする場合には、法務省令で定めるところにより、配当
 により減少する剰余金の額の10分の1を資本準備金または利益準備金と
 して積み立てなければならない(445条4項)。

  以上、やはりイ・オが誤りで、正解は4である。

 

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第47回 】★      
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 2009/8/4


             
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【テーマ】株式会社の機関
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 平成20年度過去問・問題37

   会社法上の公開会社であって取締役会設置会社の代表取締役の権限
 に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

 ア 取締役会は3ケ月に1回以上招集しなければならないが、その
  招集権者を代表取締役とすることができる。

 イ 取締役の職務の執行が法令および定款に適合するための体制
   (いわゆる内部統制システム)の整備については、代表取締役が
   決定する。

 ウ 代表取締役は、会社の業務に関する一切の裁判上の権限を有する
  るため、取締役の義務違反により会社に損害が生じた場合に、当該
    取締役に対する責任追及のための訴訟を提起する。
 
 エ 代表取締役は、取締役会決議に基づいて、代表権の一部を他の
   取締役に移譲することができる。

 オ 取締役会は、法定事項や重要な業務執行について決定権限を有
   するが、それ以外については、代表取締役に、業務執行の決定を
   委任することができる。

 1 ア・ウ

 2 ア・オ

 3 イ・エ

 4 イ・オ

 5 ウ・エ

 
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■ 解説
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 ▽ 参考書籍

 会社法 神田 秀樹 著 ・弘文堂   リーガルマインド 会社法
 
  弥永真生著 著・有斐閣


 ○  最初に冒頭の設問に「会社法上の公開会社であって取締役会設置
   会社の代表取締役の権限」とある点が問題になる。
   公開会社はすべてにおいて、取締役会が必要である(327条1項1号)。
   しかし、非公開会社においても、任意に取締役会を置くことができる
  (326条2号)。その場合と公開会社の場合とで、代表取締役の権限に
   差異があるとは思われない。その点は、知識として、認識しておいた
   方がよいと思う。

 ○  第1コース第30号【問題2】肢1解説において、説明したが、
   公開会社(2条5号)とは、全部株式譲渡制限会社以外の会社である。
   つまり、一部の種類の株式についてだけ譲渡制限がある会社も公開
   会社となる。しかし、次のような指摘がある。「・・一部の種類の
   株式にだけ譲渡制限がある会社はこれまで存在せず、会社法のもとで
   新しく認められるに至ったものなので、特別な場合を除いてそのような
   会社はあまり登場しないとも推測される。したがって、当面は、公開
   会社とは株式譲渡制限がない会社と考えておけばよい。」(神田・
   会社法入門・岩波新書)

 ○ 前記解説欄において指摘したとおり、取締役会設置会社では、取締役
   は3名以上であることを要する(331条4項)。それ以外は、一人又は
   2人以上である(326条1項)。


  
 アについて

   これは、すこし難しい。「取締役会は常設の機関ではなく、必要に応じ
 て開催される」(神田会社法)という固定観念があると、363条2項
 の条文に気がつき難い。これに気づいたとしても、報告だから、一々招集
 する必要はないとも考えられるが、372条2項により、この報告のため
 の取締役会の開催を省略することができないとされる(リーガル)。
   したがって、3ケ月に1回以上招集しなければならないことになる。
   このように考えると、細かい知識を要求されているようであるが、他の
 肢との比較により、この条文の存在に気づけば、おぼろげながら、定期的
 に 開催が要求されているのだと考えが及べばよいことになる。
  したがって、本肢前段は正しい。
   なお、この際、1点、指摘しておきたい。それは、取締役会は、取締役
 の職務執行を監督する権限を有する(362条2項2号)が、当該報告は、
 取締役会 の監督機能の実効性を確保するためである(リーガル)。
 なるほど、 だから、 定期的招集なのかとここでも納得がゆく。
 なお、ここでいう、取締役は、363条1項にいう、代表取締役および
 業務執行取締役である。
 
  後段も正しい。取締役会の招集権は、原則として、個々の取締役にある
(366条本文)。ただし、招集権者である取締役を定款又は取締役会で定める
 こともできる(366条ただし書き)。この特定の取締役を代表取締役とする
 ことができる。以上本肢は、全体として、正しい肢に該当する。

  なお、以下の2点に注意せよ。一つは、招集権者を特定したときでも、
 366条2項、3項の規定により、「それ以外の取締役も法定の要件に
 従って招集できる。」(神田会社法)
  もうひとつは、368条2項の規定に従い、その全員が同意すれば、
 招集手続を省略できることである。

