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           ★ オリジナル問題解答 《第15回 》 ★

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                      PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  憲法/民法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■ 憲法オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第101号に掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第101回はこちら↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 


  ▲  問題 1

    

  ◆ 参考文献
   
  憲法 芦部 信喜 著  岩波書店


 
 ◆ 総説

  憲法における、「公共の福祉」の用法としては、人権について、

  「『公共の福祉』による制約が存する旨を一般的に定める方式をとって
  いる。
  すなわち、12条で、国民は基本的人権を『公共の福祉のために』利
  用する責任を負うと言い、13条で国民の権利については、『公共の福
 祉 の福祉に反しない限り』国政の上で最大の尊重を必要とすると定める。
    また、経済的自由(職業の自由、財産権)については、『公共の福祉』
  による制限がある旨をとくに規定している(22条・29条)」
 
  (前掲書 96頁)

  以上は、「公共の福祉」に関しての出発点であるから、明確に把握
  しておく必要がある。


  ◆ 各肢の検討

   
      順序不同で、要点を整理しながら、解説を進める。

   ◎ [A説]は、「憲法12条・13条の『公共の福祉』は、人権の外
    にあって、それを制約することのできる一般的原理である」とする。

   この説は、「一般に、『公共の福祉』の意味を・・抽象的な最高
   概念として捉えているので、法律による人権制限が容易に肯定され
   るおそれがすくなくな」いので、 ア  のようにいえる。

   (前掲書 97頁)
   
   ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   ア は、「A」説に対する、問題点の指摘として、妥当である。

  注 「法律の留保」
   
   ここでは「法律に基づくかぎり権利・自由の制限・侵害は可能と
    いう意味で使われ」ている。

      (前掲書 20頁)

   [A説]によると、22条・29条の「公共の福祉」は、特別の
    意味をもたないことになる。なぜならば、前述した一般的原理で
    ある「公共の福祉」によって、22条・29条の権利も制限され
    るからである。

   ・・・・・・・・・・・・・・・ 
   したがって、オ  は妥当でない。

   オは、[B説]に対する問題点である。

  
  
 ◎  [B説]によれば、「公共の福祉」によって制約が認められ人権は、
  その旨が明文で定められている経済的自由権等に限られるので、12
    条・13条は、訓示的・倫理的な規定であるにとどまる(前掲97
  頁参照)。

   以上のとおり、「13条を倫理的な規定であるとしてしまうと、それ
      ( 注)
  を新しい人権をを基礎づける包括的な人権条項と解釈できなくなるので
    はないか」という問題点が生じる。 
   
           (前掲書 98頁)
   
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   したがって、イは、B説に対する、問題点の指摘として、妥当である。

  注 「新しい人権」

    13条の規定する「個人尊重の原理に基づく幸福追求権は、憲法に
      に列挙されていない人権の根拠となる一般的かつ包括的な権利であり、
   この幸福追求権によって基礎づけられる個々の権利は、裁判上の救済
      を受けることのできる具体的権利である、と解されるようになったの
      である。判例も具体的権利性を肯定している。」

     参考・最大判 昭和44・12・14・・京都府学連事件

     (前掲書  116頁)


 ◎ [C説]によれば、「この原理は、自由権を各人に公平に保障する
  ための制約を根拠づける場合には、必要最小限度の規制のみを求め
   (自由国家的公共の福祉)、社会権を実質的に保障するために自由権の
   規制を根拠づける場合には、必要な限度の規制を認めるもの(社会国
  家的公共の福祉)としてはたらく。」

    
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  したがって、エは、[C]説の問題点の指摘として、妥当である。


  ウはについては、イ欄で詳述したように、[B]説に対する問題点であ
  って、[C]説に対する問題点ではない。
  [C]説は、憲法規定を問題にせず、「公共の福祉」はすべての人権に
 論理必然的に内在するというのであるから、12条・13条を訓示的
  規定であるとみる必要はない。

   
  ・・・・・・・・・・・・・
  したがって、ウは妥当でない。

  
    以上により、ウとオが妥当でないので、5が正解である。


  ◆ 付 言

   以上の3説の対比は、少し厄介であるが、基本的人権に関する
   基礎知識に属するので、この際、面倒がらずに、要点を把握して
  おく必要がある。


  
 
 
 ▲  問題 2

 

 
 ◆ 参考図書

   民法 1 内田 貴著 財団法人 東京大学出版会

   民法1 勁草書房


  ◆ 本問の検討

  はじめに、 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 13回 と連
  動しているので、こちらを通読願いたい。
 
 ☆サイト13回はコチラです↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/257325.html 

  サイト13回の検討結果をまとめると、以下のようになる。
   


         法定解除=合意解除


       解除前の転売      ・   解除後の転売

    A−−−C        A−−−−C
           ↓
          保護されるには
      登記要         対抗関係
        
   ●結局、先に登記           ●先に登記した
    した方が優先           方が優先

 

