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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第40回 】★      
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 2009/7/9


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
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【テーマ】続・行政不服審査法
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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  G 不服申立て要件として、異議申立てと審査請求のいずれを行う
   べきかなど。 

  ○ 不作為についての不服申立ての場合

 
 1 行政不服審査法によると、行政庁の不作為については、申請者は、
   異議申立てまたは審査請求のいずれかをすることができる。

 2 行政庁の不作為についての不服申立ては、不作為庁が主任の大臣等
   である場合を除くと、不作為庁への異議申立てと直近上級行政庁へ
   の審査請求のいずれかをすることができる。 

 3 不作為に対する不服申立が認められるのは、行政庁が法令に基づく
   申請に対し、相当の期間内に何らかの処分をすべきにもかかわらず、
  これをしない場合である。 

 4 行政不服審査法にいう「処分」には、「不作為」も含まれる。

 5 法における「不作為」には、申請が法令に定められた形式上の
  要件に適合しないとの理由で、実質的審査を経ずに拒否処分が
 なされた場合も含まれる。

    
    ○ 処分に対する不服申立ての場合

 
 1 行政不服審査法によると、行政庁の処分についての異議申立ては、
  「処分庁に上級行政庁があるとき」にすることができる。

 2 処分について、審査請求が認められている場合には、異議申立て
  はできないのが原則である。

 3 審査請求と異議申立ての両方が認められている処分については、
   そのいずれかを自由に選択できるのが原則である。
 
 4 審査請求は、処分庁または不作為庁に対してする。

 5 取消訴訟は他の民事訴訟と同じく3審制であるが、行政不服申立て
   の場合、異議申し立てに対する決定に不服があるものは、第三者機関
   に審査請求ができる2審制が原則として取られている。
 

  
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■ 解説
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 ▼ 参考書籍

  行政法入門・藤田 宙靖 行政法読本・芝池 義一
    ともに有斐閣 発行

 ▼ 前回、行政上の申立てにつき、AからFまで過去問の抜粋をしたので、
 今回は、Gを掲げる。○×で解答してください。出典を明らかにしないの
 も同様である。

 ▼ 不服申立て要件となっているのは、×の場合は、その要件を欠くため
 に原則として却下されるからである。

 
 ▼ 各肢の検討

 ○ 不作為について

 1について

  7条本文のとおり。○

 2について

  7条の条文どおり。○

 3について

 2条2項のとおり。○

 4について

  2条によると、不服申立ての種類として、「処分」と「不作為」という
 二つの概念に分けているから、「処分」に「不作為」は含まれない。×

 5について

  これは平成20年度過去問であるが、題意を明確に把握することが大切
 である。行政不服審査法第2条第2項によると、行政庁が法令に基づく
 申請に対し、「なんらかの処分」をしないことが不作為に該当することに
 なる。本肢のように形式上の要件に適合しないことを理由に拒否する
 ことも、申請に対する拒否処分にに該当する(行政手続法第2章・同7条)
  したがって、すでに行政庁の処分があったことになり、行政不服審査法
 7条に基づく不作為についての不服申立ては許されないことになる。


 ○ 処分に対する場合

 1について

  法6条本文1号。×

 2・3について

  この2と3の関係は複雑である。ここで、全体的な説明を行う。
 
 ア 不作為についての不服申立ての場合には、原則として、異議申立て
   でも審査請求でも選択できる(7条)
 
 イ 審査請求をするのが原則で、異議申立ては、審査請求ができない場合
 にだけ 、してもよい(5条・6条1号、2号参照)。

 ウ 法律上、どちらでもできる場合には、原則として、まず異議申立てを
   してからでなければ、審査請求はできない(6条3号・20条)。

  アは別として、2と3に対応するイとウの関係が複雑である。以下、
 各肢について検討する(これは、私独自の思考により考察したもの
 であり、皆さんもそれぞれに考察してください。実際、途中で頭髪
 をかきむしりたくなる・・・)。

 2について考えると、6条1号によると、処分庁に上級行政庁がない
 ときは、異議の申立てが原則である。しかし、処分庁に上級行政庁が
 ないとき(異議申立てが原則の場合でも)、5条2号・同2項によれば、
 法律に審査請求できる規定があれば、この法律の定める行政庁に審査
 請求ができる。この場合には原則として、審査請求が優先し、異議申
 立てはできない(6条ただし書き)。
 つまり、法の建前としては、処分庁に上級行政庁がないときは、処分
 庁に異議申し立て(3条2項)、処分庁に上級行政庁があるときは、上級
 行政庁に審査請求をする(法5条1号)のが大原則。しかし、処分庁に
 上級行政庁がないときでも、個別法において、審査請求が認められている
 場合には、異議申立てはできない。2は○。

  3について考えると、処分庁に上級行政庁がある場合には、審査請求が
 原則。しかし、個別法で異議申立てができることになっていると、不服
 審査法では審査請求・個別法では異議申立てができる。このように、法律
 上は、どちらでもできることになっている場合には、原則として、まず
 処分庁に異議申立てをしてからでなければ、審査請求はできないことに
 なっている(6条3号・20条)。したがって、この場合には、自由選択では
 なく、異議申立てが前置になるので、×。

  2と3を比較すると、2の場合、審査請求と異議申立てのいずれしか行う
 ことができないという問題であるのに対して、3の場合には、審査請求が
 異議を前置とするという問題であることに注意。また、実際には、3の
 ケースが多いようである(入門)。

 4 審査請求は、処分庁または不作為庁以外の行政庁に対して行い、異議
   申立ては、処分庁または不作為庁に行う(法3条2項)。これには例外
  はない。×

 5  前段の3審制は正しい。後段は、処分庁以外の行政庁を第三者機関
   というのであれば、この点は正しいが、行政不服審査法は、「異議
   申立て」と「審査請求」を異なった種類の不服申立てとしている。
    前者 の決定に不服のあるものに後者の申立てをするという2審制
   を同法は採用していない。×

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第39回 】★      
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 2009/7/1


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
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【テーマ】行政上の不服申立てー行政不服審査法を中心として
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題 ・解説
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 ▽ 参考書籍

