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          ★ 【過去問の詳細な解説】 第69回 ★

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                       PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 行政事件訴訟法

     
  【目次】   問題・解説


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 ■ 問題 平成21年度問題18
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   行政事件訴訟法の定める当事者訴訟に関する次の記述のうち、正
 しいものはどれか。

 1 当事者間の法律関係を確認しまたは形成する処分に関する訴訟
  で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするも
  のは、当事者訴訟である。

 2 地方自治法の定める住民訴訟のうち、当該執行機関または職員
   に対する怠る事実の違法確認請求は、当事者訴訟である。

 3 国または公共団体の機関相互間における権限の存否に関する紛
   争についての訴訟は、公法上の法律関係に関するものであるから、
  当事者訴訟である。

 4 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされな
   いとき、行政庁がその処分をすべき旨を命ずることを求める訴訟
   は、当事者訴訟である。

 5 公職選挙法に定める選挙無効訴訟は、国民の選挙権に関する訴
  訟であるから、当事者訴訟である。

   
 
  

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 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 ◆ 序説

   本問は、行訴法4条の条文が頭にあれば、1が正しいもので
 あると即答し得たであろう。

 しかし、それだけでは、解説にならないので、将来の本試験を
 見据えて、より詳しく見ておく必要がある。「当事者訴訟」は
 近時注目をあびているようであり、今後とも形を換えて出題
 される可能性がある。
  
 ◆ 総説

  
  行政訴訟は、主観訴訟と客観訴訟に分かれる

 
 ○ 主観訴訟=権利保護の制度・つまり救済の制度。

  
    抗告訴訟と当事者訴訟に分かれる。

    「抗告訴訟」=取消訴訟・無効等確認訴訟・不作為の違法確認
           ・義務付け訴訟・差止訴訟


     「当事者訴訟」=実質的当事者訴訟・形式的当事者訴訟

 

 ○ 客観訴訟=権利救済のためでなく、国・公共団体の違法行為を
                是正し、その活動の適法性を確保することを目的と
                する。


     「民衆訴訟」・「機関訴訟」


 (前掲書・読本 266頁の図表を参考にした)


 ◆ 各肢の検討

 
  ●  肢1について。
 
   本肢は、行訴法4条前段の「形式的当事者訴訟」である。
 
  これに対比されるのが同条後段の「実質的当事者訴訟」である。 

  いずれも、総説の「当事者訴訟」に含まれるる。
 
  いずれにせよ、本肢が当事者訴訟であることに相違ないから、本肢
  は正しい。

   以下において、「形式的当事者訴訟}について説明する。
  
   まず、条文の意味するところは、難解であるが、「本来は取消訴訟
  であるべきところ、法律の規定により当事者訴訟とされているので
  『形式的当事者訴訟」と呼ばれている。」(読本270頁)

 「この訴訟の代表例は、土地収用の場合において土地所有者に支払
   われる損失補償に関する争いである。損失補償は、都道府県に設
   けらている収用委員会の裁決によって定められるが、、裁決は
   行政処分であり・・従って土地所有者がその損失補償に不服がある
   場合には、本来収用委員会を被告として取消訴訟を提起しなければ
   ならないはずである。ところが、土地収用法133条2項は、損失
  補償に関する訴訟は、損失補償の法律関係の当事者つまり、土地
   所有者と土地所有権を取得し補償の義務を負担する起業者との間
   で行われるべきものとしている。」(読本270頁)

  条文の定義は、上のような関係の訴訟を意味しているとされる
 (このあたりまでの把握は、本試験の射程距離といえるのでは
    ないか)。

  これに対して、行訴法4後段の「実質的当事者訴訟」に関しては、
  最大判H17・9・14を参照すべきである(これも本試験の射程
  距離といえる)。

   在外国民が「次回の衆議院の総選挙における小選挙区選出議員の
 選挙および参議院の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において、
 在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票できる地位にあ
 ること」の確認を求める訴えは「公法上の法律関係に関する訴え」
 として確認の利益が肯定され適法である。

 (入門211頁以下・読本337頁以下)

  なお、この他、当該訴訟の例として、「公務員の身分の確認を求
 める訴訟や公務員の俸給の支払を求める訴訟などがこれに該当する。」
 とされる(読本 269頁)

 
  ☆  関連事項

   過去問 平成19年度・問題19をみよ!!

  行政事件訴訟法4条の当事者訴訟に当たるものの組合せとして
 正しいものとして、次の肢が挙げられている。

  ア  土地収用法に基づいて、土地所有者が起業者を被告として
  提起する損失補償に関する訴え

 オ 日本国籍を有することの確認の訴え


 アが、形式的当事者訴訟であり、オが、実質的当事者訴訟である。

 
  ● 肢2・肢5について

   地方自治法242条の2に定める「住民訴訟」は、行訴法5条
  が規定する民衆訴訟である(総説・○客観訴訟「民衆訴訟」参照)。

   肢2のように、「住民訴訟」のうち、一部が「当事者訴訟」に
   になることはない。

   選挙に関する訴訟は公職選挙法(203条以下)で定められ、
   これもまた、民衆訴訟である(総説参照)。
   肢5は誤り。
  
   次の指摘に注意。

   「選挙に関する訴訟は公職選挙法(203条以下)で定められ、
    住民訴訟は地方自治法(242条の2)で定められている。
    行政事件訴訟法5条の規定は、それらの訴訟を行政訴訟に
    組み込むという意味を持っている」(読本271頁)
        
              ↓

     このように、法律・条文の仕組みを体系的にとらえる
     ことが重要。

              ↓

     過去問を素材として、「行政法」の体系的理解を!!
     という実践例(その他講座では、このような指導は
     しないというのが、私の実感)。

 ● 肢3について

     本肢は、行訴法6条の機関訴訟である(総説・○客観訴訟
     「機関訴訟」参照)。当事者訴訟ではない。

     次の指摘に注意

   「機関訴訟も、法律が定めている場合に限り、法律で認
    められた者だけが提起することができる」(読本271
        頁)

 ● 肢4について

  本肢は、行訴法3条6項の規定する「抗告訴訟」のなかの
  義務付け訴訟である(総説・参照)。

  なお、次の条文は、常に念頭におくべきである。

   行訴法3条1項

   この法律において、「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力
  の行使に関する不服の訴訟をいう。

   行政事件訴訟法の中心的命題である。      


 
 
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    ★ 過去問の詳細な解説《第2コース》第67回 ★

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 ■ 問題 平成21年度問題16
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
   行政事件訴訟法に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものは
 いくつあるか。

