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        ★ 過去問の詳細な解説  第85回  ★

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                         PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 民法 

    【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
     本年9月末頃を目途に、過去問の分析に加え、近時の傾向も取り
  入れた「オリジナル模擬試験問題」(有料)を発行する予定をして
   います。
     とくに、関連部分に言及した解説にも力を込め、よりよいものを
   目差して、目下準備中です。


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 ■ 平成21年度・問題28
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   時効に関する次のA〜Eの各相談に関して、民法の規定および判例に
 照らし、「できます」と回答しうるものの組合せはどれか。


 Aの相談「私は13年前、知人の債務を物上保証するため、私の所有す
  る土地・建物に抵当権を設定しました。知人のこの債務は弁済期から
  1 1年が経過していますが、債権者は、4年前に知人が債務を承認して
  いることを理由に、時効は完成していないと主張しています。民法によ
  れば、時効の中断は当事者及びその承継人の間においてのみその効力を
 有するとありますが、私は時効の完成を主張して抵当権の抹消を請求で
  きますか。」


  Bの相談「私は築25年のアパートを賃借して暮らしています。このア
  パートは賃貸人の先代が誤って甲氏の所有地を自己所有地と認識して建
  てしまったものですが、これまで特に紛争になることもなく現在に至っ
  ています。このたび、甲氏の相続人乙氏が、一連の事情説明とともにア
  パートからの立ち退きを求めてきました。私は賃貸人が敷地の土地を時
  効取得したと主張して立ち退きを拒否できますか。」


 Cの相談「30年程前に私の祖父が亡くなりました。祖父は唯一の遺産
  であった自宅の土地・建物を祖父の知人に遺贈したため、相続人であっ
  た私の父は直ちに遺留分を主張して、当該土地・建物についての共有持
  分を認められたのですが、その登記をしないまま今日に至っています。
 このたび父が亡くなり、父を単独相続した私が先方に共有持分について
  の登記への協力を求めたところ、20年以上経過しているので時効だと
 いって応じてもらえません。私は移転登記を求めるころはできますか。」


  Dの相談「私は他人にお金を貸し、その担保として債務者の所有する土地 
  ・建物に2番抵当権の設定を受けています。このたび、1番抵当権の被
  担保債権が消滅時効にかかったことがわかったのですが、私は、私の貸金
  債権の弁済期が到来していない現時点において、この事実を主張して、私
  の抵当権の順位を繰り上げてもらうことができますか。」


 Eの相談「叔父は7年ほど前に重度の認知症になり後見開始の審判を受け
  ました。配偶者である叔母が後見人となっていたところ、今年2月10日
  にこの叔母が急逝し、同年6月10日に甥の私が後見人に選任されました。
  就任後調べたところ、叔父が以前に他人に貸し付けた300万円の債権が
  10年前の6月1日に弁済期を迎えた後、未回収のまま放置されているこ
  とを知り、あわてて本年6月20日に返済を求めましたが、先方はすでに
  時効期間が満了していることを理由に応じてくれません。この債権につい
  て返還を求めることができますか。」
   

  1 Aの相談とBの相談

  2 Aの相談とCの相談

  3 Bの相談とDの相談

  4 Cの相談とEの相談

 5 Dの相談とEの相談
 

 

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 ■ 解説
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   ◆ 参考書籍

  民法 1  勁草書房

 
  
   ◆ 各肢の検討


  ● Aの相談について

  これは、物上保証人が担保する債権が時効中断によって時効消滅しな
 い場合、担保物権たる抵当権はどうなるかという問題である。

  この場合、担保物権における付従性の原則(消滅における付従性)に
  より、その担保する債権が時効消滅しない間は独立に消滅時効にかから
 ない。
 
  本件では、私は、時効の完成を主張して抵当権の抹消を請求できない。

  したがって、「できます」と回答しうるものではない。

  以上、本件では、付従生の原則が頭にあれば、すっと、正解に達する。
  

   ★ 参考事項
 
  
  (1) 時効中断

     消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する
   (166条1項)から、債務の弁済期から進行する。本件では、
       弁済期から11年経過しているので、時効消滅する(167条)
    はずであるが、4年前の債務の承認による時効中断のため、
    その時から10年間は時効消滅しない(147条3号、157
    条1項)。以上により本件では、現在、当該債権の時効は完成
       していないことが前提になっている、

     本件では、時効中断の効力が及ぶ範囲が問題とされているが
   (148条)、当事者間に中断の効果が及びそのため、当該債権
       の時効が完成していないことになるだけの話である。結論に変
    わりはない。このよな文言に惑わされてはならない。

    (2) 396条との関係

     これは、その担保する債権が時効消滅しない間であっても、
      抵当権が独立に消滅することを定めているので、消滅における付
      従性の原則の例外である。

    しかし、債務者及び抵当権設定者には、本条の例外規定の適用
   はないので、本件における物上保証にあっては、その担保する債
   権が時効消滅しない間は独立に消滅にかからないという原則に従
   うのである。

    それでは、本条はどのような場合に適用されるか。これについ
   ては、以下のとおりである。

   「たとえば第三取得者または他の債権者に対する関係においては、
    債権が消滅時効にかからない場合においても、(抵当権は)独
    立に消滅時効にかかるものとされる(396条)。その時効期
    間は20年である(167条2項)。債権は一般に10年で消
    滅時効にかかるから(167条1項)、右の事例は債権につい
    て時効の中断の行われた場合に生ずるわけである。」(前掲書)


     ● Bの相談について
                 ・・・
        145条によれば、時効は、当事者が援用することを要する。
                  ・・・
    本件では、当事者である先代から賃貸人の地位を引き継いだ
      現在の賃貸人が、当該土地の取得時効を主張することは問題ない
     (162条1項)。

    本件のポイントは、当該土地を敷地とする建物の賃借人である
     私が、援用権者である賃貸人が時効を援用しない場合に、当該土
   地の所有権の取得時効取得時効を援用できるかということである。

   以下の判例がある。

   土地の所有権を時効取得すべき者から、その土地上に同人の所有
    する建物を賃借しているに過ぎない者は、右土地の取得時効の完成
  によって直接利益を受ける者ではないから、右土地の取得時効を援
    用することはできない(最判昭和44・7・15・・)。

   したがって、「私は賃貸人が敷地の土地の時効取得をしたとし
  て立ち退きを拒否『できます』」と回答しうるものではない。

  
   ★ 参考事項

    その他、争点になる点は、以下のとおりである。

  (1) 本件では、当該土地について、先代の賃貸人の占有を相続
    した原賃借人が両者合わせて25年間「特に紛争になること
    もなく」すなわち、「平穏に、かつ、公然と」占有を継続し
        ているので、162条1項の適用が前提になっている。
     なお、当該占有は賃借人による占有であるので、代理占有
    であることに注意せよ(181条)。

   (2)本件においては、当該賃借人は、時効の援用権が認められ
       なかったのであるが、当事者以外において、時効によって取
    得される権利に基づいて権利を取得した者も広く援用権者に
    含まれるとする判例の立場からは、次の記述が参考になる。

   「この見地からは、取得時効についてみると、たとえばAの所
    有地を時効によって取得するBから地上権等の設定を受けた
        CにはBの取得時効の援用権がある。つまり、この場合Bが
        援用しなければ、Cは独自にBの取得時効を援用して、Aに
        対し、当該の土地の上に地上権等を有することを主張できる
        ことになる。」(前掲書)

         以上の理からすれば、

     時効取得される土地の賃借人(当該地上の建物の所有者)も
    また、援用権者に含まれることになるであろう。

     本件と以上の事例を比較すれば、

     時効の完成によって直接利益を受けるのかどうかが、時効の
        援用権者の範囲に関する判例の基準になるのであろう。


  
   ● Cの相談について

     167条2項によれば、所有権は消滅時効にかからない。

   以上を前提にした判決がある。

   遺留分権利者が減殺請求によって取得した不動産の所有権に基づく
   登記手続請求権は時効によって消滅することはない(最判H7・6・9
  ・・)。

   この判決を本件に照らすと、本件における先方の言い分である「20
   以上経過しているので時効だ」というのは、妥当でないので、私は移転
  登記を求めることは「できます」と回答しうる。

  
   ★ 参考事項


   (1) 本件では、祖父による知人の受遺者に対する遺贈に関する父の
     遺留分請求は、共有持分2分の1について認められることになる
     (1028条2号・1031条)。

    (2) つぎに、所有権が時効消滅しないことに関連する判決(最判
      昭和51・11・8・・)があるので、以下にその判旨を掲げ
      ておく。
     
      不動産の譲渡による所有権移転登記請求権は、右譲渡によって
     生じた所有権移転に付随するものであるから、所有権移転の事実
     が存する限り独立して消滅時効にかかるものではないと解すべき
     である。

  
  ● Dの相談について

   本件は、消滅時効の援用権者に関する問題である。

   判例は、145条の当事者に該当しなくても、時効によって消滅した
  時効の完成によって、利益を受ける者も広く援用権者に包含する。

   しかし、本件に関しては、以下の判例がある。

  「後順位抵当権者は先順位抵当権者の被担保債権の消滅時効を援用する
      ことができない」(最判平11・10・21・・・)

   したがって、本件において、私は1番抵当権の被担保債権の消滅時効
  を援用して「私の抵当権の順位を繰り上げてもらうことが『できます』」
    と回答しうるものではない。

   
   ★ 本題に関しては、以下の記述を参照せよ。

   「連帯保証人(439条参照)や保証人(大判大正4・12・11・・)
 は、直接の当事者として主たる債務の消滅時効を援用できるとされて
    いるが、物上保証人や抵当不動産の第三取得者(最判昭和48・12・
        14・・・)も、自分の負担する抵当権の基礎としての債務の消滅時
    効を援用して、抵当権を消滅させることができる。」(前掲書)