  行政法入門・藤田 宙靖  行政法読本・芝池 義一
 ともに有斐閣 発行

 ▽ 過去問の検討
 
  各テーマごとに、過去問の肢を抜粋した。○×で解答してください。
 なお例により、その出典を一々明らかにする手間を省いた。


 A 「行政訴訟」と「行政上の不服申立て」

 1 処分につき不服申立てをすることができる場合においても、処分  
   取消しの訴えを直ちに提起してもかまわない。

 2 憲法は、行政機関が裁判を行うことを禁止しているから、裁判手続
  に類似した行政上の不服申立てを整備することによって地方裁判所  
   における審級を省略することは許されない。

 3 申請拒否処分に対する審査請求については、平成16年の法改正に
   より、執行停止制度に加えて、「仮の義務付け」と「仮の差止め」の     
   制度が明文化された。

 
 《解説》

 1について

  現行法は、原則として、自由選択主義を採用する(行政事件訴訟法
 8条1項本文)。ただ、同条ただし書きにおいて、例外としての、
 不服申立ての前置を認めていることに注意せよ。  ○

 2について

  本肢は、平成20年度の出題であり、難化傾向に歩調を合わせたもの
 であって、題意が掴み難いうえに細かい専門知識を要する。即答できな
 ければ、保留にして、他の肢で勝負するのが賢明か。
  ここでは、そうはいっておられないから、順次説明する。
 憲法は、「行政機関は、終審として裁判を行ふことができない」と規定
 しているのであって(76条2項後段)裁判手続に類似した行政上の不服
 申立てを整備することは大いに推奨される。(これは、行政不服審査法の
 勉学の目的でもある)ここまでわたりをつければ、スパっと審級の省略
 も許されると推定して、×とすれば正解です。次のBの問題の1 を見て
 ください。これも×です。したがって、独占禁止法とか、特許法に基づき、
 行政庁が不服審査の審判を行うことができる。そして、これに関する抗告
 訴訟は、高等裁判所に行うことになっている。つまり地裁・高裁・最高裁
 という三審制の地裁の省略である。もちろん、この措置は、終審が司法
 機関になっているので、憲法違反ではない。細かい条文省略。×

 3について

  これは、行政事件訴訟法の説明であって、「行政上の不服申し立て」
 には、「仮の義務付け」などはない。また、執行停止制度は、従来から
 存在していて、平成16年の行政事件訴訟法改正により、要件が緩和さ
 れた。二重の誤り。これは、上等の肢とはいえないと思う。×


  
 B 「行政不服審査法」の地位

 1 「不服申立て」に関する法律の定めは、行政不服審査法にしか存在
   していない。                          
 
 2 行政上の不服申立ての道を開くことは、憲法上の要請ではないので、
  この制度を廃止しても、憲法違反とはならない。          

 3 法は、不服制度全般について統一的、整合的に規律することを目的
   とするので、別に個別の法令で特別な不服申立制度を規定することは
   できない。                            


 《解説》

 1および3について

  行政不服審査法第1条第2項によると、「行政上の不服申立て」について
 は、個別の法で定め得る。1も3も誤り。1・3とも×

 2について

  これも難化傾向に基づく平成20年度出題の肢である。これについての
 文献を漁れば出所があるかもしれない。趣味としては、そうしてもよい
 かもしれないが、暇のない受験対策には不適当である。できるだけ自分
 の頭で考えるようにした方がよい。憲法が直接に保障するのは、裁判を
 受ける権利である(32条)。これに気がつけば、○に直結する。
  ソレデヨイノダ。憲法は、ほかに法定手続を保障している(31条)が、
 これが 行政手続に及ぶか争いがある。かりに及ぶとしても、行政上の
 不服制度を設けることまで要請していないであろう。結局、当該制度を
 廃止するのは、望ましくはないが、憲法違反とまではいえないという
 ことになるのだろう。 ○
 


 C  法第1条〜2条

 
 1 行政不服審査法は、「行政庁の違法な処分その他公権力の行使に当
   たる行為」に限り不服申立てのみちを開いている。           
 
 2 法において「処分」には、「人の収容、物の留置その他その内容が
  継続的性質を有するもの」などの事実行為が含まれるが、これは取消    
   訴訟の対象にはならないが不服申立ての対象となる行為を特に明文で
   指示したものである。                                               

 3 取消訴訟においては処分の適法性のみを争うことができるが、行政
   不服申立てにおいては処分の適法性のみならず、処分の不当性をも
   争うことができる。                                                 

 4 処分の全部または一部の取消しの申立てのほか、処分の不存在確認
  の申立、不作為についての申立てを行うことができる。         

 

 ≪解説≫

 1および3について

  行政不服審査法第1条第1項によると、「不当な処分」も不服申立ての
 対象としている。したがって、1は× 3は○。
  「・・裁判所というのは、もっぱら、紛争を法的に解決することをその
 任務とする機関ですから、裁判所が審理できるのは、とうぜんに法問題
( 行政処分の違法性)にかぎられ、自由裁量行為のばあいに行政庁がおこ
 なった裁量が不当ではなかったかどうか、といったような判断はできない
 わけですが、行政上の不服申立てのばあいだったらそういった制限はない、
 ということになります」(入門)

 2について

  他の過去問の肢には、次のような類似問題がある。

  行政不服審査法にいう「処分」には「公権力の行使に当たる事実上の
 行為で、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有するする
 もの」が含まれる。

  これは、法2条1項の条文のとおりで、「処分」に含まれる事実行為の
 定義であって、○である。これに対し、本肢は、平成20年度の発展問題
 である。しかし、最近では、最高裁は、行政事件訴訟法の対象となる
「処分」(法3条2項)について、行政指導などのように、私人の権利義務
 に対して直接に法的な効果効果を持たないが、事実上非常に大きな影響を
 与える事実行為も「処分」と認めるべきとする傾向にある(入門)。
  したがって、事実行為が、取消訴訟の対象にならないとする点で×。

 3について

  法3条において、行政庁の処分又は不作為について行うものである。
 不作為のほか、処分については、処分のあったことが前提になって
 いるので、「処分の不存在確認の申立て」は許されない。×