 
 ア  国の行政庁がした処分に関する取消訴訟の被告は、国である。

 イ 国の行政庁が行うべき処分に関する不作為の違法確認訴訟の被告
  は、当該行政庁である。

 ウ 国の行政庁が行うべき処分に関する義務付け訴訟の被告は、当該
   行政庁である。

 エ 国の行政庁が行おうとしている処分に関する差止め訴訟の被告は、
   当該行政庁である。

 オ 国又は地方公共団体に所属しない行政庁がした処分に関する取消
   訴訟の被告は、当該行政庁である。

  
 1 一つ

 2  二つ

 3 三つ

 4 四つ

 5 五つ


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 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 
  ◆ 序説

   サイト41回を参照すれば、本問は容易に正解に達するはずである。

 ☆サイト第41回はコチラです↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/854713.html
 
 したがって、過去において、当講座に参加されていた方は、該当箇所
 に目を通していただいておれば、21年度のこの問題は、即座に正解
 に達したはずである。

  とはいっても、当該論点は、普通の教科書には、普通に掲載されて
 いるのだろう。

 

 ◆ 本論

   以下において、本問と関連する箇所について、過去問と対照しながら、
 要点を再説する。

 (1)平成17年度過去問・問題16

   平成16年の行政事件訴訟法改正では、行政訴訟における国民の救済
 範囲の拡大と国民にとっての利用しやすさの増進がはかられた。次の
 記述のうち、改正法でなお実現されなかったものはどれか。

 肢1
 
   従来、抗告訴訟における被告は行政庁とされていたが、改正後
 は、国家賠償法と同様に、国または公共団体を被告とすることに
 なった。

 《解答欄》
 
  これは、被告適格の問題である。改正法で実現されたものであるから、
 肢としては、正しくないことになる。
 
 平成16年に改正された行政事件訴訟法11条1項によると、
 処分または裁決をした行政庁が国または公共団体に所属する場合
 には、取消訴訟は、それぞれ、国またはその公共団体を被告として
 提起しなければならないことになっている。

   なお、この11条の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟 にも適用
 されることになっていることに注意せよ!!(同法38条1項)。

   内容を明確にするため、「入門」(224頁以下)から、次の文章
 を引用する。
 
 「民事訴訟法の原則からいえば、これはあたりまえのことですが、
  じつは今回の法改正の以前においては、『処分の取消しの訴えは、
 処分をした行政庁を、裁決の取消しの訴えは、裁決をした行政庁
 を被告として提起しなければならない」とされてたのでした
 (改正前11条)。
  ・・・・・・・・
 『行政庁』は、『処分または裁決をおこなう権限を与えられている行政
 機関』のことだ、と考えておけばよいでしょう。
 
 こうして旧法のもとでは、 たとえば、課税処分の取消訴訟だったら、
『国』を相手として訴えを起こすのではなく、その課税処分をした税務
 署長 を相手としなければならない。

  運転免許取消処分の取消訴訟だったら、知事ではなくて、免許を取り消し
 た公安委員会を被告として訴えを起こさなければならない、という状態
 でした。

  これは大変まぎらわしいことですが、ここのところをまちがえると、
 それだけで訴えは門前払い(却下)になってしまったわけで、国民の
 権利救済制度という見地からは、大きな問題がありました。

  そこで、 今回の法改正では、これを改めて、民事訴訟の原則に戻す
 ことにした・・」
 
   本肢では、国家賠償法が挙がっているが、これは民事訴訟法の適用
 を受けるので、以上述べたことは、国家賠償法にも妥当する。
 
   なお、「入門」による次の指摘にも注意せよ。

  「国または公共団体が被告になる場合でも、訴訟において、実質的には
   行政庁が主体となって活動することとなっています(法11条4項〜6項を
   参照)。」
 
                        ↓
 ◎ 本問のア・イ・ウ・エについて。

 アの取消訴訟の被告が「国」であることは、前述したとろにより正しい。

 行訴法3条各号によれば、「不作為の違法確認の訴え」(5号)、
「義務付けの訴え」(6号)、「差止めの訴え」(7号)はいずれも、
 抗告訴訟であるから、前述したところから明らかなように、行訴法38
 条1項の規定の準用により、いずれも、被告は「国」である。
 
  したがって、被告を「当該行政庁」とするイ・ウ・エはいずれも誤り
 である。

  


 (2) 平成18年度・問題18

  平成16年の行政事件訴訟法改正後の行政事件訴訟制度の記述として、
 正しいものはどれか。

 肢 3

   処分が、国または公共団体に所属しない行政庁によって行われた
 場合、 当該処分の取消しを求める訴えは、処分取消訴訟に替わり、
 民事訴訟によることとなった。

 《解答欄》

  これもまた、被告適格に関する問題であるが、以下により、正しくない。

  法11条1項では当該行政庁の所属する国または公共団体に被告適格
 があるが、本肢の場合には、11条2項により、当該行政庁を被告とす
 る抗告訴訟を提起することになる。平成16年の改正により追加された
 条項である。

                    ↓

 ◎ したがって、本問の肢オは正しい。


 ◆  総括

   以上により、本問は、アとオが正しいことになるので、正解は2である。

  本問は、行訴法11条と38条1項の適用により正解に達する問題では
  あるが、解説欄において述べたことを把握しておけば、応用力がつく。
 
    この問題については、関連部分に関し、将来とも出題される可能性が
 ある。本講座においても、将来有料メルマガで出題する見込みだ!!

  
 ◆ 付言

   以上の体験を通じて、過去問の肢の一つひとつの検討の重要性が痛感
 される。いうならば、過去問を素材として、「行政法の体系的理解」が
 肝要であるということである。
 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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     ★ 過去問の詳細な解説《第2コース》第63回★
      
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 【テーマ】 行政行為の取消しと撤回
         

 【目次】   問題・解説

 

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■ 問題 平成10年度問題34
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
   行政行為の取消し及び撤回に関する次の記述のうち、正しいもの
 はどれか。

 1 行政行為の撤回とは、有効に成立した行政行為について、その
  成立に瑕疵があることを理由として、遡及的にその効力を失わし
  めることをいう。

 2 授益的行政行為については、これを取り消すことによって当該
   行政行為の相手方の権利又は利益を侵害することにならない場合
   に限り、取り消すことができる。

 3 行政行為に撤回権が留保されている場合は、当該行政行為の
   撤回は、無制限に行うことができる。

 4 行政行為の撤回をなし得るのは、処分庁又は裁判所である。

 5 審査請求に対して裁決を行った行政庁は、当該裁決後に当該
   審査請求に係る行政行為に新たに違法又は不当な事由を発見し
   ても、当該裁決を取り消すことができない。
    

  
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■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣
 

 肢1について 

 
 行政行為の取消しと撤回の違い

 (1 ) 行政行為の取消しは、行政行為成立時の違法性を理由に取り
     消すものであり、

       効果としては、原則として遡及効あり(行政行為の効果を行政
     行為時にさかのぼって失わせる)。

 (2 )行政行為の撤回とは、行政行為が行われた後に発生した事情

   (事後的事情・後発的事情)を理由として、当該行政行為を破棄
 
     することを言う。

      効果としては、遡及効なし。

 
  注  法律の中では、撤回は「取消し」と表現されている。


   以上の記述からすれば、「その成立に瑕疵があることを理由として、
 遡及的にその効力を失わしめる」のは、(1)の行政行為の取消しで
 ある。

  本肢は誤りである。

 
 肢2について


   ここでは、「授益的行政行為」の概念を把握することが大切である。
   そのためには、これと反対の概念である侵害処分と対比することに
 より「授益的行政行為」の理解が深まる。

  以下の記述に注意せよ!!

