━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第45回 】★      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
            
----------------------------------------------------------
 2009/7/21


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
----------------------------------------------------------
 
【テーマ】行政法・教示制度
 

【目 次】問題・解説 
           
      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 問題
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 A  平成13年度過去問・問題16


   行政不服審査法の定める教示に関する次の記述のうち、妥当なもの
 はどれか。

 1 審査請求することのできる処分につき、処分庁が誤って審査庁
  でない行政庁を審査庁として教示した場合に、その行政庁に審査
   請求されたときは、当該審査請求は却下される。
 2 行政庁は、不服申立てをすることができる処分をする場合には、
  処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることがで
   きる旨、不服申立てをすべき行政庁および不服申立期間を書面
   で教示しなければならない。
 3 利害関係人から行政庁に対し、当該処分が不服申立てをすること
   ができる処分であるかどうか教示を求められても、行政庁は必ずし
   も当該事項を教示しなくてもよい。

 4 利害関係人からの教示の請求で、書面による教示が求められた
   場合に、当該教示は口頭でおこなってもよい。

 5 地方公共団体その他の公共団体に対する処分で、当該公共団体
  がその固有の資格において処分の相手方となるものについても、
   教示の規定が適用される。
 

 B 平成18年度過去問・問題19

 1 行政事件訴訟法に教示の規定が設けられたことを契機として、
   行政不服審査法においても教示の規定が創設されることとなった。

 2 取消訴訟を提起することができる処分が口頭でされた場合に、
   相手方から書面による教示を求められたときは、書面で教示し
   なければならない。

 3 原処分ではなく裁決に対してのみ取消訴訟を認める旨の定め
   がある場合に、当該原処分を行う際には、その定めがある旨を
   教示しなければならない。

 4 当該処分または裁決の相手方以外の利害関係人であっても、教示
  を求められた場合には、当該行政庁は教示をなすべき義務がある。

 5 誤った教示をした場合、または教示をしなかった場合について
   救済措置の規定がおかれている。

 
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ◎ 参考文献

  行政法読本・芝池 義一著 行政法入門・藤田 宙靖著 《有斐閣》

 ◎ 今回は、行政法につき、従来やり残した事項の一つである
  「教示制度」をテーマとした。
 

 A 平成13年度過去問

  以下において、行政不服審査法の定める教示制度に関する要点を掲げ、
 順不同で各肢を検討する。

  行政不服審査法は、教示の制度を設け、不服申立てをなすべき行政庁
 や 不服申立期間などについて情報提供をすることとしている。
   まず、処分の相手方については、行政庁は、不服申立てをすることが
 できる処分をする場合(口頭でする場合を除く)、(a)当該処分
 につき 不服申立てをすることができる旨、(b)不服申立てをすべき
 行政庁、および(c)不服申立てをすることができる期間の3点を教示
 しなければならない(行審法57条1項)。(読本)

   2が妥当である。「書面で教示」がちょっとひっかかるが、口頭を除く
 (57条ただし書き)のだから正しい。まさに、正攻法の肢だといえる。

   また、利害関係人は、不服申立をできるか否かを含め、行政庁に教示
 を請求できる(行審法57条2項)。(読本)

 したがって、3の教示しなくてもよいというのは、誤りである。

  また、この場合、書面による教示を求めたときは、当該教示を書面
 でしなければならない(法57条3項)。

   したがって、4の当該教示は口頭で行ってもかまわないというのは
 誤りである。

 また、教示の内容に誤りがあった場合については、救済の規定が
 おかれている。(読本)

   1の場合については、その救済規定である法18条1項4項に
 基づき、当該審査請求が審査庁に送付されたときは、はじめから
 審査庁に審査請求がされたものとみなされるのであって、却下
 されるのではないので、1は誤りである。

   5は、57条4項の規定に反するので、誤りである。

 以上、正解は2である。


 B 平成18年度過去問

 1について

   「この行政庁の教示義務という制度は、行政不服審査法では不服の
 申立てにつき、もう早くから定めていたのですが、行政事件訴訟に
 ついてはそうでなく、国民の権利救済のうえで、不十分であること
 が指摘されてきていました。そこで、(平成16年)の法改正で、
 これを改めたものです。」(入門)
  したがって、1は誤りである。

 2について

  行訴法上、相手方から書面による教示を求める制度はない。これは、
 行審法57条2項3項の規定である。
  2は誤りである。

 3について

   裁決主義が法定されている場合にはその教示も必要である(行訴法46
 条2項)。(読本)裁決主義については、第2コース第38回A解説 ○
「原処分主義」と「裁決主義」において、説明をしている。裁決主義が
 採用されていると、原処分の違法は裁決取消訴訟でしか争えなくなる
 から、当該処分に不服のある者は、まず、裁決を得なくてはならない。
 したがって、当該教示は、処分の相手方にとっては重要である。
  また、不服申立てに対して行政庁が決定・裁決を行う場合にも、この
 教示が必要である。(読本)ここでも、相手方は、原処分の違法を裁決
 取消訴訟で争うべきことを知るであろう。

   本肢は、裁決主義の教示について定めた法46条2項に照らし、妥当で
 ある。 なお、ただし書にも注意せよ。

   なお、46条1項は重要である。同条1項3号は「不服申立前置義務
 が定められている場合はその旨を、書面で教示しなければならない」
 ことを定めている。(読本)これは、行訴法8条における自由選択主義
 の例外として、同条ただし書きが規定している(第2・38回A解説・○
 不服申立の前置参照)。

 4 5について

  「教示の制度は、不服申立ての仕方に関して行政不服審査法上も設けら
 れているが、それと比較すると、行政事件訴訟法の教示の制度には、利害
 関係人による教示の請求についての規定はないし、教示が行われなかった
 場合や教示に誤りがあった場合の救済規定もない。」(読本)
   以上に照らせば、4・5は明らかに誤りである。

 
    妥当であるのは、3のみであり、3が正解である。


 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 23:13コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第41回 】★      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
            
-------------------------------------------------------------
 2009/7/9


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
-------------------------------------------------------------
 

【テーマ】行政事件訴訟法
 

【目 次】問題・解説 
           
      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 問題
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 

 A  平成17年度過去問・問題16

  平成16年の行政事件訴訟法改正では、行政訴訟における国民の救済
 範囲の拡大と国民にとっての利用しやすさの増進がはかられた。次の
 記述のうち、改正法でのなお実現されなかったものはどれか。


 1  従来、抗告訴訟における被告は行政庁とされていたが、改正後
   は、国家賠償法と同様に、国または公共団体を被告とすることに
   なった。 

 2  従来、無名抗告訴訟の一種として位置づけられたてきた義務付け
   訴訟や差止訴訟が、改正後は法定抗告訴訟とされたのにともない、
   仮の義務付けおよび仮の差止めの制度が設けられた。

 3  従来、きわめて厳格であった「回復の困難な損害を避けるため緊急
   の必要があるとき」という執行停止の要件が「重大な損害を避ける
   ため緊急の必要があるとき」とされ、改正前に比べ緩和された。

 4  従来、原告適格の要件としての「法律上の利益」が厳格に解釈され
   て いたが、当該法令と目的を共通にする関係法令も参酌すべきこと
  などとされ、その拡大がはかられた。
 
 5  従来、厳格に解釈されてきた取消訴訟における処分性について、
   具体的な効果など諸事情を総合的に考慮し判断すべきとの解釈規定
  が加えられ、その拡大がはかられた。

 

 B  平成18年度・問題18

  平成16年の行政事件訴訟法改正後の行政事件訴訟制度の記述として、
 正しいものはどれか。

 
1  従来、法令に基づく申請についてのみ認められていた不作為違法
   確認訴訟が、規制権限の不行使についても認められることになった。

 2  仮の義務付けまたは仮の差止めは、処分の執行停止と同様の機能を
   有するので、内閣総理大臣の異議の制度が準用されている。

 3 処分が、国または公共団体に所属しない行政庁によって行われた
   場合、 当該処分の取消しを求める訴えは、処分取消訴訟に替わり、
  民事訴訟によることとなった。

 4  法令に基づく申請に対して相当の期間内に何らの処分もなされない
  場合は、原告の判断により、不作為違法確認訴訟または義務付け
    訴訟のいずれかを選択して提起することができる。

 5  処分もしくは裁決の存否またはその効力の有無を確認する判決
 (無効等の確認判決)は、第三者に対しても効力を有することが
  明文上認められた。
 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ▼ 参考書籍は、第2コース第40回に掲載した。

 ▼ 今回、A・Bで取り上げたのは、Aでいう「救済範囲の拡大と利用
  しやすさの増進」のため、平成16年に改正(同17年4月1日から
   施行)された行政事件訴訟法である。これからもここに焦点を当てた
   出題は当然予想されるのであり、この際、当該改正の内容を把握して
   おくべきである。

 Aの17年度過去問

 1について

  これは、被告適格の問題である。
  改正された行政事件訴訟法11条1項によると、処分または裁決をした
 行政庁が国または公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、それぞれ、
 国またはその公共団体を被告として提起しなければならないことになって
 いるので、正しい。なお、この11条の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟
 にも適用されることになっていることに注意せよ!!(同法38条1項)。
 内容を明確にするため、「入門」から次の文章を引用する。
 
 「民事訴訟法の原則からいえば、これはあたりまえのことですが、じつは
 今回の法改正の以前においては、『処分の取消しの訴えは、処分をした
 行政庁を、裁決の取消しの訴えは、裁決をした行政庁を被告として提起
 しなければならない」とされてたのでした(改正前11条)。・・
 『行政庁』は、『処分または裁決をおこなう権限を与えられている行政
 機関』のことだ、と考えておけばよいでしょう。こうして旧法のもとでは、
 たとえば、課税処分の取消訴訟だったら、『国』を相手として訴えを起こ
 すのではなく、その課税処分をした税務署長を相手としなければならない。
 運転免許取消処分の取消訴訟だったら、知事ではなくて、免許を取り消し
 た公安委員会を被告として訴えを起こさなければならない、という状態
 でした。これは大変まぎらわしいことですが、ここのところをまちがえ
 ると、それだけで訴えは門前払い(却下)になってしまったわけで、
 国民の権利救済制度という見地からは、大きな問題がありました。そこで、
 今回の法改正では、これを改めて、民事訴訟の原則に戻すことにした・・」
 本肢では、国家賠償法が挙がっているが、これは民事訴訟法の適用を受け
 るので、以上述べたことは、国家賠償法にも妥当する。
  なお、「入門」による次の指摘にも注意せよ。
  「国または公共団体が被告になる場合でも、訴訟において、実質的には
 行政庁が主体となって活動することとなっています(法11条4項〜6項を
 参照)。」
 