 D 不服申立ての種類

 
 1 行政不服審査法が定める「不服申立て」には、異議申立て、再異義
   申立て、審査請求および再審査請求の4つの種類がある。

 2 行政不服審査法によると、行政庁の処分についての異議申立ては、
  「処分庁に上級行政庁があるとき」にすることができる。

 3 審査請求は、処分庁を経由してすることもできる。  

 4 再審査請求は、法律に「再審査請求をすることができる」旨の定め
   がなくても、審査請求が認められていれば、当該審査請求の裁決に   
   不服がある場合、当然にすることができる。

 5 審査請求の裁決に不服がある者は、法律または条例に再審査請求を 
   することができる旨の定めがあるときは、再審査請求をすることが
   できる。

 6 審査請求手続は、決定により終了するのが原則であるが、審査請求 
   を認容する決定についても理由を付さなければならない。

 
 ≪解説≫

 1について

  法3条1項によれば、「再異議申立て」はない。本肢に掲げる三つの
 種類しかない。 ×

 2について

  法3条2項によれば、「異議申立て」は、問題となっている処分をした
(またはしなかった)行政庁それ自体(処分庁または不作為庁)へ申立て
 をするものである。これと裏腹になるが、「処分庁に上級行政庁がある
 とき]は審査請求をすることになる。 ×

 3について

  法17条1項のとおり、審査請求人の選択により可能である。○

 4について

  再審査請求とは、一度審査請求を終えた後にさらに行う例外的な不服
 申立てである(法3条1項)。この申立ては、当該審査請求の裁決に
 不服がある場合、当然にすることができるのではない。
  行政不服審査法自体が定めている特定の場合・法律または条例によって
 特に定められている場合にだけ、その法律、条例が特に定める行政庁へ
 申立てができる(法8条)。したがって、法律に「再審査をすることが
 できる旨」の定めがある場合に当該申立てができるので、本肢は×。

 5について

  4で記述したとおり。○

 6について

  審査請求および再審査請求に対する裁断行為は「裁決」である(40条・
 55条)。× 裁決に理由を付すこと(41条1項)・異議申立てには、
 「決定」が下されることに注意(47条)。

 

 
 E 不服申立て要件

 1 審査請求が法定の期間経過後にされたものであるときは、審査庁は、
   裁決を行う必要がない。                                       

 2 審査請求人の地位は、一身専属的な法的地位であるので、審査請求
   人が死亡した場合には、相続人等に承継されることはなく、当該
  審査請求は、却下裁決をもって終結する。 


 ≪解説≫

  不服申立て要件をみたしていなければ、本案の審理をしてもらうことが
 できず、いわゆる門前払い(却下)をされてしまうことになる。

 1について

  法14条1項の審査請求期間を経過すれば、審査請求は、不適法である
 から、不服申立て要件をみたしていないことになり、裁決で却下する。
 (40条1項)裁決を行う必要がないのではない。 ×

 2について

  本肢のとおりであれば、不服申立て要件をみたさないことになり、却下
 裁決がなされる。しかし、37条1項によれば、相続人が権利を承継する
 ので、却下裁決をもって終結することはない。×

 
 F 不服申立て要件ー不服申立て事項

 
 1 行政不服審査法は、列記主義を採用している。           

 2 行政不服審査法は、不服申立ての対象となる「行政庁の処分」に
   つき、いわゆる一般概括主義をとっており、不服申立てをすること
   ができない処分を、同法は列挙していない。             

 3 法は、地方公共団体の機関が条例に基づいてする処分を適用除外
   としているため、そのような処分については別途条例で不服申立    
  制度を設けなければならない。

 4 不服申立てをすることができない処分については、法が列挙して   
   いるほか、他の法律において特定の処分につき不服申立てをする
   ことができない旨を規定することができる。

 
 ≪解説≫

  ここでも、不服申立て事項に該当しない処分に対し、不服申立てを
 すれば、不服申立て要件を満たさず、却下されるという視点に立つ
 必要がある。

 1について

  不服審査法の前身の訴願法の時代に採用されたもの。その列記主義
 というのは、法律で定められた一定の処分に対してしか、不服申立て
 が許されないものである。(入門) ×

 2について

  不服審査法は、対象となる処分について、列記主義をやめて、一般
 概括主義をとっている(4条1項)。この点は正しい。しかし、行政
 不服審査法は、4条1項1号から11号まで、同法に基づく不服
 申立てはできないとする。また、それ以外にも、個別法律で、不服
 申立てを許さないこととしている場合がある(4条1項ただし書き)。
 例外を認めているので、後段が×。

 3について

  これもすこし戸惑うとみれば、平成20年度過去問である。4条
 1項1号〜11号において、当該処分が適用除外になっていない
 から、条例に基づく処分についても、行政不服審査法に基づいて
 不服申立てを行うべきなのであろう。×

 4について

  2で説明した「個別法律で、不服申立てを許さないこと」に
  該当する。 ○                     
 

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第38回 】★      
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 2009/6/24


             
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【テーマ】行政事件訴訟法
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 A 平成18年度過去問・問題17

  取消訴訟と審査請求の関係についての次の記述のうち、妥当なもの
 はどれか。

 1 個別法が裁決主義を採用している場合においては、元の処分に対
   する取消訴訟は提起できず、裁決取消訴訟のみが提起でき、元の
   処分の違法についても、そこで主張すべきこととなる。

 2 行政事件訴訟法は原処分主義を採用しているため、審査請求に対
  する棄却裁決を受けた場合には、元の処分に対して取消訴訟を
   提起して争うべきこととなり、裁決に対して取消訴訟を提起する
  ことは許されない。

 3 審査請求ができる処分については、それについての裁決を経ること
   なく取消訴訟を提起することはできないとするのが行政事件訴訟法
  の 原則であるが、審査請求から3か月を経過しても裁決がなされ
  ないときは、裁決を経ることなく取消訴訟を提起できる。

 4 審査請求の前置が処分取消訴訟の要件とされている場合には、
  その 審査請求は適法なものでなければならないが、審査庁が誤って
  不適法として却下したときは、却下裁決に対する取消訴訟を提起すべ
   きこととなる。