 
 イについて

   本肢の「内部統制システムの整備」については、362条4項6号に
 規定がある。これは、「法律で取締役会で必ず決定しなければならない
 と定められている事項」に該当し、「定款によってもその決定を代表
 取締役にゆだねることはできない(362条本文)」(神田会社法)。
   本肢は、誤っている。

 ウについて

   前段については、349条4項に規定がある。しかし、会社・取締役
 間の訴訟は、その例外である。353条・364条に規定によれば、
 当該訴訟においては、本肢のような取締役会設置会社の場合、会社を
 代表する者は、株主総会で定めたときを除いて取締役会で定めることが
 できる。本肢は誤りである。

   なお、以下に注意。「ただし、監査役設置会社では監査役が代表し
 (386条1項)、委員会設置会社では監査委員会が選定する監査委員
 または取締役会が定める者が代表する(408条1項・2項)。」
 (神田会社法)

 エについて

   代表取締役の代表権は、会社の業務に関する包括的な権利であるから、
 その一部を他の取締役に移譲することは、法349条4項に反すると
 私は思う。誤りである。

 オについて

   イとも関連する。取締役会は、業務執行に関する意思決定を行う
 (362条2項1号)。そして、362条4項各号の法定事項は必ず取締
 役会で決定しなければならない。この決定権限のなかには、本肢が
 指摘するように、「具体的な法定事項のほか『重要な業務執行』を
 含む」(神田会社法)ことに注意する必要がある。
 「362条4項以外にも、会社法が取締役会の決議事項と定めて
 いる事項は多数ある。以上のような法定事項以外の事項についても
 取締役会で決定することはできるが(決定すれば代表取締役を拘束
 する)、取締役は招集によって会合する機関にすぎないため、
 それらの事項(日常的事項)の決定は代表取締役等に委譲されて
 いると考えられる」(神田会社法)。また、定款によって、法定
 事項以外を代表取締役にゆだねることもできる。以上のとおり、
 オは正しい。

 よって、正しいのは、アとオであり、正解は2である。
 

  
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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第43回】★      
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 2009/7/16


             
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【テーマ】続・行政不服審査法
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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  E  平成19年度過去問・問題15                 

  次の文章の空欄 ア〜キ のうち空欄 A と同じ言葉が入るものは
 いくつあるか。

  行政不服審査法に基づき審査請求がなされたとき、処分の効力、処分の
 執行、手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置を行うか行わない
 かに関して、行政不服審査法34条1項は、行政事件訴訟法と同様、
 A  原則を選択している。私人の権利利益救済の観点からは、 ア 
 原則が望ましく、公益を重視する観点からは  イ  原則が望ましい
 といえる。
 行政不服審査法の下においては、行政庁の上級庁である審査庁は職権
 により  ウ  をすることができる。これに対して、処分庁の上級行
 政庁以外の審査庁は、審査請求人の申立てにより   エ   とする
 ことができるのみであり、裁判所と同様、職権により  オ  とする
 ことはできない。これは、処分庁の上級行政庁である審査庁は、処分庁
 に対して一般的指揮監督権を有するから、職権に基づく カ    も
 一般的指揮権 の発動として正当化されるという認識による。
 なお、国税通則法105条1項のように、個別法において  キ  
 原則に修正が加えられている場合もある。

 
 1 一つ

 2 二つ

 3 三つ

 4 四つ

 5 五つ

 (参考) 国税通則法105条1項(省略・各自で条文を参照されたい)

 

  F 平成18年度過去問・問題15


  行政不服審査法による審査請求における執行停止に関する記述として、
 妥当なものはどれか。

 1 従来、執行停止の要件としては、「重大な損害」が必要とされていた
   が、 平成16年の法改正により、「回復困難な損害」で足りることと
  された。

 2 審査庁は、「本案について理由がないとみえるとき」には、執行停止
   をしないことができる。

 3 申請拒否処分に対する審査請求については、平成16年の法改正に
  より、執行停止制度に加えて、「仮の義務付け」と「仮の差止め」の
  制度が明文化された。

 4 執行停止の決定がなされた場合において、それに内閣総理大臣が
   異議を述べたときは、審査庁は、執行停止を取消さなければならない
   こととされている。

 5 処分庁の上級庁である審査庁は、審査請求人の申立てによること
  なく職権により執行停止することは許されない。

 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  △ 参考書籍は、第2コース第42回に掲げた。

 △  今回は、行政不服審査法の続編として、EFとして、審査請求に
     おける執行停止を採用した。第2コース第41回B肢2において、
     行政事件訴訟法における執行停止を掲げたので、参照されたい。
    私は、当該解説欄において、「許可申請したデモの日時より
    遅い取消しでは無意味である」と述べたが、実は、訴えの利益が失
  われて却下されるのである。

