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          ★ 【過去問の詳細な解説】 第69回 ★

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                       PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政事件訴訟法

     
  【目次】   問題・解説


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 ■ 問題 平成21年度問題18
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   行政事件訴訟法の定める当事者訴訟に関する次の記述のうち、正
 しいものはどれか。

 1 当事者間の法律関係を確認しまたは形成する処分に関する訴訟
  で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするも
  のは、当事者訴訟である。

 2 地方自治法の定める住民訴訟のうち、当該執行機関または職員
   に対する怠る事実の違法確認請求は、当事者訴訟である。

 3 国または公共団体の機関相互間における権限の存否に関する紛
   争についての訴訟は、公法上の法律関係に関するものであるから、
  当事者訴訟である。

 4 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされな
   いとき、行政庁がその処分をすべき旨を命ずることを求める訴訟
   は、当事者訴訟である。

 5 公職選挙法に定める選挙無効訴訟は、国民の選挙権に関する訴
  訟であるから、当事者訴訟である。

   
 
  

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 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 ◆ 序説

   本問は、行訴法4条の条文が頭にあれば、1が正しいもので
 あると即答し得たであろう。

 しかし、それだけでは、解説にならないので、将来の本試験を
 見据えて、より詳しく見ておく必要がある。「当事者訴訟」は
 近時注目をあびているようであり、今後とも形を換えて出題
 される可能性がある。
  
 ◆ 総説

  
  行政訴訟は、主観訴訟と客観訴訟に分かれる

 
 ○ 主観訴訟=権利保護の制度・つまり救済の制度。

  
    抗告訴訟と当事者訴訟に分かれる。

    「抗告訴訟」=取消訴訟・無効等確認訴訟・不作為の違法確認
           ・義務付け訴訟・差止訴訟


     「当事者訴訟」=実質的当事者訴訟・形式的当事者訴訟

 

 ○ 客観訴訟=権利救済のためでなく、国・公共団体の違法行為を
                是正し、その活動の適法性を確保することを目的と
                する。


     「民衆訴訟」・「機関訴訟」


 (前掲書・読本 266頁の図表を参考にした)


 ◆ 各肢の検討

 
  ●  肢1について。
 
   本肢は、行訴法4条前段の「形式的当事者訴訟」である。
 
  これに対比されるのが同条後段の「実質的当事者訴訟」である。 

  いずれも、総説の「当事者訴訟」に含まれるる。
 
  いずれにせよ、本肢が当事者訴訟であることに相違ないから、本肢
  は正しい。

   以下において、「形式的当事者訴訟}について説明する。
  
   まず、条文の意味するところは、難解であるが、「本来は取消訴訟
  であるべきところ、法律の規定により当事者訴訟とされているので
  『形式的当事者訴訟」と呼ばれている。」(読本270頁)

 「この訴訟の代表例は、土地収用の場合において土地所有者に支払
   われる損失補償に関する争いである。損失補償は、都道府県に設
   けらている収用委員会の裁決によって定められるが、、裁決は
   行政処分であり・・従って土地所有者がその損失補償に不服がある
   場合には、本来収用委員会を被告として取消訴訟を提起しなければ
   ならないはずである。ところが、土地収用法133条2項は、損失
  補償に関する訴訟は、損失補償の法律関係の当事者つまり、土地
   所有者と土地所有権を取得し補償の義務を負担する起業者との間
   で行われるべきものとしている。」(読本270頁)

  条文の定義は、上のような関係の訴訟を意味しているとされる
 (このあたりまでの把握は、本試験の射程距離といえるのでは
    ないか)。

  これに対して、行訴法4後段の「実質的当事者訴訟」に関しては、
  最大判H17・9・14を参照すべきである(これも本試験の射程
  距離といえる)。

   在外国民が「次回の衆議院の総選挙における小選挙区選出議員の
 選挙および参議院の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において、
 在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票できる地位にあ
 ること」の確認を求める訴えは「公法上の法律関係に関する訴え」
 として確認の利益が肯定され適法である。

 (入門211頁以下・読本337頁以下)

  なお、この他、当該訴訟の例として、「公務員の身分の確認を求
 める訴訟や公務員の俸給の支払を求める訴訟などがこれに該当する。」
 とされる(読本 269頁)

 
  ☆  関連事項

   過去問 平成19年度・問題19をみよ!!

  行政事件訴訟法4条の当事者訴訟に当たるものの組合せとして
 正しいものとして、次の肢が挙げられている。

  ア  土地収用法に基づいて、土地所有者が起業者を被告として
  提起する損失補償に関する訴え

 オ 日本国籍を有することの確認の訴え


 アが、形式的当事者訴訟であり、オが、実質的当事者訴訟である。

 
  ● 肢2・肢5について

   地方自治法242条の2に定める「住民訴訟」は、行訴法5条
  が規定する民衆訴訟である(総説・○客観訴訟「民衆訴訟」参照)。

   肢2のように、「住民訴訟」のうち、一部が「当事者訴訟」に
   になることはない。

   選挙に関する訴訟は公職選挙法(203条以下)で定められ、
   これもまた、民衆訴訟である(総説参照)。
   肢5は誤り。
  
   次の指摘に注意。

   「選挙に関する訴訟は公職選挙法(203条以下)で定められ、
    住民訴訟は地方自治法(242条の2)で定められている。
    行政事件訴訟法5条の規定は、それらの訴訟を行政訴訟に
    組み込むという意味を持っている」(読本271頁)
        
              ↓

     このように、法律・条文の仕組みを体系的にとらえる
     ことが重要。

              ↓

     過去問を素材として、「行政法」の体系的理解を!!
     という実践例(その他講座では、このような指導は
     しないというのが、私の実感)。

 ● 肢3について

     本肢は、行訴法6条の機関訴訟である(総説・○客観訴訟
     「機関訴訟」参照)。当事者訴訟ではない。

     次の指摘に注意

   「機関訴訟も、法律が定めている場合に限り、法律で認
    められた者だけが提起することができる」(読本271
        頁)

 ● 肢4について

  本肢は、行訴法3条6項の規定する「抗告訴訟」のなかの
  義務付け訴訟である(総説・参照)。

  なお、次の条文は、常に念頭におくべきである。

   行訴法3条1項

   この法律において、「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力
  の行使に関する不服の訴訟をいう。

   行政事件訴訟法の中心的命題である。      


 
 
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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
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     ★ 過去問の詳細な解説《第2コース》第63回★
      
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 【テーマ】 行政行為の取消しと撤回
         

 【目次】   問題・解説

 

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■ 問題 平成10年度問題34
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   行政行為の取消し及び撤回に関する次の記述のうち、正しいもの
 はどれか。

 1 行政行為の撤回とは、有効に成立した行政行為について、その
  成立に瑕疵があることを理由として、遡及的にその効力を失わし
  めることをいう。

 2 授益的行政行為については、これを取り消すことによって当該
   行政行為の相手方の権利又は利益を侵害することにならない場合
   に限り、取り消すことができる。

 3 行政行為に撤回権が留保されている場合は、当該行政行為の
   撤回は、無制限に行うことができる。

 4 行政行為の撤回をなし得るのは、処分庁又は裁判所である。

 5 審査請求に対して裁決を行った行政庁は、当該裁決後に当該
   審査請求に係る行政行為に新たに違法又は不当な事由を発見し
   ても、当該裁決を取り消すことができない。
    

  
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■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣
 

 肢1について 

 
 行政行為の取消しと撤回の違い

 (1 ) 行政行為の取消しは、行政行為成立時の違法性を理由に取り
     消すものであり、

       効果としては、原則として遡及効あり(行政行為の効果を行政
     行為時にさかのぼって失わせる)。

 (2 )行政行為の撤回とは、行政行為が行われた後に発生した事情

   (事後的事情・後発的事情)を理由として、当該行政行為を破棄
 
     することを言う。

      効果としては、遡及効なし。

 
  注  法律の中では、撤回は「取消し」と表現されている。


   以上の記述からすれば、「その成立に瑕疵があることを理由として、
 遡及的にその効力を失わしめる」のは、(1)の行政行為の取消しで
 ある。

  本肢は誤りである。

 
 肢2について


   ここでは、「授益的行政行為」の概念を把握することが大切である。
   そのためには、これと反対の概念である侵害処分と対比することに
 より「授益的行政行為」の理解が深まる。

  以下の記述に注意せよ!!