  
  ● Eの相談について

   本件は158条の規定する成年被後見人と時効の停止の問題である。

   本件において、158条1項前段を適用すれば、成年被後見人である
    叔父の法定代理人である成年後見人がないときは、成年後見人に付され
    た叔母の死亡によって成年後見が終了した今年の2月10日から甥の私
    が成年後見人選任された同年6月10日の間である(7条・8条参照)。

   他方叔父が以前に貸し付けた債権の時効が完成したのは、弁済期から
  10年経過した今年の6月1日ということになる(167条1項)。

   したがって、時効の期間満了前6箇月以内の間に成年後見人がない
   ときに該当するため、私が後見人に就職した時から6箇月を経過するま
   での間は、時効は完成しないことになる(158条1項後段)。

   以上、本件においては、私が成年後見人に選任されてから10日後
   の6月20日に債権について返還を求めることは「できます」と回答し
   うる。

 
   なお、本件は単純な158条の条文適用の問題であるが、この条文
    自体がなじみの薄いものであるため、即座に回答を導くのは困難であ
    ると思われる。

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   「できます」と回答しうるものは、Cの相談とEの相談であるから、
 4が正解である。 

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  ◆  付 言

  事案における事実関係を素早く把握し、簡潔な構成へと再構成する訓練
  が望まれる。

  逆に、参考事項に掲げられた判例などを素材にして、ご自分で事実関係
  を構築し、それぞれに、相談内容を作成してみるのも一考であろう。

   

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
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    ★ 過去問の詳細な解説《第2コース》第66回 ★

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  【テーマ】 行政不服審査に関する問題点

     
  【目次】   問題・解説


  【ピックアップ】      

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■ 問題 平成21年度問題15
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   次の記述のうち、行政不服審査法に関する問題点として、次の
 解説文中の空欄 A に挿入すべきでないものはどれか。  


   1962(昭和37)年制定の現行行政不服審査法は、それ以前
 の訴願法と比べれば、権利救済制度として大きく改善されたが、
 現在では、 A  という問題点も指摘されている。また、
 1993 (平成5)年の行政手続法の制定や2004(平成16)
 年の行政事件訴訟法改正などとの関係で、見直しが必要だと考え
 られるようになった。このため、行政不服審査法の抜本的な改正が
 検討されることとなったのである。

 1 行政不服審査法によらない不服申立ての仕組みが多数あるため、
  一般国民にとってわかりづらく、利用しづらい制度になっている

 2 取消訴訟を提起するためには不服申立てに対する裁決または
   決定を経ることが原則とされているため、権利救済の途が狭め
   られている

 3 審理にかなり時間を要しているのが実態であるため、簡易迅速
   という特色が生かされていない

 4 行政権の自己審査であるため、審理手続の運用において公平さに
  欠けるところが多い

 5 不服申立て期間が短いため、権利救済の機会が狭められている
 
  (なぜか、本問では、各肢についてすべて、文末の 。 が省略
   されているが、特別の意味があるとは思われない)

 

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■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 ◆   ズバリ、本問については、以下に記述する「自由選択主義」と
  いう1点を知っていれば、容易に正解に達する。順序として、
    正解の肢2から解説を行う。

 ◆   各肢の検討

   肢2について。

   かつて、本講座では、根本問題・用語解説と題して、該当部分の
 解説も行った(サイト38回参照)。

 ◇第38回
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/814527.html
 
 以下において、再説する。

 ○不服申立ての前置

 「訴願前置主義」  
  
   昭和37年に現在の行政事件訴訟法が制定される前の制度である。
  行政庁に対して、異義などができる場合には、それを行ってから
  でなければ処分の取消訴訟を起こすことはできない。

 「自由選択主義」
 
   行政上の不服申立てを先にするかいきなり訴訟を提起するか、両者
  を平行して行うかすべて私人の自由な選択に任せるべきである。
    行政事件訴訟法8条1項が規定する現在の制度。

   同法8条1項ただし書きは、例外を認めている。個別の法が例外を
  定めている場合がたいへん多くなっていて、「その結果、現実には
 不服申立ての前置という要件がふたたび取消訴訟の重要な訴訟要件
  となってしまっているということを否定できない状況」(入門220
 頁)である。

   以上のとおり、現行法では、末尾のような問題点があるにせよ、
 「自由選択主義」が原則であるから、本肢は、現行法に対する問題点
 にはなりえない。
  Aに挿入すべきものとしては、本肢が正解である。

 ○ 類似の過去問の肢

  行政事件訴訟法によれば、取消訴訟は、必ず審査請求を経てからで
 なければ提起することはできない。
 (平成12年問11肢4)
 
  正しくない。
  
  
   審査請求できる処分については、それについての裁決を経ること
 なく取消訴訟を提起することはできないとするのが行政事件訴訟法
  の原則であるが、審査請求から3か月を経過しても裁決がなされ
 ないときは、裁決を経ることなく取消訴訟を提起できる。
  (平成18年問17肢3)

  正しくない。

  前半が正しくないことで勝負はつくが、この際、後半についても、条文
 知識を整理しておきたい。
  
  個別の法が不服申立ての前置を認めている場合には、当該記述は妥当
 する(行訴法8条2項1号)。本肢の前半を修正すれば、「正しい」へ
  と即座に移行する。
  このように遊ぶことも、過去問を解く妙味と言えよう。
  みなさま、「余裕」デスヨ!!

 
 ◆  その他の肢について
 
 ○ 肢1・3・4・5等の問題点があるため、行政不服審査法改正案が
    上程されたが、衆議院解散で審議未了廃案となった。
   
   いずれ、この法案が成立すれば、我々は、この法律を勉強しなければ
   ならないことになる。

 肢1について

  行審法1条2項によると、「行政上の不服申立て」については、個別の
 法で定め得るので、行審法によらない不服申立ての仕組みが多数あること
 になる。

 ○ 類似の過去問

 「不服申立て」に関する法律の定めは、行政不服審査法にしか存在して
 いない。
 (平成14年問15肢1)

  正しくない。

   法は、不服申立制度全般について統一的、整合的に規律することを
 目的とするので、別に個別の法令で特別な不服申立制度を規定すること
 はできない。(平成20年問15 肢4)

  正しくない。


 肢3・4・5について。

   行審法に関し、以上の問題点があることに注目せよ!!

   なお、5について、行審法に不服申立て期間の定めがある。
   (面倒であれば、飛ばしてもらっても差し支えないかもしれない)

 14条1項・45条・53条→第1回目の不服申立は60日以内、
 2度目の申立て30日以内

 14条3項→この1年の期間は、異議申立ておよび再審査請求にも
 準用(48条・56条)

  前者の60日・30日の期間は天災その他「やむをえない理由」
 があるとき、後者の1年の期間は「正当な理由」があるときは、
 「この限りではない」(14条1項但書・3項但書・48条・
 56条)。

 (以上、読本259頁参照)
  
  
 ◆ 付 言

   問題文の中で、平成16年の行政事件訴訟法改正についてふれられ
 いるが、、当該テーマに基づいて出題された過去問として、平成17
 年度・問題16および平成18年度・問題18がある。
 
  これら問題については、サイト41回で解説がされているので、
  参照されたい。

 ◇第41回
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/854713.html


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
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     ★ 過去問の詳細な解説《第2コース》第64回★
      
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         PRODUCED by 藤本 昌一
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 【テーマ】 行政行為の取消しと撤回(続)
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           「サイト32回」に掲載がある。
           ↓
  http://examination-support.livedoor.biz/archives/729085.html  
       
      本過去問に即して、理解しやすいように当該サイトを整理
      し、所要事項を付加した。
    
      平成19年度以降におけるこのテーマからの出題は、20
      年度 問題8がズバリ!! そろそろ、将来の本試験で問
      われる可能性あり。
 
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 【目次】   問題・解説

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 問題 平成18年度問題10
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
   行政行為の職権取消と撤回に関する次の記述のうち、妥当なもの
 はどれか。

 1 行政行為の撤回は、処分庁が、当該行政行為が違法になされた
  ことを理由にその効力を消滅させる行為であるが、効力の消滅が
   将来に向かってなされる点で職権取消と異なる。

 2 旅館業法8条が定める許可の取消は、営業者の行為の違法性を
  理由とするものであるから、行政行為の職権取消にあたる。

 3 公務員の懲戒免職処分は、当該公務員の個別の行為に対しその
  責任を追及し、公務員に制裁を課すものであるから、任命行為の
  職権取消にあたる。

 4 行政行為の職権取消は、私人が既に有している権利や法的地位
   を変動(消滅)させる行為であるから、当該行政行為の根拠法令
    において個別に法律上の根拠を必要とする。

 5 行政行為の職権取消は、行政活動の適法性ないし合目的性の
  回復を目的とするものであるが、私人の信頼保護の要請等との
   比較衡量により制限されることがある。
    
 (参考)旅館業法8条「都道府県知事は、営業者が、この法律
    若しくはこの法律に基づく処分に違反したとき、又は第
    三条第二項第三号に該当するに至ったときは、同条第一
    項の許可を取り消し、又は期間を定めて営業の停止を命
    ずることができる(以下略)」

 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣
  

 
 ○ 総説

  行政行為の職権取消と撤回に関しては、以下の要点を把握しておき
 たい(一部再説)。


 1 行政行為の取消しと撤回の違い

 (1) 行政行為の取消しは、行政行為成立時の違法性を理由に取り
      消すものであり、
      
    効果としては、原則として遡及効あり(行政行為の効果を行政
     行為時にさかのぼって失わせる)。

  (2) 行政行為の撤回とは、行政行為が行われた後に発生した事情
  (事後的事情・後発的事情)を理由として、当該行政行為を破棄
     することを言う。

    効果としては、遡及効なし。

 (3) 法律の中では、撤回は「取消し」と表現されている。

 