 2について

  法律上明文で定められていないが、従来から理論的に可能であると
 考えられてきた「無名抗告訴訟」が当該法改正によって、法律上正面
 から認められた(法3条6号の「義務付け訴訟」・法3条7号の「差
 し止め訴訟」)。これに伴い、37条の5により「仮の義務付け及び
 仮の差し止め」も認められることになった。注1・2

 正しい。

 注1・「義務付け訴訟」の概念については、第2コース第36回A・
        肢3の解説で述べたので、再説しない。また、「差し止め
        訴訟」については、同 肢2で述べた。
 注2・「仮の義務付け等」とは、仮の処置であって、緊急性など
       厳格な要件のもとに、裁判所は、本案の審理の前に行政庁に
    仮の義務付けを命じ得るとしたものである。

 3について
 
  法25条1項は、取消訴訟につき、執行不停止原則を定めているが、
 同法2項において、取消訴訟のほかに、特別に「執行停止の申立」を
 すれば、例外的に裁判所がこれを認めることがある。この執行停止の
 要件が当該改正により、本肢のとおり、緩和された。

 正しい。

 
 4について

  法9条1項に原告適格の規定があり、その要件としての「法律上の
 利益」については、最高裁判所の判例により緩められてきた。当該
 改正によって、法9条2項が、考慮事項として、最高裁の判例が示
 した内容をとりいれた。そこでは、「関係法令の参酌」も規定され
 た(入門)。注

 正しい。

 注・ここで規定されているのは、第三者が訴えを起こす場合である。
  処分の相手方自身が起こす場合には、取消しについて原則的に
    「法律上の利益」があるのは、処分が不利益なものである限り
  当然のことだからである(入門)。

 5について

  取消訴訟における処分性についての本肢の見解は、最高裁判所の
 判例の立場であるが、これは、4と異なって、当該法改正により
 解釈規定として加えられたという事実はない。

  したがって、平成16年の改正法で実現されていないので、これが
 正解である。

 
 Bの18年度過去問

 
 1について

  法3条5項によれば、不作為違法確認訴訟は、「法令に基づく申請」
 のみにしか認められていない。規制権限の不行使にまで拡大されたと
 いう事実はない。注

 正しくない。

 注 規制権限の不行使についての不作為違法確認訴訟の内容は、第2
   コース第36回A・肢1の解説参照。

 2について

  内閣総理大臣の異議といえば、私には、懐かしい。時は、昭和40年
 代後半。若かった私は、法務省勤務で、当該業務の一端に関わった。
  学生のデモで国会周辺が騒然となった時代。学生らは、東京都公安委
 員会に対し、デモの許可申請。不許可になる。そこで、彼らは、取消
 訴訟提起。同時に、不許可処分の執行停止の申立を行う。許可申請した
 デモの日時より遅い取消しでは無意味であるから、「回復の困難な損
 害を避けるため」(平成16年改正前の要件)処分の効力・執行の停止
 を申し立てる(法25条2項)。そこで、当該異議の登場。このデモの
 不許可を続行しなければ、国会周辺の治安は維持できない(法27条3項
 の「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれ」を理由にする)。この
 起案の作業が、法務省職員によって遂行されるのである。これは、デモ
 の開始前までに行われなくてはならないので、たいてい、徹夜作業だ
 った。この内閣総理大臣の異議があれば、執行停止をすることは
 できない(法27条4項)。
  それデモ、学生らは、デモを強行。そこで、治安当局は、当該異議
 を楯に、楯をもって無許可デモの取り締まり。騒然の度合の増大。
 その繰り返し。
  さて、本題。何らかの不許可処分のあった場合、仮の義務付けにより
 本案の審理なしで、許可を義務付けるのだから、不許可処分の執行停止
 と同様の機能を有する。また、本案の審理なしに、行政処分の差し止め
 が行われると、処分の執行停止の機能を有するというのは、もっと分か
 りやすい。そこで、当該異議の制度の登場となることは、前述したとおり。
 条文でいえば、法37条の5第4項による27条の準用である。
 平16年の改正により、仮の義務付けなどが認められたことにより、
 当該規定が設けられた。

 正しい。これが正解である。


 3について

  これは、被告適格に関するAの肢1と連動する。法11条1項では
 当該行政庁の所属する国または公共団体に被告適格があるが、本肢
 の場合には、11条2項により、当該行政庁を被告とする抗告訴訟
 を提起することになる。平成16年の改正により追加された条項で
 ある。

 したがって、本肢は正しくない。


 4について

 法3条6項2号の「申請型不作為」に対する義務付け訴訟にあっては、
 不作為違法確認訴訟も一緒に起こさなければならない(法37条の3第3項第
 1号)。これが16年改正法である。選択の問題ではない。詳しくは、第
 2コース第38回C肢2の解説参照。

 正しくない。


 5について

  本肢は、判決の第三者効の問題であって、訴訟法として、高度な
 テーマ。理論的には確認判決に第三者効はないといわれている。
  16年改正により、第三者効が明文化された事実はない。
   これについては、これ以上深入りする必要はない。

 正しくない。
 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 17:28コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第38回 】★      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
            
-----------------------------------------------------------
 2009/6/24


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
-----------------------------------------------------------
 
【テーマ】行政事件訴訟法
 

【目 次】問題・解説 
           
      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 問題
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 A 平成18年度過去問・問題17

  取消訴訟と審査請求の関係についての次の記述のうち、妥当なもの
 はどれか。

 1 個別法が裁決主義を採用している場合においては、元の処分に対
   する取消訴訟は提起できず、裁決取消訴訟のみが提起でき、元の
   処分の違法についても、そこで主張すべきこととなる。

 2 行政事件訴訟法は原処分主義を採用しているため、審査請求に対
  する棄却裁決を受けた場合には、元の処分に対して取消訴訟を
   提起して争うべきこととなり、裁決に対して取消訴訟を提起する
  ことは許されない。

 3 審査請求ができる処分については、それについての裁決を経ること
   なく取消訴訟を提起することはできないとするのが行政事件訴訟法
  の 原則であるが、審査請求から3か月を経過しても裁決がなされ
  ないときは、裁決を経ることなく取消訴訟を提起できる。

 4 審査請求の前置が処分取消訴訟の要件とされている場合には、
  その 審査請求は適法なものでなければならないが、審査庁が誤って
  不適法として却下したときは、却下裁決に対する取消訴訟を提起すべ
   きこととなる。

 5 審査請求の前置が処分取消訴訟の要件とされている場合には、その
   出訴期間も審査請求の裁決の時点を基準として判断されることとなる
  が、それ以外の場合に審査請求しても、処分取消訴訟の出訴期間は
  処分の時点を基準として判断されることとなる。
 

 B・Aに関連する問題(例により、過去問の出典を明らかにしない)
   ○×で解答いてください。

(1) 行政事件訴訟法によれば、取消訴訟は、必ず審査請求を経て
    からでなければ提起することができない。

 (2) 処分の取消しの訴えと当該処分の審査請求を棄却した裁決の取消
  しの訴えとを提起できる場合は、どちらの訴訟においても当該処分
  の違法を理由として取消しを求めることができる。 

 (3)処分の取消の訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決
     の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消
     しの 訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求める
    ことはできない。

 (4)処分の取消しの訴えは、審査請求に対する裁決を経て提起する
    ことが法律で定められている場合であっても、審査請求があった
  日から3箇月を経過しても裁決がないときは提起することができる。

 (5)「裁決の取消しの訴え」を「処分の取消しの訴え」と併合して
   提起するようなことは、許されない。

 (6)取消訴訟について不服申立ての前置が要件とされている処分に
     ついては、無効確認訴訟についても、それが要件となる。

 
 C 平成20年度過去問・問題16

 
 不作為の違法確認訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 1 不作為の違法確認訴訟は、処分の相手方以外の者でも、不作為の違法
   の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者であれば、提起すること
   ができる。

 2 不作為の違法確認訴訟を提起するときは、対象となる処分の義務付け
   訴訟も併合して提起しなければならない。

 3 不作為の違法確認訴訟は、行政庁において一定の処分を行わないことが
   行政庁の義務に違反することの確認を求める公法上の当事者訴訟である。

 4 平成16年の行政事件訴訟法の改正によって義務付け訴訟が法定された
   のと同時に、不作為の違法確認訴訟の対象も、申請を前提としない規制
  権限の不行使にまで拡大された。

 5 不作為の違法確認訴訟自体には出訴期間の定めはないが、その訴訟係属
   中に、行政庁が何らかの処分を行った場合、当該訴訟は訴えの利益がなく
   なり却下される。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 △ 参考書籍 

 「行政法入門」藤田 宙靖 著 ・「行政法読本」芝池 義一 著
  ・ともに有斐閣発行

 △ 過去問の検討

  今回も前回に引き続き「行政事件訴訟法」を採用した。

 
 A・平成18年度過去問

 a 根本問題・用語解説

 ○不服申立ての前置

 「訴願前置主義」
  
   昭和37年に現在の行政事件訴訟法が制定される前の制度である。
  行政庁に対して、異義などができる場合には、それを行ってから
  でなければ処分の取消訴訟を起こすことはできない。

 「自由選択主義」
 
   行政上の不服申立てを先にするかいきなり訴訟を提起するか、両者
  を平行して行うかすべて私人の自由な選択に任せるべきである。
    行政事件訴訟法8条1項が規定する現在の制度。

   同法8条1項ただし書きは、例外を認めている。個別の法が例外を
  定めている場合がたいへん多くなっていて、「その結果、現実には
 不服申立ての前置という要件がふたたび取消訴訟の重要な訴訟要件
  となってしまっているということを否定できない状況」(入門)                
  である。
 


 ○「原処分主義」と「裁決主義」

   裁決を経て取消訴訟を提起する場合、最初の処分(原処分)と裁決
  のいずれを争いの対象とすべきかという問題である。なお、さきの
 「前置」主義とは、直接関係ないと思う。「前置」に基づいて、裁決
  を経る場合もあれば、「自由選択」に基づいて裁決を経る場合もある
  からである。

   たとえば、ある営業許可申請に対して、拒否処分がされたのを不服
  として、審査請求をしたところ、これが棄却された場合を想定する。
   まず、現行法は、「処分の取消しの訴え」と「裁決の取消しの訴え」
(注) を規定している。(3条2号・3号)。
 
  注・行政不服審査法によると、異義申立てには決定がなされ、審査
   請求には裁決がなされることになっているが、行政事件訴訟法では、
     両者を含めて、「審査請求」「裁決」という言葉に統一されている
     ことに注意せよ。