          ↓
 
 (1)侵害処分とは、その相手方の権利や利益を侵害するものである
     から、申請によらず、職権によって行われる。
   
(2)これに対し、申請に基づいて行われる処分のほとんどは、その
   性質上授益処分である。

(3)行政手続法の規定によれば、(1)が第3章の不利益処分であり
 (2)が第2章の申請に対する処分である。

(4)建築確認が(2)に該当する授益処分であるのに対して、税務署
  の課税処分が(1)に該当する侵害処分の典型である。

 注 授益的行政行為と授益処分は同義である。

 
   ここで、建築確認(授益的行政行為の典型)を例にとって、本肢に
 即して説明する。

  行政庁が後から当該建築確認の違法性を認めて取り消しをすれば、
 必ず、「当該行政行為の相手方の権利又は利益を侵害することに
 なる」から、この肢は、事実上、授益処分についての「職権取消し
 否認説」に立っていることになる。

 しかし、この説は、次のように批判される(読本)。
 
「法治主義の原則から生じる違法状態の解消よりも、相手方の被る
 であろう不利益を重視するものであって・・・一面的な考え方」
 である。
 
   職権取消しを肯定する説は、次のように述べる(読本)。
 
「授益処分については、行政処分の違法性がどの程度か、職権取消し
 をすれば相手方に生じる不利益はどの程度のものか、不利益を緩和
 する措置をとることができないかどうか、といったことを総合的に
 考慮して 職権取消しが認められるどうか判断すべきである。」

  以上のとおり、本問は微妙な問題であるが、相手方の利益などを
 侵害すれば、取り消しができないとするのは、一面的であって、
 相手方の権利を侵害しても、総合的判断により取り消し得るという
 のが正しい。

 本旨は誤りである。

  
 肢3について

  撤回権の留保について
 
   行政行為の付款(注)として、「公益上必要がある場合には当該
 行政処分を取り消す(撤回する)」旨が定められていることがある。
  これが撤回権の留保である(読本)。

 注 付款とは、行政行為の主たる意思表示に対する内容に付加された
  行政庁の従たる意思表示のこと(行政法入門講座 週刊住宅新聞社)

   この撤回権の留保は、「例文である」という指摘や「行政裁量
 の限界を超える付款は違法である」という記述(読本)からすると、
 無制限行使を認める本肢は、明らかに誤りである。
 
 端的に言うと、撤回とは、一端与えた免許(自動車の運転など)を
 取り上げることであるから、常に合理的理由を要する。
 

  本肢は誤りである。


 肢4について

   行政行為の撤回とは、当該行政行為を破棄することであるから、処分庁
 のみがなし得る。

  本旨は誤りである。 

 
 肢5について

   以下に記述する不可変更力(確定力)についての説明をみよ。

         ↓
 
 これは、行政行為を行った行政庁がみずから、一度行った行為を取消す
 ことは(職権取消し)はできない、という効果のことである。

 これは、ほかの効力とは異なり、行政行為の中の特定の種類のものに
 だけこの効力がある。この効力は、裁判判決に一般に認められるもの
 であって、裁判に対する国民の信頼確保のために、一度くだした判決
 をみずからこれを取消すことを許さないとしたものである。
 
   これと同じように、行政行為の中でも特に異議申立てに対する決定、
 ・・・・・・・・・・・ 
 審査請求に対する裁決など、その性質の上で裁判判決に似たような
 目的を持つものには、このような効力が認められる、ということが
 判例・学説の上で認められている(入門)


  以上の記述により、本旨は正しい。

  したがって、5が正解である。


 付 言

   本問は、行政行為の不可変更力(確定力)に関する知識があれば、
 正解に達するが、将来の本試験対策としては、肢2に注目されたい。

 その論点である、侵害処分と授益処分 授益処分の職権取消しなど
 についての正確な理解が望まれる。
  
   


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       ★過去問の詳細な解説《第2コース》第62回★
      
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 【テーマ】 行政行為の効力
         
   本問は、サイト31回において、採用した。

  行政法の基本にふれる好個の素材だ!!

  もう一度、整理しなおし、サイト31回では説明が不十分だった
 「争点訴訟」について、より詳しい説明を加えた。
      
 【目次】   問題・解説


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 問題 平成16年度問題9
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 

  行政行為の効力に関する次の文章の(ア)〜(エ)を埋める語の
 組合せとして、最も適切なものはどれか。


  行政行為の効力の一つである(ア)は、行政行為の効力を訴訟で
 争うのは取消訴訟のみとする取消訴訟の(イ)を根拠とするという
 のが今日の通説である。この効力が認められるのは、行政行為が
 取消しうべき(ウ)を有している場合に限られ、無効である場合には、
 いかなる訴訟 でもその無効を前提として、自己の権利を主張できる
 ほか、行政事件訴訟法も(エ)を用意して、それを前提とした規定を
 置いている。


   (ア)  (イ)   (ウ)  (エ)

 1 公定力  拘束力   違法性  無名抗告訴訟

 2 不可争力 排他的管轄 瑕疵      無名抗告訴訟

 3 不可争力 先占    違法性  客観訴訟

 4 公定力  排他的管轄 瑕疵   争点訴訟

 5 不可争力 拘束力   瑕疵   争点訴訟   

  

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣
  

 
 1 サイト31号の要約

  収用委員会の収用裁決によって、土地が起業者にとられてしまった
 という例示において、もとの土地の所有者がこの収用裁決という行政
 行為が違法であるので、この土地を取り返したいと考えた場合、どう
 すればよいのかということを考察した。

 ◆サイト31号の詳細はコチラ↓
http://examination-support.livedoor.biz/archives/706967.html 

 
 もとの土地所有者を甲とし、起業者を乙とする
 
 
 (1)一つの方法《民事法(民法や民事訴訟法)の適用を原則とする》

    甲は乙を被告として、裁判所に土地の返還を求める訴え(民事訴訟)
  を提起する。そしてその際、甲から乙への権利変動は無効であると
  いうことを主張し、その理由づけとして、収用裁決は違法である、
  ということを主張すればよい。

 
(原告)  土地の返還請求   (被告)  主張・甲から乙への権利変動
                                            は無効。

 甲-------------------------→乙   
                    理由・収用裁決は違法

 