 2 行政行為の取消しの種別

 (1)職権取消し
 
       行政庁が行政行為の違法性を認めた場合におこなわれる。
 
     当該職権取消しをなしうるのは、行政庁(処分庁)のみである。


 (2)争訟取消し

    行政行為には「公定力」があるから、行政行為は一応有効なもの
    として通用する。
     したがって、相手方や第三者がこの行政行為の存在を否定するため
  には、行政上の不服申立てをしたり、取消訴訟を提起して、その行政
   行為を散り消してもらう必要がある。
 
    これらが、「争訟取消し」である。

   当該「争訟取消し」をなしうるのは、訴訟については裁判所であり、
  行政不服申立てについては、行政庁である。


  以上のとおり、1において、行政行為の取消しと撤回の違いについて、
 その要件としては、行政行為時の違法性の有無、その効果として、
  遡及効の有無にあることが分かった。

  2において、行政行為の取消しの種別として、処分庁の行う
 「職権取消し」と裁判所と行政庁の行う「争訟取消し」があることが
   判明した。

 
 ○ 各説

 
 肢1・2・3については、以上の理解があれば、難なく解答できる。


 ☆ 肢1について

  行政行為の撤回は、事後的事情を理由になされるものであり、効力は
 将来に向かってなされるから,前段は誤りであり、後段は正しい。全体
 として、誤り。

  処分庁が、違法を理由に取り消すのは、職権取消である
 
  また、当該行政行為を破棄しうるのは、処分庁であることにも注目。

  したがって、サイト63回(平成10年問34 肢4)の次の肢も
 誤りである。

   行政行為の撤回をなし得るのは、処分庁又は裁判所である。

 

 ☆ 肢2について 

  行政行為の撤回は、瑕疵なく成立した行政行為を後発的事情
 を理由に破棄することであり、本肢は、営業者の法律違反等を
 理由とする後発的事情を理由とする営業許可の撤回に該当する。

 本肢は、職権取消しではなく、撤回であるから、誤りである。

 
 
 ☆  肢3について
  
  公務員の任命行為という行政行為について、その後に発生した懲戒
 事由を理由に破棄するものであるから、撤回に該当する.

  誤り。 

 
  肢4・5については、前回(63回)(平成10年問34 肢2)の
 問題・ 解説欄において述べたところと連動する。

  再説する。       

                        ↓

 問題  

    授益的行政行為については、これを取り消すことによって当該
   行政行為の相手方の権利又は利益を侵害することにならない場合
   に限り、取り消すことができる。

 解説

  ここでは、「授益的行政行為」の概念を把握することが大切である。
  そのためには、これと反対の概念である侵害処分と対比することに
 より「授益的行政行為」の理解が深まる。

  以下の記述に注意せよ!!

          
 (1)侵害処分とは、その相手方の権利や利益を侵害するものである
     から、申請によらず、職権によって行われる。
   
(2)これに対し、申請に基づいて行われる処分のほとんどは、その
   性質上授益処分である。

(3)行政手続法の規定によれば、(1)が第3章の不利益処分であり
 (2)が第2章の申請に対する処分である。

(4)建築確認が(2)に該当する授益処分であるのに対して、税務署
  の課税処分が(1)に該当する侵害処分の典型である。

 注 授益的行政行為と授益処分は同義である。

 
   ここで、建築確認(授益的行政行為の典型)を例にとって、本肢に
 即して説明する。

  行政庁が後から当該建築確認の違法性を認めて取り消しをすれば、
 必ず、「当該行政行為の相手方の権利又は利益を侵害することに
 なる」から、この肢は、事実上、授益処分についての「職権取消し
 否認説」に立っていることになる。

 しかし、この説は、次のように批判される(読本)。
 
「法治主義の原則から生じる違法状態の解消よりも、相手方の被る
 であろう不利益を重視するものであって・・・一面的な考え方」
 である。
 
   職権取消しを肯定する説は、次のように述べる(読本)。
 
「授益処分については、行政処分の違法性がどの程度か、職権取消し
 をすれば相手方に生じる不利益はどの程度のものか、不利益を緩和
 する措置をとることができないかどうか、といったことを総合的に
 考慮して 職権取消しが認められるどうか判断すべきである。」

  以上のとおり、本問は微妙な問題であるが、相手方の利益などを
 侵害すれば、取り消しができないとするのは、一面的であって、
 相手方の権利を侵害しても、総合的判断により取り消し得るという
 のが正しい。

 本肢は誤りである。

           ・ 
 ☆ 以上を前提に本肢4を検討する。


 私人が既に有している権利などを消滅させるという点から、ここで
 取り上げられている職権取消しも授益処分が対象になっている。
 ちなみに侵害処分であると、課税処分を例にとれば、分かるように
 その取消は、相手方の利益になることであるから、行政庁が違法性を
 認めて職権取消しを行うのに一々法律の授権を要しないという回答は、
 すっと出てくる。
 しかし、授益処分である建築確認であっても、もともと行政庁に
 処分権限が与えられているから、改めて法律の授権を要しないで、
 職権取り消しができる。
 
  したがって、本旨4は誤りである。

  ただし、さきの記述にあるように、その職権取消には制限があること
 になる。

 

  ☆ 肢5について

  行政行為の職権取消は、「行政庁が行政行為の違法性を認めた場合に
 おこなわれる」のであるから、「行政行為の適法性の回復を目的とする」
 という前段は正しい。
  しかし、授益処分の職権取消 については、相手方の信頼を侵害する
 ことになるから、全体的な考察による比較衡量が重要になる。後段も
 正しい。

 これはさきに述べた議論の結論そのものである。

  したがって、肢5が正しく、これが正解である。

 


 ○ 付言

 
   本問・肢4に関連して、授益処分の撤回について、法律の授権を
 要するかという問題がある。これについては、以下のように2点を
 把握しておくべきである(読本 123頁以下参照)

 (1) 最高裁判所1988(昭和63)年6月17日判決において、医師会
     における、母体保護法上の指定(妊婦中絶手術をできる医師
   としての指定)の撤回に関連して、次のように判示された。
  
   法律の授権がなくても、撤回を行うべき社会的必要性が高ければ、
    撤回をすることが認められる。

 (2) しかし、自動車の運転免許や宅地建物取引業の免許について
     考えると、制裁としての撤回には、法律の根拠が必要であり、
   これが、職権取消しとの違いであるという学者の指摘がある。

 以上については、これ以上深入りしないが、その他この分野
 については、侵害処分もからみ、把握しておくべき論点
(将来本試験でも踏み込んで問われる可能性あり)がある。
 
  後日、有料メルマガを通じ、これら論点にもふれたい。


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 【テーマ】 行政行為の取消しと撤回
         

 【目次】   問題・解説

 

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■ 問題 平成10年度問題34
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
   行政行為の取消し及び撤回に関する次の記述のうち、正しいもの
 はどれか。

 1 行政行為の撤回とは、有効に成立した行政行為について、その
  成立に瑕疵があることを理由として、遡及的にその効力を失わし
  めることをいう。

 2 授益的行政行為については、これを取り消すことによって当該
   行政行為の相手方の権利又は利益を侵害することにならない場合
   に限り、取り消すことができる。

 3 行政行為に撤回権が留保されている場合は、当該行政行為の
   撤回は、無制限に行うことができる。

 4 行政行為の撤回をなし得るのは、処分庁又は裁判所である。

 5 審査請求に対して裁決を行った行政庁は、当該裁決後に当該
   審査請求に係る行政行為に新たに違法又は不当な事由を発見し
   ても、当該裁決を取り消すことができない。
    

  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣
 

 肢1について 

 
 行政行為の取消しと撤回の違い

 (1 ) 行政行為の取消しは、行政行為成立時の違法性を理由に取り
     消すものであり、

       効果としては、原則として遡及効あり(行政行為の効果を行政
     行為時にさかのぼって失わせる)。

 (2 )行政行為の撤回とは、行政行為が行われた後に発生した事情

   (事後的事情・後発的事情)を理由として、当該行政行為を破棄
 
     することを言う。

      効果としては、遡及効なし。

 
  注  法律の中では、撤回は「取消し」と表現されている。


   以上の記述からすれば、「その成立に瑕疵があることを理由として、
 遡及的にその効力を失わしめる」のは、(1)の行政行為の取消しで
 ある。

  本肢は誤りである。

 
 肢2について


   ここでは、「授益的行政行為」の概念を把握することが大切である。
   そのためには、これと反対の概念である侵害処分と対比することに
 より「授益的行政行為」の理解が深まる。

  以下の記述に注意せよ!!