  申請者としては、拒否処分を取り消してもらえばよいことになるが、
 考え方として、あとの裁決を争いの対象とし、その中で、最初の処分
 が違法であることを裁判所に認めてもらえばよいことになる。しかし、
 前述したとおり、法は、「処分の取消し」という独自の方法を認めて
 いるのだから、あくまで、拒否処分という 原処分を取消す「処分の
 取消し」を提起すべきことになる。これが、行政事件訴訟法10条
 2項の規定する「原処分主義」である。原処分主義で目的を達する
 ので あれば、「裁決の取消し」は不要ではないかという疑問を生ずる。
  しかし、個別の法律において、原処分に不服がある場合であっても、
 裁決について取消訴訟を提起することが定められていることがある。
  これが、例外として認められている裁決主義である。この場合には、
 この訴訟の中で原処分を取り消してもらうことになる。また、原処分
 の取消しの外にに審査請求の手続自体に違法があるのでこれを取り
 消しておきたいときは、両者の訴えを同時に行うことになる。
 (このような説明は、一般の教科書ではみかけないが、それぞれできる
 だけご自分で具体的に考察されることを勧める。)

 b 各肢の検討。

   以上aの記述を前提に解説をする。全体を見ると、1・2が「原処
 分主義」と「裁決主義」の問題であり、3・4・5が「前置」の問題
 であることが分かる。

 1について

  これは、まさに例外としての裁決主義であり、妥当である。この知識
 が正確に把握されていれば、後の肢はパスして、次の問題に進み、最後
 に時間が残れば、2〜5を確認すれば、随分時間の節約になる。

  2について

  法10条2項の原処分主義のの説明として、前段は正しい。しかし、
 裁決に対して同時に取消訴訟を提起できるので、後段は妥当でない。

  3について

  自由選択主義が原則であるから、前段は妥当でない(法8条1項本文)。
 後段については、8条2項1号に注意。この規定は、例外としての
「前置」 の場合に適用されるのである。紛らわしい肢である。

  4について

  この肢も題意が掴みにくい。審査庁がもともと不適法な審査請求を却下
 (注)したときは、その審査請求は適法なものでなければならないから、
 前置としての裁決があったとは言えない。しかし、審査庁が誤って
 不適法 として却下したときは、却下裁決に対する取消訴訟を経ること
 なく、前置 としての審査請求があったものとして原処分の取消訴訟を
 提起できる。
  同旨の判例があるようである。本肢は妥当でない。

 注 不服申立て要件を満たしていない不服申立てに対し、本案の審理を
    拒否する門前払いとしての「却下」裁決がなされる。これは、本案
    の審理を行ったうえで、言い分を認めない「棄却」裁決と異なる。

 5について

  これも即座に題意がつかみにくい。本肢にいう「それ以外の場合」とは
 前置が処分取消訴訟の要件とされていない場合において、いきなり処分
 取消訴訟を提起しないで、審査請求を選択した場合に相当する。
  換言すると、「自由選択主義」に基づいて、行政上の不服申立てを先行
 させた場合である。審査請求があったときの出訴期間に関する14条3項
 の規定は、前置の場合に限っていないので、「それ以外の場合」にも適用
 されることになり、この場合にも、処分取消訴訟の出訴期間は裁決の時点
 を基準として判断されることになる。おそらく、当該規定は、裁決の結果
 をみて、原処分の取消訴訟を提起しようとする相手方の意思を尊重した
 ものであろう。そうであれば、なおさら前置に限定する必要はない。
 妥当でない。
 なお、これは、教科書では一般に触れられていないもので、常識によって、
 解答を導くことになるだろう。

 1が正解である。4とか5の紛らわしさを考慮すれば、1の正確な知識が
 切め手になる。
 

 B 関連問題

 (1)について

 法8条1項の「自由選択主義」に反する。×

  (2)について

 法10条2項の「原処分主義」に反する。×

  (3)について

 法10条2項の「原処分主義」のとおり ○

  (4)について

 法8条第2項1号のとおり。○

  (5)について

  原処分の取消しの訴を提起するに当たり、裁決の手続に違法性がある場合
 には、「裁決の取消の訴」を併合することが許されるというのが、「原処分
 主義」の帰結である(19条1項参照)。  ×

  (6)について

  法8条第1項ただし書きによれば、不服申立ての「前置」は「処分取消し
 の訴」 に該当する。法38条は、法8条1項ただし書きを無効確認訴訟に
 準用していない。無効確認訴訟については、まさに「前置」といった制限
 を設けず、いつでも起こせる抗告訴訟であるところにこそ、この訴訟の
 ほんらいの意味があるからである。(入門参照)したがって、個別の法
 において、前置の規定があっても、無効確認訴訟には適用がない。

 
 C 平成20年度過去問 

 1について

  行政事件訴訟法第3条第5項によれば、この訴訟は、不作為一般に関する
 訴訟ではなく、「法令に基づく申請」が行われたにもかかわらず行政庁が
 応答しない場合に認められる訴訟である。例えば、許認可の申請や年金の
 給付の申請をしたが、行政庁の応答がない場合、その違法の確認を求める
 ための訴訟がこの不作為の違法確認訴訟である(読本)。したがって、
 処分の相手方以外の者は提起できない。正しくない。

 2について

  法3条6項2号の「申請型不作為」に対する義務付け訴訟にあっては、
 不作為違法確認訴訟も一緒に起こさなければならない(法37条の3第3項
 第1号)。しかし、不作為の違法確認確認訴訟は、単独で提起できる。
 (24号オリジナル問題1肢3・36回過去問A肢3参照)正しくない。
 不作為の違法確認訴訟だけでは効果が薄いので、これを補充するために
                                                     ・・・・・・
 義務付け訴訟が認められるという理屈が分かっていれば、義務付け訴訟
 提起にあって、不作為違法確認訴訟を併合して提起しなければならない
 ことが自然に導かれる。本肢は逆である。

 3について

  法3条5号に規定される不作為違法確認訴訟は、「抗告訴訟」である。
 正しくない。

 4について

  平成16年改正法により、「義務付け訴訟」(そして「差止め訴訟」)
 が「抗告訴訟」として法定されたというのは正しい。しかし、現在も
 法3条6項1号の「直接型不作為」(申請を前提としない規制権限の
 不行使)は、不作為違法確認訴訟の対象にならない。この「直接型
 不作為」に該当する事例としては、過去問36回A肢1の「違法建築」
 オリジナル24号の問題1肢1の「公害」を参照されたい。
  本肢は正しくない。
  なお、平成18年度過去問18 肢1において、本肢と同様のこと
 を問うている。

 


 5について

  法14条の出訴期間の定めは、処分などがあったことを前提にして
 いるから、不作為違法確認訴訟については、そもそも行政処分がない
 場合が問題になるから、出訴期間の定めがなくて当然である(入門)。
  後段については、処分がなされたのであるから、「裁判所が裁判を
 するに値する客観的な事情ないし実益が」(読本)ない場合に相当
 し、訴えの客観的利益を欠く。訴訟要件を欠くことになり、門前払
 いである却下がなされる。正しい。


  本問は5が正解である。
 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 18:10コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第36回 】★      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
            
-----------------------------------------------------------
 2009/6/17


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
-----------------------------------------------------------
 
【テーマ】行政事件訴訟法・抗告訴訟
 

【目 次】問題・解説 
           
      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 問題
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 A  平成19年度過去問 ・問題17

  行政事件訴訟法の訴訟類型の選択に関する次の記述のうち、正しい
 ものはどれか。

 1 Xの家の隣地にある建築物が建築基準法に違反した危険なもので
   あるにもかかわらず、建築基準法上の規制権限の発動がなされない
  場合、Xは、当該規制権限の不行使につき、不作為違法確認訴訟
   を提起することができる。

 2 Xらの近隣に地方公共団体がごみ焼却場の建設工事を行っている
   場合、建設工事は処分であるから、Xらは、その取消訴訟と併合し
  て、 差止め訴訟を提起し、当該地方公共団体に対して建設工事の
   中止を求めることができる。

  3 Xが市立保育園に長女Aの入園を申込んだところ拒否された場合
  において、Xが入園承諾の義務付訴訟を提起する場合には、同時に
    拒否処分の取消訴訟または無効確認訴訟も併合して提起しなければ
    ならない。

  4 Xが行った営業許可申請に対してなされた不許可処分について、同
    処分に対する取消訴訟の出訴期間が過ぎた後においてなお救済を求
    めようとする場合には、Xは、公法上の当事者訴訟として、当該
  処分の無効の確認訴訟を提起することができる。

 5 X所有の土地について違法な農地買収処分がなされ、それによって
    損害が生じた場合、Xが国家賠償請求訴訟を提起して勝訴するため
    には、あらかじめ、当該買収処分の取消訴訟または無効確認訴訟を
    提起して請求認容判決を得なければならない。 

 B 平成13年度過去問・問題11

  行政事件訴訟法が定める「抗告訴訟」ではないものは、次のうちどれか。

 
 1 処分の取消しの訴

 2 無効等確認の訴

 3 不作為の違法確認の訴え

 4 当事者訴訟

 5 裁決の取消しの訴え


 C 関連問題(例により、過去問の出典を明らかにしない)
   ○×で解答してください。
 
 ● 行政事件訴訟法によれば、「行政事件訴訟」とは、抗告訴訟
   当事者訴訟、民衆訴訟、および越権訴訟をいう。ー(1)

 ● 行政事件訴訟法によれば、行政庁の不作為を争うことはできない。
   ー(2)

 ● 行政事件法によれば、取消訴訟は、処分または裁決があったことを
 知った日から6か月以内に提起しなければならない。ー(3)

  以下は、行政事件訴訟法における処分無効確認に関する記述である。

 ● 処分が無効であることは、無効確認訴訟によってのみ主張でき、
  民事訴訟などにおいて、これを主張することはできない。ー(4)

 ● 無効な処分の違法性は重大かつ明白であるから、無効確認訴訟が提起
 されると、原則として、処分の執行は停止される。ー(5)

 ● 無効確認訴訟については、出訴期間の制限の規定はないが、取消訴訟
  の出訴期間の規定が準用される。ー(6)

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 △ 参考書籍 行政法入門 藤田宙靖著 行政読本 芝池義一著
    ともに有斐閣発行


 △ 過去問の検討

 A・平成19年度過去問
 
 a 全体のポイント

 1 本問では、行政事件訴訟法が定める訴訟類型(訴訟を起こすこと
  ができる訴えについて、一定の「型」)がポイントになっている。
 
 2 ここで採用されている訴訟類型は、抗告訴訟(3条1項・行政庁の
   公権力の行使に関する不服の訴訟)である。

 3 抗告訴訟には、取消訴訟(3条2項・3項・「処分の取消しの訴え」
   と「裁決の取消しの訴え」がある)・無効等確認の訴え(3条4号)
   ・不作為の違法確認の訴え(3条5号)・義務付けの訴え(3条
   6号)・差止めの訴え(3条7号」がる。