 (2)二つ目の方法≪「違法な行為も取り消されるまでは原則として
     有効である」という「公定力」を基本とする》

    甲は、まず行政庁(収用委員会)が所属する都道府県を被告として、
  収用裁決の取消訴訟をX裁判所に提起し、そこで収用裁決を取り消
  してもらい、そのうえではじめて、べつに、乙(起業者)を被告
  とした 民事訴訟をY裁判所に対して提起する。

 
   X裁判所

  (原告) 収用裁決の取消訴訟      (被告)
     (抗告訴訟)
 
  甲---------------------------→収用委員会が所属する都道府県
        

        ↓  判決・収用裁決取消

  Y裁判所
    
     土地の返還請求
    甲--------------------------→乙
     民事訴訟      (起業者)


 (3)学説・判例は、一致して、二つ目の方法を採用する。
      
     なぜかというと、行政行為は民法上の法律行為とは違って、
  それ自体が 取消訴訟によって取り消されていないかぎり、
  原則としてほかの訴訟(民事訴訟)ではその訴訟の裁判所(Y)
  を拘束するので あって、当該のY裁判所は、かりに審理の中で
  この行政行為が違法であるという判断に達したとしても、
   これを有効なものとして扱わなければなければならない、
   とされてきたからである≪最判S30・12・26≫(入門)。

 (4)公定力

   「特定の機関が特定の手続によって取り消すばあいを除き、いっさい
 の者は、一度なされた行政行為に拘束されるという効力」という原則
  をいう。

   例示によれば、X裁判所(特定の機関)が行政行為の取消訴訟
 (抗告訴訟)という(特定の手続)によって取り消すばあいを 除き、
 民事訴訟を遂行するY裁判所においても、一度なされた行政行為
 を有効なものとして扱わなければならない、ということになる。

 
 2 本問の具体的検討


 (1)本問でいう、「行政行為の効力を訴訟で争うのは取消訴訟のみ
      とする」のは、1(4)によれば、公定力の帰結であるから、
  (ア)には、公定力が入る。

   この考え方が「今日の通説である」というのも、1 (3)により、
     明確である。
                      ・・・・・
   その根拠とされる(イ)には、取消訴訟の(排他的管轄)が妥当
  することは、(イ)に羅列する他の文言との比較において、明瞭
  である。

     (ウ)に瑕疵がはいることは、以前に私の出題した下記のオリジナル
     問題・解説からしても、明らかである。
           ↓

--------------------------------------------------------------
   《問題》 

   行政行為の効力に関する次の文章の(ア)〜(エ)を埋める語の
 組合わせとして、最も適切なものはどれか。

 (ア)を有している行政行為がいかなる基準で(イ)になるかに
 ついては、 わが国の判例そして有力な学説は、従来この基準を
(ア)の(ウ)というところにおいて、(ア)を有している行政行為は、
 原則として(エ)行政 行為にどまるが、その(ア)が(ウ)を有す
 る場合には(イ)となるという公式を樹立した。
 
     (ア)  (イ)    (ウ)       (エ)   
 
 1      違法性  違法    重大性     取り消しうべき

 2   瑕疵   取り消し  明白性     違法である

 3   瑕疵      無効    重大明白性    取り消しうべき 

 4   違法性  違法    重大明白性    無効である

 5   瑕疵   無効     重大性     取り消しうべき


 《解説》

   本問は、「行政法入門」からの抜粋である。

   瑕疵ある行政行為が「取り消しうべき行政行為」となるのか
 それとも「無効の行政行為」となるのかという基準に関する
  問題である。

 ( )内を埋めると、

 (瑕疵=ア)を有している行政行為がいかなる 基準で(無効=イ)
 になるかについては、わが国の判例そして有力な学説は、従来この
 基準を(瑕疵=ア)の(重大明白性=ウ)というところにおいて、
(瑕疵=ア)を有している行政行為は、原則として(取り消しうべき
 =エ)行政行為にとどまるが、その(瑕疵=ア)が(重大明白性=ウ)
 を有する場合には(イ=無効)になるという公式を樹立した。

 正解は3である。

-------------------------------------------------------------


 (2)争点訴訟について

 (エ)には、争点訴訟が入るが、行政事件訴訟法45条の規定するこの
 争点訴訟は、訴訟法全体の把握がされてないと、理解困難である。
 
   以下に要点を述べるので、それなりの把握をしておいてほしい(今後
 本試験の高度化に伴い、正面から、争点訴訟を問う問題が将来、出題
 される可能性あり)。

  条文としては、行訴法3条4項の「無効等確認の訴え」、同36条
 の「無効確認の訴えの原告適格」、そして、さきにあげた同法45条
 が規定する「争点訴訟」があげられる。

 行政処分が無効である場合には、取り消し得べき処分と異なって、
「いかなる訴訟でもその無効を前提として、自己の権利を主張できる」
 ことになる。その点からして、次のように言える。

   ・・・行政処分が無効だというならば、そもそもこの処分には公定力
 もないことになるわけですから、私人としては、なにもわざわざ抗告
  訴訟というかたちで処分それ自体が無効であることの確認を求める、
  (筆者注 行訴法3条4項の「無効等確認の訴え」)というような
  まわりくどいことをしなくても、行政処分が無効であるということを
 前提とした上で、現在の法律関係に関する訴えをいきなり起こせば
 すむのではないか、といった疑問がわいてきます。(入門)

   ここで、さきにあげた収用裁決が無効であった場合、収用裁決の
 「無効確認の訴え」を提起するまでもなく、現在の法律関係に関する
  訴えすなわち土地の返還請求という民事訴訟を提起すればよいこと
 になる。

  以上の帰結が、行訴法36条・同45条によって導かれる。

   特に、36条の解釈は難しいが、
 
 収用裁決の例でいえば、収用裁決それ自体の無効確認を起こすという
  のはよけいなまわり道だから、それはできないことにして、もっぱら
 直接「土地を返せ」といった民事訴訟で争うことしかできないのだと
  いうことなのだ、というふうに理解しておけばよい。
  
  そして、こういった場合の民事訴訟のことを特に「争点訴訟」と
  呼び、同法45条に規定を設けている。
 (以上入門参照)

    以上のようにとらえると、本問の(エ)に争点訴訟がはいるのが、
 腑におちることになる。

  したがって、本問の正解は4である。


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 【テーマ】 行政行為の効力
         

 【目次】   問題・解説

 

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■ 問題 平成11年度問題34
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 平成11年度過去問 

 問題34

 行政行為の効力に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
 

 1 行政行為は公定力は有するから、その成立に重大かつ明白な
   瑕疵があるばあいでも正当な権限を有する行政庁又は裁判所
   により取り消されるまでは一応有効であり、何人もその効力
   を否定することはできない。

 2 行政行為で命じた義務が履行されない場合は、行政行為の有
   する執行力の効果として、行政庁は、法律上の根拠なくして
   当然に当該義務の履行を強制することができる。

 3 行政行為は不可争力を有するから、行政行為に取り消しうべき
   瑕疵がある場合でも、行政事件訴訟法に定める出訴期間の経過後
   は、行政庁は、当該行政行為を取り消すことはできない。

 4 行政行為の不可変更力は、行政行為の効力として当然に認めら
   れるものではなく、不服申立てに対する裁決又は決定など一定の
   行政行為について例外的に認められるものである。

 5 違法な行政行為により損害を受けた者は、当該行政行為の取消し
   又は無効確認の判決を得なければ、当該行政行為の違法性を理由に
  国家賠償を請求することはできない。


 
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■ 解説
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 ▲ 参照書籍 行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖
   発行/有斐閣 

 
 ● 序論

   行政行為には、私人の法律行為とは違った、行政行為の公権力性を
 特徴づける特別の効力がある。
  
   ここでは、その特別の効力を把握しておく必要がある!!