          ↓
 
 (1)侵害処分とは、その相手方の権利や利益を侵害するものである
     から、申請によらず、職権によって行われる。
   
(2)これに対し、申請に基づいて行われる処分のほとんどは、その
   性質上授益処分である。

(3)行政手続法の規定によれば、(1)が第3章の不利益処分であり
 (2)が第2章の申請に対する処分である。

(4)建築確認が(2)に該当する授益処分であるのに対して、税務署
  の課税処分が(1)に該当する侵害処分の典型である。

 注 授益的行政行為と授益処分は同義である。

 
   ここで、建築確認(授益的行政行為の典型)を例にとって、本肢に
 即して説明する。

  行政庁が後から当該建築確認の違法性を認めて取り消しをすれば、
 必ず、「当該行政行為の相手方の権利又は利益を侵害することに
 なる」から、この肢は、事実上、授益処分についての「職権取消し
 否認説」に立っていることになる。

 しかし、この説は、次のように批判される(読本)。
 
「法治主義の原則から生じる違法状態の解消よりも、相手方の被る
 であろう不利益を重視するものであって・・・一面的な考え方」
 である。
 
   職権取消しを肯定する説は、次のように述べる(読本)。
 
「授益処分については、行政処分の違法性がどの程度か、職権取消し
 をすれば相手方に生じる不利益はどの程度のものか、不利益を緩和
 する措置をとることができないかどうか、といったことを総合的に
 考慮して 職権取消しが認められるどうか判断すべきである。」

  以上のとおり、本問は微妙な問題であるが、相手方の利益などを
 侵害すれば、取り消しができないとするのは、一面的であって、
 相手方の権利を侵害しても、総合的判断により取り消し得るという
 のが正しい。

 本旨は誤りである。

  
 肢3について

  撤回権の留保について
 
   行政行為の付款(注)として、「公益上必要がある場合には当該
 行政処分を取り消す(撤回する)」旨が定められていることがある。
  これが撤回権の留保である(読本)。

 注 付款とは、行政行為の主たる意思表示に対する内容に付加された
  行政庁の従たる意思表示のこと(行政法入門講座 週刊住宅新聞社)

   この撤回権の留保は、「例文である」という指摘や「行政裁量
 の限界を超える付款は違法である」という記述(読本)からすると、
 無制限行使を認める本肢は、明らかに誤りである。
 
 端的に言うと、撤回とは、一端与えた免許(自動車の運転など)を
 取り上げることであるから、常に合理的理由を要する。
 

  本肢は誤りである。


 肢4について

   行政行為の撤回とは、当該行政行為を破棄することであるから、処分庁
 のみがなし得る。

  本旨は誤りである。 

 
 肢5について

   以下に記述する不可変更力(確定力)についての説明をみよ。

         ↓
 
 これは、行政行為を行った行政庁がみずから、一度行った行為を取消す
 ことは(職権取消し)はできない、という効果のことである。

 これは、ほかの効力とは異なり、行政行為の中の特定の種類のものに
 だけこの効力がある。この効力は、裁判判決に一般に認められるもの
 であって、裁判に対する国民の信頼確保のために、一度くだした判決
 をみずからこれを取消すことを許さないとしたものである。
 
   これと同じように、行政行為の中でも特に異議申立てに対する決定、
 ・・・・・・・・・・・ 
 審査請求に対する裁決など、その性質の上で裁判判決に似たような
 目的を持つものには、このような効力が認められる、ということが
 判例・学説の上で認められている(入門)


  以上の記述により、本旨は正しい。

  したがって、5が正解である。


 付 言

   本問は、行政行為の不可変更力(確定力)に関する知識があれば、
 正解に達するが、将来の本試験対策としては、肢2に注目されたい。

 その論点である、侵害処分と授益処分 授益処分の職権取消しなど
 についての正確な理解が望まれる。
  
   


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       ★ 過去問の詳細な解説《第2コース》第60回 ★
      
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 【テーマ】 弁済供託
         

 【目次】   問題・解説


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 ■ 問題 平成13年度問題10
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 
   弁済供託に関する次の記述のうち、最高裁判所の見解として
 妥当なものはどれか。
 
 1 弁済供託は、弁済者の申請により供託官が債権者のために
   供託物を受け入れ管理することを内容とする民法上の寄託契約
   の性質を有するから、弁済者からの供託金払戻請求は、民法上
   の寄託物返還請求である。

 2 供託官が供託金払戻請求を理由がないとして却下した行為は、
   行政処分であり、これを不服とする場合の訴訟形式は行政事件
   訴訟の方法によるべきである。

 3 供託金払戻請求権の消滅時効は、公法上の金銭債権についての
   5年である。

 4 供託金払戻請求権の時効は、供託官において、その請求権が
   行使されることを客観的に知ることができる供託のときから
   進行する。

 5 供託官が供託金払戻請求を理由がないとして却下しても、
  審査請求することはできない。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
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 ▲ 参照書籍 民法 2 勁草書房  
  

 ● 序論
  
  本問は、「供託」を通じて、公法・私法・民法・行政法
 (行政処分/行政事件訴訟法/行政手続法・供託法)にまたがる
 幅広い問題です。  
 
 ● 本論(各肢の検討)

 
  肢1・2について

   この際、弁済供託・寄託契約・供託金払戻請求・寄託物返還
 請求の概念を把握 しておくべきである。
 
   さらに、本肢にその文言はないが、(債権者の)供託金還付
 請求が問題になる。


 (1)民法上、寄託(657条)によって、寄託者による返還請求
  (662条・663条)が生じる。

  (2) (弁済)供託もまた、民法上、供託によってその効力が生じ
  (494条)、弁済者に供託金払戻請求(496条)が生じる。
    
   ここで、具体的にいかなる場合に供託がなされるかをみておく
  必要がある。
   
   家主(債権者)が大幅な家賃の値上げ請求をし、借主(債務者)
  の従来の家賃を受領しない場合、家賃債務を免れるため、借主
  は供託できる(民法494条)。
   
   この場合、債権者は供託された家賃を受領する受領権限を
    有する。
 
   家主は、翻意して、従来の家賃でよいと思って受領する場合も
    あれば、裁判において、値上げした家賃の妥当性を争いながら、
    とりあえず、その一部でよいと思って受領する場合もある(注)。