 4 全体を通じて、処分の取消しの訴えが問題とされている。肢1では、
   不作為の違法確認の訴えが問題にされている。同じく2では、差止め
   の訴え・3では、義務付けの訴え・4では、無効確認の訴えが
   それぞれ問題にされている。5では、民事訴訟が問題になっている
 (7条参照)。

 b 各肢の検討

 1について。

  3条5項による不作為の違法確認の訴えとは、建築確認の申請をした
 のにいつまでも返事がない、あるいはなんらかの営業許可の申請をした
 のだけれど、いつまでたっても行政庁からの返事がない、というような
 場合に、裁判所に、なんらの返事もしないのは違法である、といことを
 確認してもらうのがこの訴え、ということになる(入門)。
 本肢のように、近隣の者が、規制権限の不行使(たとえば、取り壊しを
 命ずる処分の不行使)を理由にして当該訴えを提起することはできない。

 正しくない。

 2について。

  たとえば、建築基準法違反であるとして、行政庁から取り壊しの行政
 指導を受けている場合、取壊しの命令が出されるのが目にみえている
 とすれば、当該建物の建築が違法でないと考える私人である相手方は、
 前もって、取壊し命令の差止めることができるというのが、3条7号の
「差止めの訴え」 である。したがって、本肢とは内容を異にする。
 また、処分が行われる前に差止めをしようとするのであるから、
 取消訴訟の併合は想定できない。
  取消訴訟 の併合が問題になるのは、肢3の「義務付け訴訟」である。
 もうひとつ、建設工事は「処分」ではなく、事実行為である。
 
 明らかに正しくない。

 3について。

  不作為の違法確認では、違法だということの「確認」を求めるだけで
 あるから、有効であるとはいえないため、裁判所が行政庁に何らかの
 行為をすべきことを命ずる判決することが要請される。これが3条6号
 の義務付け訴訟である。
 この義務付け訴訟の場合(3条6項2号=申請型不作為≪入門≫)には、
 不作為の違法確認訴訟も併合して行わなければならない
(37条の3第3項1号)。
  つまり、建築確認申請に対し、行政庁の不作為のあった場合、これに
 応答するよう求める訴えがこれに該当する。
  これに対し、本肢のように、申請に対して、すでに拒否処分がなされた
 場合(入園の拒否)において、義務付け(入園の承諾)訴訟を提起する
 場合には、同時に拒否処分の取消訴訟または無効確認訴訟も併合して
 提起しな ければならない(37条の3第3項2号)。注(1)(2)

 したがって、本肢が正しい。


 注
(1) 義務付け訴訟は、不作為違法確認訴訟・取消訴訟・無効確認訴訟の
    補充的な制度である(入門)。だから、当該訴訟には、以上いづれかの
    抗告訴訟を併合する必要があるといえる。
 (2)義務付け訴訟にはもうひとつある。これが、3条6項1号に該当する
    「直接型不作為」(入門)である。これは、隣地の建物が違法建築で
    ある場合に、行政庁に対し、改善命令を訴求するものであるから、肢1
    に相当する事案である。つまり、肢1のような申請型不作為でないもの
    には、不作為違法確認訴訟の提起はできないが、義務付け訴訟はできる
    のである。

 4について。

  前段は正しい。無効確認訴訟であるから、取消訴訟の出訴期間が過ぎて
 いても当該訴えは、提起できる。しかし、当該無効確認訴訟は、前述した
 とおり、「抗告訴訟」であるから、これを「当事者訴訟」としているのは、
 正しくない。

 
 5について。

 
 国家賠償請求は民事訴訟として行われるが、「行政行為の違法を理由
 として国家賠償請求を行う場合には、あらかじめこの行政行為の取消し
 がなされていなければならないということはない」というのは、判例
 (最判昭36・4・21・・・)学説上、確立している(入門)。
  過去において、「公定力が働く範囲を拡大させないために・・・」
 として、検討した問題である(第1・20号 第2・31回)。再説
 しない。なお、同旨の肢として、次のもの(平成11年度 過去問34
 肢5)がある。

  違法な行政行為により損害を受けた者は、当該行政行為の取消し又
 は無効確認の判決を得なければ、当該行為の違法性を理由に国家賠償
 を請求することはできない。

  したがって、平成11年度の肢5・19年度の肢5(本肢)ともに
 正しくない。かりに将来の本試験で出題されたら、かりそめにも、
 ○とされることのないように。

 本問の正解は、3である。


 B・ 平成13年度過去問

  前記Aaの全体のポイントで明らかにしたように、抗告訴訟は、
 1・2・3・5である。当事者訴訟は、法4条に定めがあり、3条
 の抗告訴訟ではない。

 4が正解である。


 C・関連問題

 (1)について
 
  法2条によれば、「越権訴訟」というものはなく、「機関訴訟」
 である。機関を勝手に越権というのは、「越権行為」だ。 ×

 (2)について

  法3条5項には、「不作為の違法確認の訴え」の定めがある。×

 (3)について

  14条1項のとおり。なお、正当な理由があるときは、期間経過後も
 提起できることに注意。2項の除斥期間の定めにも注意。 ○

(4)について

  これについても、過去において検討した(第2 31回 B 
 解説(エ))。土地収用裁決が無効である場合、無効な行政行為には、
 公定力がないので、無効確認訴訟(抗告訴訟)で争うよりも、民事訴訟
 で当該土地の返還を訴求し、その先決問題として、行政処分の無効を
 争う方が合理的である。法36条も民事訴訟に優先権を与えている。
  この条文の解釈は難しいが、以下のように解すべきである。

  さきの土地の収用裁決が無効であるという場合、処分それ自体の無効
 確認訴訟を起こすのはよけいなまわり道だから、もっぱら直接、土地
 の返還を求める民事訴訟で争うことしかできないことを定めている。
 (入門)
  また法45条で、争点訴訟という民事訴訟が採用されている。

  以上は、訴訟法全体に対する把握がされてないと、理解困難であるが、
 本試験の射程範囲に属するので、じっくり取り組んでみてください。
 
 民事訴訟で争うことができるので、×。

 (5)について

  25条1項は、38条3項において、無効確認訴訟にも準用されて
 いるので、原則として(例外は2項以下)処分の執行は停止されない。
 ○

 (6)について

  無効確認訴訟の特質は、取消訴訟の出訴期間経過後も提起できること
 にあるので、14条の出訴期間の規定は、無効確認訴訟に準用されて
 いない(38条)。×


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 13:10コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第33回 】★      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
            
-----------------------------------------------------------
 2009/6/3


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
-----------------------------------------------------------
 
【テーマ】行政行為の瑕疵
 

【目 次】問題・解説 
           
      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 問題
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 平成10年度過去問

 問題33
           かし
 行政行為の瑕疵に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 1 行政庁が瑕疵ある行政行為を行った場合には、原則として民法の
   意思表示の瑕疵に関する規定が適用される。

 2 内容が不明確な行政行為は、無効な行政行為ではなく、取り消し
   得べき行政行為である。

 3 瑕疵ある行政行為について取消訴訟が提起され、現に係争中
  である場合でも、処分庁は、職権により当該行政行為を取り消す
  ことができる。

 4 行政庁が錯誤によって行政行為を行った場合は、当該行政行為の
  内容が客観的に法律に適合していても、無効である。

 5 瑕疵の治癒とは、行政行為に軽微な瑕疵がある場合に、行政行為
 の相手方の了承を得て、処分庁が当該行政行為を補正することに
  よって、その効力を維持することをいう。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ▽ 参照書籍 行政法読本 芝池義一著 行政法入門 藤田宙靖著
 ともに有斐閣発行
    なお、本問の解説に際しては、主に入門によった。
 

 1 要点

(1) 瑕疵ある行政行為

  「違法」または「不当」な行政行為のことを、まとめて「瑕疵
 ある行政行為}という。

(2)その種類
     
      ちゆ
  a 瑕疵が治癒される行政行為

  b 取り消しうべき行政行為

  c 無効の行政行為


 (3)その区別の標準

 「 瑕疵が治癒される行政行為」とは、違法性・不当性が実質上
 それほど大きくない、と思われる場合に、関係者の利益そのほか
 いろいろな事情を考え合わせて、例外的に、行政行為をそのまま
 有効であるとするケースのことである。

  瑕疵ある行政行為は、原則としては「取り消しうべき行政行為」
 となり、公定力を有する(本来の手続で取り消されるまでは有効
 である)。

 「無効の行政行為」とは、瑕疵があまりにひどくて、本来の手続で
 取り消されるまでは有効であるとしてこれに従わなければならない
 とするのがあまりにも不合理だと思われるようなケースすなわち、
 本来の「取消し」を待つまでもなく初めからおよそ有効な行為とは
 認められない行為である。


 例外    a 有効(瑕疵の治癒)
  ↑
 原則    b 取り消しうべき     
   ↓
  例外    c  無効

 
 ○ 私の実務に則していえば、不動産登記手続において、手続上ミス
 (瑕疵)があっても、結果としての登記が実体に合致していた場合
 には、その瑕疵は治癒されたことになる。個人的には、安堵の胸を
 なでおろす瞬間である。

     【 閑話休題】

 
 (4)「取り消しうべき行政行為」と「無効の行政行為」との判別基準

  以前においても記述した、「瑕疵の重大明白性」がこれに該当する。
 再説すると、判例、学説によって樹立した以下の公式である。
 
 「瑕疵のある行政行為は、原則として取り消しうべき行政行為にとど
 まるが、その瑕疵が重大明白である場合には、行政行為は無効となる」
 (最判S31・7・18 最判S36・3・7・・・)

 
 2 各肢の検討

 1について。

  民法の意思表示に関する規定は、対等な私人間の法律行為を規律する
 ものである。これに対し、行政行為は、私人に対する公権力の行使で
 あって、民法とは別の規律が働く。したがって、瑕疵ある行政行為に
 ついても、1の要点で明らかにした民法とは別の基準が理論的に考案
 されたのである。1は誤りである。

 2について。

   内容が不明確な行政行為は、公権力の行使の対象が明確でないのだから、
 1の要点(3)に従えば、瑕疵があまりにひどい無効の行為に該当する。
  換言すると、行政行為の相手方に対し、「本来の手続で取り消される
  までは有効としてこれに従わ」せる合理的根拠を欠くことになる。
  引いては、1の要点(4)の「瑕疵の重大明白性」の要件に該当する
  であろう。2は誤りである。

 3について。

  職権取消とは、前回(32回)述べたように、行政庁(処分庁)が
 違法性を認めた場合に行われるものである。これは、取消訴訟が提起
 されていてもなされ得る。実質的に考えても、行政庁が取り消してく
 れれば、裁判所も手間が省けて、助かることになる。3は正しくて、
 これが正解である。