 ● 本論(各肢の検討)

 
  肢1について

 
  まず、公定力の説明を要する。以下のとおりである。

  特定の機関が特定の手続によって取消す場合を除き、いっさいの者
 は、 一度なされた行政行為に拘束されるという効力をいう。
                                    ・・
  したがって、「違法な行政行為も取消されるまでは原則として有効
 である」ことになる。原則論からいえば、本肢の「行政行為は公定力
 を有するから、正当な権限を有する行政庁又は裁判所により取り消さ
 れるまでは一応有効であり、何人もその効力を否定することはでき
 ない」という例外部分を除いた記述は正しい。
 
   しかし、違法な行政行為も有効であるというのは、「法律による
 行政の原理」からすれば例外になるので、「公定力」の働く範囲を
 必要以上に拡大させない必要がある。そこから、違法ないしは不当
 な行政行為である 瑕疵ある行政行為に関して、取り消しうべき行政
 行為(原則論に従うもの)と瑕疵が重大明白である場合に分類する
 考え方が台頭してくる。
 
   判例・有力な学説は、「『瑕疵ある行政行為は、原則として取り
 消しう べき行政行為にとどまるが、その瑕疵が重大明白である
  ばあいには、行政行為 は無効になる』という公式を立ててきました」
 (入門)。
 

  無効であるという ことになれば、「取り消されるまでは一応有効
 であ」るという原則論は通用しなくなるため、いつでも誰でもその
 効果を否定できる。したがって、本肢においては、「その成立に重大
  かつ明白な瑕疵がある場合でも」というところが誤っている。

  本肢は正しくない。


 肢2について


  本肢においては、(自力)執行力がテーマになっている。

  民事法においては、「自力救済の禁止」の原則があるので、訴えを
 起こして裁判所の助力を得てはじめて、強制執行ができる。

 しかし、行政庁は、裁判所に訴えを起こさずに、直接自分の力で強制
 執行できるのである。これが、執行力である。

  しかし、「法律による行政の原理」によれば、行政は法律の根拠が
 なければ、このような公権力を行使することはできない。したがって、
 法律がとくに明文で行政庁に強制執行を許している場合でないと、
 このような行為ができないことになる。
  以上の点から、「行政庁は、法律上の根拠なくして当然に当該義務
 の履行を強制することができる」とする本肢は、正しくない。

 それでは、次の記述は正しいか

   相手方である私人が、その行政行為に対して不服申立てや抗告訴訟
  を起こして争っているばあいでも、なお原則として自力執行する
  ことは妨げられない。

  答えは、正。自力執行の効力による。行政不服審査法34条1項・
  行政事件訴訟法25条1項に規定あり(入門)


 肢3について

 
  本肢では、不可争力(形式的確定力)がテーマである。

  これは、法律上定められた不服申立期間・出訴期間が過ぎてしまう
 ことによって、もはや行政行為の効果を私人が争うことができない
 という原則である。

  したがって、「違法」または「不当」な行政行為 (これを「瑕疵
 ある行政行為」という)であっても、この「不可争力」により、
  前記期間を過ぎると、私人は、その効力を争うことができなく
  なるのである。
 
   本肢における、「不可争力」の説明自体は正しい。しかし、これは、
 私人が効力を争うことできないことを意味するので、行政庁が行政行為
 の瑕疵を認めて、「職権取消し」を行うことはできる。その行政庁の
 行為が「不可争力」に反するするものではない。

 本肢も正しくない。


 肢4について。  


  本肢では、不可変更力(確定力)が問題になっている。

  これは、行政行為を行った行政庁がみずから、一度行った行為を
 取消すことは(職権取消し)はできない、という効果のことである。

 これは、ほかの効力とは異なり、行政行為の中の特定の種類のもの
 にだけこの 効力がある。

  この効力は、裁判判決に一般に認められるものであって、裁判に
 対する国民の信頼確保のために、一度くだした判決をみずから
 これを取消すことを許さないとしたものである。
 
  これと同じように、行政行為の中でも特に異議申立てに対する決定、
 審査請求に対する裁決など、その性質の上で裁判判決に似たような
 目的を持つものには、このような効力が認められる、ということが、
 判例・学説の上でみとめられている(入門)。

 本肢は、以上の趣旨に沿うものであり、正しい。

 4が正解である。


  肢5について


   本肢は、肢1でテーマなった「公定力」を拡大させないという考え方
  に立った場合、その肢は正しいのかどうかが問われている。

  「公定力」という観点 からすると、違法な行政行為も一応有効で
   あることになる。そうすると、当該行政行為の違法性を理由に国家
   賠償を行う場合にも、あらかじめ当該行政行為の取消し等の判決を
   得て違法であることが確定していなければならないことになる。

    しかし、そこまで、「公定力」を拡大すべきではない。当該国家
 賠償請求訴訟において、違法性を判断してもらえばよいといことに
  なる(同旨の判決もあるようである。最判S36・4・21・・)。
 
    この見解に反する本肢は、誤りである。


   以上により、正解は4である。


 
 ● 付言

  本問は、行政行為の効力に関する基本的な理解を問う良質の問題で
  ある。各肢と同様な問題は、過去問で繰り返し出題されている。

  ただし、平成19年度以降はこの種の問題は出題されていないが、
 いつ復活してもおかしくないと私は思う。
  
   
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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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  ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第57回 】★      
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【テーマ】 「行政調査」「行政計画」


【目次】  問題・解説


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 ■ 平成21年度問題8
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  行政計画に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

 1 土地利用を制限する用途地域などの都市計画の決定についても、侵害
   留保説によれば法律の根拠が必要である。

 2 広範な計画裁量については裁判所による十分な統制を期待することが
   できないため、計画の策定は、行政手続法に基づく意見公募手続の対象
   となっている。

 3 計画策定権者に広範な裁量が認められるのが行政計画の特徴であるので、
   裁判所による計画裁量の統制は、重大な事実誤認の有無の審査に限られる。

 4 都市計画法上の土地利用制限は、当然に受忍すべきとはいえない特別の
   犠牲であるから、損失補償が一般的に認められている。

 5 多数の利害関係者に不利益をもたらしうる拘束的な計画については、
  行政事件訴訟法において、それを争うための特別の訴訟類型が法定
   されている。

 

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 ■ 解説
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 ● 参考図書

 行政法読本・芝池義一著 行政法入門・藤田宙靖著 / 有斐閣発行 
 
 
 ● 序論

   総括的には、前回説明したので、本題に入る。


 ● 本論

   全体として、「行政計画」には以下の前提知識を要する。

 a 「行政計画とは、行政機関が行政活動を計画的に行うために作成・決定
   (策定)する計画である。都市計画法に基づく都市計画がその代表例で
   ある。」(読本)

 b 「行政計画」は、「行政調査」と同じように、権力的に行われることも
    あれば、非権力的に行われることもある。また、法行為にあたるものも
  あれば、事実行為に当たるものもある(読本・前回にも述べた)。