 5 審査請求の前置が処分取消訴訟の要件とされている場合には、その
   出訴期間も審査請求の裁決の時点を基準として判断されることとなる
  が、それ以外の場合に審査請求しても、処分取消訴訟の出訴期間は
  処分の時点を基準として判断されることとなる。
 

 B・Aに関連する問題(例により、過去問の出典を明らかにしない)
   ○×で解答いてください。

(1) 行政事件訴訟法によれば、取消訴訟は、必ず審査請求を経て
    からでなければ提起することができない。

 (2) 処分の取消しの訴えと当該処分の審査請求を棄却した裁決の取消
  しの訴えとを提起できる場合は、どちらの訴訟においても当該処分
  の違法を理由として取消しを求めることができる。 

 (3)処分の取消の訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決
     の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消
     しの 訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求める
    ことはできない。

 (4)処分の取消しの訴えは、審査請求に対する裁決を経て提起する
    ことが法律で定められている場合であっても、審査請求があった
  日から3箇月を経過しても裁決がないときは提起することができる。

 (5)「裁決の取消しの訴え」を「処分の取消しの訴え」と併合して
   提起するようなことは、許されない。

 (6)取消訴訟について不服申立ての前置が要件とされている処分に
     ついては、無効確認訴訟についても、それが要件となる。

 
 C 平成20年度過去問・問題16

 
 不作為の違法確認訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 1 不作為の違法確認訴訟は、処分の相手方以外の者でも、不作為の違法
   の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者であれば、提起すること
   ができる。

 2 不作為の違法確認訴訟を提起するときは、対象となる処分の義務付け
   訴訟も併合して提起しなければならない。

 3 不作為の違法確認訴訟は、行政庁において一定の処分を行わないことが
   行政庁の義務に違反することの確認を求める公法上の当事者訴訟である。

 4 平成16年の行政事件訴訟法の改正によって義務付け訴訟が法定された
   のと同時に、不作為の違法確認訴訟の対象も、申請を前提としない規制
  権限の不行使にまで拡大された。

 5 不作為の違法確認訴訟自体には出訴期間の定めはないが、その訴訟係属
   中に、行政庁が何らかの処分を行った場合、当該訴訟は訴えの利益がなく
   なり却下される。


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■ 解説
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 △ 参考書籍 

 「行政法入門」藤田 宙靖 著 ・「行政法読本」芝池 義一 著
  ・ともに有斐閣発行

 △ 過去問の検討

  今回も前回に引き続き「行政事件訴訟法」を採用した。

 
 A・平成18年度過去問

 a 根本問題・用語解説

 ○不服申立ての前置

 「訴願前置主義」
  
   昭和37年に現在の行政事件訴訟法が制定される前の制度である。
  行政庁に対して、異義などができる場合には、それを行ってから
  でなければ処分の取消訴訟を起こすことはできない。

 「自由選択主義」
 
   行政上の不服申立てを先にするかいきなり訴訟を提起するか、両者
  を平行して行うかすべて私人の自由な選択に任せるべきである。
    行政事件訴訟法8条1項が規定する現在の制度。

   同法8条1項ただし書きは、例外を認めている。個別の法が例外を
  定めている場合がたいへん多くなっていて、「その結果、現実には
 不服申立ての前置という要件がふたたび取消訴訟の重要な訴訟要件
  となってしまっているということを否定できない状況」(入門)                
  である。
 


 ○「原処分主義」と「裁決主義」

   裁決を経て取消訴訟を提起する場合、最初の処分(原処分)と裁決
  のいずれを争いの対象とすべきかという問題である。なお、さきの
 「前置」主義とは、直接関係ないと思う。「前置」に基づいて、裁決
  を経る場合もあれば、「自由選択」に基づいて裁決を経る場合もある
  からである。

   たとえば、ある営業許可申請に対して、拒否処分がされたのを不服
  として、審査請求をしたところ、これが棄却された場合を想定する。
   まず、現行法は、「処分の取消しの訴え」と「裁決の取消しの訴え」
(注) を規定している。(3条2号・3号)。
 
  注・行政不服審査法によると、異義申立てには決定がなされ、審査
   請求には裁決がなされることになっているが、行政事件訴訟法では、
     両者を含めて、「審査請求」「裁決」という言葉に統一されている
     ことに注意せよ。

  申請者としては、拒否処分を取り消してもらえばよいことになるが、
 考え方として、あとの裁決を争いの対象とし、その中で、最初の処分
 が違法であることを裁判所に認めてもらえばよいことになる。しかし、
 前述したとおり、法は、「処分の取消し」という独自の方法を認めて
 いるのだから、あくまで、拒否処分という 原処分を取消す「処分の
 取消し」を提起すべきことになる。これが、行政事件訴訟法10条
 2項の規定する「原処分主義」である。原処分主義で目的を達する
 ので あれば、「裁決の取消し」は不要ではないかという疑問を生ずる。
  しかし、個別の法律において、原処分に不服がある場合であっても、
 裁決について取消訴訟を提起することが定められていることがある。
  これが、例外として認められている裁決主義である。この場合には、
 この訴訟の中で原処分を取り消してもらうことになる。また、原処分
 の取消しの外にに審査請求の手続自体に違法があるのでこれを取り
 消しておきたいときは、両者の訴えを同時に行うことになる。
 (このような説明は、一般の教科書ではみかけないが、それぞれできる
 だけご自分で具体的に考察されることを勧める。)

 b 各肢の検討。

   以上aの記述を前提に解説をする。全体を見ると、1・2が「原処
 分主義」と「裁決主義」の問題であり、3・4・5が「前置」の問題
 であることが分かる。

 1について

  これは、まさに例外としての裁決主義であり、妥当である。この知識
 が正確に把握されていれば、後の肢はパスして、次の問題に進み、最後
 に時間が残れば、2〜5を確認すれば、随分時間の節約になる。