          ↓
 
 (1)侵害処分とは、その相手方の権利や利益を侵害するものである
     から、申請によらず、職権によって行われる。
   
(2)これに対し、申請に基づいて行われる処分のほとんどは、その
   性質上授益処分である。

(3)行政手続法の規定によれば、(1)が第3章の不利益処分であり
 (2)が第2章の申請に対する処分である。

(4)建築確認が(2)に該当する授益処分であるのに対して、税務署
  の課税処分が(1)に該当する侵害処分の典型である。

 注 授益的行政行為と授益処分は同義である。

 
   ここで、建築確認(授益的行政行為の典型)を例にとって、本肢に
 即して説明する。

  行政庁が後から当該建築確認の違法性を認めて取り消しをすれば、
 必ず、「当該行政行為の相手方の権利又は利益を侵害することに
 なる」から、この肢は、事実上、授益処分についての「職権取消し
 否認説」に立っていることになる。

 しかし、この説は、次のように批判される(読本)。
 
「法治主義の原則から生じる違法状態の解消よりも、相手方の被る
 であろう不利益を重視するものであって・・・一面的な考え方」
 である。
 
   職権取消しを肯定する説は、次のように述べる(読本)。
 
「授益処分については、行政処分の違法性がどの程度か、職権取消し
 をすれば相手方に生じる不利益はどの程度のものか、不利益を緩和
 する措置をとることができないかどうか、といったことを総合的に
 考慮して 職権取消しが認められるどうか判断すべきである。」

  以上のとおり、本問は微妙な問題であるが、相手方の利益などを
 侵害すれば、取り消しができないとするのは、一面的であって、
 相手方の権利を侵害しても、総合的判断により取り消し得るという
 のが正しい。

 本旨は誤りである。

  
 肢3について

  撤回権の留保について
 
   行政行為の付款(注)として、「公益上必要がある場合には当該
 行政処分を取り消す(撤回する)」旨が定められていることがある。
  これが撤回権の留保である(読本)。

 注 付款とは、行政行為の主たる意思表示に対する内容に付加された
  行政庁の従たる意思表示のこと(行政法入門講座 週刊住宅新聞社)

   この撤回権の留保は、「例文である」という指摘や「行政裁量
 の限界を超える付款は違法である」という記述(読本)からすると、
 無制限行使を認める本肢は、明らかに誤りである。
 
 端的に言うと、撤回とは、一端与えた免許(自動車の運転など)を
 取り上げることであるから、常に合理的理由を要する。
 

  本肢は誤りである。


 肢4について

   行政行為の撤回とは、当該行政行為を破棄することであるから、処分庁
 のみがなし得る。

  本旨は誤りである。 

 
 肢5について

   以下に記述する不可変更力(確定力)についての説明をみよ。

         ↓
 
 これは、行政行為を行った行政庁がみずから、一度行った行為を取消す
 ことは(職権取消し)はできない、という効果のことである。

 これは、ほかの効力とは異なり、行政行為の中の特定の種類のものに
 だけこの効力がある。この効力は、裁判判決に一般に認められるもの
 であって、裁判に対する国民の信頼確保のために、一度くだした判決
 をみずからこれを取消すことを許さないとしたものである。
 
   これと同じように、行政行為の中でも特に異議申立てに対する決定、
 ・・・・・・・・・・・ 
 審査請求に対する裁決など、その性質の上で裁判判決に似たような
 目的を持つものには、このような効力が認められる、ということが
 判例・学説の上で認められている(入門)


  以上の記述により、本旨は正しい。

  したがって、5が正解である。


 付 言

   本問は、行政行為の不可変更力(確定力)に関する知識があれば、
 正解に達するが、将来の本試験対策としては、肢2に注目されたい。

 その論点である、侵害処分と授益処分 授益処分の職権取消しなど
 についての正確な理解が望まれる。
  
   


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 【テーマ】 行政上の義務違反
         

 【目次】   問題・解説


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■ 問題 平成21度問題42
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   行政上の義務違反に関する次の文章の空欄 ア〜エ に当てはまる
 語句を、枠内の選択肢(1〜20)から選びなさい。


   行政上の義務違反に対し、一般統治権に基づいて、制裁として
 科せられる罰を ア という。
  ア には、行政上の義務違反に対し刑法典に刑名のある罰を科す
 ものと、行政上の義務違反ではあるが、軽微な形式的違反行為に対
 し科す行政上の イ がある。 イ としては、届出義務違反など
 に科される ウ がある。普通公共団体も、法律に特別に特別の定
 めがあるものを除くほか、その条例中に ウ を科す旨の規定を設
 けることができる。 ウ を科す手続については、法律に基づくも
 のと、条例に基づくものとで相違がある。条例上の義務違反に対し
 て普通地方公共の長が科す ウ は、エ に定める手続により科さ
 れる。

 

   1 秩序罰  2 行政代執行法  3 科料   4  公表
  
   5 懲役   6 行政罰     7 代執行  8  強制執行

  9 罰金   10 刑事訴訟法  11  間接強制 12 過料

 13 課徴金  14 非訟事件手続法15  行政刑罰 16 直接強制
 
 17 禁錮   18 懲戒罰 19 行政事件訴訟法 20 地方自治法
  
 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 △ 参考書籍 

 行政法入門・藤田 宙靖著  行政法読本・芝池 義一/有斐閣

 ●  序論

   最新の平成21年度の本問も、サイト35号およびオリジナル問題
 
 23号[問題3](サイト58回に掲載)をこなしていれば、完璧

 に正解に達し得たであろう。

 ● 本論

   本問に則して、全体的に要点を掲げる。

   1 行政罰とは

   行政上の義務違反に対し、一般統治権に基づいて、制裁として
  科せられる罰をいう。

   より詳しくは
      ↓

   法律違反の行為に対する制裁を目的として行われる処罰であって、
  強制執行ではない。
   しかし、その威嚇的効果からすれば、行政上の義務の間接的な
    強制手段の一種であり、これを「間接的強制制度」という。

 2 行政罰の種類


    行政刑罰→行政上の義務違反に対し刑法典に刑名のある罰を科す
        もの。

        より詳しくは

          刑法典に刑名のある罰⇒「死刑」「懲役」「禁錮」
                     「罰金」・「拘留」「科料」

       秩序罰→行政上の義務違反ではあるが、軽微な形式的違反行為に
        科すもの。
                    ・・・
               届出義務違反などに科される過料がこれに相当

        注・これは、刑法上の刑罰ではない。


    
    過料と地方公共団体の関係

       (前述のオリジナル問題23号[問題3]肢3・4参照)


         普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除く
    ほか、条例中に過料を科す旨の規定を設けることができる
    (地方自治法14条3項)。
               
                その手続(条例上の義務違反に
              ↓ に対して普通地方公共団体の長
                が科す)

      
     「地方自治法」に定める手続により科される(参照、15条2項・
      149条3項・231条の3第3項・255条の3など)


     その他関連事項

     (1)法律に基づく過料は、当該法律の定めによる手続による。
       その定めのないときは、「非訟事件手続法」161条以下
       の手続による。

     (2)行政刑罰は法律に基づく場合と条例に基づく場合《地方
       自治法14条3項》がある。
        その処罰の手続は原則として、刑事訴訟法である。
        例外・交通事件における即決裁判手続 道路交通法で定め
              る反則金制度など(入門)


     以上の要点を辿れば、以下が正解になる。


          ア 6の行政罰  イ 1の秩序罰  ウ 12の過料 

     エ 20の地方自治法

 
 ● 付言
                           
   本問では、12の過料を3の刑罰に該当する科料としないこと。

   正確な知識によって、20の「地方自治法」という正解に到達することが
 望まれる。


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  ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第57回 】★      
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【テーマ】 「行政調査」「行政計画」


【目次】  問題・解説


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成21年度問題8
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
  行政計画に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

 1 土地利用を制限する用途地域などの都市計画の決定についても、侵害
   留保説によれば法律の根拠が必要である。

 2 広範な計画裁量については裁判所による十分な統制を期待することが
   できないため、計画の策定は、行政手続法に基づく意見公募手続の対象
   となっている。

 3 計画策定権者に広範な裁量が認められるのが行政計画の特徴であるので、
   裁判所による計画裁量の統制は、重大な事実誤認の有無の審査に限られる。

 4 都市計画法上の土地利用制限は、当然に受忍すべきとはいえない特別の
   犠牲であるから、損失補償が一般的に認められている。

 5 多数の利害関係者に不利益をもたらしうる拘束的な計画については、
  行政事件訴訟法において、それを争うための特別の訴訟類型が法定
   されている。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 ● 参考図書

 行政法読本・芝池義一著 行政法入門・藤田宙靖著 / 有斐閣発行 
 
 
 ● 序論

   総括的には、前回説明したので、本題に入る。


 ● 本論

   全体として、「行政計画」には以下の前提知識を要する。

 a 「行政計画とは、行政機関が行政活動を計画的に行うために作成・決定
   (策定)する計画である。都市計画法に基づく都市計画がその代表例で
   ある。」(読本)

 b 「行政計画」は、「行政調査」と同じように、権力的に行われることも
    あれば、非権力的に行われることもある。また、法行為にあたるものも
  あれば、事実行為に当たるものもある(読本・前回にも述べた)。


  肢1について。妥当。

   この肢の要点は、「侵害留保説」である。これは、国民の権利や自由を
 権力的に侵害する行政についてのみ法律の授権を必要とする説である。
 (読本)。
 
  bによれば、「行政計画」は権力的に行われることもあり、aで代表例
 として挙げられた「都市計画」の決定による「土地利用を制限する用途
 地域」の指定は、「国民の権利や自由を権力的に侵害する行政」に該当する。
 この場合には、法律の授権が必要になるといのうのが、「侵害留保説」
 の帰結である。したがって、肢1は正しい。
 
  もし、「行政計画」について、甘い知識しかなく、漠然と非権力的に行
 われ、事実行為に該当すると思っていれば、1を読み飛ばして3に飛びつく
 ことになるのかもしれない。ご用心を!!
 しかし、逆に正確な知識があれば、もう第1段階の肢1の正で決まりだ。

 注 ここでは、これ以上立ち入らないが、法律の授権の要否については、、
 「侵害留保説」のほか「権力作用留保説」「公行政留保説」があるが、
  いずれにおいても、肢1に該当する侵害的行為は、法律の授権を要する。
 (読本)

  肢2について。妥当でない。

   前段はそのとおりであるが、後段が誤りである。
                      ・・・・
   行手法39条1項によれば、意見公募手続は、命令等を定める場合に問題
 になり、「行政計画」の場合には、対象にならないので、誤りである。

   ここで、この際、把握しておくべき点がふたつある。
 ・・・・
   命令等の概念は何か。2条8号をみよ。それらは、以下のものであり、
 「行政計画」は入っていない

   法律に基づく命令(処分の要件を定める告示を含む)・審査基準・処分基準
  ・行政指導方針 

 もうひとつ。3条3項をみよ。「・・意見公募手続について定める行政手続法
 6章の規定は、地方公共団体の機関の命令等(規則も入る)の制定行為には適用
 されない(読本)。