 4について。

  当該行政行為の内容が客観的に法律に適合するという結果を生じた
 場合には、要点1の(3)の基準に従えば、瑕疵が治癒された場合に
 相当し、有効になる。
  【閑話】○によれば、当職の登記申請手続にミスがあったため,
 登記官に錯誤を招来させたたものの、結果として、当職が安堵の
 胸をなでおろす事例に相当する。したがって、無効ではないので、
 4は誤りである。

 5について。

  1要点(3)の瑕疵の治癒の説明によれば、5の記述は明らかに誤り
 である。「相手方の了承」とか「処分庁の補正」とかの余計な行為を
 要しない。自然治癒により有効になるのである。人間の傷に例えれば、
 ほっておいても自然に治癒する現象をいうのである(入門)。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 


examination_support at 11:01コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 30回 】★      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
            
-----------------------------------------------------------

 2009/5/12
             
             PRODUCED by  藤本 昌一

-----------------------------------------------------------
 
【テーマ】聴聞と弁明の機会の付与
 

【目 次】問題・解説 
           
      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 問題
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 ▲ 平成14年度過去問・問題14

 
 次のうち、行政手続法上、聴聞を経る処分の手続には認めらても、
 弁明の機会の付与を経る処分の手続には認められていない手続的
 保障は、いくつあるか。

 ア 予定される不利益処分の内容等の通知

 イ 処分基準の設置

 ウ 不利益処分の理由の提示

 エ 参加人の関与

 オ  文書閲覧権

 
 1 一つ

 2 二つ

 3 三つ

 4 四つ

 5 五つ


▲ 平成18年度過去問・問題11

 
 行政手続法における聴聞と弁明に関する次の記述のうち、妥当な
 ものはどれか。

 1 弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、書面の
  提出によってするのが原則であるが、聴聞は、口頭かつ公開の
   審理によるのが原則である。

 2 聴聞においては、処分の相手方以外の利害関係人にも意見を
   述べることが認められることがあるが、弁明の機会は、処分
  の相手方のみに与えられる。

 3 聴聞は、不利益処分をなす場合にのみ実施されるが、弁明の
   機会は、申請者の重大な利益に関わる許認可等を拒否する処分
   をなす場合にも与えられる。

 4 聴聞を経てなされた不利益処分についいては、行政不服審査法
   による異議申立てや審査請求をすることはできないが、弁明の
   機会を賦与したに過ぎない不利益処分については、こうした制限
   はない。

 5 聴聞の相手方については、聴聞の通知があったときから処分が
   なされるまでの間、関係書類の閲覧を求める権利が認められるが、
   弁明の機会を賦与される者には、こうした権利は認められない。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ▲ 参照書籍は、第2コース第2回に掲げた。

 
 ▲ 平14年度過去問

 A ポイント
                               

 不利益処分             1   2    3  4   5   

 (1)「特定不利益処分」 聴聞・処分基準・理由・参加人・文書
         
   
                     
 
 (2)「その他の不利益   弁明 ・処分基準・理由・ なし ・なし 
     処分」


 a 行政処分は、「申請に対する処分」(第2章・2条2号、3号)と
 「不利益処分」(第3章・2条4号)に分かれる。

 b 意見陳述手続については、「申請に対する処分」につき、10条
   の公聴会の規定があるだけで、申請者の意見陳述手続はない。

 c 「不利益処分」における意見陳述手続については、(1)1の聴聞
  を経る場合と(2)1の弁明の機会の付与を経る場合に分かれる。
   このうち、丁寧な手続である聴聞は、許認可を撤回したり 資格
   または地位を剥奪するといった相手方に重大な不利益を与える
   不利益処分について行われる。これが(1)の「特定不利益処分」
   であり、13条1項1号に列挙されている。
     これに該当しない(2)の「その他の不利益処分」においては、
   略式手続である弁明の機会の付与の手続が採用される。
  (13条1項2号・29条以下)

 B 以上の点を前提とし、なお引き続き、Aのポイントを参考にして、
   本問の解説を行う。

  本問にいう「行政手続法上、聴聞を経る処分」が、A図の(1)
  の「特定不利益処分」に該当し、「弁明の機会の付与を経る処分」が
(2)の「その他の不利益処分」に該当することになる。したがって、
 ここでは、(1)の「特定不利益処分」には認められても、(2)の
「その他の不利益 処分」には認められていない手続的保障についての
 質問であることが 分かる。以下、順次検討する。

 アについて。

 (1)(2)1について。

 予定される不利益処分の内容等の通知については、聴聞(15条1項
 1号) にも弁明(30条1号)にも認められている。

 イについて。

 (1)(2)2について。

 処分基準の設定は、通則として12条に規定があり、不利益処分
 全体に認められているから、(1)の「特定不利益処分」にも
(2)の「その他の不利益処分」にも認められている。

 ウについて。

 (1)(2)3について。

 不利益処分の理由の提示は、通則として、14条に規定があり、イと
 同様に(1)にも(2)にも認められている。

 エについて。

(1)(2)4について。

 参加人の関与は、聴聞に規定があり(17条)、弁明には規定がなく、
 聴聞の準用もない(31条)ので、(1)には認められ、(2)には
 認められない。設問に該当する。

 オについて。

 (1)(2)5について。

 文書閲覧権は、聴聞に規定があり(18条)、弁明には規定なく、準用
 がないので、エと同様、設問に該当する。

 したがって、設問に該当するのは、エトオの二つであり、2が正解。

 
 総括

  法律は、無味乾燥な条文の羅列ではない。法律は、条文を通じて、
 思想を語り、根拠を語り、政策を表明し、合理性を追求するものである。
 条文操作 を通じて、これらの真理ないし心髄の一端に触れることを喜び
 としなければならない。受験を通じてでも、このような体験は可能である。
  なお、ここで示したAのポイント図は、一例に過ぎない。みなさんも、
 それぞれ、工夫をして、自分なりの条文理解に役立つ整理法を考えて
 みるのも一考だ。

 

 ▲ 平成18年度過去問

 1について。

 29条1項により、弁明については、正しい。聴聞については、原則として、
 非公開であり(20条6項)、妥当でない。原則非公開については、学者
 から批判のあることが、頭の隅にあれば、正解に達しやすい。

 2について。

 17条の規定する参加人関与は、聴聞にしか認められない。したがって、
  29条の弁明は、処分の相手方にしか認められない。妥当である。
  聴聞=参加人と覚えておけば、この問題を解けるし、平成14年度を正解
  に導くのに役立つ。その根拠についても、みなさんなりに考えておけば、
  当該知識は、より強固になる。

 3について。

 これについては、さきの平成14年度の復習に尽きる。
 
 10条・「申請に対する処分」につき、申請者に意見陳述手続はない。
 したがって、許認可等を拒否する処分=「申請に対する処分」につき
 弁明の機会が与えられることはない。

 弁明の機会=不利益処分のうち「特定不利益処分」を除いた他の処分
 (29条以下) である。

 妥当でない。

 なお、「聴聞は、不利益処分をなす場合にのみ実施される」というのは、
 限定つきであるが、妥当げある。すなわち、聴聞=不利益処分のうち、
 「特定不利益処分」である。

 4について。

 聴聞を経てなされた不利益処分については、行政不服審査法に基づく
 不服申立てはできないが、弁明の機会付与の不利益処分にはこうした
 制限がないという大枠の文言は正しい(27条2項・29条以下にはこう
 した規定もなく、準用もされていない)。しかし、27条2項をよく
 見ると、「異議申立て」ができないだけだから、「審査請求」はできる
 ことになり、結局妥当でないことになる。「異議申立て」は処分庁に
 対する不服申立てであるから(不服審査法3条2項)、聴聞という丁寧
 な手続を経た処分が覆る可能性がほとんどないことが立法趣旨であろう。
 しかし、大枠は正で、細かくみると誤というのはドウカナというのが
 率直な感想!!

 5について。

 これについても、大枠は正しい。文書閲覧権が聴聞の相手方に認めら
 られて、弁明の相手方に認められないのは、再説するまでもなく、正
 しい。しかし、細かく条文を見ると、18条では、「処分がなされる
 までの間」ではなく、「聴聞が終結する時までの間」となっていて、
 誤りである。これも、問題としては、ドウカナの類。


 2が妥当で正解。


 総括

 4・5が紛らわしく、2に確信が持てるかどうかが勝負!!

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 15:03コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 26回 】★      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
            
-------------------------------------------------------------
 2009/4/28


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
-------------------------------------------------------------
 
【テーマ】行政法・行政指導
 

【目 次】問題・解説 
           

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 問題・解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ▲ 参照書籍 行政読本 芝池義一著・行政法入門 藤田宙靖著とも
   に 有斐閣発行 

 ▲ 本コーナーでは、標題に掲げたテーマに絞り、過去問の肢を参照
    しながら、解説を進める。なお、各肢が過去問のいずれかに該当
    するかの指摘は省くことにする。


  スタート! 解答は、○×で表示する。

 【行政指導】


 《問題》

 ◎ 行政指導に携わる者は、当該行政機関の任務または所掌事務の範囲
   を逸脱してはならない。ー(1)   

 ◎ 行政手続法および行政手続条例では、法律または条例の規定に基づ
   かない行政指導は許されないものと定められている。−(2)

 ◎ 行政機関が行政手続法による規律をうける行政指導を行うことが
   できるのは、行政機関が行政処分権限を法律上有しており、処分に
   代替して事前に行政指導をする場合に限られる。これに対し、組織
   上の権限のみに基づいて行われる事実上の行政指導については、
   行政手続上の規定は適用されない。ー(3) 

 《解説》

 (1)について。

 最高裁判所は、行政手続法の行政指導の定義に依拠しながら、「一般
 に、行政機関は、その任務ないし所掌事務の範囲内において、一定の
 行政目的を実現するため、特定の者に一定の作為又は不作為を求める
 指導、勧告、助言等をすることができ」る、と判示している(読本)。
 ことから、正しい。    ○
 
 注
 1 上にいう判決とは、1955(平成7)年2月22日のロッキード事件
  丸紅ルート大法廷判決のことである。
 2 定義は、法2条6号 行政指導の一般原則の規定は法32条1項 。
 3 行政機関の任務と所掌事務は、各省の設置法などで規定されている。
 環境省設置法は、「環境省は、地球環境保全・・・・・その他の環境
  の保全を図ることを任務とする。」というように環境省の「任務」を
 一般的に定め、その具体的内容を「所掌事務」として25項目にわたり
  列挙している。ちなみに、最多の所掌事務を誇るのは128項目の国土
  交通省。次いで110項目の厚生労働省。(読本)

 (2)について。

(1)で述べたとおり、「行政機関の任務または所掌事務の範囲」
 において、行政指導が行われるのであり、行政指導については、
 法律ないし条例の授権を要しない。したがって、行手法には、その
 ような規定はない(32条1項参照)。また、行政手続条例において、
 行政指導について、条例の授権を要すると定めることは許されない。
 ×
 