  2について

  法10条2項の原処分主義のの説明として、前段は正しい。しかし、
 裁決に対して同時に取消訴訟を提起できるので、後段は妥当でない。

  3について

  自由選択主義が原則であるから、前段は妥当でない(法8条1項本文)。
 後段については、8条2項1号に注意。この規定は、例外としての
「前置」 の場合に適用されるのである。紛らわしい肢である。

  4について

  この肢も題意が掴みにくい。審査庁がもともと不適法な審査請求を却下
 (注)したときは、その審査請求は適法なものでなければならないから、
 前置としての裁決があったとは言えない。しかし、審査庁が誤って
 不適法 として却下したときは、却下裁決に対する取消訴訟を経ること
 なく、前置 としての審査請求があったものとして原処分の取消訴訟を
 提起できる。
  同旨の判例があるようである。本肢は妥当でない。

 注 不服申立て要件を満たしていない不服申立てに対し、本案の審理を
    拒否する門前払いとしての「却下」裁決がなされる。これは、本案
    の審理を行ったうえで、言い分を認めない「棄却」裁決と異なる。

 5について

  これも即座に題意がつかみにくい。本肢にいう「それ以外の場合」とは
 前置が処分取消訴訟の要件とされていない場合において、いきなり処分
 取消訴訟を提起しないで、審査請求を選択した場合に相当する。
  換言すると、「自由選択主義」に基づいて、行政上の不服申立てを先行
 させた場合である。審査請求があったときの出訴期間に関する14条3項
 の規定は、前置の場合に限っていないので、「それ以外の場合」にも適用
 されることになり、この場合にも、処分取消訴訟の出訴期間は裁決の時点
 を基準として判断されることになる。おそらく、当該規定は、裁決の結果
 をみて、原処分の取消訴訟を提起しようとする相手方の意思を尊重した
 ものであろう。そうであれば、なおさら前置に限定する必要はない。
 妥当でない。
 なお、これは、教科書では一般に触れられていないもので、常識によって、
 解答を導くことになるだろう。

 1が正解である。4とか5の紛らわしさを考慮すれば、1の正確な知識が
 切め手になる。
 

 B 関連問題

 (1)について

 法8条1項の「自由選択主義」に反する。×

  (2)について

 法10条2項の「原処分主義」に反する。×

  (3)について

 法10条2項の「原処分主義」のとおり ○

  (4)について

 法8条第2項1号のとおり。○

  (5)について

  原処分の取消しの訴を提起するに当たり、裁決の手続に違法性がある場合
 には、「裁決の取消の訴」を併合することが許されるというのが、「原処分
 主義」の帰結である(19条1項参照)。  ×

  (6)について

  法8条第1項ただし書きによれば、不服申立ての「前置」は「処分取消し
 の訴」 に該当する。法38条は、法8条1項ただし書きを無効確認訴訟に
 準用していない。無効確認訴訟については、まさに「前置」といった制限
 を設けず、いつでも起こせる抗告訴訟であるところにこそ、この訴訟の
 ほんらいの意味があるからである。(入門参照)したがって、個別の法
 において、前置の規定があっても、無効確認訴訟には適用がない。

 
 C 平成20年度過去問 

 1について

  行政事件訴訟法第3条第5項によれば、この訴訟は、不作為一般に関する
 訴訟ではなく、「法令に基づく申請」が行われたにもかかわらず行政庁が
 応答しない場合に認められる訴訟である。例えば、許認可の申請や年金の
 給付の申請をしたが、行政庁の応答がない場合、その違法の確認を求める
 ための訴訟がこの不作為の違法確認訴訟である(読本)。したがって、
 処分の相手方以外の者は提起できない。正しくない。

 2について

  法3条6項2号の「申請型不作為」に対する義務付け訴訟にあっては、
 不作為違法確認訴訟も一緒に起こさなければならない(法37条の3第3項
 第1号)。しかし、不作為の違法確認確認訴訟は、単独で提起できる。
 (24号オリジナル問題1肢3・36回過去問A肢3参照)正しくない。
 不作為の違法確認訴訟だけでは効果が薄いので、これを補充するために
                                                     ・・・・・・
 義務付け訴訟が認められるという理屈が分かっていれば、義務付け訴訟
 提起にあって、不作為違法確認訴訟を併合して提起しなければならない
 ことが自然に導かれる。本肢は逆である。

 3について

  法3条5号に規定される不作為違法確認訴訟は、「抗告訴訟」である。
 正しくない。

 4について

  平成16年改正法により、「義務付け訴訟」(そして「差止め訴訟」)
 が「抗告訴訟」として法定されたというのは正しい。しかし、現在も
 法3条6項1号の「直接型不作為」(申請を前提としない規制権限の
 不行使)は、不作為違法確認訴訟の対象にならない。この「直接型
 不作為」に該当する事例としては、過去問36回A肢1の「違法建築」
 オリジナル24号の問題1肢1の「公害」を参照されたい。
  本肢は正しくない。
  なお、平成18年度過去問18 肢1において、本肢と同様のこと
 を問うている。

 


 5について

  法14条の出訴期間の定めは、処分などがあったことを前提にして
 いるから、不作為違法確認訴訟については、そもそも行政処分がない
 場合が問題になるから、出訴期間の定めがなくて当然である(入門)。
  後段については、処分がなされたのであるから、「裁判所が裁判を
 するに値する客観的な事情ないし実益が」(読本)ない場合に相当
 し、訴えの客観的利益を欠く。訴訟要件を欠くことになり、門前払
 いである却下がなされる。正しい。


  本問は5が正解である。
 


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 27回 】★      
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 2009/4/28


             
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【テーマ】行政法・審査基準
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 平成19年度過去問 

 問題12

 行政手続法による審査基準に関する次のア〜オの記述のうち、妥当
 なものはいくつあるか。

 ア 審査基準の設定は、行政手続法の委任に基づくものであり、
   申請者の権利にかかわるものであるから、審査基準も法規命令
   の一種である。

 イ 不利益処分についての処分基準の設定が努力義務にとどまる
   のに対して、申請に対する処分についての審査基準の設定は、
   法的な義務であるとされている。

 ウ 審査基準に違反して申請を拒否する処分をしても、その理由
   だけで処分が違法となることはないが、他の申請者と異なる
   取扱をすることになるため、比例原則違反として、違法となる
   ことがある。