  肢3について。妥当でない。

   これは、最高裁判所大法廷(平成20)年9月10日判決が参考になる。
  
   従来、最高裁判所は「事業計画は『いわば当該土地区画整理事業の青写真たる
 にすぎない一般的・抽象的な計画にとどまる』」(読本)ことを理由に
 行政訴訟の対象にならないとしてきたが、前記判例がこの先例を変更したので
 ある。この判決は、前記事業計画について、宅地所有者等の法的地位に変動を
 もたらすものであって、抗告訴訟の対象になるとしたのである。

   しかし、実際に当該判決の知識まで求められているわけではないと、私は
  思う。つまり、「行政計画は、権力的に行われることもある」という知識
  さえあれば、行政訴訟の対象になるであろうし、裁判所の審査が重大な事実
  誤認に限られるというのは、それこそ、「事実誤認」だという解答がスッパ
  とでてくるであろう。

 肢4について。妥当でない。

  損失補償は、適法に行われる権利(たいていは財産権)の侵害に与えられる
 金銭給付である。土地収用が代表例。一般法は存在せず、個別法の定めるとこ
 ろに委ねられている。(読本参照)。
   個別法である都市計画法には損失補償の規定はない。
 また、損失補償については、国家賠償法のような一般法もないので、
「損失補償が一般的に認められている」 というのは、誤りである。
 
 なお、個別法に規定がなければ、憲法29条3項により損失補償を請求できる
 余地があるが(最大判昭43・11・27)、都市計画法上の土地利用の制限に
 ついては、損失補償は必要ではないと一般に考えられている。
   このように考えると、本肢には論点がいっぱい、つまっている。
 
   多岐選択式により、損失補償を正面から問うてきたのが、平成20年度問題
 42である。この際、この問題を考究しておくのも一考。
 20年度・21年度と当該問題にこだわるのも本試験の傾向といえるかもしれ
  ない。

   肢5について。妥当でない。

   行訴法に特別の訴訟類型は、法定されていない。誤りである。
  
   このような唐突な問題の背景には、出題者の出題意図が見える。

   最高裁判所1982(昭和57)年4月22日判決が問題になる。
   これは、本肢にいう「多数の利害関係者に不利益をもたらしうる
  拘束的な計画」が問題になった。
  これもまた、肢3と同様、行政計画が権力的に行われる「都市計画法に
  基づく用地地域指定」が焦点になったが、肢3の「土地区画整理事業」が
  行政処分と認められ、抗告訴訟の対象になったのに比して、これは、
  処分性を否定して、抗告訴訟の対象にならないとしたのである。
  
  その理由として、大略つぎのようにいう。
   
 用途地域指定によって、建築物について、制限を受ける者は、
 建築基準法に基づく「建築確認が用途地域指定との関係で
 拒否された段階で、建築確認に対して取消訴訟を起こし、
 その訴訟の中で用途地域の違法を主張すればよい・・」
 
 つまり、「この判決は、用途地域の指定に対して訴訟の可能性を否定し、
 後続の処分である」建築確認において訴訟提起すればよいというのである。
(続本)
 
        1         1の定着       2
 用途地域指定→訴訟不可----------後続の処分・建築確認→訴訟可

                1の関係で2の申請拒否⇒取消訴訟の提起
                           (1の違法主張)
 

  しかし、学者は、「用地地域指定指定から10年経ってから建築確認を
 拒否された場合に、それに対して訴訟を起こし10年前に定められた
 用地地域指定の違法を主張しても、裁判所は耳を傾けてくれないであろう。
 
 その10年の間に用途地域指定 は定着しているからである。」と
 この判決を批判する。(読本)
  
  そうなると、用地地域指定について取消訴訟を認めるべきだということ
 なるが、その場合「誰に原告適格を認めるかという問題があり、またそれに
  関連して、各地域の住民ひいては当該都市の住民全体が取消訴訟を起こす
  ことができるようになってしまうおそれがある。」(読本)
 
  したがって、当該訴訟を認めるためには、要件を明確にするため、本肢
  でいうように、「行政事件訴訟法において、それを争うための特別の
  訴訟類型を法定」する必要があるが、現在それは法定されていない。
   長い叙述(引用)になったが、私のいわんとすることは、皆さんに通じた
  でしょうか。

    
 ● 付言

 本問は、「行政計画」に関しての問いでありながら、実は、肢2では、
 意見公募手続について聴いている。
 肢4では、損失補償、肢5では、行政訴訟法の訴訟類型を問題にしている。

  このように、近年の本試験では、全体的ないし横断的な理解を求めている
 のが一つの特徴であるので、注意を要する。


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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【テーマ】 国家機関の実質的権限


【目次】  問題・解説

 

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 ■ 平成20年度問題5
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 

   国家機関の権限について次のア〜エの記述のうち、妥当なものをすべて
 挙げた組合せはどれか。

 ア 内閣は、実質的にみて、立法権を行使することがある。

 イ 最高裁判所は、実質的にみて、行政権を行使することがある。

 ウ 衆議院は、実質的にみて、司法権を行使することがある。

 エ 国会は、実質的にみて、司法権を行使することがある。

 1 ア・ウ

 2 ア・イ・エ

 3 ア・ウ・エ

 4 イ・ウ・エ

 5 ア・イ・ウ・エ
  
 
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 ○ 参考図書

 芦部信喜著 憲法 岩波書店
 
 
 ○ 序論

  「実質的」な考察は、は、前回の問題と共通性があるので、ここでとり
 あげた。

 
 ○ 本論

   肢1について。正

  立法の意味について、形式的意味の立法と実質的意味の立法という二つ
 の意味がある。
 形式的意味の立法とは、規範の中身が何であるかを問わず「法律」と
 いう形式だけを問題にする。
  実質的意味の立法は、規範の形式が法律であると命令であるとを問わず
 中身を問題にする。
  憲法41条が規定するのは、実質的意味の立法であるため、不特定多数の
 の人に対して、不特定多数の事件に適用される法規範は、国会が定立する
 ことになる(前掲書)。
 しかし、憲法のもとでは、内閣の発する政令によって、法律を執行する
 ためのもの(執行命令)ないし法律の具体的は委任に基づくもの(委任命令)
 を 定立することができる(憲法73条6号)。
 したがって、「内閣は、実質的にみて、立法権を行使することがある」と
 いうのは正しい。
 
 ここで、以上記述したところを要約するとともに、関連事項を述べておき
 たい。

 (1)実質的意味の法律の概念は、もともと「国民の権利を直接に制限し、
    義務を課する法規範」と考えられてきたが、現在では、前述したように
   「不特定多数の人に対して、不特定多数の事件に適用される法規範」である
   というように広く解釈されるようになった(前掲書)。
 
              ↓

 (2)したがって、以上のような実質的意味の法律は、国会において、法律
   という形式でしか定められないというのが、国会は、唯一の立法機関
     であるとする憲法41条の帰結である。
 
              ↓

 (3)しかし、法律の個別的・具体的な委任があれば、 その限度で政令
 (委任命令)において、実質的意味の立法を行うことを憲法が許容して
   いる。


 派生原理

 (1)(2)と民主・自由の結びつき

 「国民が権力の支配から自由であるためには、国民自らが能動的に統治に
  参加するという民主制度を必要とするから、自由の確保は、国民の国政
  への積極的な参加が確立している体制においてはじめて現実のものとなる」
 (前掲書)。
 
   その他、憲法31条の「罪刑法定主義」・憲法84条の「租税法律主義」
 憲法29条2項の「財産権の法律による一般的制限」も(1)(2)から
 の帰結。

 (3)の政令との関連では、条例による財産権の制限が許されるかが争点
    になったものとして、奈良県ため池条例事件(最大判昭和38・6・26)
    がある。なお、これは、憲法29条2項も関連する。

  次のとおり判示。

   本条例は堤とうを使用する財産上の権利の行使をほとんど全面的に
    禁止するが、これは当然に受忍されるべき制約であるから、ため池の
  破損、決かいの原因となる堤とうの使用行為は、憲法・民法の保障する
  財産権の行使のらち外にあり、そのような行為は条例によって禁止、
    処罰することができる。

   これに関連する学説として、「条例は住民の代表機関である議会の
    議決によって成立する民主的立法であり、実質的には法律に準ずるもの
  であるという点に、条例による(財産権の)内容の規制も許される根拠が
  ある、と解するのが妥当である」とするものがある(前掲書)。

      後記に連動
     ↓
   その他に、条例によって罰則を定めることができるか否かが争われた
  ものとして、最大判昭和37・5・30がある。

  次のとおり、判示。

     刑罰を法律の授権によって法律以下の法令で定めることもできる
  (憲法73条6号但し書の政令)としたうえで、条例は、法律以下
   の法令といっても、公選の議員をもって組織する地方公共団体の
  議会をを経て制定される自治立法であって、行政府の制定する命令
   等とは性質を異にし、むしろ国民の公選した議員をもって組織する
  国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例に
  よって刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的
   であり、限定されておればたりると解するのが正当である。

  ここでは、次の点に注目。

  委任命令の場合には、前述したとおり、「法律の個別的・具体的な
  委任」を要するのに対して、条例については、「法律の授権が相当な
 程度に具体的であり、限定されておればたりる」とされる。

  
   肢2について。正


   最高裁判所は下記の司法行政事務を行う。
  
 下級裁判所の裁判官指名権(憲法80条第1項)・下級裁判所および
 裁判所職員を監督する司法行政監督権(裁判所法80条。裁判官会議の
 議によって行う。同12条)《前掲書》

 なお、これらは、明治憲法では司法省(現在の法務省)の所管に属して
 いた行政事務であって、裁判作用とあわせて行政事務を行使する点で、
 最高裁判所の地位と機能は、戦前の大審院と大きく異なる(前掲書)。

   したがって、肢2は明らかに正しい。

   肢3について。 正

  議院の機能の一つである内部組織に関する自律権として、議員の資格
 争訟の裁判権(憲法55条)がある。これが、実質的にみて、司法権
 の行使であることは疑いない。肢3は正しい。
  