   注・「金額に争いのある債権について、供託金額が債権者の
        主張額に足らない場合でも、債権者が別段の留保なしに
    その供託金を受領したときは、その債権の全額に対する
        弁済供託の効力を認めたものと解される(最判昭和33
        .12・18)。」ことに注意《前掲書》。
    
        以上は、供託の主たる効果である、債権者の供託金還付
   請求権である。

   しかし、借主はいつでも供託した家賃を取戻すことができる。
  (民法496条)。この場合には、借主の家賃債務が復活する。
   これが、弁済者による供託金払戻請求権である。

  (3)供託は、寄託契約と異なり、私人間の行為ではなく、供託官
      に対する申請によって行われ、これに対する供託官の応答は、
   行政処分である。

   本肢1・2に対し、正確に解答するためには、以上(1)〜(3)
 の前提知識を要する。

 注目
 
 《市販の問題集によると、本問の難易度は、難となっているが、
 本肢解答の前提知識として、これら要素が凝縮されていると考えると、
 確かにそのとおりであろう。しかし、ひとつ一つを精査してゆけば、
 自ずと結論に達する。時間に余裕のあるある今の時期に難問に
 じっくりと取り組んでおくのも意味のあることだと思う》
 

 それでは、肢1を具体的に検討する。

 民法494条の供託と同657条の寄託を対比すると、次の
 文章は、正しい。このまま覚えておくとよい(判例通説)。

   弁済供託は、弁済者の申請により供託官が債権者のために
 供託物を受け入れ管理すること内容とする民法上の寄託契約
 の性質を有する。

   しかし、供託金払戻請求(前者)が、民法上の寄託物返還請求
(後者)と同じかと言えば、実質は預けた物を返せという請求で
 あっても、前者は、供託官の行政処分を求める申請である
(行手法 第2章・申請に対する処分 参照)のに対し、後者は、
 私法上の契約から生じる請求権であるという違いがある。

  また、実質的にみても、後者にあっては、寄託者は、いつでも
  返還を求めることができる(民法662条)のに対し、前者では
  債権者が供託を受諾した等のときは、払戻ができない(同496条)
 という違いがある。

   したがって、肢1は、前段は正しいが、後段は、誤りであるから、
  全体として妥当でない。

  
  肢2については、前述したところにより、当該却下処分は行政
  処分であり、これに対して行政事件訴訟を提起できるのは当然で
  ある。(最判昭和45・7・15)

   もし、払戻請求=寄託物返還請求であるとすれば、国を被告と
 して、民事訴訟を提起すべきことになる。念のため。


   肢3について

   会計法30条において、国の金銭債権または国に対する債権は、
 5年で時効消滅すると定められていることは、一応、行政法の
 基礎知識として押さえておくべきであろう。

  そうすると、供託金払戻請求権は、国に対する債権に該当するため、
 本肢は正しいようにも思える。

 しかし、判例は、弁済供託は、民法上の寄託契約の性質を有する
(肢1参照)ことを理由に、民法167条1項を適用し、10年が
 消滅時効期間となると解している(最判昭和45・7・15)。

 結局、本肢は誤りである。

   当該判例を知らなかったとした場合、公法上の債権は、すべて
 5年で 時効消滅するものではない。その性質によるという知識
 さえあれば、肢2の確実性のとの対比から、本問の誤りの可能性
 を推定できるであろう。

 要するに、判例を知らなければ、アウトではない。論理を積み
 重ねることの大切さを知るべきである。

 
   肢4について

  判例(前掲)は、つぎのように判示。

   弁済供託における供託物の取戻請求権の消滅時効は供託の基礎と
 となった債務について紛争の解決などによってその不存在が確定
 するなど供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時から進行
 する。

  これも、供託と時効の基礎知識が前提になる。
 
 (1)民法166条1項によると、消滅時効の開始時期は「権利を
  行使することができる時」である。
   前述したように、供託金払戻請求は、原則として、供託した
  時から行うことができる(496条)ので、その消滅時効も
  供託した時から進行するようにも思える。

   以上が本肢の立場であるが、前述の判例は異なる。

 (2)当該判例の言わんとするところは、以下のとおりである

       たとえば、紛争のある債務について、債務者が債務を免れる
     ため供託したが、後に裁判によって、供託の基礎になった債務
     が不存在とされた場合にはじめて、その時から当該取戻請求権
   の時効が進行する。
   
       さきに掲げた家賃については、この場合には相当しないが、
   たとえば、互いの話し合いで妥当な金額が決まり、供託期間
      中の家賃も含めて、借主が家主に全部持参した場合、供託の
   基礎になった債務が不存在になったため、このときから
   供託金取戻請求権の時効が進行する。

    考えてみれば、以上の点は、当然のことである。供託に
   よって債務を免れるのは、債権者の供託金還付請求権の行使
   を前提にしているのであるから、債務者としては、通常は、
   紛争が解決するまでは、債権者の当該請求権の行使を妨げる
   供託金の取戻を行わないからである。したがって、この間も
   取戻請求権の時効が進行するとするのは、債務者にとって、
   酷である。

       以上により、本肢は、判例に反するので、誤り。

    この場合においても、判例を知らなくても、論理の積み重ね
   により、正解を導き得る。

  肢5について

  供託官の供託金払戻請求の却下処分は、行政処分である(肢2)
 ので、行政庁に不服申立てができる。
  
  本件では、行政不服審査法1条2項により、他の法律により特別
  の定めがある場合に相当し、監督法務局または地方法務局の長に
 審査請求できることになっている(供託法1条の4)。

    したがって、本肢も誤りである。

 
  以上により、正解は、2である。

 
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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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       ★過去問の詳細な解説《第2コース》第58回★
      
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 【テーマ】 行政強制
         

 【目次】   問題・解説


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■ 問題 平成21度問題10
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
  
   行政強制に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 1 法律の委任による条例に基づき行政庁により命ぜられた行為に
  ついては、行政代執行法は適用されない。
 
 2 義務の不履行があった場合、直接に義務者の身体や財産に実力
   を加えることを即時強制という。

 3 執行罰は、制裁的要素を有するため、同一の義務違反に対して
  複数回にわたり処することはできない。

 4 強制徴収手続は、租税債務の不履行のみならず、法律の定がある
   場合には、その他の金銭債権の徴収についても実施される。

 5 行政上の即時強制については、行政代執行法にその手続に関する
  通則的な規定が置かれている。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 △ 参考書籍 

 行政法入門・藤田 宙靖著  行政法読本・芝池 義一/有斐閣
 

 (1)全体的考察

   サイト35号の記述にしたがえば、本問はほぼ解答できる。
 ◆第35号はコチラ↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/768156.html
  