 エ 審査基準の設定には、意見公募手続の実施が義務付けられて
   おり、それに対しては、所定の期間内であれば、何人も意見を
   提出することができる。

 オ 国の法律に基づいて地方公共団体の行政庁がする処分に
   ついては、その法律を所管する主務大臣が審査基準を設定する
   ことになる。
  

 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
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 ▲ 参照書籍は、前回(26回)の問題・解説欄に掲載した。
 
 
 ◎ 審査基準とは
 
  審査基準の設定・公表について行政手続法5条1項に規定がある。
 この規定は、要するに、行政庁に対し、申請に対する処分について、
  できる限り具体的な審査基準を定めること、およびそれを公にする
 ことを求めるものである。
  これは、行政庁が行政裁量を行使する際の裁量基準の一種である。
 (読本)

 ◎ 各肢の検討

 アについて。

 審査基準は通達であり、裁量基準であるから、その法的性質は、
 行政内部規範であって法規範ではなく、法的拘束力を持たない。
 したがって、行政立法の分類に従えば、「法規命令」ではなく
 「行政規則」に該当する。
 なお、この審査基準は、行手続法の委任に基づくものではないが、
 行手法に制定手続が定められていること等を理由に、正式の
 「法規命令」ではないにせよ、一定の法的拘束力を認めるべき
 ではないかという指摘がある。(読本)

 妥当でない。

 イについて。

 12条によると、不利益処分についての処分基準の設定が努力
 義務になっている。これと対比すると、「・・するものとする」
 5条1項の規定については、「行政手続法は、審査基準の設定を
 行政庁に原則として義務づけるものと解釈するのが自然である。」
(読本)審査基準の設定・公表が義務的であり、処分基準
 にあっては、両者とも努力義務となっていることは、過去問の
 他の肢で何度も問われている。


 妥当である。

 注 不利益処分は、2条4号に規定がある。営業停止命令など
 がこれに該当する。12条1項において、処分基準の設定・公表が
 努力義務にとどまる理由としては、「処分基準を公表すると、場合
 によっては、違反すれすれの行為が行われたり、処分を巧妙に
 免れる脱法行為が行われたりすることがあることに配慮したため
 である。」(読本)

 審査基準の設定・公表が義務的であり、処分基準 にあっては、両者
 とも努力義務となっていることは、過去問の 他の肢で何度も問われ
 ている。

 ウについて。

 前述したとおり、審査基準は、法的拘束力を持たないので、審査基準
 に違反しただけでは、違法となることはないという点は正しい。
 しかし、他の申請者と異なる取扱いをすれば、法の下の平等に反し、
 「平等原則」に反して、違法となることがある(第2コース第23回
 エ欄参照)。したがって、比例原則ではない。

 妥当でない。

 エについて。

 行手法は、39条以下において、「意見公募手続」を定めている。
 意見公募手続の対象となる命令等の中には、審査基準・処分基準・行政
 指導方針も含まれる(39条1項・2条8号)。この意見公募手続は、参加
 手続であって、公益のため、よりよい行政決定を行うために、行政の
 意思決定に広く国民の意思を反映させようとするものである。(読本)
 条文上も、「意見提出期間を定めて広く一般の意見を求めなければなら
 ない」と定めている(39条1項)。したがって、所定の期間内であれば、
 何人も意見を提出することができるので、この肢は全体として正しい。

 妥当である。

 注 行政指導方針の定義は、2条8号ニの括弧内。

 
 オ 審査基準は、処分を行う行政庁によって設定されることになっている
 ので、本肢は誤り。

 妥当でない。
 


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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第22回 】★      
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 2009/4/14


             
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【テーマ】行政法・行政立法その2
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 平成12年度過去問

 問題 8

 行政立法についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

 1 行政立法は、行政庁の処分と並んで公権力の行使であり、公定力
  ・不可争力などの効力が認められる。

 2 罪刑法定主義の原則により、行政立法で罰則を設けることは、法律
   で個別・具体的な委任がなされている場合でも許されない。

 3 行政立法は政令、省令、訓令、通達などからなるが、いずれも行政
   機関を法的に拘束するものであり、裁判所はこれら行政立法に違反
   する行政庁の処分を取り消すことができる。

 4 行政立法が法律による授権の範囲を逸脱して制定された場合には、
   裁判所はその行政立法を違法とし、その適用を否定することができる。

 5 地方公共団体における法律の執行は、その長の定める規則に委任
   されるのが原則であり、条例により法律を執行することはできない。


 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ▲ 参照書籍・行政法入門 藤田 宙靖著 ・ 行政法読本 芝池 
 義一 著ともに有斐閣・憲法 芦部信喜 岩波書店 

 ▲ 総括

 1 法は、国会によってだけつくられているわけではなく、裁判所に
  よってもつくられるし(最高裁判所規則≪憲法77条≫)、行政機関
 によってもつくられる。行政機関がおこなう立法(行政立法)は
 「命令」と呼ばれて、憲法もまた、その存在を容認している(憲法
 81条・98条など)。

 2 行政立法には次の2種類がある。
 
  その一つが「法規命令」であってこれは、私人の権利・義務に直接
  変動をもたらす効果をもった行政立法。
 
 それ以外の行政立法が「行政規則」。

 3 法規命令には法律による授権を要するが、行政規則には要しない。

     
          法律による行政の原理
   法律-----------------------行政立法(命令)
 (憲法41条)           
       ↓ 法律の授権要        
        
      ・法規命令(私人の権利・義務に直接変動もたらす)

             ↓ 法律の授権不要
      
            ・行政規則(行政内部)

 
 ▲ 本問の検討

 1について。

 行政立法は、行政行為ではないので、行政行為(行政庁の処分)の効力
 として、認められているものは、行政立法には認められない。

 妥当でない根拠は、以上のとおりで必要十分であるが、もう少し詳しく
 説明する。

 私人に直接権利を与えたり義務を課したりするする点では、行政庁の処分
 と行政立法(法規命令)は共通する(1)。したがって、「行政立法は、
 行政庁 の処分と並んで公権力の行使であり」というのは正しい。しかし、
 法規 命令の「定め方は、不特定多数のひとびとを対象とした一般的・
 抽象的なものであって、特定の私人を対象とした個別的・具体的のもの
 ではありません(2)から、『行政行為』には含まれなことになります」
(入門)。
 したがって、行政行為(行政処分)の持つ特別の効力である公定力・
 不可争力は、行政立法(法規命令)には存在しない(3)ことになる。