   なお、次の点に注意。

   当該裁判権は、議員の資格の有無についての判断をもっぱら議院の自律的
 審査に委ねる趣旨のものであるから、その結論を通常裁判所で争うことは
 できない(前掲書)。

  肢4について。正。疑問あり。

  これは、弾劾裁判(64条)を問題にしていることは、疑いない。しかし、
 次の指摘には、注意を要する。

  国会の権限に属するのは、弾劾裁判所を設けることだけであって、弾劾裁判
 を行うのは弾劾裁判所の権限であり、弾劾裁判所は、国会の機関ではないこと
 は注意を要する(清宮四郎著・憲法1・有斐閣発行)。

  ここに注目すると、実質的にみて、司法権を行使するのは、国会ではなくて、
 国会の設置した弾劾裁判所ということになる。
 しかし、国会において、両議院で組織された訴追委員会が、裁判官の罷免を
 訴追することになっている(国会法126条)。これも司法権の行使だとみれば、
 この肢は正しいことになるのだろうか。あるいは、弾劾裁判所の設置自体も
 実質的にみて、司法権の行使になるのだろうか。いずれにしても、疑問の残る
 肢である。

  全体としては、全部正しい肢となるので、5が正解である。

 ○ 付言

   前回と同様、このような圧縮した肢については、正誤の判断に苦慮
 することになるが、受け身に立つ者としては、どこかでスパッと割り切る
 必要がある。そこで、出題者の意図と食い違えば、仕方がない。
 もっと、正統なほかの問題で正解を重ねればよいと、こちらの方でも、
 割り切りが肝要。

  ただし、本問については、自然な流れからすれば、諸機関は、実質的には、
 他の機関の行使し得る権限を行使し得るという出題意図も読み取れるので、
 正解としては、全部の肢が正しいということになるのだろう。

 

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第53回 】★      
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 2009/8/26


             
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【テーマ】株式会社の設立・株式
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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  ○ 株式会社の設立

 (1)  平成17年度・問題32

   株式会社の設立に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつ
 あるか。
 

 ア 定款に発起人として署名していない場合であっても、株式募集の
  文書において賛同者として氏名を掲げることを承諾した者は、発起
  人と同一の責任を負う。

 イ 発起人が会社の成立を条件として成立後の会社のために一定の
  営業用の財産を譲り受ける契約をする場合には、譲渡の対象となる
 財産、その価格、譲渡人の氏名ならびにこれに対して付与する
 株式の種類および数を定款に記載または記録しなければならない。

 ウ 設立に際して作成される定款は、公証人の認証を受けなければ
  効力を有しないが、会社成立後に定款を変更する場合は、公証人
  の認証は不要である。


 エ 募集設立の場合には、発起人以外の者が、設立に際して発行され
  る株式の全部を引き受けることができる。

 オ 設立に際して発行される株式については、その総数の引受けならび
   に発行価格の全額の払込および現物出資の目的となる財産の全部
   の給付が必要である。


 1 一つ

 2  二つ

 3 三つ

 4 四つ

 5 五つ
 
 
 
 ○ 株式

 
 (2)平成16年度・問題33

  
   株式に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。


 ア 株式発行の際、株式の実際の払込額(現物出資の場合は給付額)
  の 総額の2分の1を超えない額については、資本に組み入れず
  に資本準備金とすることができる。

 イ 完全無議決権株式は、利益配当に関して優先的な内容を有する株式
   としてのみ発行することができる。

 ウ 株式の引受けによる権利の譲渡は、会社に対してその効力を生じない。

 エ 株式の分割を行う場合には、株主総会の特別決議によるその承認が
   必要である。

 オ 自己株式を取得した場合には、相当の時期に当該自己株式を処分
   または消却 しなければならない。

 
 1 ア・ウ

 2 ア・エ

 3 イ・エ

 4 イ・オ

 5 ウ・オ
 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━   

 ▽ 参考書籍

 会社法 神田 秀樹 著 ・弘文堂   リーガルマインド 会社法
 
  弥永真生著 著・有斐閣
 

 (1)平成17年度・問32

   平成17年度行政書士試験は、平成17年4月1日現在施行されて
 いる法令に関して出題されていると思われる。平成17年制定の会社
 法は、平成18年5月1日施行であるから、本問は、その狭間にあって、
 旧商法の条文 が基準になっていると思われる。本問については、現行
 の会社法に照らして正誤の判断をすることにした。そのため、整合性を
 保持できない場合には、私が問題を改めた。


 アについて

   擬似発起人に関する問題である。「定款に発起人として署名しない者
 は発起人ではないが、株式募集に関する文書等に賛助者等として自己の
 氏名を掲げること等を承諾した者(擬似発起人という)は、発起人と
 同様の責任を負う(103条2項)」(神田会社法)。

 正しい。

 
 イについて

   財産引受け(28条2号)の問題である。発起人が会社のため会社の成立
 を条件として特定の財産を譲り受ける旨の契約をいう。これは、通常の
 売買契約であって、現物出資(28条1号)とは異なるから、付与する株式
 数を定款で定める必要はない。譲渡の対象となる財産、その価格、譲渡人
 の氏名を定款に記載することで足りる(28条2号)。

 誤りである。

  財産引受については、第2・44回イの解説および第1・29号オリジ
 ナル【問題1】イの解説でふれた。

 ウについて

  設立の第1段階は、発起人による定款の作成(26条1項)である。定款
 の作成 とは、株式会社の組織と活動に関する根本規則を実質的に確定し、
 これを形式的に記載するか、または電磁的記録することを意味する。
  定款の方式について は、発起人が署名または記名押印(いわゆる電子
 署名でもよい)することに加えて(26条1項・2項)、公証人の認証が
 必要である(30条1項)。この認証は、定款の内容を明確にして後日
 の紛争や不正行為を 防止するためであるが、その後に定款を変更する
 場合には認証は不要とされ ている(神田会社法)。
  最初の定款を「原始定款」というが、公証人の認証を要するするのは、
「原始定款」のみと覚えておくとよい。

 正しい。

 エについて

   募集設立は、発起人は設立の際に発行する株式の一部だけを引き受け、
 残りについては発起人以外の者に対して募集を行い、そのような発起人
 以外の者 が株式の引受けを行い、発起人とそのような者とが会社成立後
 の当初株主になる形態の設立方法をいう(25条1項2号)《神田会社法》。
 つまり、常に(発起人が設立時発行株式すべてを引き受ける発起設立
 ≪251項1号≫の場合も含めて)各発起人は、設立時株式を一株以上引き
 受けなければならないのである(25条2項)。

 誤りである。


 オについて

  「 旧商法において、設立に際して発行する株式総数が定款の絶対的記載
 事項であり、会社を成立させるためには、定款に定められた設立時発行
 株式のすべてが引き受けられ払込みが為されることを要した」(非公開
 会社のための新会社法・商事法務)。本肢は旧商法に基づいている。
 「 会社法では、失権者が出て引受のない株式があった場合でも、原始
 定款に定めた『設立に際して出資される財産の価格又はその最低額』
(27条4号)以上の出資がなされているときは、そのまま設立手続を続ける
 ことができるものとなった」(前掲書)。44回ウの解説を参照して、
 当該個所を確りと頭に入れておく要あり。

 会社法を基準にすれば、誤りである(旧商法に基づく出題当時は正し
 かった が・・・)。

 なお、本肢では、「発行価格」がその基準として用いられているが、
 それは 旧商法時代に通用していたものであって、現在では株式の実際
 の払込額が基準になっていることに注意する必要がある(445条1項・
 神田会社法)。


 以上誤りは、イ・エ・オの三つであるから、3が正解である。


 (2)平成16年度・問33

   本問もまた、旧商法の条文に基づいて出題されているため、会社法に
 適合するように改めた。なお、旧商法と比較して、新会社法でどのよう
 に改められたかを知ることは、会社法の重要論点探索の端緒になる。

 アについて

   本肢においても、(1)オと同様「発行価格」が基準とされていた
 ので、その文言を会社法に適合するように改めた。
  資本金の額は、原則は株式の実際の払込額(現物出資の場合は給付額)
 の総額であるが(445条1項)であるが、株式発行の際にその2分の1
 までの 額(払込剰余金)は、資本金としないことが認められ(445条2項)、
 その場合には、それは資本準備金としなければならない(445条3項)
(神田会社法)。

 以上に照らせば、本肢は正しい。


 イについて

   議決権制限種類株式とは、株主の全部または一部の事項について議決権
 を行使できない株式をいう(108条1項3号)。
  平成13年11月改正前の商法は、定款で株主総会のすべての事項に
 ついて議決を有しないと定めた株式のみを認め、配当優先株式について
 のみ無議決権株式とすることを認めていた。
  平成13年11月改正は、総会のすべての事項について議決を行使
 できない株式だけでなくその一部の事項についてだけ議決権を行使で
 きないような種類も認めることとし、これら「議決権制限株式」は、
 配当優先株式についてだけ でなく、普通株式等についても発行できる
 とした。会社法はこれを引き継いでいる(前掲書)。

 以上に照らせば、本肢は、平成13年改正前の商法を基準とした
 ものであって、会社法に基づけば、誤りである。

 ウについて

   会社法は、原則として株式の自由譲渡性を認めるが(127条)、その例外
 として、法律による株式の譲渡の制限がある。本肢は時期による制限の例
 である。
   会社成立前または新株発行前の株式引受人の地位(権利株)の譲渡は、
 当事者間では有効であるが、会社には対抗できない≪発起設立・35条1項
 募集設立・63条2項 新株発行・208条4項≫。(神田会社法)