  肢1について。妥当。

   この肢の要点は、「侵害留保説」である。これは、国民の権利や自由を
 権力的に侵害する行政についてのみ法律の授権を必要とする説である。
 (読本)。
 
  bによれば、「行政計画」は権力的に行われることもあり、aで代表例
 として挙げられた「都市計画」の決定による「土地利用を制限する用途
 地域」の指定は、「国民の権利や自由を権力的に侵害する行政」に該当する。
 この場合には、法律の授権が必要になるといのうのが、「侵害留保説」
 の帰結である。したがって、肢1は正しい。
 
  もし、「行政計画」について、甘い知識しかなく、漠然と非権力的に行
 われ、事実行為に該当すると思っていれば、1を読み飛ばして3に飛びつく
 ことになるのかもしれない。ご用心を!!
 しかし、逆に正確な知識があれば、もう第1段階の肢1の正で決まりだ。

 注 ここでは、これ以上立ち入らないが、法律の授権の要否については、、
 「侵害留保説」のほか「権力作用留保説」「公行政留保説」があるが、
  いずれにおいても、肢1に該当する侵害的行為は、法律の授権を要する。
 (読本)

  肢2について。妥当でない。

   前段はそのとおりであるが、後段が誤りである。
                      ・・・・
   行手法39条1項によれば、意見公募手続は、命令等を定める場合に問題
 になり、「行政計画」の場合には、対象にならないので、誤りである。

   ここで、この際、把握しておくべき点がふたつある。
 ・・・・
   命令等の概念は何か。2条8号をみよ。それらは、以下のものであり、
 「行政計画」は入っていない

   法律に基づく命令(処分の要件を定める告示を含む)・審査基準・処分基準
  ・行政指導方針 

 もうひとつ。3条3項をみよ。「・・意見公募手続について定める行政手続法
 6章の規定は、地方公共団体の機関の命令等(規則も入る)の制定行為には適用
 されない(読本)。

  肢3について。妥当でない。

   これは、最高裁判所大法廷(平成20)年9月10日判決が参考になる。
  
   従来、最高裁判所は「事業計画は『いわば当該土地区画整理事業の青写真たる
 にすぎない一般的・抽象的な計画にとどまる』」(読本)ことを理由に
 行政訴訟の対象にならないとしてきたが、前記判例がこの先例を変更したので
 ある。この判決は、前記事業計画について、宅地所有者等の法的地位に変動を
 もたらすものであって、抗告訴訟の対象になるとしたのである。

   しかし、実際に当該判決の知識まで求められているわけではないと、私は
  思う。つまり、「行政計画は、権力的に行われることもある」という知識
  さえあれば、行政訴訟の対象になるであろうし、裁判所の審査が重大な事実
  誤認に限られるというのは、それこそ、「事実誤認」だという解答がスッパ
  とでてくるであろう。

 肢4について。妥当でない。

  損失補償は、適法に行われる権利(たいていは財産権)の侵害に与えられる
 金銭給付である。土地収用が代表例。一般法は存在せず、個別法の定めるとこ
 ろに委ねられている。(読本参照)。
   個別法である都市計画法には損失補償の規定はない。
 また、損失補償については、国家賠償法のような一般法もないので、
「損失補償が一般的に認められている」 というのは、誤りである。
 
 なお、個別法に規定がなければ、憲法29条3項により損失補償を請求できる
 余地があるが(最大判昭43・11・27)、都市計画法上の土地利用の制限に
 ついては、損失補償は必要ではないと一般に考えられている。
   このように考えると、本肢には論点がいっぱい、つまっている。
 
   多岐選択式により、損失補償を正面から問うてきたのが、平成20年度問題
 42である。この際、この問題を考究しておくのも一考。
 20年度・21年度と当該問題にこだわるのも本試験の傾向といえるかもしれ
  ない。

   肢5について。妥当でない。

   行訴法に特別の訴訟類型は、法定されていない。誤りである。
  
   このような唐突な問題の背景には、出題者の出題意図が見える。

   最高裁判所1982(昭和57)年4月22日判決が問題になる。
   これは、本肢にいう「多数の利害関係者に不利益をもたらしうる
  拘束的な計画」が問題になった。
  これもまた、肢3と同様、行政計画が権力的に行われる「都市計画法に
  基づく用地地域指定」が焦点になったが、肢3の「土地区画整理事業」が
  行政処分と認められ、抗告訴訟の対象になったのに比して、これは、
  処分性を否定して、抗告訴訟の対象にならないとしたのである。
  
  その理由として、大略つぎのようにいう。
   
 用途地域指定によって、建築物について、制限を受ける者は、
 建築基準法に基づく「建築確認が用途地域指定との関係で
 拒否された段階で、建築確認に対して取消訴訟を起こし、
 その訴訟の中で用途地域の違法を主張すればよい・・」
 
 つまり、「この判決は、用途地域の指定に対して訴訟の可能性を否定し、
 後続の処分である」建築確認において訴訟提起すればよいというのである。
(続本)
 
        1         1の定着       2
 用途地域指定→訴訟不可----------後続の処分・建築確認→訴訟可

                1の関係で2の申請拒否⇒取消訴訟の提起
                           (1の違法主張)
 

  しかし、学者は、「用地地域指定指定から10年経ってから建築確認を
 拒否された場合に、それに対して訴訟を起こし10年前に定められた
 用地地域指定の違法を主張しても、裁判所は耳を傾けてくれないであろう。
 
 その10年の間に用途地域指定 は定着しているからである。」と
 この判決を批判する。(読本)
  
  そうなると、用地地域指定について取消訴訟を認めるべきだということ
 なるが、その場合「誰に原告適格を認めるかという問題があり、またそれに
  関連して、各地域の住民ひいては当該都市の住民全体が取消訴訟を起こす
  ことができるようになってしまうおそれがある。」(読本)
 
  したがって、当該訴訟を認めるためには、要件を明確にするため、本肢
  でいうように、「行政事件訴訟法において、それを争うための特別の
  訴訟類型を法定」する必要があるが、現在それは法定されていない。
   長い叙述(引用)になったが、私のいわんとすることは、皆さんに通じた
  でしょうか。

    
 ● 付言

 本問は、「行政計画」に関しての問いでありながら、実は、肢2では、
 意見公募手続について聴いている。
 肢4では、損失補償、肢5では、行政訴訟法の訴訟類型を問題にしている。

  このように、近年の本試験では、全体的ないし横断的な理解を求めている
 のが一つの特徴であるので、注意を要する。


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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第22回 】★      
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 2009/4/14


             
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【テーマ】行政法・行政立法その2
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 平成12年度過去問

 問題 8

 行政立法についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

 1 行政立法は、行政庁の処分と並んで公権力の行使であり、公定力
  ・不可争力などの効力が認められる。

 2 罪刑法定主義の原則により、行政立法で罰則を設けることは、法律
   で個別・具体的な委任がなされている場合でも許されない。

 3 行政立法は政令、省令、訓令、通達などからなるが、いずれも行政
   機関を法的に拘束するものであり、裁判所はこれら行政立法に違反
   する行政庁の処分を取り消すことができる。

 4 行政立法が法律による授権の範囲を逸脱して制定された場合には、
   裁判所はその行政立法を違法とし、その適用を否定することができる。

 5 地方公共団体における法律の執行は、その長の定める規則に委任
   されるのが原則であり、条例により法律を執行することはできない。


 
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■ 解説
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 ▲ 参照書籍・行政法入門 藤田 宙靖著 ・ 行政法読本 芝池 
 義一 著ともに有斐閣・憲法 芦部信喜 岩波書店 