 注
 地方公共団体の行う行政指導には、行手法の規定が適用されないので、
 行政手続条例が定められ、その規定に従うことになる。(法3条3項.
 46条)しかし、その規定において、行政指導に条例の授権を要すると
 定めることは許されない。(このあたりは、前回の復習ですね)

 (3)について。

 (1)(2)で述べたところで明らかなように、、行政指導が許される
 のは、行政処分に代替して、事前に行われる場合に限られない。
 組織上の権限に基づいて行われるのが、さきに述べた各省設置法に
 基づく「任務ないし所掌事務」であって、その範囲で事実上行われる
 のが、行手法の規律の対象となる行政指導である。したがって、本肢
 は、前段も後段も誤りである。×

 こうして、過去問の肢を抽出して、並べてみると、同じ論点を何度も
 角度を変えて問うていることが分かる。
                

《問題》

 ◎ 行政指導は、行政機関が、相手方に一定の作為又は不作為を行わせ
   ようとする行為であるということができるが、法律上の拘束力を有す
  る手段によって求める内容を実現しようとするものではなく、
  あくまでも相手方の任意の協力を前提としている。ー( 4 )

 ◎ 行政指導は相手方私人の任意的協力を求めるもので、法令や行政
  処分のように法的拘束力を有するものではなく、宅地開発指導要綱
  のように書面で正式に公示される形式をとった場合や、指導に従わ
  なかった場合には相手方の氏名が公表されることが条例によって
  定められている場合 においても、法的拘束力がないということに
  変わりはない。ー( 5 )
     
 《解説》

 行政指導は、行政「処分」と異なって(法2条6号の定義)事実上の行為
 であり、「相手方の任意の協力によってのみ実現されるものである」
 ( 法32条)ことから、法的拘束力を持たない。(4)(5)ともその
 ことの記述であり、ともに正しい。この二つの肢を熟読しておくとよい。
 したがって、○ ○であり◎。

 
 《問題》

 ◎  行政指導に携わる者は、相手方が行政指導に従わなかったことを理由
   に、不利益な取扱いをしてはならない。ー( 6  )


 ◎ 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを
   理由として、不利益な取扱いをしてはならない。この場合において、
   不利益な取扱いには、行政指導により求める作為又は不作為を行うこと
   を奨励する制度を設けてこれに従った者に対して一定の助成を行うなど
   の措置をとるときに、従わなかった者がその助成を受けられないような
   ものも含まれる。ー( 7  )


 《解説》

 行政指導の一般原則として、行政指導における不利益取扱いの禁止が
 行手法に規定されている(32条2項)。
 したがって、(6)は、条文のとおりで正しい。

 問題は、(7)の後段部分である。これは、農業従事者に対する減反の
 行政指導が念頭にあるものと思われる。行政指導に従った者は補助金
 をもらうことができるが、その指導に従わなかった者は、補助金を
 もらえないことが、後者に対する「不利益取扱い」になるのではないか
 という問題である。これについては、行政実務上では、「行政手続法が
 禁止しているのは、『行政指導に従わない者に対する不利益措置』であり
 『行政指導に従った者に対する優遇措置』は別である」という説明が
 なされているようである。(読本)ナルホドと思う反面、ソウカナア
 という疑問が相半ばします。しかし、本肢では、不利益取扱いに含ま
 れないとすべきであるから、誤り。


 したがって、(6)は○で、(7)は×

 注 さきの(5)で、「指導に従わなかった場合に相手方の氏名が公表
 される」ことは、ここでいう不利益取扱いに該当するのではないかという
 疑問がある。皆さんはどう考えられますか。答えはこうです。該当する。
 しかし、ここでは、条例の規定になっているので、行手法の32条2項の
 規定が直接適用されることはない。

 
 《問題》

 ◎  申請の取下げ指導にあっては、申請者が当該行政指導に従う意思が
   ない旨を表明したときは、行政指導を継続する等して申請者の権利を
  妨げてはならない。ー( 8)

 ◎ 申請の取下げ又は変更を求める行政指導にあっては、行政指導に
  携わる者は、申請者が当該行政指導に従う意思がない旨を表明した
   にもかかわらず当該行政指導を継続すること等により当該申請者の
   権利の行使を妨げるようなことをしてはならないが、当該行政指導
   には、申請書の記載事項の不備、必要な添付資料の不足等の申請の
   形式上の要件に適合していないことからその補正を求めるものは
   含まれない。ー( 9 )

 《解説》

 以上の問題は、行手法33条の規定に関するものである。建築確認
 の申請でよく問題になるが、適法な申請であっても、当該マンヨン
 の建築に際し、近隣の苦情のため、適法な申請であっても、その
 建築確認を受理せず、留保したままで、行政指導を続けるということ
 がある。この場合において、「『申請者が当該行政指導に従う意思が
 ない旨を表明した』場合には、行政指導を続けることによって
『申請者の 権利の行使を妨げて』はならない、つまり申請者が自己
 の欲する申請をすることを妨げてはならない」ということになる。
(読本)つまり、建築確認を受理しなければならないことになる。
 実務上、当職が業者・付近住民いずれから相談をもちかけれれても、
 悩ましい問題である。
 なお、このような事案に対して、最高裁判所は、建築確認の留保が
 違法になるための要件の一つとして、「行政指導に対する建築主
 の不協力が社会社会通念上正義の観念に反するものといえるような
 特別の事情が存在しない」ことを挙げている(最判昭和60年7月
 16日)つまり、近隣住民が当該マンションの建築により受忍の
 限度を超える苦痛を蒙る場合には、適法な建築確認を留保して、
 住民の立場に立って、行政指導を継続することが適法になる
 のであろう。このような行政指導(ほかにも地方公共団体が環境
 保全のなどのために事業者に対する行政指導がある)は、地方公共
 団体によって行われるために、「地方公共団体の行政手続条例では、
 行政指導を尊重すべきことを定めたり、行政指導を広げる規定が
 おかれることがある。」(読本)
 ここに記述したことは、今日的な重要な問題であるから、今後
 本試験に出題される可能性は大であるため、この際に確りと把握
 しておく必要がある。

 注 法3条3項において、地方公共団体の機関がする行政指導
 について, 行手法の適用を(したがって、33条も)無限定除外
 している根本的な理由が、以上の記述によって、明確になるので
 ある。

(8)は、33条の条文どおりであり、○。

 (9)は、申請者に申靖の意思がある場合には、形式的な不備に
 対する補正には応じるべきであり、この場合には、申請者の意思
 に反して、補正の行政指導を継続しても申請者の権利の行使を
 妨げたことにはならない。したがって、「含まれない」とする
 のは正しい。   ○
 しかし、これは、常識的判断に属するものであり、冒頭の論点
 と比較すると、重要度は低いように思われる。


 《問題》

 
 ◎ 行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨
   および内容ならびに責任者を明確に示さなければならない。ー(10)
      
 ◎ 行政指導に携わる者は、当該行政指導につき不服申立てをすること
   ができる旨ならびに不服申立てをすることができる旨ならびに不服
  申立てをすべき行政庁および不服申立期間を教示しなければならない。
  ー(11)
   
 ◎  行政指導の相手方以外の利害関係人に対しては、請求があっても
   書面で行政指導する必要はない。ー(12)
   

 ◎ 不利益処分に先立つ行政指導をする場合においては、行政機関は
   相手方に対し、書面で行政指導をしなければならない。ー(13)

   
 ◎ 災害の発生に伴って緊急に避難するよう行政指導により口頭で勧告
   した場合において、その相手方から当該行政指導の趣旨及び内容並び
   に責任者を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に
   携わる者は、これを交付しなくてもよい。ー(14)
       
 ◎ すでに書面で相手方に通知されている事項と同一内容の行政指導を
  する場合においては、行政機関は書面を求められても、これを交付
    する必要はない。ー(15)    
 
 ◎ 行政指導は、その内容および責任者を明確にするため書面で行うこと
   を原則とすべきであり、書面によることができない相当な理由がある
   場合を除いて、口頭による行政指導をすることをすることができない
   という行政手続法の定めがある。これに対し、一部の行政手続条例では、
   行政手続法の規定とは異なり、口頭の行政指導を許容する規定を置いて
   いる場合がある。ー(16)    76−オ

 

 《解説》

 ここでは、行手法35条に規定されている形式的規制がとりあげる。

 1項で定められているのは、「明確性の原則」と呼ばれる。

 (10)は、条文のとおりであって、○ ほかにも年度を跨いで
 同じ肢があり。

 (11)については、行政指導は、行政処分と異なって、事実上
 の行為であるから、不服申立て制度はない。また、行手続法は、
 事前手続に関する法であるから、行政上の不服申立て手続を
 含まない。 いずれにせよ、行手続法にこのような規定はない。
 ×

  (12)について。35条2項によれば、相手方から請求があれば、
 書面の交付を要することになっているが、相手方以外の利害関係人
 に対する書面の交付は要しない。 ○

 (13)について。前述のとおり、相手方からの請求があれば、
 書面の交付を要するが、不利益処分に先立つ行政指導に限って
 相手方に対し、書面で行政指導しなければならないという規定
 は、行手続法にはない。×

 (14)について。この場合には、35条3項1号の「その場
 において完了する行為」に該当し、書面の交付は要しない。
 ○
 
 (15)については、35条3項2号の規定どおりであり、
 そのとおり。○

  (16)については、35条2項において、口頭での行政指導
 を原則にしており、相手方からの交付を求められたときは、
 書面の交付をすべきこととされているので、本肢は×。


 《問題》


 同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し
 複数の者に対し行政指導しようとするときは、行政機関は、あらかじめ、
 事案に応じ、これらの 行政指導に共通してその内容となるべき事項
(行政指導方針)を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、
 これを公表しなければならない。

 
 《解説》

 36条は、複数の者を対象とする行政指導に関し、合理的な方式と
 として採用されたものである。この問題は条文どおりであって、○
 なお、同じ内容のものが年度を挟んで3度も出題されていることに
 注意。

 

 《問題》

 規制的な行政指導によって、私人が事実上の損害を受けた場合には国家
 賠償請求訴訟によってその損害を求償することができる。これに対し、
 受益的な行政指導の場合においては、強制の要素が法律上のみならず
 事実上ももないのであるから、行政指導に基づき損害が発生した場合
 には、民法上の不法行為責任を問うことはできても、国家賠償責任を
 問うことはできない。 76ーイ

 《解説》

 国家賠償法1条の「公権力の行使」には、非権力的公行政も含むという
 というのが最高裁判所の立場である(昭和62年2月6日判決)。また、
 「公権力の行使」として、1条1項を適用する裁判例があり、民法の
 規定が適用されることもあるとのことである。(読本)したがって、
 受益的な行政指導の場合において、国家賠償責任を問うことができない
 のは誤り。 ×