   以上によれば、本肢は正しい。


 関連事項

    株券発行前の株式譲渡
   
    株券発行会社では、会社成立後または新株発行後でも株券発行前
   における株式の譲渡は、当事者間では有効であるが、会社との関係
     では効力が否定される(128条2項)。会社法は、株券発行会社に
   ついては、会社との法律関係を簡明に処理するため株式を有価証券化
     することを求めるため、それまでの間に株式が譲渡されたのでは会社
     との関係では困るからである。
       しかし、会社が遅滞なく株券を発行しないなど会社に帰責事由がある
     ような場合には、株式の譲渡を認めないのは不合理であるので、判例上、
     当事者間の意思表示で株式の譲渡ができ、会社はその効力を否定する
     ことはできず、会社は譲受人を株主として取り扱わなければならない
     と認められている(最大判昭47・11・8・・・)(神田会社法)。

  株主の会社に対する権利行使

   株券発行会社では、株式を譲渡するには、譲渡当事者間では株券の
  交付が必要十分条件であるが(128条1項本文)、会社との関係では、
  株式を譲り受けた者は株主名簿上の名義を自己の名義に書き換えてもらう
  必要がある(130条1項・2項)。
  これに対して、株券不発行会社では、株主名簿上の名義書き換えが
  株式譲渡の 会社および第三者に対する対抗要件である(130条1項)
   なお、株券不発行の場合、譲渡当事者間では、株式の譲渡は意思表示
  で効力が生じると解される。(以上前掲書)

 以下の条文に注目

  130条2項においては、株券発行会社においては、株主名簿上の名義
 書き換え が株式譲渡の会社に対する対抗要件であることが規定されている。
   ここでは、第三者に対する対抗要件は、株式の交付であることが前提に
 なっている。
  130条1項は、株券不発行会社に関するものであって、、原則的規定に
 なって いる。
   214条では、会社は原則として株券を発行しないものとし、株券の発行
 を定款で定めた場合に限って株券を発行することとした。

   しかし、130条1項・2項の規定のしかたは、もってまわった言い方で混乱
 を生じる。株券発行会社は・・・・・。 株券不発行会社は・・・・・。という
 ように、なぜ、単純な規定にできないのだろう。

 エについて

   株式の分割とは、既存の株式を細分化して従来の株式よりも多数の株式
 とすることである(183条)。新株がいわば無償で発行されることになるので、
 既存の株主に対してその持株数に応じて交付されなければならない。既存株主
 の利益に実質的影響が少ないので、取締役会設置会社では取締役会決議で行う
 ことが できる。 (183条2項)(神田会社法)取締役会設置会社以外では、
 株主総会決議による(183条2項)が、これは309条1項の普通決議でよい。
 特別決議とは、309条2項に列挙されてある一定の重要な事項の決議であって、
 より厳格な決議要件になっている。ここには、183条の株式分割は掲げられて
 いない。
 なお、309条3項・4項は、特殊の決議と呼ばれることに注意せよ。

 したがって、株式分割は、特別決議でないので、本肢は誤りである。

 オについて

   旧商法では、自己株式の取得は、例外的な場合を除いて禁止されていた。
 また、取得した自己株式の保有期間を制限していたが、平成13年6月
 改正は、「金庫株の解禁」といわれるように、金庫株(会社が自己株式を
 期間制限なくその金庫に入れておくこと)を認めるための改正も行われた。
 会社法は、金庫株の解禁を引き継ぐとともに、自己株の取得についても
 改正を加え、全体として規制を整理しなおした(神田会社法参照)。

  したがって、本肢は、平成13年改正前の金庫株解禁前の旧商法に
 基づいているので、誤っている。

 注 金庫株については、52回解説エ参照。
     
     旧商法時代、自己株式が厳格に規制されていた実状は、名著(会社法
   ・鈴木竹雄著 弘文堂)によって、名文で記されているので、参考に
   されたい。現在にも通じるのだと思う。

   「・・(自己株式の取得を)自由に認めると、株主に出資を払い戻した
    のと実質的に同様の結果を生じ会社の財産的基礎を危うくするほか、会社
    が自己株式によって投機を行い一般の者を害する等の弊害があるので、法
    は政策的見地からこのように禁止したのである。そのためこのような弊害
    のない場合には自己株式の取得を認めてもさしつかえないが、その場合でも
   自己株式の保有状態をできるだけ早く解消することが要求されている210条 
    211条)。」


 本問は、ア・ウが正しい肢であるので、正解は1である。
 
 
 

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 2009/8/18


             
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【テーマ】株式会社の資金調達方法
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 平成20年度過去問・問題39

   甲株式会社(以下、甲会社という)の資金調達に関する次の文章
 の空欄(ア)〜(キ)に当てはまる語句の組合わせとして、正しい
 ものはどれか。なお、以下の文章中の発言・指摘・提案の内容は、
 正しいものとする。


   東京証券取引所に上場する甲会社は、遺伝子研究のために必要な
 資金調達の方法を検討している。甲会社取締役会において、財務
 担当の業務執行取締役は、資金調達の方法として株式の発行、
 (ア)の発行、銀行借入れの方法が考えられるが、銀行借入れの
 方法は、交渉の結果、金利の負担が大きく、新規の事業を圧迫
 することになるので、今回の検討から外したいと述べた。次に
 株式の発行の場合には、甲会社の経営や既存株主に対する影響
 を避けるために、(イ)とすることが望ましいのであるが、会社
 法は(ウ)について(イ)の発行限度額を定めているため、十分
 な量の資金を調達できないことが見込まれると指摘した。社外
 取締役から、発行コストを省くという観点では、(エ)を処分する
 方法が考えられるという意見が出された。

   これに対して、財務担当の業務執行役は、株式の発行価格が、
 原則として資本金に計上されるのに対して、(エ)の場合は、
 その価格はその他(オ)に計上されるという違いがあると説明
 した。こうした審議に中で、甲会社代表取締役は、(ア)の発行
 であれば、経営に対する関与が生じないこと、(ア)を(カ)付
 とし、(キ)額を(カ)の行使価格に充当させるものとして発行
 すれば、(キ)に応じるため資金を甲会社が準備する必要ななく、
 現段階では、有利な資金調達ができるだろうと提案した。

 
1 ア 社債 イ 議決権のない株式 ウ 公開会社 エ 金庫株式
   オ 資本準備金 カ 新株予約金 キ 払戻し

 2 ア 債券 イ 議決権のない株式 ウ 上場会社 エ 金庫株式
     オ 資本剰余金  カ 取得請求権 キ 払戻し

 3 ア 社債 イ 議決権のない株式 ウ 公開会社 エ 自己株式
   オ 資本剰余金 カ 新株予約権 キ 償還

 4 ア 債券 イ 配当請求権のない株式 ウ上場会社 エ 募集株式
     オ 資本準備金 カ 買取請求権 キ 払戻し

 5 ア 社債 イ 配当請求権のない株式 ウ 公開会社 エ 自己株式
   オ 利益準備金 カ 取得請求権 キ 償還
 
 

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■ 解説
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 ▽ 参考書籍

 会社法 神田 秀樹 著 ・弘文堂   リーガルマインド 会社法
 
  弥永真生著 著・有斐閣


 ア について

   株式会社における外部からの資金調達手段としては、(1)株式の
 発行 (2)「社債の発行」 (3)銀行借入れ その他企業間信用が
 考えられる。したがって、アは、「社債」である。ここで正解は、1・
 3・5に絞られる。

 イについて

   議決権制限種類株式とは、株主総会の全部または一部の事項について
 議決権を行使することができない株式をいう(108条1項3号)。(神田
 会社法)
   とくに総会のすべての事項について議決を有しない株式(完全無議決
 権株式)≪神田会社法≫を発行すれば、旧経営陣ないし既存株主の支配
 関係の維持に役立つ。したがって、株式発行の場合は、甲会社の経営や
 既存株主に対する影響を避けるために、「議決権のない株式」とする
 ことが望ましい。イは、「議決権のない株式」である。
   ここで、5が除かれ、1と3に絞られる。

 ウについて

   会社法は、「公開会社」では、議決権制限株式の総数は発行済株式総数
 の2分の1を超えてはならないとしている(115条)ので、ウは「公開会社」
 である。ここでは、1・3いずれを選択しても、「公開会社」になり、決め
 手にはならない。

 エについて

   199条1項によると、「その処分する『自己株式』を引き受ける者
  の募集」は、新株発行と同じ手続による。新株を発行すると、株券の
 発行を要するが、「自己株式」の処分の場合は不要である。したがって、
  発行のコストを省くという観点では、「自己株式」を処分する方法が
  が考えられることになり、エは「自己株式」である。
    なお、1のエに 当たる「金庫株」も一応考慮の対象になる。金庫株とは、
 会社が自己株式を期間制限なくその金庫に入れておくことから命名された
(神田 参照)ものであり、この金庫株は、弊害があったため、禁止されて
 いたのを平成13年6月改正により、「金庫株の解禁」が行われたのである。
  したがって、ここでは、「金庫株式」でも意味が通じないことはないが、
 法律用語としては、「自己株式」の処分が正しい。さらに、後に続く記述
 では、「自己株式」の価格の計上が問題になっているので、「自己株式」
 が確定的になるのである。

  ここで3に確定するのであるが、このあたりまで順調に来れば、時間の
 節約のため、3として後は見ないで、最後に時間あれば、後半部分を確認
 するのも一策である。

 オについて

   新株発行では資本金の額が増加する(445条1項〜3項)が、自己株式の
 処分益は分配可能額に含まれる(その他資本剰余金」。(神田会社法)
  しかし、このあたりは相当の高度な知識を要する。
  したがって、株式の発行価格が資本金に計上されるのに対して、自己株式
 の場合は、その価格はその他「資本剰余金」(オ)に計上されるということ
 になる。

 カ・キについて

   こうした審議の中で、・・・・・という最後の記述を全体としてみて
 みよう。このあたりで、皆さんは不安に襲われるのではないか。会社法
 にそんなに時間かけられないよ。助けてくれ!! しかし、本試験では
 会社法から確実に4問は出題されている。苦手意識を持って投げてしまえば、
 失う代償は大きい。少しの辛抱だ。じっくりと、一定の時間をかけて論点
 の理解に挑むという意欲が大切だ。だれでも会社法にはてこずっている。