 ▲ 総括

 1 法は、国会によってだけつくられているわけではなく、裁判所に
  よってもつくられるし(最高裁判所規則≪憲法77条≫)、行政機関
 によってもつくられる。行政機関がおこなう立法(行政立法)は
 「命令」と呼ばれて、憲法もまた、その存在を容認している(憲法
 81条・98条など)。

 2 行政立法には次の2種類がある。
 
  その一つが「法規命令」であってこれは、私人の権利・義務に直接
  変動をもたらす効果をもった行政立法。
 
 それ以外の行政立法が「行政規則」。

 3 法規命令には法律による授権を要するが、行政規則には要しない。

     
          法律による行政の原理
   法律-----------------------行政立法(命令)
 (憲法41条)           
       ↓ 法律の授権要        
        
      ・法規命令(私人の権利・義務に直接変動もたらす)

             ↓ 法律の授権不要
      
            ・行政規則(行政内部)

 
 ▲ 本問の検討

 1について。

 行政立法は、行政行為ではないので、行政行為(行政庁の処分)の効力
 として、認められているものは、行政立法には認められない。

 妥当でない根拠は、以上のとおりで必要十分であるが、もう少し詳しく
 説明する。

 私人に直接権利を与えたり義務を課したりするする点では、行政庁の処分
 と行政立法(法規命令)は共通する(1)。したがって、「行政立法は、
 行政庁 の処分と並んで公権力の行使であり」というのは正しい。しかし、
 法規 命令の「定め方は、不特定多数のひとびとを対象とした一般的・
 抽象的なものであって、特定の私人を対象とした個別的・具体的のもの
 ではありません(2)から、『行政行為』には含まれなことになります」
(入門)。
 したがって、行政行為(行政処分)の持つ特別の効力である公定力・
 不可争力は、行政立法(法規命令)には存在しない(3)ことになる。

               
                               (1)  (2)  (3)

 

 A・行政立法  -------------------------------×                    
          -------→  ○  ×
 B・行政行為(行政処分)---------------------○    

 (1)権利・義務 共通 (2)特定・不特定 異なる 
   (3) 特別の効力の存在

 注
 1 行政内部の規定に留まる行政規則は、ここでは問題にならない。
 
 2 公定力とは「違法な行政行為も取り消されるまで原則として
    有効」(入門)とされること。
 
  3 不可争力とは、「法律上定められた不服申立期間・出訴期間をすぎて
    しまうことによって、もはやその行政行為の効果を私人が争うことが
  できなくなる」(入門)こと。

  したがって、1は全体として妥当でない。


 2について。

 罪刑法定主義の原則によれば、罰則を設けるには、法律で定めること
 が要請される(憲法31条)。しかし、行政立法(法規命令)である政令
 においては、法律で個別・具体的な委任がなされている場合には、
 罰則を設けることができる(憲法73条6号但し書き)。また同様に、
 法規命令である省令においても、罰則を設けることができる(国家
 行政組織法12条3項)。

 したがって、妥当でない。

 3について。 
 

 以下は、前記総括を参照

 行政立法には、2種類ある。
 
 その一つが法規命令であって、政令・省令がこれに該当する
(憲法73条6号但し書き・国家行政組織法12条1項・3項)。

 もうひとつが行政法規であって、訓令・通達がこれに該当する
 (国家行政組織法14条2項)。

 行政機関を法的に拘束するのは、前者の政令・省令(法規命令)
 であって、裁判所は、これら行政立法に違反する行政庁の処分
 を取り消すことができる。しかし、後者の訓令・通達(行政規則)
 は、「もっぱら行政機関を内部的に拘束するだけで、私人に対し
 ては法的効力を持たない(つまり私人の権利・義務とは法的に
 無関係である)」ので、たとえば、「納税者は通達違反を理由に
 課税処分は違法であると主張し、その取り消しを求めることは
 できない」(入門)。
                                             違反
 所得税法------所得税法施行令(政令)------課税処分
                                ↑
                              取り消し可
                  
                        違反        
            ------通達---------課税処分
                            ↑
                          取り消し不可
               (当該課税処分がおおもとの
                所得税法に違反しているか
                どうかの問題)

 したがって、本肢は、訓令・通達には妥当しないので、全体としては、
 妥当でない。

 4について。

 行政立法である政令が法律による授権の範囲を逸脱しているかどうか
 争われた事件として最判平成14・1・31・・(芦部 憲法)がある。
 児童手当法が、支給対象となる児童の一部に該当する者を政令に委ねて
 いるが、この政令が委任の範囲を逸脱しているとされた。この場合、
 裁判所は、この政令を違法とし、その適用を否定することになる。
 したがって、当該政令の適用により児童手当の受給資格の喪失処分
 を受けた母親に対するその処分が取り消されることになる。

     裁判所    
        ↓違法   ↓取り消し

    政令適用・行政処分
 行政庁---------------------私人

 したがって、本肢が妥当であって、これが正解。


 5について。

 条例には、法律の個別の委任に基づいて制定されるものと法律の個別
 の委任なしに制定されるものがある。前者が、委任条例・法定条例・
 ・・・・・・
 法律執行条例と言われるものであって、本肢はこれに該当すると
 思われる。後者は自主条例と呼ばれる。

 いずれにせよ、条例については、「『地方自治の本旨』ないし
『地方自治の尊重』の見地からは、条例の中に示される地方公共団体の
 意思ないしは判断はできるだけ尊重されなければならない。・・条例
 が適法なものとして存在するための余地・・をできるだけ広く確保
 する工夫が要請される」(読本)

 以上の趣旨からすれば、本肢にいう法律執行条例が是認されるのは
 当然であるとともに、憲法94条の「・・法律の範囲内で条例を制定
 することができる」との規定に従って、法律の個別の委任なしに制定
 される自主条例が幅広く認められて然るべきである。

 以上述べたところより、本肢は明らかに誤り。

 

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 14回 】★      
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 2009/2/23

             
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【テーマ】民法・占有改定と即時取得

 
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■ 過去問を中心とした「占有改定と即時取得」 問題と解説
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 ◆ 過去10年間の過去問を題材に、問題提出と解説を行います。
 

  [問題1] (本問は、過去問を少し修正している)


                      
 Aは、Bに売却した絵画を引き続き、Bのために預かる旨約束し、
 そのまま保持している。
 最高裁判所の判例によれば、次の記述は妥当といえるか。

 Aがこの絵画を自分の物であると偽って善意無過失のCに売却
 し、以後はCのためにその絵画を預かることを約束した場合には、
 即時取得によりCはこの絵画の所有権を取得する。


 [解説]

 ◎ 占有改定と即時取得の概念の把握(一粒社・民法1参照)

 
 ア 占有改定

 占有は物を支配するという事実関係であるが、社会観念上前主の
 支配に基づいて後主が支配を取得すると認められるときは占有の
 承継を生じ、したがって占有権も承継される。

           承継
   前主  占有権 -------------- 後主
      ↓                        ↓
      支配する事実関係    支配の取得
   絵画

 
 通常は「絵画」の引渡しによって、占有権の譲渡を生じる。
 (182条1項)

 占有権の承継には種々の態様があり、そのひとつが占有改定である。

 占有改定による占有権の譲渡は、譲渡人が譲受人の占有代理人
 となって引き続き所持する場合に行われるものであって、譲渡人
 が事後本人の占有代理人として所持すべき旨の意思表示をすれば
 よい(183条)。