 注 行政指導の分類に従えば、受益的行政指導とは、「市町村が児童・
 妊産婦の福祉に関して行う指導等」。規制的行政指導とは、「違法建築
 がある場合の指導等]がこれに該当する。
 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:万一当サイトの内容を使用したことによって損害が生じた
       場合についても当事務所では一切責任を負いかねます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 18:53コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 25回 】★      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
            
-------------------------------------------------------------
 2009/4/21


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
-------------------------------------------------------------
 
【テーマ】行政法・行政手続法の適用範囲その2と行政手続条例
 

【目 次】問題・解説 
           
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━     
■ 問題・解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 ▲ 参考書籍は、前回(24回)に掲げてある。
 
 ▲ 本コーナーでは、標題に掲げたテーマに絞り、過去問の肢を参照
 しながら、解説を進める。なお、各肢が過去問のいずれに該当するか
 の指摘は省くことにする。


 スタート! 解答は、○×で表示する。

 
 【行政手続法の適用範囲】
 

 《 問題》

 ● 地方公共団体の職員がする行政指導であっても、法律に基づく
  ものについては、行政手続法の行政指導に関する規定が適用される。 
  ー(1) 

 ● 地方公共団体の機関がする行政指導については、その根拠となる
  規定が条例または規則に置かれているかどうかにかかわらず、
 行政手続法 が適用される。−(2)

 ● 行政手続法は、地方公共団体の行政指導には適用されない。−(3)  
 
        

 《解答・解説》

 行政指導とは

   行政処分が一方的に相手方である国民に権利義務に変動を与える行為
  であるのに対して、行政指導は、相手方である国民に対して任意的な
  協力を求める行為である。その定義は、行政手続法2条6号に規定
  がある(読本)。

 ポイント

   地方公共団体の行政については、行政手続法の適用が除外される
(3条3号)。注目すべきは、地方公共団体の行政指導は、行政処分
 などと異なって(後述)、全面的に適用除外になっているということ
 である。つまり、行政指導のような相手方に任意の協力を求める行為
 については、地方自治尊重から、法律で規制しないことにしたので
 あろう。
   具体的に言えば、行政手続法第4章の行政指導の規定の非適用という
 ことである。
 

 したがって、

 (1)は、行政処分などには、妥当しても、行政指導には該当せず。×
   
(2)もまた、全面適用除外であるから、×

(3)は、無限定に行政手続法適用除外である事に鑑み、○

 
 《問題》


 ● 行政処分、行政指導、届出に当たる行為であっても、第3条第1項
  に 列挙されている類型に該当するものについては、行政手続法は
 適用されない。ー(4)


 ● 行政手続法は、行政処分、行政指導等について、一般的規律を定める
 法であるが、他の法律に特別の手続規定を設けた場合は、その特別規定
  が優先する。ー(5)  

 ● 行政処分、行政指導、届出に当たる行為であって、第3条1項に列挙
  されている類型に該当しないものについては、他の法律で特別の手続
 規定を設けることができる。ー(6) 

 
  《解答・解説》

 (4)法3条1項のとおりであり、正しい。ただし、ひとつ、疑問な点
    は、3条には、届出が掲げてないことである。しかも、3条では、
  第4章までとなっていて、第5章の届出が対象になっていない。
    ということは、届出は適用除外ではないのではないかという疑問
  である。届出に関する37条の解釈については、以下のとおりである。
  「・・届出が法令所定の形式上の要件を充たしている場合には、
     行政機関の窓口に届出書を提出するなどすれば、届出をすべき手続上
     の義務が履行されたものになるという規定である。『手続上の義務
   が履行された』とは、届出がなされると、届出行為は完了しており、
     行政機関が届出を受理せずあるいは返戻する余地がないことを意味
   する」(読本)
     つまり、この届出については、類型を問わず、行政機関一般に適用
     するというこではなかろうか。そうすると、届出がここに掲げられ
     ているのは、おかしく、この肢は誤りだということになる。ただし、
   過去問では、他の肢との関連から、正しい肢とせざるを得ない。
      おそらくは、出題ミスであろう。もし、私が出題者ならば、過去の
   誤りを正すという意味で、将来の試験問題において、敢えてここを
   問いたい。 そのようなしだいで、一応 ○。

     注 届出の定義は、行政手続法2条7号にある。処分の定義は、同法
    2条2号。


 (5)(6)について。

 ポイント

 行政処分・行政指導

 イ 3条1項の適用除外類型

 他の法律で定めるのは当然であって、特別の定めではない。

 ロ 3条1項に該当しない類型

 他の法律に特別の定めがあって、行政手続法の規定に抵触する場合には
  一般法と特別法の関係に立ち、他の法律優先(法1条2項)

 届出

 当然ロに該当するため、他の法律が優先。法1条2項には、「届出に関
 する 手続」が明確に掲げてある。

 
 以上のポイントに照らせば、
 
 (5)も(6)もロに該当し、いずれも○であり、○ふたつ、◎。

 なお、(6)において、届出は、3条の適用除外類型は問題にならない
 のに行政処分・行政指導と同列に扱っている点に疑問があるが、結論は
 正しい。

 
  ≪問題≫


 ● 行政手続法は、法律に基づく地方公共団体の行政処分には原則として
   適用される。ー(7) 

 ● 地方公共団体の機関がする行政処分であって、その根拠となる規定が
   条例または規則に置かれているものでないものについては、行政手続法
   が適用されるー(8) 
 
 ● 地方公共団体の条例にその根拠となる規定が置かれている届出の処理
   については、行政手続法の届出に関する規定は適用されないー(9)

    
 ● 地方公共団体の制定する命令であっても、法律の委任によって制定
  されるものについては、行政手続法の意見公募手続に関する規定が適用
 される。 ー(10)
      

 

 《解答・解説》

 いずれも、地方公共団体の行政に関するもので、法3条3号の条文問題
 である。原理は、以下のとおり、単純明快である。


 ◎ 地方公共団体の行政に関して、行政手続法の適用が除外される範囲

 
 イ 行政処分・届出→(地方公共団体の機関が定める)条例・規則に
           基づくもの。

 ロ 行政指導→すべてのもの。

 
 ハ 命令等の制定→すべてのもの

 注 条例は、地方議会が定める。規則には、地方公共団体の長つまり
  都道府権知事や市町村長が定めるものと教育委員会などの委員会が
    定めるものがある(憲法94条、地方自治法14条1項、15条1項、
  138条の4 2項)。その規則には規程も入る(地自法138条の4 2項
    行手法2条1号)
  上記の「命令等の制定」にある「命令」とは、条例は含まず、規程
    含む規則が該当する。
    (面倒ではあるが、行政法のマスターには、このような細かい概念
    の把握を重ねることも大切である)

 以上の原理を適用すれば、(7)〜(10)は、以下のとおりとなる。

 (7)の意味するところは、行政処分の根拠となる規定が条例または規則
 に置かれておらず、法律にあるのだから、イの基準に照らし、除外の
 範囲に入らない。したがって、行手法が適用される。換言すれば、
 行手法が適用されないものは、処分の根拠となる規定が条例または規則
 におかれているものに限られているのである。 ○

(8)は、結局、(7)と同じことを述べているので、○。

(9)は、イの原理に従い、行手法の不適用。○

(10)は、かりに法律の委任によって制定されるものであっても、
 地方公共団体の制定する命令は、すべて行手法の適用がないとのハ
 の原則に従い、同法の規定する意見公募手続に関する規定は適用
 されない。 ×

 注 意見公募手続は、行手法38条以下に規定されている。


  ≪問題≫


 ● 地方公共団体の機関がする不利益処分については、それが自治事務に
  該当する場合には、行政手続法の不利益処分に関する規定は適用されない。
   ー(11)    1

 ● 地方公共団体の機関がする「申請に対する処分」については、それが
 国の 法定受託事務に該当する場合に限り、行政手続法の「申請に対する
 処分」の規定が適用されるー(12)

 

 

  《解説・解答≫

 
 ポイント

 (11)(12)について。

 不利益処分は行手法2条4号に規定があり、申請に対する処分は、第2章
 に規定 があるが、いずれも、行政処分であり、行手法の適用範囲について
 は、前記◎ イ の原理に従う。

 行手法の適用の範囲については、法律に基づくものか条例・規則に基づく
 かが、基準になる(◎ イ)のであって、自治事務か法定受託事務かという
 地方公共団体の事務の種類が基準になるのではない。

 注 「自治事務」とは、「地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託
 事務以外のものをいう。」法定受託事務とは、「本来は国の事務と位置
 づけられた事務で地方公共団体に委任ないし委託されたもの」である
(読本)。

 したがって、行政処分について、自治事務か法定受託事務を基準にして、
 行手法の適用範囲を定めている点において、(11)も(12)も×。
 あくまで基準は◎ イ である。

 

    

 【行政手続条例】

 《問題》

 ● 行政手続条例は、地方公共団体の行政処分だけを対象にする。

 ー(1) 

 ● 行政手続法および行政手続条例では、法律または条例の規定に
  基づかない行政指導は許されないものと定められている。ー(2)

     

 ● 行政手続条例が、地方公共団体における行政手続について、
 行政手続法と異なる内容の定めをすることも許されないわけではない。
 ー(3)

   

  《解説・解答≫

 行政手続条例とは

 行手法の適用のないつまり法3条3項により適用除外になる地方
 公共団体の行う「処分・行政指導・届出・規則・規程については
 地方公共団体が『行政運営における公正の確保と透明性の向上を
 図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。』こと
 になっており、(法46条)」(読本)これに基づいて、多くの
 地方公共 団体が制定しているのが、行政手続条例と呼ばれる。

 注 これら条例には、コピー条例と揶揄される、行手法を丸写し
    にしたものも多いようであるが、行政指導については、独自
    性のある規定を置く地方公共団体もあるとのことである。
   (読本)

 (1)について。

  行政処分のほか、行政指導、届出、規則、規程についてである
 ことは、前述したところから明らかである。したがって、×。

(2)について。

  行政機関は、その任務ないし所管事務の範囲内においては、
 法律による授権がなくても、行政指導ができる(法2条6号)。
 有名なロッキード事件でも、最高裁判所は、そのように判じた。
 (最大判平7・2・22・・)以上からすれば、条例に基づく
 必要もない。したがって、×。

 (3)について。

  行手法46条によれば、行手法と同一内容の行政手続条例の
 制定を求めているのではない。むしろ、法の趣旨にのっとり
 その地方公共団体の独自性を生かした方向での条例の制定が
 望まれる。○


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:万一当サイトの内容を使用したことによって損害が生じた
       場合についても当事務所では一切責任を負いかねます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 14:47コメント(0)トラックバック(0) 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 23回 】★      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
            