               
                               (1)  (2)  (3)

 

 A・行政立法  -------------------------------×                    
          -------→  ○  ×
 B・行政行為(行政処分)---------------------○    

 (1)権利・義務 共通 (2)特定・不特定 異なる 
   (3) 特別の効力の存在

 注
 1 行政内部の規定に留まる行政規則は、ここでは問題にならない。
 
 2 公定力とは「違法な行政行為も取り消されるまで原則として
    有効」(入門)とされること。
 
  3 不可争力とは、「法律上定められた不服申立期間・出訴期間をすぎて
    しまうことによって、もはやその行政行為の効果を私人が争うことが
  できなくなる」(入門)こと。

  したがって、1は全体として妥当でない。


 2について。

 罪刑法定主義の原則によれば、罰則を設けるには、法律で定めること
 が要請される(憲法31条)。しかし、行政立法(法規命令)である政令
 においては、法律で個別・具体的な委任がなされている場合には、
 罰則を設けることができる(憲法73条6号但し書き)。また同様に、
 法規命令である省令においても、罰則を設けることができる(国家
 行政組織法12条3項)。

 したがって、妥当でない。

 3について。 
 

 以下は、前記総括を参照

 行政立法には、2種類ある。
 
 その一つが法規命令であって、政令・省令がこれに該当する
(憲法73条6号但し書き・国家行政組織法12条1項・3項)。

 もうひとつが行政法規であって、訓令・通達がこれに該当する
 (国家行政組織法14条2項)。

 行政機関を法的に拘束するのは、前者の政令・省令(法規命令)
 であって、裁判所は、これら行政立法に違反する行政庁の処分
 を取り消すことができる。しかし、後者の訓令・通達(行政規則)
 は、「もっぱら行政機関を内部的に拘束するだけで、私人に対し
 ては法的効力を持たない(つまり私人の権利・義務とは法的に
 無関係である)」ので、たとえば、「納税者は通達違反を理由に
 課税処分は違法であると主張し、その取り消しを求めることは
 できない」(入門)。
                                             違反
 所得税法------所得税法施行令(政令)------課税処分
                                ↑
                              取り消し可
                  
                        違反        
            ------通達---------課税処分
                            ↑
                          取り消し不可
               (当該課税処分がおおもとの
                所得税法に違反しているか
                どうかの問題)

 したがって、本肢は、訓令・通達には妥当しないので、全体としては、
 妥当でない。

 4について。

 行政立法である政令が法律による授権の範囲を逸脱しているかどうか
 争われた事件として最判平成14・1・31・・(芦部 憲法)がある。
 児童手当法が、支給対象となる児童の一部に該当する者を政令に委ねて
 いるが、この政令が委任の範囲を逸脱しているとされた。この場合、
 裁判所は、この政令を違法とし、その適用を否定することになる。
 したがって、当該政令の適用により児童手当の受給資格の喪失処分
 を受けた母親に対するその処分が取り消されることになる。

     裁判所    
        ↓違法   ↓取り消し

    政令適用・行政処分
 行政庁---------------------私人

 したがって、本肢が妥当であって、これが正解。


 5について。

 条例には、法律の個別の委任に基づいて制定されるものと法律の個別
 の委任なしに制定されるものがある。前者が、委任条例・法定条例・
 ・・・・・・
 法律執行条例と言われるものであって、本肢はこれに該当すると
 思われる。後者は自主条例と呼ばれる。

 いずれにせよ、条例については、「『地方自治の本旨』ないし
『地方自治の尊重』の見地からは、条例の中に示される地方公共団体の
 意思ないしは判断はできるだけ尊重されなければならない。・・条例
 が適法なものとして存在するための余地・・をできるだけ広く確保
 する工夫が要請される」(読本)

 以上の趣旨からすれば、本肢にいう法律執行条例が是認されるのは
 当然であるとともに、憲法94条の「・・法律の範囲内で条例を制定
 することができる」との規定に従って、法律の個別の委任なしに制定
 される自主条例が幅広く認められて然るべきである。

 以上述べたところより、本肢は明らかに誤り。

 

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 14回 】★      
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 2009/2/23

             
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【テーマ】民法・占有改定と即時取得

 
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■ 過去問を中心とした「占有改定と即時取得」 問題と解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ◆ 過去10年間の過去問を題材に、問題提出と解説を行います。
 

  [問題1] (本問は、過去問を少し修正している)


                      
 Aは、Bに売却した絵画を引き続き、Bのために預かる旨約束し、
 そのまま保持している。
 最高裁判所の判例によれば、次の記述は妥当といえるか。

 Aがこの絵画を自分の物であると偽って善意無過失のCに売却
 し、以後はCのためにその絵画を預かることを約束した場合には、
 即時取得によりCはこの絵画の所有権を取得する。


 [解説]

 ◎ 占有改定と即時取得の概念の把握(一粒社・民法1参照)

 
 ア 占有改定

 占有は物を支配するという事実関係であるが、社会観念上前主の
 支配に基づいて後主が支配を取得すると認められるときは占有の
 承継を生じ、したがって占有権も承継される。

           承継
   前主  占有権 -------------- 後主
      ↓                        ↓
      支配する事実関係    支配の取得
   絵画

 
 通常は「絵画」の引渡しによって、占有権の譲渡を生じる。
 (182条1項)

 占有権の承継には種々の態様があり、そのひとつが占有改定である。

 占有改定による占有権の譲渡は、譲渡人が譲受人の占有代理人
 となって引き続き所持する場合に行われるものであって、譲渡人
 が事後本人の占有代理人として所持すべき旨の意思表示をすれば
 よい(183条)。