  次の過去問の肢をみてほしい。

  特定の日に予定された公園使用の不許可処分の取消訴訟の係属中に
  その特定の日が経過した場合であっても、訴えの利益は失われない。

    ×で、理由は、訴えの利益はないため、却下される。私は、「無意味」
  と述べたが、だから却下されるのだ!言い訳にもならぬが・・・。


 Eの平成19年度過去問

   本問は、執行停止に関する原則が理解されていれば、容易に正解に達し
 得る。細かい条文の知識は必要ないかもしれない。
  本問に則して、原則を追ってみる。

 1 行政不服審査法は、行政事件訴訟法と同様 Aの執行不停止 原則を
   選択している。条文としては、行政不服審査法34条1項・行政事件訴訟法
   25条1項。その根拠は行政処分の公定力にある。

 2 当該執行不停止が、公益重視の観点に立ち、執行停止原則は、逆に
    私人の権利利益救済の観点に立つことはいうまでもない。したがって、
   アが執行停止 原則であり、 イが執行不停止 原則である。

 3 行政不服審査法上、処分庁の上級庁である審査庁は、職権により執行
   停止をすることができる。法34条2項。 ウは執行停止。

 4 処分庁の上級庁以外の審査庁は、職権で執行停止ができない。法34条
   3項により申立てのみ。エは執行停止

 5 裁判所による執行停止も、申立があった場合にかぎられる(行政事件
   訴訟法25条2項)。オも執行停止。

 6 3の根拠は、上級庁の処分庁に対する一般的指揮監督権である。カも
  執行停止。

 7 参考として掲げられた個別法は、本文において、執行不停止原則を規定
   しながら、ただし書きで、その原則に修正が加えられ、限定的に執行停止 
   がなされることを規定している。 キは 執行不停止 原則である。

  したがって、「執行不停止」は、イ・キの二つであり、正解は2である。

  執行停止全体が見渡すことのできる良い問題だ!


 Fの平成18年度過去問

  
 1について

  平成16年の行政事件訴訟法の改正に伴い行政不服審査法においても、
 執行停止をより行いやすくしようとの目的で、「回復困難な損害」を
「重大な損害」で足りるよう要件を緩和した。「回復困難な損害」と
「重大な損害」の順序が逆である(行政不服審査法34条4項5項・行政事件
 訴訟法2項3項)。×

 2について

  法34条4項により正しい。執行停止は本案の審理を待たないで行わ
 れるが、「本案について理由がないとみえるとき」まで、これを許す
 べきではないからである。行政事件も同様である(法25条4項)。○

 これが正解である。

 3について

  これは、難しい問題であり、題意が把握し難い。例えば、申請拒否
 処分として、生活保護却下処分をとりあげる。裁決によって、当該
 処分が取消されると、処分庁は、裁決の趣旨に従って、生活保護決定
 をしなければならない(法43条1項・2項)。
  それでは、この裁決の前に審査庁が執行停止を行ったら、どうなるか。
 処分庁は、生活保護決定を義務付けらるのではないというのが、実際の
 取扱であるから、拒否処分についての執行停止の決定はやっても意味は
 なく、結局、執行停止の申立の利益がないということになる。
  もし、裁決の前に、義務付け(生活保護決定)をさせるためには、仮
 の義務付けを認める必要がある。(以上「読本」参照)
  以上の前提知識があって初めて、本肢の趣旨が把握できると思う。
   本肢が言いたいのは、平成16年の改正により、不服審査法上、執行
 停止制度によって、義務付けが可能になった。これに加えて、「仮の
 差止め」は付け足しとしても、「仮の義務付け」が明文化されたという
 のである。これは、全部でたらめである。前段が誤りであると同時に
 後段の「仮の義務付け」等は、行政事件訴訟法に該当することである
 (法37条の5)。この問題は、「仮の・・」が行政事件訴訟法に特有の
 制度であることが分かっていれば、すぐに誤りであることに気づくが、
 本肢を通じて、全体の理解に到達するために、詳しく説明した。
 ×


 4について

   内閣総理大臣の異議という制度は、行政不服審査法にはない。これが
 認められるのは、行政事件訴訟法における執行停止(法27条)と仮の
 義務付け及び仮の差止め(法37条の5第4項による27条の準用)の場合
 である。後者については、第2第41回・B肢2解説参照。


 5について

 法34条2項により×。前掲Aにおいての主題であった。
 
  
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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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