 ここでは、占有代理人による占有つまり代理占有が問題になる
 ので、このあたりについて、本問に則して、説明する。
 
             内の数字は、時系列による順序
  絵画 預かる      
  ------------- B  ,皚△癸臓■辰鯔椰佑箸垢訛緲占有
  A          であり、Aは、B、Cの占有代理人。
  ------------- C
    預かる     181条⇒占有権は、代理人によって取得
     ◆     ,垢襪海箸できる。
            
            条文に則すると、B、C本人は、(占有)
            代理人Aによって、占有権を取得。
 
 代理占有の要件としては、ア 代理人がが所持。 イ 代理人が
 本人 のために所持する意思を有する。 ウ 本人代理人間に
 占有代理関係の存在。  ウについては、代理人が本人の占有
 すべき権利に基づいて所持するという外形があり、本人に対して
 返還義務を負う関係。
 本問では、Aが本人B・Cのために預かるという関係´△
 おいては、代理占有が成立している。

 以上の代理占有がどうして生じたかといえば、譲渡人であるAが
 譲受人であるB・Cの占有代理人となって引き続き所持する場合
 に該当し、Aが事後B.Cのために所持する旨約束している
 のだから、本問の´△蓮△い困譴癲∪衢改定による占有権
 の譲渡の場合に当たるたる。

 占有権の譲渡は、いくら物の実際の引き渡しが原則(182条1項)
 だといっても、 何がなんでも、いったん、AがBに引き渡し、
 Bから預からないと 駄目というのは、ナンセンスである。
 占有改定の認められる所以である。
 この点については、他の占有権譲渡である、簡易の引渡し
(182条2項)・ 指図による占有移転に基づく占有権の譲渡
(184条)も同様であって、これらについては、現実の引渡し
 が無意味である。

 イ 即時取得

 即時取得は動産の占有に公信力を与え(占有している者が
 無権利者であっても、これを取得した者が権利を取得する)、
 動産取引の安全をはかる制度。

 その要件

 (ア)動産に限って適用。
 
 (イ)取引によって動産の占有を取得すること。
 
 (ウ)相手方が目的物たる動産を処分する権限をもたないのに、
 もっていると誤信して取引をしたこと。
 
 (エ)取引によって権利を譲り受けた者が善意にして無過失
 であること、および取引が平穏かつ公然に行われること。

 その効果

 その取引によって外形上取得される所有権(または質権)
 が真実に取得される。

 
 ウ 占有改定と即時取得

 本問では、占有改定と即時取得の関係が問われている。
 関連する事柄も含めて、順次検討しよう。

          占有改定
                
         -------------- B
       A   
        -------------- C
         占有改定
          
 
 (ア)まず、,砲いて、AがBに売却し、その後、Aは
 Bのために預かっているのだから、AからBに対して、
 占有改定による占有権の譲渡があったことになる。
 178条によれば、動産の譲渡の対抗要件は、動産の引渡しであり、
 この引渡しには、占有改定も含む。したがって、Bは以後
 二重譲渡を受けた者に対しては所有権取得を対抗できる。
 
 (イ)したがって、かりに△砲いて、、二重譲渡を受けたCが、
 占有改定による 引渡しを主張しても、BはCに対して所有権を
 対抗できる。

 (ウ)しかし、△砲いて、Cに即時取得が認められると、C
 が所有権を取得する。本問では、Cは、Aが処分権限を持たない
 ことに善意無過失であり、即時取得の要件を具備しているように
 みえる。しかし、判例は、即時取得には、占有改定の適用がない
 とした。(最判昭和32・12・27・・最判昭和35・2・11・・)
 つまり、即時取得の要件として、イ(イ)の取引によって動産の
 占有を取得することとは、現実に目的物の引渡しを受けることが
 要求されることになる。

 したがって、Cがこの絵画を即時取得とする本問は、妥当でない
 ことになる。

 確かに、本問では、即時取得には占有改定の適用がないという
 理解があれば、即正解が得られるが、問題がだんだんと難しく
 なっている将来の本試験に立ち向かうには、これから述べる
 発展問題への対処が大切になる。そのためには、いままで
 述べてきたことに対する正確な理解が前提になる。

 ウ 関連(発展)問題の考察(民法 1 内田 貴著 参照)

 (1)判例の立場では、Cが即時取得しないため、,裡造所有権
 を取得することになる。そうすると、早い者勝ちになる。

 (2))それでは、占有改定によって、即時取得し得るという学説
 によればどうなるか。Aが処分権限をもたなくても、Cが所有権
 を即時取得することになり、結局遅い者勝ちになる。

 (3)以上、どちらにも難点があるとして、BとCを平等に扱う
 学説が最近有力である。
 それによると、占有改定で一応即時取得は成立するが、まだ
 確定的ではなく、現実の引渡を受けることによって確定的になる
 とする。

(2)の学説によれば、AからBに絵画が返還されていても、Cは
 なおBに引渡しを求めることができるのは、Cの保護に傾きすぎる。
 (1)の判例の立場によれば、△裡辰現実の引渡しを受ければ、
 即時取得することになるが、これを阻止するために、Bが自分が
 買主だとCに通告してしまえば、Cは悪意になり即時取得しない。
 しかし、当該(3)説によれば、Cは、現実の引渡しを受ける以前
 の取引の段階で一応、即時取得しているので、Bの以上の阻止行為
 は何らの意味をもたない。

 Cの占有改定による
  即時取得         
           BのCに対する通告
                  
           善意  ↓  悪意
     
          A--------取引--------引渡し

          (3)説    判例

         一応即時取得   即時取得しない

 
 当該(3)説の総括

 Bの立場 占有改定によって所有権取得を他の者にに対抗
     (178条・183条)
      →しかし、Cの占有改定による即時取得(192条)
      によりCが優先
      →ただし、Cが引渡しを受けて、Cの即時取得確定
      
            BはCより先に引渡しを受ければ、勝ち

 Cの立場 原則→即時取得によりBに優先・しかし、引渡しに
      よって確定
      →先にBが引渡しを受ければ劣後
     
            CはBより先に引渡しを受ければ、勝ち

 したがって、BとCは早い者勝ちでもなく、遅い者勝ちでもなく、
  対等。


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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 11回 】★      
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 2009/2/9

             
             PRODUCED by  藤本 昌一
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【テーマ】 憲法・職業選択の自由

【目 次】 1 職業選択の自由の規制について

       2 解説


 
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■ 問題
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 (平成12年度過去問)

 問題 36

 次の文章は、ある最高裁判決の一節である。これを読み、A B
 (漢字各2字)に当てはまる最も適当な語句を記入しなさい。

 一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を
 越えて、狭義における職業の A の自由そのものに制約を課
 するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その
 合憲性を 肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益
 のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、
 それが社会政策ないし経済政策上の B 的な目的のための措置
 ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を
 防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に
 比べて職業の自由に対するゆるやかな制限である職業活動の内容
 および態様に対する規制によっては右の目的を十分に達成する
 ことができないと認められることを要するもの、というべきである。
 


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■ 解説
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 ◆ 総説

 本問で問われている分野は、各種国家試験において、頻繁に出題
 されているところであり、行政書士試験でも、今後、違った形で
 出題される可能性があるので、本問を通じて、要点を押さえておく
 必要がある。