  さらに本年6月9日に配信したオリジナル問題23号をこなして
 いれば、本年のこの本試験問題は、完璧に正解に達し得たと思わ
  れる。

  
  (2)各肢の検討

 
 肢1について

   本肢は、行政上の強制執行制度において、原則な執行方法
 である行政代執行について、地方公共団体との関係をテーマ
 にしたものである。

 行政代執行法第2条(  )内には、条例も掲げられている
 ので、条例または条例に基づき行政庁より命ぜられた行為
 についても代執行できる。
 したがって、本肢のように「法律の委任による条例」の場合
 も「法律の委任によらない条例」の場合であっても、行政
 代執行法の適用により、代執行できる。

 以上、本肢は誤りである。

 
 ----------------------------------------------------------

   以上のテーマは、重要であるので、前記オリジナル問題23号
 の[問題3]の問題・解説を掲げておく。

 この際、関連問題として、確り頭に叩き込む要あり。

         ↓

 [問題3]

  地方公共団体と行政上の強制制度に関する次の記述のうち、正しい
 ものはどれか。

 1 公害防止条例で有害物質の排出基準を定め、それに違反している
  工場に対する操業停止命令の制度を設けたうえで、それを強制する
  ための執行罰を条例で導入することは許される。

 2 自然環境保全条例で、自然環境保全地域に違法に設けられた
 工作物についての除去命令の定めがある場合、相手方がそれに
  従わなければ、行政代執行法に基づき代執行を行うことができる。

 3 過料は、非訟事件手続法の規定に基づき、裁判所によって
 科されるので、地方公共団体の長がこれを一方的に科すこと
  はできない。

 4 条例により過料を科すことはできても、行政刑罰を科すことは
 できない。

 5 国税には、滞納処分手続が定められているが、地方公共団体
 の場合において、地方税には、そのような手続の定めはない。

  
 
 [解説]
 
 本問は「読本」と「入門」に従った。これは、難問に属する。正誤
 にこだわらず、ここで正確な知識を得るように努めるのが肝要と思う。

 1 行政代執行法第1条の問題。同条は、地方公共団体の行政庁に
   あっても、個別の法律があればその法律で認められている強制執行
   を行うことを容認する。しかし、法律によらず、条例によって
   強制執行手段を創設することはできない(読本)。
  本肢は、前段は正しいが、執行罰を条例で導入することはできない
 ので、後段は誤り。

  誤り
                    
 2 行政代執行法第2条は、「法律(・・・条例を含む・・)により
  直接命ぜられ」た行為について、代執行を認めている。したがって、
  カッコ書において条例を明示しているので、条例に基づく義務に
  ついても代執行できる(読本)

   正しい

 3 行政刑罰を科する手続が、刑事訴訟法の定めるところであるのに
  対し、過料を科する手続が非訟事件手続法に定められている。
  このように機械的に覚えておけばよい。
    また、過料は、地方自治法により、行政行為によって一方的に科
    される こともあるということも知っておくとよい(パラパラと
    条文。15条2項・149条3号・231条の3 3項・255条の3 など)
   (入門)

   誤り

 4 地方自治法第14条3項によれば、行政刑罰、過料いずれも一定の
   範囲内において科すことができる。

  誤り

 5 地方公共団体の場合については、地方税法で、国税の徴収手続に
   ほぼのっとった滞納処分手続が採用されている(条文省略)。
  (入門)

   誤り

 したがって、正解は2である。

----------------------------------------------------------


 肢2について

 強制執行の原則が代執行であるのに対して、行政代執行法は、別に
 法律で定めることを許容している。これに該当するものとして、行政
 上の「直接強制」がある。

   これが、本肢でいう、 「義務の不履行があった場合、直接に義務者
 の身体や財産に実力を加えること」である。

  サイト35号の解説を引用しよう。

 「別に法律で定めるもの(代執行法1条の原則以外)としての、
  行政上の強制執行に該当するのが、行政上の直接強制である。
  
 これは、結核患者が入所を拒んだら、強制的に療養所に送りこむ
 ようなことである。ただし、法律にこれを許す規定がないので、
 以上のことはできないことに注意。現在の法律で直接強制が認めら
 れているのは、ごくわずかである。

   直接強制に類似したものとして、消化活動のための土地・家屋へ
 の立ち入り・処分、酔っ払いの保護などの即時強制がある。」

 「 即時強制の具体例として、 目前の障害を除くという緊急の必要
   からして、相手方である私人に義務を命じているひまのない場合
  にも、消化活動のための土地の使用等が許される。したがって、
  事前に私人に対し作為義務を課していることは必要でない」

   以上により、本肢は、行政強制のうち、義務の不履行があった
 場合の強制執行の一つである「直接強制」の説明であることが
  分かる。

 これに対して、行政強制である「即時強制」は、義務の不履行が
 あった場合に義務の履行を目的とする強制執行ではない。

  本肢は誤りである。
 

 肢3について

   執行罰は、行政上の強制執行の一つであり、「義務を履行しない
 義務者に対して心理的強制を加えるために、金銭的な罰を科する
  という方法である。」
 (読本)。
  本肢の説明は、法律違反の行為に対する制裁を目的として行わ
   れる処罰すなわち、行政罰に関するものである。
  
    したがって、本肢は誤りである。

  ここでは、以下の2点を指摘しておく。


  1 わが国では、戦前では、執行罰も一般的に認められていたが、
   戦後では砂防法という法律で残っているだけである。(読本)

  2 執行罰は、行政罰と異なり、行政上の強制執行であるのだから、
     「義務の不履行が継続する限り、過料を繰り返し科すことができ」
   る。(LEC・行政書士合格基本書)

 肢4について。

   前記オリジナル問題[問題3]肢5と解説を参照せよ。

  そこでは、国税と地方税の「滞納処分手続」について述べられている。

   本肢はこれに関連した問題である。

  以下の記述が念頭にあれば、本肢は正しいことが分かる。

  「・・金銭納付義務の不履行に対しては、強制的徴収の方法がある。
     これは、正式には『行政上の強制徴収」と言う。典型的な例は、
   税金を自主的に納付しない場合に行われるものである。一般的
   に言うと、金銭納付義務が履行されない場合に行われるもので
     ある。法律上は、『滞納処分』と呼ばれている。差押え、差押
     えられた物件の公売といったプロセスがとられる。」
  (読本)


 肢5について。

    肢2でみたように、即時強制は、行政上の強制執行の種類に該当
  しないので、強制執行の原則である「行政代執行法」に即時強制
  の手続に関する通則的な規定が置かれることはない。