 ここでは、占有代理人による占有つまり代理占有が問題になる
 ので、このあたりについて、本問に則して、説明する。
 
             内の数字は、時系列による順序
  絵画 預かる      
  ------------- B  ,皚△癸臓■辰鯔椰佑箸垢訛緲占有
  A          であり、Aは、B、Cの占有代理人。
  ------------- C
    預かる     181条⇒占有権は、代理人によって取得
     ◆     ,垢襪海箸できる。
            
            条文に則すると、B、C本人は、(占有)
            代理人Aによって、占有権を取得。
 
 代理占有の要件としては、ア 代理人がが所持。 イ 代理人が
 本人 のために所持する意思を有する。 ウ 本人代理人間に
 占有代理関係の存在。  ウについては、代理人が本人の占有
 すべき権利に基づいて所持するという外形があり、本人に対して
 返還義務を負う関係。
 本問では、Aが本人B・Cのために預かるという関係´△
 おいては、代理占有が成立している。

 以上の代理占有がどうして生じたかといえば、譲渡人であるAが
 譲受人であるB・Cの占有代理人となって引き続き所持する場合
 に該当し、Aが事後B.Cのために所持する旨約束している
 のだから、本問の´△蓮△い困譴癲∪衢改定による占有権
 の譲渡の場合に当たるたる。

 占有権の譲渡は、いくら物の実際の引き渡しが原則(182条1項)
 だといっても、 何がなんでも、いったん、AがBに引き渡し、
 Bから預からないと 駄目というのは、ナンセンスである。
 占有改定の認められる所以である。
 この点については、他の占有権譲渡である、簡易の引渡し
(182条2項)・ 指図による占有移転に基づく占有権の譲渡
(184条)も同様であって、これらについては、現実の引渡し
 が無意味である。

 イ 即時取得

 即時取得は動産の占有に公信力を与え(占有している者が
 無権利者であっても、これを取得した者が権利を取得する)、
 動産取引の安全をはかる制度。

 その要件

 (ア)動産に限って適用。
 
 (イ)取引によって動産の占有を取得すること。
 
 (ウ)相手方が目的物たる動産を処分する権限をもたないのに、
 もっていると誤信して取引をしたこと。
 
 (エ)取引によって権利を譲り受けた者が善意にして無過失
 であること、および取引が平穏かつ公然に行われること。

 その効果

 その取引によって外形上取得される所有権(または質権)
 が真実に取得される。

 
 ウ 占有改定と即時取得

 本問では、占有改定と即時取得の関係が問われている。
 関連する事柄も含めて、順次検討しよう。

          占有改定
                
         -------------- B
       A   
        -------------- C
         占有改定
          
 
 (ア)まず、,砲いて、AがBに売却し、その後、Aは
 Bのために預かっているのだから、AからBに対して、
 占有改定による占有権の譲渡があったことになる。
 178条によれば、動産の譲渡の対抗要件は、動産の引渡しであり、
 この引渡しには、占有改定も含む。したがって、Bは以後
 二重譲渡を受けた者に対しては所有権取得を対抗できる。
 
 (イ)したがって、かりに△砲いて、、二重譲渡を受けたCが、
 占有改定による 引渡しを主張しても、BはCに対して所有権を
 対抗できる。

 (ウ)しかし、△砲いて、Cに即時取得が認められると、C
 が所有権を取得する。本問では、Cは、Aが処分権限を持たない
 ことに善意無過失であり、即時取得の要件を具備しているように
 みえる。しかし、判例は、即時取得には、占有改定の適用がない
 とした。(最判昭和32・12・27・・最判昭和35・2・11・・)
 つまり、即時取得の要件として、イ(イ)の取引によって動産の
 占有を取得することとは、現実に目的物の引渡しを受けることが
 要求されることになる。

 したがって、Cがこの絵画を即時取得とする本問は、妥当でない
 ことになる。

 確かに、本問では、即時取得には占有改定の適用がないという
 理解があれば、即正解が得られるが、問題がだんだんと難しく
 なっている将来の本試験に立ち向かうには、これから述べる
 発展問題への対処が大切になる。そのためには、いままで
 述べてきたことに対する正確な理解が前提になる。

 ウ 関連(発展)問題の考察(民法 1 内田 貴著 参照)

 (1)判例の立場では、Cが即時取得しないため、,裡造所有権
 を取得することになる。そうすると、早い者勝ちになる。

 (2))それでは、占有改定によって、即時取得し得るという学説
 によればどうなるか。Aが処分権限をもたなくても、Cが所有権
 を即時取得することになり、結局遅い者勝ちになる。

 (3)以上、どちらにも難点があるとして、BとCを平等に扱う
 学説が最近有力である。
 それによると、占有改定で一応即時取得は成立するが、まだ
 確定的ではなく、現実の引渡を受けることによって確定的になる
 とする。

(2)の学説によれば、AからBに絵画が返還されていても、Cは
 なおBに引渡しを求めることができるのは、Cの保護に傾きすぎる。
 (1)の判例の立場によれば、△裡辰現実の引渡しを受ければ、
 即時取得することになるが、これを阻止するために、Bが自分が
 買主だとCに通告してしまえば、Cは悪意になり即時取得しない。
 しかし、当該(3)説によれば、Cは、現実の引渡しを受ける以前
 の取引の段階で一応、即時取得しているので、Bの以上の阻止行為
 は何らの意味をもたない。

 Cの占有改定による
  即時取得         
           BのCに対する通告
                  
           善意  ↓  悪意
     
          A--------取引--------引渡し

          (3)説    判例

         一応即時取得   即時取得しない

 
 当該(3)説の総括

 Bの立場 占有改定によって所有権取得を他の者にに対抗
     (178条・183条)
      →しかし、Cの占有改定による即時取得(192条)
      によりCが優先
      →ただし、Cが引渡しを受けて、Cの即時取得確定
      
            BはCより先に引渡しを受ければ、勝ち

 Cの立場 原則→即時取得によりBに優先・しかし、引渡しに
      よって確定
      →先にBが引渡しを受ければ劣後
     
            CはBより先に引渡しを受ければ、勝ち

 したがって、BとCは早い者勝ちでもなく、遅い者勝ちでもなく、
  対等。


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