  私も現に、「しんぼう」がパソコンで漢字では出てこず、辞書を引き、
「てこづる」 か「てこずる」かでまた辞書を開いている。

  本題に入る。
 
  社債とは、会社の債務であり、社債権者は会社に対する債権者であって、
 会社の経営に対する関与が生じない。次に、新株予約権付社債(2条22号)
 について、新株予約権を行使されると、会社は、新株予約権者に対して、
 新株を発行する義務を生じる(236条以下)。
  新株予約権の行使は、あらかじめ定めた一定の期間(行使期間)内に
 あらかじめ定めた一定の金額(行使価格)の払込みをすることによって
 行う(神田会社法)。
  社債については、会社は、発行時に定めた条件で元本の返済(償還)
 と利息の支払いをしなければならない(2条23号・676条特に4号の償還
 に注目)。
  そこで、新株予約権付社債の発行にあたり、償還額を新株予約権の
 行使価格に充当させるものとすれば、償還に応じるための資金を会社
 が準備する必要がない。

  以上の理解があれば、カが「新株予約権」であり、キが「償還」
 であることは明らかである。

   以上正解は、3である。

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第49回 】★      
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 2009/8/12


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
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【テーマ】株式買取請求権
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 平成19年度過去問・問題37

   株式買取請求権に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているもの
 の組合わせはどれか。

 ア 単元未満株式を有する者は、投下資本の回収を保証するため、いつ
   でも会社に対して単元未満株式の買取りを請求できる。

 イ 議決制限株式を発行する旨の定款変更決議に反対する株主は、株式
  買取請求権を行使することができる。

 ウ 株主総会決議に反対する株主が買取請求権を行使するには、原則
   として、その決議に先立ち反対の旨を会社に通知し、かつ、その
   その総会のおいて反対しなければならない。

 エ 株式の買取りを会社に対して請求した株主であっても、会社の承諾
   があれば、買取請求を撤回することができる。

 オ 合併承認決議に反対する株主からの買取請求により支払った金額が
   分配可能額を超えた場合には、取締役はその超過額について責任を
   負う。

 1 ア・ウ

 2 ア・オ

 3 イ・エ

 4 イ・オ

 5 ウ・エ
 

  
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■ 解説
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 ▽ 参考書籍

 会社法 神田 秀樹 著 ・弘文堂   リーガルマインド 会社法
 
  弥永真生著 著・有斐閣


 アについて

   単元株制度とは、株式の一定数をまとめたものを1単元とし、株主の
 議決権は1単元に1個とする制度である(188条1項)。
 
 沿革

  この制度は、平成13年商法改正により創設されたものであり、現在
 の会社法にも引き継がれている。平成13年以前は、単位株制度が採用
 されていたが、その形の変わったものが、この単元株制度であるという
 認識があればよいであろう。

 実益

  1株に1議決権を与えるのが原則であるが、そうすると、株主の招集
 手続等会社の株主管理費用が膨大になるため、この制度が採用されて
 いるのである。1番簡単なのは、ひとまとめにした1単元を1株と
 すればよいが、これもまた、厄介な株式併合手続を伴うため、この
 制度の創設に至ったのである。
 

 本肢への接近

  たとえば、1,000株をひとまとめにして1単元として、1議決権
 を与えることにすれば、200株の株主は、単元未満株主として、議決
 権を行使できない(189条1項)。しかし、単元未満株式を有する者の
 投下資本の回収については、最大限保証されなくてはならない。
   平たく言えば、勝手に会社の都合で議決権を奪ったのであるから、
 つべこべ言わず、単元未満株式を買い取れといえなくてはおかしい。
 以上の現状認識があれば、本肢が正しいことは、見えてくるのである。

 本肢の解答(条文による追認)

   192条1項によれば、本肢のとおり、単元未満株主の会社に対する
 株式買取り請求が認められている。しかし、もっと、突っ込んで考えると、
 本肢のいうように、「いつでも」でもできるのか。189条2項4号に
 注目。当該買取を請求する権利を会社は、定款の規定によっても奪うこと
 はできないのである。したがって、「いつでも」できるのである。
 本肢は正しい。

 関連事項

 1 この単元株制度を設けることは、会社の任意であって、188条1項
  も「定款で定めることができる」と規定している。
 2 単元未満株主の自益権(会社から直接経済的な利益を受けることを
  目的とする権利)は保証されなくてはならないので、当該買取請求権
  を含めこれら権利を定款で奪うことができないことに注意(189条2項)。


 イについて

  1 議決権制限権株式を発行する旨の定款変更決議について。
   
   議決権制限(種類)株式とは、株主総会の全部または一部の事項に
  ついて議決権を行使することができない株式をいう(108条1項・3号)。
    議決権制限株式は、配当等に期待し議決権の行使には関心のない
   ような株主のニーズにこたえた制度である(神田会社法)。
    そのような議決権制限株式を発行するには、発行可能種類株式
     総数等を定款で定めなければならない(108条2項3号)。
       したがって、議決権制限株式を発行するには、定款の変更を
   要する。
 
 2  反対株主の株式買取請求
     
   定款の変更には株主総会の特別決議を要する(466条・309条2項11号)。
  株主総会決議の場合、一定の基礎的変更の場合に、多数決で決議が成立
    したときには、反対株主に、投下資本を回収して経済的救済を与える
  ため、会社に対して その所有する株式を公正な価格で買い取ることを
    請求する権利が認められる(神田会社法)。しかし、条文上、議決権制限
  株式を発行する旨の定款決議に反対する株主には、株式買取請求権は
    認められていない(116条1項のなかには、108条1項3号に掲げる事項に
  ついての定めを設ける定款の変更をする場合は入っていない)。
   したがって、本肢は誤りである。
   以上に対して、株式譲渡制限の定めを設ける定款変更決議の場合には、
    反対株主の株式買取請求が認められていることに注意せよ(116条1項
  1号・116条1項2号前段)。さらに、当該株主総会の決議要件は、厳格な
  特殊決議である。(309条3項1号)である。

  3 全体的考察
   
   全体的には条文に忠実に解説したので、難しく思われたかもしれ
    ないが、 以下のとおり覚えておけばよいであろう。

   議決権制限株式については、309条2項(11号)の特別決議。
   反対株主の買取請求なし。
    
   株式譲渡制限株式については、309条3項の厳格な特殊決議。
   反対株主の買取請求あり。

  4 関連事項

   株主総会決議の場合、反対株主の株式買取請求権が認められる主
    だった場合を列挙しておく。
   前記株式譲渡制限のほか、1事業の全部または重要な一部の譲渡
  等の決議、2合併の決議、3新設分割・吸収分割の決議、5株式交換・
    株式移転の決議等の場合。

 ウについて

  株主総会決議に反対の株主の株式買取請求権の行使要件は、イ・4
  いずれの場合も共通である。ここでは、株式譲渡制限の定めを設ける
 定款変更決議を例にとる。116条1項1号・同2号前段の定款変更
  決議に反対する株主 は、1総会前に会社に反対の意思を表示し、
 2総会で反対することが必要である(116条2項1号イ)。しかし、
  議決権を行使できない株主は1・2は不要である(116条2項ロ)。
 したがって、原則として、1・2の行為を要するとするウの肢は正しい。

   

 エについて

   本肢では、株式の買取請求とあるだけで、ア・イ・ウのように限定がない。
  株式買取請求が認められるのは、アの単元未満株式の場合、イ・ウの株主
 総会の決議の場合、そのほかに、「略式事業譲渡・略式合併等の場合と簡易
 事業全部の譲受け・簡易合併等の場合には、総会決議は不要であるが、反対
 する株主にはやはり株式買取請求権が認められる。」
  その手続面では、三者は共通するところがあり、いずれにおいても、本肢
 のような撤回を許す規定がある(116条6項・192条3項・469条6項)。

 オについて

  本肢は、重要な事項ではあるが、あらかじめ知識の蓄積がないと
 太刀打ちできない。ア・イ・ウ・エで勝負すべきか。
  ここでは、順次関連事項も含めて解説する(神田会社法参照)
  
 1 会社の合併とは、2つ以上の会社が契約によって一つの会社に合体
  することである。合併には、吸収合併(2条27号)と新設合併(2条28号)
  がある。
 2 合併にあたっては、株主総会の承認を要し(吸収合併・783条1項・
    795条1項 新設合併・804条1項)、合併に反対する株主には、株式買取
  請求権 がある(785条1項・797条1項・806条)。
 3 本肢にいう分配可能額についての規定(461条2項)は、複雑で細かい
    ので、ここでは、株式会社が株主に対して交付する金銭等につき、
  分配可能額を超えた場合、剰余金の違法分配になり、取締役の責任が
    認められるということが分かっていればよい(461条・462条)。
 4 株式買取行使の場合には、464条に特別の規定を設けて、取締役の
  超過額の支払い責任を規定している。株主の株式買取請求に応じて、
  株式会社が自己株式を取得すると言うのは、その対価としての金銭が
    会社 から流出することになるので、分配可能額の規制を受けること
  になる。
  5 しかし、464条によると、116条1項に規定される株式譲渡制限
    の定めを設ける定款の変更をする場合における自己株式の取得にしか適用
  されない。したがって、合併承認決議にも464条の責任を認める本肢
    は誤りである。本解説について、合併には464条が不適用であること
    の記述にとどめれば、簡単であったが、この際、最少限度の把握すべき
    要点を記した。
  6 なお、合併等における株式買取請求による自己株式の取得は、分配
     可能額を超えたとしても、464条の責任を負わないのと同時に 自己
     株式の取得そのものも有効であることにも注意せよ。

  本問は、イとオが誤りであるから、4が正解である。


 
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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
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       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。


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