  誤りである。

    以上により、正解は、4である。

 (3)総括

   行政上の強制執行の種類として、1 行政上の代執行 2 執行罰
 
 3 行政上の直接強制 4 行政上の強制徴収の4種類がある。

   本問では、以上4種類がすべて登場するとともに、一部において、
 行政上の即時強制・行政罰と対比するという構成になっている。
 

 ※(注)
   行政強制一般については、用語の混乱を生じがちであるが、
   後日、オリジナル問題を通じて、有料メルマガにおいて、
   その整理を果たしたい。


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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第40回 】★      
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 2009/7/9


             
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【テーマ】続・行政不服審査法
 

【目 次】問題・解説 
           
      
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 問題
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  G 不服申立て要件として、異議申立てと審査請求のいずれを行う
   べきかなど。 

  ○ 不作為についての不服申立ての場合

 
 1 行政不服審査法によると、行政庁の不作為については、申請者は、
   異議申立てまたは審査請求のいずれかをすることができる。

 2 行政庁の不作為についての不服申立ては、不作為庁が主任の大臣等
   である場合を除くと、不作為庁への異議申立てと直近上級行政庁へ
   の審査請求のいずれかをすることができる。 

 3 不作為に対する不服申立が認められるのは、行政庁が法令に基づく
   申請に対し、相当の期間内に何らかの処分をすべきにもかかわらず、
  これをしない場合である。 

 4 行政不服審査法にいう「処分」には、「不作為」も含まれる。

 5 法における「不作為」には、申請が法令に定められた形式上の
  要件に適合しないとの理由で、実質的審査を経ずに拒否処分が
 なされた場合も含まれる。

    
    ○ 処分に対する不服申立ての場合

 
 1 行政不服審査法によると、行政庁の処分についての異議申立ては、
  「処分庁に上級行政庁があるとき」にすることができる。

 2 処分について、審査請求が認められている場合には、異議申立て
  はできないのが原則である。

 3 審査請求と異議申立ての両方が認められている処分については、
   そのいずれかを自由に選択できるのが原則である。
 
 4 審査請求は、処分庁または不作為庁に対してする。

 5 取消訴訟は他の民事訴訟と同じく3審制であるが、行政不服申立て
   の場合、異議申し立てに対する決定に不服があるものは、第三者機関
   に審査請求ができる2審制が原則として取られている。
 

  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
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 ▼ 参考書籍

  行政法入門・藤田 宙靖 行政法読本・芝池 義一
    ともに有斐閣 発行

 ▼ 前回、行政上の申立てにつき、AからFまで過去問の抜粋をしたので、
 今回は、Gを掲げる。○×で解答してください。出典を明らかにしないの
 も同様である。

 ▼ 不服申立て要件となっているのは、×の場合は、その要件を欠くため
 に原則として却下されるからである。

 
 ▼ 各肢の検討

 ○ 不作為について

 1について

  7条本文のとおり。○

 2について

  7条の条文どおり。○

 3について

 2条2項のとおり。○

 4について

  2条によると、不服申立ての種類として、「処分」と「不作為」という
 二つの概念に分けているから、「処分」に「不作為」は含まれない。×

 5について

  これは平成20年度過去問であるが、題意を明確に把握することが大切
 である。行政不服審査法第2条第2項によると、行政庁が法令に基づく
 申請に対し、「なんらかの処分」をしないことが不作為に該当することに
 なる。本肢のように形式上の要件に適合しないことを理由に拒否する
 ことも、申請に対する拒否処分にに該当する(行政手続法第2章・同7条)
  したがって、すでに行政庁の処分があったことになり、行政不服審査法
 7条に基づく不作為についての不服申立ては許されないことになる。


 ○ 処分に対する場合

 1について

  法6条本文1号。×

 2・3について

  この2と3の関係は複雑である。ここで、全体的な説明を行う。
 
 ア 不作為についての不服申立ての場合には、原則として、異議申立て
   でも審査請求でも選択できる(7条)
 
 イ 審査請求をするのが原則で、異議申立ては、審査請求ができない場合
 にだけ 、してもよい(5条・6条1号、2号参照)。

 ウ 法律上、どちらでもできる場合には、原則として、まず異議申立てを
   してからでなければ、審査請求はできない(6条3号・20条)。

  アは別として、2と3に対応するイとウの関係が複雑である。以下、
 各肢について検討する(これは、私独自の思考により考察したもの
 であり、皆さんもそれぞれに考察してください。実際、途中で頭髪
 をかきむしりたくなる・・・)。

 2について考えると、6条1号によると、処分庁に上級行政庁がない
 ときは、異議の申立てが原則である。しかし、処分庁に上級行政庁が
 ないとき(異議申立てが原則の場合でも)、5条2号・同2項によれば、
 法律に審査請求できる規定があれば、この法律の定める行政庁に審査
 請求ができる。この場合には原則として、審査請求が優先し、異議申
 立てはできない(6条ただし書き)。
 つまり、法の建前としては、処分庁に上級行政庁がないときは、処分
 庁に異議申し立て(3条2項)、処分庁に上級行政庁があるときは、上級
 行政庁に審査請求をする(法5条1号)のが大原則。しかし、処分庁に
 上級行政庁がないときでも、個別法において、審査請求が認められている
 場合には、異議申立てはできない。2は○。

  3について考えると、処分庁に上級行政庁がある場合には、審査請求が
 原則。しかし、個別法で異議申立てができることになっていると、不服
 審査法では審査請求・個別法では異議申立てができる。このように、法律
 上は、どちらでもできることになっている場合には、原則として、まず
 処分庁に異議申立てをしてからでなければ、審査請求はできないことに
 なっている(6条3号・20条)。したがって、この場合には、自由選択では
 なく、異議申立てが前置になるので、×。

  2と3を比較すると、2の場合、審査請求と異議申立てのいずれしか行う
 ことができないという問題であるのに対して、3の場合には、審査請求が
 異議を前置とするという問題であることに注意。また、実際には、3の
 ケースが多いようである(入門)。

 4 審査請求は、処分庁または不作為庁以外の行政庁に対して行い、異議
   申立ては、処分庁または不作為庁に行う(法3条2項)。これには例外
  はない。×

 5  前段の3審制は正しい。後段は、処分庁以外の行政庁を第三者機関
   というのであれば、この点は正しいが、行政不服審査法は、「異議
   申立て」と「審査請求」を異なった種類の不服申立てとしている。
    前者 の決定に不服のあるものに後者の申立てをするという2審制
   を同法は採用していない。×

 

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第5回 】★      
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 2009/1/12             PRODUCE by  藤本 昌一
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【テーマ】 憲法問題(統治機構)

【目 次】 1 司法権の限界(問題)

      2 解説


 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 憲法問題(司法権の限界)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  

(平成19年度過去問)

問題 5 

司法権の限界に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に
照らして妥当でないものはどれか。

1 大学は、国公立であると私立であるとを問わず、自律的な法規範
を有する特殊な部分社会を形成しているから、大学における法律上の
紛争は、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとど
まるかぎり、その自主的・自律的な解決にゆだねられる。