 なお、問題形式としては、本問のような記述式は、出題されなくなり、
 40字程度の記述式に形を変えている。しかし、憲法に関しては、
 現在のところ、記述式の出題はなく、五肢択一式のほかに、
 多肢選択式が採用されている。このあたりについても、過去問
 の検討によって、よく把握しておく必要がある。

 ただし、いかなる出題形式が採用されようと、準備段階の勉強の
 過程においては、要点を押さえておくことが肝要である。

 なお、この解説については、主に芦部信喜著 憲法 岩波書店
 を参照 した。


◆ 要点

 把握しておくべき要点としては、1 狭義における職業選択の
 自由  2 二重の基準 3 消極目的規制 4 積極目的規制
 がある。

 これらの要点ついて、本問に則して説明してゆくが、その前提
 として、以下のことを把握する必要がある。

 本問で引用されている最高裁判決は、薬局距離制限事件(最大判
 昭和50・4・30・・H21模六法 22条 3 25頁)であって、
 この判決は、3の消極目的規制を採用した。

 1 狭義における職業選択の自由(要点図)

                            
                                  狭義における職業選択の自由 
                                    
  広義における        
                    │──自己の従事する職業を決定する自由 
  憲法22条の保障する──                                     
  職業選択の自由        │──自己の選択した職業を遂行する
                                       自由(営業の自由 )   
                       

                                            
  本問の引用する判決に則して言えば、許可制は、許可がなければ、
  その職業を「決定」できないのだから、上図の狭義における職業
  の「選択」の自由そのものに制約を課することになる。

  したがって、Aには、選択が入る。

 この許可制に対して、判決文でいう、「単なる職業活動の内容
 及び態様に対する規制」というのは、上図の営業の自由に対
 する規制になる。
 
 前者の選択の自由そのものの制約は、後者の営業行為に対する
 制限よりもよりも、より「強力な制限」(判決文)となるのは
 当然である。

 2 二重の基準 

 そこで、職業選択の自由に対する規制が合憲であるための基準
 が問題になるが、その一つが二重の基準である。
 この二重の基準というのは、「表現の自由を中心とする
 精神的自由を規制する立法の合憲性は、経済的自由を規制する
 立法よりも、とくに厳しい基準によって審査されなければ
 ならない、という理論である」(前掲書)
 ここでいう経済的自由権の中には、職業選択の自由が含まれる。
 この理論の主体は、精神的自由権であるが、職業選択の自由に
 関連して把握しておく必要がある。
 なお、この理論は、判例(最判平成7年・3・7・・以下の過去問
 で引用されている)にも導入されている。

 この二重の基準については、平成17年度問36で出題されている。

 3 それでは、具体的に職業選択の自由に対する規制の合憲性
 基準について説明をする。そのひとつが、消極目的規制である。
 これは、警察的規制とも呼ばれる。「主として国民の生命および
 健康に対する危険を防止もしくは除去ないし緩和するために
 課せられる規制であり、各種の営業許可制がおおむねこれに
 属する。」(前掲書)
 その規制には、「合理性」の基準が用いられる。
 ここでは、「厳格な合理性」の基準による。すなわち、「同じ
 目的を達成できる、よりゆるやかな規制手段の有無」の審査が

 行われる。

 4 次に、積極的目的規制について、説明する。これは、
 「福祉国家の理念に基づいて、経済の調和のとれた発展を確保
 し、とくに社会的弱者を保護するためになされる規制であり、
 社会・経済政策の一環としてとられる規制である。大資本から
 中小 企業を保護するための競争制限、または、中小企業相互間
 の過当競争の制限など。」(前掲書)
 この場合にも「合理性」の基準が用いられる
 ここでは、「明白の原則」の基準による。すなわち、「当該
 規制措置が著しく不合理であることが明白である場合に限って
 違憲とする」方法をとる。(前掲書)立法府の広い裁量
 が認められ、3と比較すると、規制立法の「合理性」の有無
 の有無がゆるやかであるのが特徴である。

 5 以上述べたところを、ざっと整理すると以下のようになる。


  ■規制の合憲性判定の基準  厳格  ○ 
            
                                ゆるやか △
                    (立法府の広い裁量)

 
  ■二重の基準

  精神的自由 ○
 

  経済的自由 △  職業の選択の自由 消極目的規制 ○
                   
                                             「厳格な合理性」

                           積極目的規制 △
                           (政策的規制)
                   
                                              「明白の原則」

 6 それでは、以上の記述の理解を前提として、問題文の
 判決文を検討する。

 前段以下の判決文は、薬局開設の距離制限事件について、
 許可制に基づく消極目的規制による厳格な合理性を説明
 している。中段では、政策的規制である積極目的規制
 と比較しているので、Bには積極が入る。

 したがって、Bは積極である。

 なお、後半部分の検証もしておく必要がある。そこでは、
 さきにみた、「厳格な合理性」が適用されていることが
 分かる。すなわち、職業選択の自由そのものに対する制約
 である許可制ではなく、「同じ目的を達成できる、より
 ゆるやかな規制手段の有無」の審査が実行されるべきこと
 が述べられているのである。
 また、判決文にいう「ゆるやかな制限である職業活動の
 内容および態様に対する規制」というのは、冒頭で明らか
 した要点図に従えば、狭義の職業選択の自由に対比される
 営業の自由に対する規制に該当することになる。

 7 最後に、この薬局・・・事件の判決を含め、職業選択
 の自由に関する最高裁の判決を概観しておく必要がある。
 面倒ではあるが(正直、私もここで打ち止めにしたい!)、
 残念ながら、ここも、本試験の射程距離なのである。
 なお、以下の(1)(2)(3)いずれも、開設に距離
 制限が要求されるため営業許可が必要とされるが、その
 合憲性が争はれたもの。


 (1)小売市場距離制限事件(最大判昭和47・11・22・・
 平成21模範六法 22条 2 25頁)

 ア 規制目的・経済的基盤の弱い小売商を相互間
 の過当競争による共倒れから保護するという積極目的の
 規制。
 イ 「明白の原則」が妥当するとして、規制合憲。

(2)本件薬局・・・(前記模六 22条 3 25頁)

 ア 規制目的・薬局の距離制限は国民の生命・健康に
 対する危険の防止という消極目的(前述)
 イ 薬局の偏在→一部薬局の経営の不安定→不良薬品の
 供給の危険性という因果関係なし。適正配置規制は違憲。
 ウ 立法目的は,よりゆるやかな規制規制手段(行政上の
 取締の強化)によっても達成できる。(前述)
 
 (3)公衆浴場距離制限事件

 ア 濫立による過当競争→経営の不合理化→衛生設備低下
 のおそれ→国民保健および環境衛生を保持する上から防止
 するための規制つまり消極目的規制・合憲(最大判昭和30・
 1・26・・前記六法22条 1 25頁)

 イ 規制目的は、業者が経営の困難から転廃業することを
 防止するという積極的・社会政策的なものであると捉え、
 「明白の原則」を適用して合憲。(最判平成元1・20・・)

 本件は、同じ事実が、消極から積極へと転換したこと
 から、二つの規制目的による基準が絶対的なものでなく
  なったことが知れる(重要)

 さらに、規制の目的を積極・消極にいずれかに割り切り、
 違憲審査の基準をそれに対応させることができない場合
 もあることを知る判決として、酒類販売免許事件(最判
 平成4・12・15・・)がある。これは、知識として、頭に
 入れておく必要がある。


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