-------------------------------------------------------------
 2009/4/14


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
-------------------------------------------------------------
 
【テーマ】行政法・行政立法その3
 

【目 次】問題・解説 
           
      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 問題
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 平成19年度過去問

 問題42

 行政立法に関する次の文章の空欄ア〜エに当てはまる語句を、枠内
 の選択肢(1〜20)から選びなさい。

 
  行政立法は、学説上、法規命令と ア  の二つに分類される。
 ア にはさまざまな内容のものがある。例えば、地方公務員に対
 する懲戒処分について、「正当な理由なく10日以内の間勤務を
 欠いた職員は、減給又は戒告とする。」といった形の基準が定め
 られることがあるが、これもその一例である。
 このような基準は、処分を行う際の イ としての性格を有する
 ものであるが、それ自体は ウ としての性格を有するものではなく、
 仮に8日間無断欠勤した公務員に対して上掲の基準より重い内容の
 懲戒処分 が行われたとしても、当該処分が直ちに違法とされるわけ
 ではない。しかし、もし特定の事例についてこの基準より重い処分が
 行われたとき、場合によっては、エ などに違反するものとして違法
 とされる余地がある。

 1 執行命令 2 罪刑法定主義 3 条例 4 権利濫用 5 裁判規範

 6 公定力  3 自力執行力 8 平等原則 9 指導要領 

 10 行政規則 11 組織規範 12 適正手続 13 所掌事務

 14 営造物規則 15 委任命令 16 特別権力関係 17 裁量基準

 18 告示 19 施行規則 20 法令遵守義務
 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 ▲ 22回第2コースにおいて、本問の焦点になっている「行政規則」
  「通達」について、説明が行われているので、そちらも参照されたい。

 ▲ 本問を解くための基礎知識

 A 地方公務員に対する懲戒処分について、「正当な理由なく10日
 以内の間勤務を欠いた職員は、減給又は戒告とする」といった形の
 基準は、「行政内部規範」であって、通達に該当し(国家行政組織法
 14条2項に準じる)、学説上の分類に従えば、「行政規則」に該当する。

 B この通達の基準より重い内容の懲戒処分が行われたとしても、処分
  処分を受けた人が、通達に違反しているから違法であるとして、訴訟
  提起して争うことはできない。なぜなら、「通達は行政内部規範であり、
  法規範ではないので、法的拘束力を持たない。裁判所は、・・法規範
  に従って判断すべきであり、通達は、この法的な判断の基準にならない
  というのが基本的な考え方である」(読本)。
  したがって、通達それ自体は、「裁判規範」としての性格を有しない。

 C 行政庁は、自主的に行政裁量行使の基準を作成し、それを手がかりに
  審査をして、行政処分を行うことがある。この行政裁量行使の基準を
 「裁量基準」という(読本)。したがって、このような基準を定めた
  通達は、処分を行う際の「裁量基準」としての性格を有する。
 
  注 行政手続法において、行政庁に裁量が与えられている場合、
 裁量基準を設けることが規定されている。その内容は、以下の
  とおりである。許認可のような申請にに対する処分については
 「審査基準」を定めることさらに公表することを行政庁に義務
  づけている。また、許認可の取消しや 施設改善命令のような
 不利益処分については、「処分基準」を定め、かつこれを行政庁
  の努力義務としている(行手法5条・12条)《読本》

 D たとえば、ほかの地方公務員については、通達に基づいて懲戒処分
 が行われたのに、1人の地方公務員に対してだけ特別に通達の基準
  より重い停職の処分が行われた場合、「この処分は然るべき特別の
 理由がなければ、法の下の平等の原則に違反して、違法だということ
  になる だろう。ここでは、 通達は、直接に違法判断の基準になって
 いるのではなく、平等原則違反があるかどうかの判断において通達が
  役立っているのである。」(読本)

 ▲ 本問の解答

 Aは、アの「行政規則」の説明。したがって、アは10。

 Bは、ウの「裁判規範」の説明。したがって、ウは5。

 Cは、イの「裁量基準」の説明。したがって、イは17。

 Dは、エの「平等原則」の説明。したがって、エは8。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】 司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】 fujimoto_office1977@yahoo.co.jp
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 18:02コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 19回 】★      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
            
-------------------------------------------------------------
 2009/4/6


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
-------------------------------------------------------------
 
【テーマ】行政法・行政行為の分類 

【目 次】問題・解説 
           
      


 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 問題・解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 ▲ 参照書籍・行政法入門 藤田宙靖著・行政法読本 芝池義一著
   ともに有斐閣発行
 
 ▲ これからは、非常に息の長い闘いが始まります。この分野は、
   本試験において、メーンになりますから、年間計画によっても、
   これから長期間「行政法」の講座が継続されます。

 ▲ 本コーナーでは、一つのテーマに絞り、過去問の肢を参照しながら、
  解説を進めます。なお、各肢が過去問のいずれに該当するかの指摘
   は、省きます。 
 
 


 それでは、スタートです!!

 
 【行政行為の分類・許可と認可を中心として】


 ● 食品衛生法の許可を得ないで取引をなした場合においては、消費者
  保護 の法理により、その取引に関する売買契約は私法上無効であり、
 買主は 代金の返金を要求することができる。ー(1)

 
 消費者保護の法理という言葉に騙されてはいけません。
 まず、判例(最判昭和35・3・18・・H21模六民法91 1 981頁)
 があります。  同法は、単なる取締法規であって、取引は無効ではない。

 いかし、みなさん。ここで、終わっては、駄目です。
 理論的にいうと、以下のようになります(入門・参照)。

 行政行為の中には、「命令的行為」と「形成的行為」があります。
            。。。。。。
 命令的行為とは,「私人が事実としてある行動をすること(しないこと)」
 自体を規制の対象とする行政行為。
 
 ア いろいろな営業許可(営業免許)のばあいにも、私人は許可(免許)
 を受けないで営業活動をすることはできない。

 イ ふつうは、無許可で営業活動をしたということに対しては罰則が適用
   されます。
 
 ハ しかし原則として、おこなわれてしまった営業上の取引行為が法的に
   無効とされることはない(先の昭和35年判例の結論)。

 以上の記述からして、「命令的行為」に相当し、「営業許可」に該当する
 本問の記述は、明らかに×です。

 
 ● 許可を要する行為を許可を受けないでした場合は、強制執行又は
   処罰の対象とされることがあることがあるのみならず、当該行為は、
   私法上も当然に無効となる。−(2)


 (1)の説明から明らかなように、「命令的行為」は、「どれも私人の
 ある行為が事実上なされること(なされないこと)を規制しようとする
 ものですから、相手方である私人がこれにしたがわないときにはなんらか
 の手段によって、命じた結果を強制的に実現する必要が出てくることに
 なります。こういった手段としては、ふつうは・・法律が定めている
 罰則の適用による制裁《処罰》が中心になるわけですが、さらにばあい
 によっては、実力をもって、いわゆる行政上の強制執行がおこなわれる
 こともあります」(入門)。したがって、前段は正しい。しかし、後半
 は、35年判決に照らし、誤り。全体として×。


 ● 許可は、一般的な禁止を特定の場合に解除するものであり、その
   その性質上、許可された地位は、譲渡又は相続の対象とはならない。
  −(3)

 「法律で、ともかく一般に、こういった商売をかってにやってはいけない、
 ということにしておいて(禁止)、しかしぜひやりたいという申請が出て
 きたときに、行政庁が一つひとつ審査して、公衆衛生といった見地など
 から、この者ならば営業をやらせても危なくはない、と判断されたもの
 につてだけ、この禁止を解除するということにしているわけです」
(入門)
 以上が、許可の持つ性質であるから、前段は正しい。
 しかし、対物許可の場合には、許可された地位は、譲渡または相続の
 対象になる。例えば、自動車の車体検査(車検)。これに対し、対人
 許可(医師免許など)その対象にならない。(LEC過去問題集・
 解説)。後段は誤り。全体として×。

 
 ● 自動車の運転免許は、免許を受けた者に対し、公道上で自動車
   を運転できるという新たな法律上の地位を付与するものであるから、
   行政行為の分類理論でいうところの「特許」に該当する。

 (3)の禁止の解除は、自動車の運転にもいえるから、これは、
 「許可」に該当する。したがって、×

 注
 1 特許というのは、「許可」のような命令的行為に対して、形成的行為
  といわれるものであって、「私人 に直接、特定の排他的・独占的な
  権利を与えたり、または、私人 と行政主体との間に包括的な権利関係
 を設定する行政行為」(入門)である。鉱業許可がこれに該当する。

 2 なお、いうまでもないことであるが、「特許」とか「許可」とかいう
   のは、あくまで理論上の観念であるにすぎないので、じっさいの法律
   の条文の上で、どんな言葉であらわされているか、ということは関係
   ありません(入門)。ここでいう「特許」は「発明の特許」と異なり
  ます(ソンナノ関係ネエに注意!!)。

 
 ● 認可の対象となる行為は、法律行為に限られず、事実行為もこれに
   含まれる。

 認可とは、許可が命令的行為であるのに対して形成的行為に該当する。
 形成的行為とは、私人の行う行動の法的効果をコントロールの対象と
 する行政行為である。

 以上を前提として、
「認可」のばあいには、私人相互のあいだで法律行為が先にすでにおこ
 なわれているということ前提として、いわばこれらの行為を補充して、
 その法的効果を完成させる、という効果を持つものであるところに、
 その特徴があります(入門)。

 したがって、認可の対象となる行為は、法律行為に限られるのであって、
 事実行為は含まれないことになる。したがって、×。


 ● 認可の対象となる私人の法律行為に取消原因となる瑕疵があるときは、
  私人は、認可後も当該法律行為の取消しを主張することができる。

 認可は、形成行為であるといっても、私人のなんらかの法律行為が先
 におこなわれている、ということを大前提としている。

 
 認可の典型例である農地を例にとると、
 
                                認可
 
 先行                ↓  補充               

 
 農地の売買-------------法的効果を完成

 
 つまり、先に行われた法律行為が有効であることが大前提になって
 いる。

 ですからたとえば、農地の売買に認可(法律上の言葉では許可)が与えら
 れたとしても、私人間での売買の合意自体に瑕疵があって、民法上無効
 であったり取り消されたりした場合には、農業委員会の認可がもう出て
 いるからといって、そのことによってこの売買が有効になるということ
 はないのです(入門)。したがって、本問の場合には、私人は認可後
 も取消しが可能であるから、○。
 
 最後になって、やっと○が点灯しました!

 なお、本講座は、第20回第2コースに連動しているので、そちらを
 参照されたい。     

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 16:10コメント(0)トラックバック(0) 
記事検索
  • ライブドアブログ