2 法律が、国会の両議院によって議決を経たものとされ、適法な手続
によって公布されている場合、裁判所は両院の自主性を尊重して、法律
制定の際の議事手続の瑕疵について審理しその有効無効を判断するべき
ではない。

3 政党の結社としての自主性にかんがみれば、政党の内部的自律権に
属する行為は、法律に特別の定めのない限り尊重すべきであり、政党
が党員に対して処分は、一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部
的な問題にとどまる限り、裁判所の審判は及ばない

4 衆議院の解散がいかなる場合に許されるかは、裁判所の判断すべき
法的問題であるのに対して、これを行うために憲法上必要とされる助言
と承認に瑕疵があったか否かは、国家統治の基本に関する政治的な門題
であるため、裁判所の審査権は及ばない。

5 具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争であっても、宗教上の
協議に関する判断などが必要で、事柄の性質上法令の適用により解決する
のに適しないものは、裁判所の審判の対象となりえない。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 

「司法権の限界」は、深く考えると、難しい問題ですが、ざっと、
基礎知識を取得して、あとは最高裁判所の判例を覚えることです。

条文・
憲法76条1項・すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところ
により設置する下級裁判所に属する。

以上の規定の意味するところは、法律上の争いは、すべて裁判所で判断
されることになるのですが、法律上の争いであっても、「事柄の性質上
裁判所の審査に適しないと認められるもの」(芦部326頁)があるという
のが、司法権の限界の問題です。

それぞれの肢を見てゆきましょう。

肢1について。
 
これは、団体の内部事項に関する行為については、司法権が及ばないと
される事例です。
大学においては、大学のことは、大学で決定するという大学の自治が、
憲法上保障(これは、憲法23条の学問の自由から導かれるものとして、
覚えておきましょう)されているので、その内部事項については、司法
権が及ばないのです。
 
模範六法平成21年版・憲法76条 18 39頁を見てみましょう。
(六法としては、この模範六法≪三省堂刊≫を手元に置いておく方が
よいでしょう≫)

大学における授業科目の単位授与(認定)行為は、一般市民法秩序と
直接の関係を有するものであることを是認するに足りる特段に事情の
ない限り、司法権の対象にならない。
(最判昭52・3・15・・・)

ざっと見て、問題文と同じ趣旨ですから、最高裁判所の判例の趣旨に
照らして妥当と解して差し支えないでしょう。
 
もう少し、詳しい説明を見てみましょう。
 
「・・最高裁は、国立大学の単位不認定処分が争われた富山大学事件で、
大学は国公立であると私立であるとを問わず、『一般市民社会とは異なる
特殊な部分社会を形成している』とし、『単位授与(認定)行為は、他に
それが一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯認するに
足りる特段の事情のない限り、純然たる大学内部の問題として大学の自主的、
自律的な判断に委ねられるべきものであって、司法審査の対象にはならない』」
と判示した。(最判昭和52・3・15・・・注前掲判例)」(芦部330頁)

 


以上を図示しますと、

      
              
A図
       
  外部              大学      内部
                 |
一般市民社会  ←―――|―――→ 「一般市民社会とは異なる特殊なる
                              部分社会」    
 (一般市民法秩序)     |      (大学の自治)
                    |   
    紛争  ←――     |―――→ 紛争 |碓娘与(認定)行為=
  司法審査の対象になる         純然たる大学内部の問題
                            として大学の自主的、自律
                           的な判断→司法審査の対象
                           にならない。

     
しかし、同じ判決で、最高裁は次のように判示しています。実は、ここが大
切なところですが・・・。
     
「学生が専攻科修了の要件を充足したにもかかわらず、大学がその認定
をしないときは(認定には格別教育上の見地からの専門的な判断を要しない)、
一般市民として有する公の施設を利用する権利が侵害されるので、司法審査
の対象となる」

 

図示しますと、
          

B図   外部      大学        内部
                 |
紛争←――――    | ――――→ 紛争
一般市民として大学を | ◆ヽ慇犬専攻科修了の要件充足・認定しない。
利用する権利侵害   |  →司法審査の対象になる。       

 

順序立てて説明しますと、

1 A図の説明。

,涼碓娘与(認定)行為については、大学教授が、教育的見地から専門的
判断に基づいて認定する大学内部の問題として、司法審査の対象にはなりません。
= 一般市民法秩序を害する紛争が司法審査の対象になるのに対して、これは、
そのような紛争ではありませんので、司法審査の対象から除かれるのです。

2 B図の説明
  
これに対して△両豺腓蓮大学教授が専門的判断に基づいて、単位を授与し、
学生は専攻科修了の要件を充足したのに、大学がこれを認定しない場合には、この認定には、「格別専門的見地からの専門的判断を要しないため」、司法審査の対象になり、裁判所がその適否を判断することになります。
 = この場合には、もし大学が、不法に学生に専攻科修了の資格を与えないとすると、大学を追い出されることになりますから、一般市民として大学を利用する権利を侵害されることになり、一般市民法秩序が害されることになるのです。

最後に蛇足になりますが、以上の説明から、肢 1 の文言やさきに引用した判決文の以下の文章の意味が分かったと思います。

肢 1 ・「一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り」
        
判決文・「他にそれが一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯認するに足りる特段の事情のない限り」


したがって、1 は、最奥裁判所の判例の趣旨に照らして妥当。


2の肢について。

これも、司法権の限界として、有名な最高裁判決です。

平成21年版模範六法・ 憲法58条 1 ・36頁 を見てみましょう。

両院において、法律として議決を経たものとされ適正な手続によって
公布されている以上、裁判所は両院の自主性を尊重すべく、議事手続に
関する事項を事実審理しその有効無効を判断すべきでない。
(最大判昭和37・3・7・・・)

2の肢の文章とほぼ同じですから、最高裁の判例に照らして妥当です。

それでは、覚えておくべき関連事項について、述べておきます。

憲法58条の規定が問題になりますが、これは自律権に関する規定です。
目を通しておいてください。

自律権とは、懲罰や議事手続など、国会または各議院の内部事項については
自主的に決定できる機能のことを言う。判例は、国会内部での議事手続について裁判所は審査できないとしている。(芦部326頁)
ここでいう判例が、この肢2の判例です。


肢3について。

これは、団体の内部事項に関する行為に司法権が及ぶかという問題で、
肢1が大学であるのに対して、肢3は政党です。そこまで行けば、
肢3が、最高裁判例として、妥当というのは、察しがつくと思います。

これに該当する判例(最判昭63・12・20)は、H21模範六法・76条 22・39頁  
に掲げられています。
                      
これは、党員の除名処分の効力が争われた共産党袴田事件ですが、肢1の文言との間にはずれがあります。
しかし、この判決において、最高裁は、その前段の部分において、肢3の文言のとおり述べています。

それでは、肢3の判決文の趣旨に沿って、その内容を説明しておきます。

「政党の結社としての自主性」が強調されていますが、大学の自治が憲法23条の学問の自由から導かれるように、政党については、憲法21条に根拠があります。

憲法21条1項 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

結社とは、「共通の目的をもって、継続的に結合すること」(芦部206頁)
であり、「政党は結社の自由に基づき任意に結成される政治団体であ」
(芦部330頁)って、憲法上の重要な存在であることを知る必要があります。

また、政党は、「表現の自由」とも密接な関連があります。

図示しますと、

現代は議会制民主主義
       
民主主義とは、統治される国民が統治する国のありかたを
決定すること(自己統治)。
                      
国民は、「表現の自由」に基づき、政党に加入するなどして、
言論活動を通じて、国のありかたの決定に参与する。
                  
        投票       
一般国民 ――――――→議会=政党は議会を支える重要な存在
                      ↓      
           憲法で保障された「表現の自由」を通じて
           国のありかたを発表


表現の自由は、憲法上、重要な権利である。その表現の自由を支える
価値の一つとして説明されるのが、上に図示したところである。

難しい言葉で表すと次のようになる。

「言論活動によって国民が政治的意思決定に関与するという、民主制に
資する社会的な価値(自己統治の価値)」

ついでに言っておきますと、表現の自由のもう一つの価値は、次のよ
うに説明されています。
               
「個人が言論活動を通じて自己の人格を発展させるという、個人的な価
値(自己実現の価値)」

この二つの価値は、「表現の自由」に関する基礎的知識ですから、
確りと頭に叩き込んでおくべきでしょう。

それから、図示したとろからも、結社の自由によって憲法上保障さ
れている「政党」の占める憲法上の地位も明確になったと思います。


以上が、政党の自主性に基づき、政党の内部的自律権に関する行為の
尊重されるべきゆえんです。


以上述べた論拠に基づき、肢3の趣旨の最高裁判決が
導かれたということについて、納得できたと思います。

それでは、次に問題になるのが、H21模範六法37頁76条 22 に
掲げられてある肢3の判決文の後段部分です。
むしろ、当該判決では、この部分がメ−ンだとも言えます。
以下に、この部分を転記しておきます。

政党が党員に対してなした処分が、一般的市民としての権利利益を
侵害する場合であっても、その処分の当否は、その政党の自律的に
定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限り、また、
規範を有しないときはその条理に基づき、適正な手続に則ってなさ
れたか否かによって決すべきであり、その審理も以上の点に限ら
れてなされるべきである。 

要するに、裁判所の審査権が及ぶ場合でも、原則として、手続の適正
にしか及ばないとして、政党の自律性が尊重されているのが注目されます。

肢4について。
                               
 これは、統治行為が問題なった苫米地判決(最大判昭和35・6・8・・)
に基づいています。苫米地という名前の衆議院議員が、かつて、解散の効力
について争った事件です。
 
H21模範六法では、69条 2 37頁  に掲載されています。
 
憲法69条の欄に記載されているのは、解散は、憲法69条の場合に限定される
のか、憲法7条3号により広く内閣に解散権があるのかという論争があるため
ですが、ここではこれ以上はふれません。
 
それでは、模範六法のこの部分を転記してみます。

衆議院の解散は、きわめて政治性の高い国家統治の基本に
関する行為であるので、法律上その有効無効を審査することは
・・・・・・司法裁判所の権限外であるといわなければならない。

 学説上、「統治行為とは『直接国家統治の基本に関する高度に
政治性のある国家行為』で、法律上の争訟として裁判所による
法律的な判断が理論的には可能であるのに、事柄の性質上、
司法審査の対象から除外される行為を言」うと定義
づけられていましたが、最高裁も正面から、統治行為を採用したのです。
 
このことの理解さえあれば、肢4が最高裁の判例の趣旨に
照らして妥当でないことは、明らかです。
衆議院の解散がいかなる場合に許されるかという解散事由の
問題(さきにふれた憲法69条と同7条3号の問題)も
解散に必要な助言と承認の手続に瑕疵(かし)が
あったかどうかという閣議決定の方式の問題(憲法7条3号)も
いずれも統治行為に該当するため、裁判所の審査権は及ばないことに
なります。

したがって、肢4が正解です。これは、有名な判決ですし、
この判決さえきっちりと頭に入っていれば、
その他の肢は検討するまでもなく、正解が導かれると言ってもよいでしょう。

 

肢5について

この肢は、「板まんだら」事件(最判昭和56・4・7・・・)と言われるものに基づい
ていて、H21模範六法では、76条 23に記載されています。
転記します。

 訴訟が当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する訴訟であっても、信仰の対象の価値ないし宗教上の教義に関する判断は請求の当否を決するについての前提問題にとどまるとされていても、それが訴訟の帰すうを左右する必要不可欠のものであり、紛争の核心となっている場合には、
その訴訟は・・・法律上の訴訟にあたらない。

この判決は、肢5と同趣旨であることは、明らかですが、もう少し、具体的に
みておきましょう。
 
これは、創価学会の元会員が、創価学会に対して寄付金の返還を求めた訴訟です。
したがって、この訴訟自体は、金銭の返還を求めるものですから、判決の冒頭に言うこの「訴訟が当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係に関する訴訟であ」ることに相違ありません。たとえば、正面から宗教上に価値そのものを争うものではないので、一応訴訟になじむということが、ここで宣言されているわけです。
 
問題は、金銭の返還を求める理由にあります。寄付は、「正本堂」建立資金のためであったが、その正本堂に安置すべき本尊である「板まんだら」の宗教上の価値が争点になったのです。
その「板まんだら」が本物だと思ったから、寄付したのにそれが偽物だと分かったから、さきに払った寄付金を返せというのです。この「板まんだら」が偽物か本物かというのは、判決に言う「信仰の対象の価値ないし宗教上の教義に関する判断」になるわけで、その当否の判断は司法権の範囲を超えることになります。
そして、判決のいう「前提問題」「訴訟の帰すうを左右する必要不可欠」
「紛争の核心」が問題になりますが、平たく言えば、次のとおりです。

金銭の返還請求の可否は、まさに司法権の範囲であることは、明確ですが、
「宗教上の教義」つまり「板まんだら」が本物か偽物かという判断は、
金銭の返還請求の可否ということの前提問題に過ぎないにしても、
その前提における判断が、金銭の請求が許されるかどうかいう
「訴訟の帰すうを左右する必要不可欠のものであり」「紛争の核心」
であって、その判断が司法権の限界を超える以上、本来司法権の範囲
である金銭の請求の判断も許されないということになるのです。

 以上述べたところにより、肢5は、最高裁の判例の趣旨に合致します


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