 1について。

  法定解除であり、解除後の転売であるから、AとCは対抗関係。
 Aは、登記なくして対抗できない。

   妥当。


 2について。

  合意解除であり、解除後の転売であるから、AとCは対抗関係。
 Aは、登記なくして対抗できない。

 妥当。


 3について。

  合意解除であり、解除前の転売であるから、Cが保護されるには
 Cに登記必要。

 妥当でない。正解。


 4について。

  法定解除であり、解除前の転売であるから、Cが保護されるには
 Cに登記必要。

 妥当。

 5について。

  法定解除か合意解除か不明。どちらでも同じであるから、詮索する
 要なし。解除前の転売であるから、Cに登記必要。Aがさきに登記
 したのだから、Aが優先。

 妥当。


   以上正解は、3である。

 

 
 ▲  問題 3

 

  ◆ 参考図書

  民法 1 内田 貴 著  財団法人 東京大学出版会


 ◆ サイト・民法【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 10回  
    の発展問題である。

  ◇サイト第10回はこちらです↓
   http://examination-support.livedoor.biz/archives/227992.html

  ◆ 総説

  判例によれば、AによるBの詐欺を理由にした取り消し(96条1項)
  後の転売については、Aと買主Cは対抗関係に立たち、先に登記した方が
 優先することになる。177条の適用である。

   しかし、近時の有力説は、94条2項の類推適用説を採用する。

      売却  登記   転売
   A−−−−−−B−−−−−−C
  取り消し    94条2項
  121条    登記の外観を信頼した
  初めから無効  第三者保護


  AとBに通謀があったとは言えないため、虚偽表示が適用される事例
  とは言えないが、「取消後に放置された実体関係に合わない登記の外観
 を信頼した第三者保護」という「権利外観法理」に従って、94条を2
  項類推適用しようというのが、その主張の骨子である(前掲書)。 

  以上のとおり、A説が前者の対抗関係説ともいうべきものであり、
 後者がB説の94条2項の類推適用説であることが明らかになった。


 このことを前提に以下において、各肢を検討する。

 ◆ 各肢の検討


  ○ アについて。

   AとBと先に登記した方が優先するというのは、「対抗問題」のA説
  である。

   ○  イについて

    94条2項の善意の第三者として保護されるには、登記を要しないと
  いうのが通説である。これは、B説である。

   ○ ウについて。

    94条2項には無過失は要求されていないが、権利外観法理に従
     えば、無過失であることを要する、などの議論がある。
   これは、B説である。

    ○ エについて。

    このように、所有権の復帰(移転)があったと扱うことにを前提にした
   場合 に初めて対抗問題とすることができる。A説の立場である。
  
    ○  オについて。

     取り消しの効果である遡及効(始めから無効)を前提にするのは、94条
  2項類推適用のB説である。

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   したっがて、B説は、イ・ウ・オであり、正解は3である。

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
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           ★ オリジナル問題解答 《第13回 》 ★

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  【テーマ】  民法
   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■ 民法オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第99号に掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第99回はこちら↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 

  ▲ 問題 1

    ★ 各肢の検討
     

  ○ 1について

    判例によれば、立法権および司法権の行使も国家賠償法1条1項の
  「公権力の行使」に当たる。

        本肢は正しい。


   しかし、以下の点に注意すべきである。

    裁判官がした争訟の裁判については、当該裁判官の単なる過失では
   なく、違法又は不当な目的をもって裁判をしたなどの特別の事情が
   なければ国 の賠償責任の問題は生じないとするのが判例の立場で
   ある。(最判昭57・3・12・・)
 
   立法権も賠償責任の対象になるが、国会議員の立法行為等が、違法
  の評価を受けるのは、例外的であることにに注意。(最大判平17・
  9・14・・)

  ○ 2について

    国公立病院での医療事故については、民法の規定を適用するという
   実務が、最高裁判所昭和36年2月16日判決=東大病院梅毒輸血事件
  以来定着している(但し、予防接種被害については、国家賠償法1条1
  項が適用されている。東京高等裁判所平成4年12月18日判決)。
  (読本)
  
      以上、本肢は正しくない。


  ○ 3について

   国家賠償法1条1項を見ると、加害者が正規の公務員であることが
  公権力行使責任が認められるための要件であるように見える。しかし、
  裁判例ではそうは考えられていない。加害行為が行政の仕事、つまり
  公務であればよいと考えることができる。(読本)
  
  したがって、特殊法人の職員であっても、公務に従事していれば、
  法1条1条1項の「公務員」に該当する。
    以上の趣旨に従えば、判例は、一時的に公務を行う非常勤公務員
  を法1条の「公務員」とみるので、この者の行為に起因する損害は、
  国家賠償責任の対象となる。

    以上、本肢は正しくない。

 
  ○ 4について

   国家賠償法1条1項の「公務員が、その職務を行うについて」という
 規定は、加害行為が厳密に公務そのものに該当しない場合であっても公務
 との間に一定の関連性を持つ行為(公務関連行為)による被害についても
 公権力行使責任が認められるという意味である。(読本)
  
  最高裁判所はその適用の場面として、「客観的に職務執行の外形をそな
 える行為」について、国・公共団体の賠償責任を認めるという外形主義の
 考え方をとる。(読本)
  
   しかし、

   この外形主義による国・公共団体の賠償責任が認められるためには、
 加害公務員が正規の公務員でなければならないし、また加害行為はその
 公務員の職務の範囲内でなければならないとするのが定説である。
  したがって、正規の公務員でない者が警察官を装って私人に損害を
 与えても、都道府県の責任は認められない。(読本)
  
  また公務員ではあるが警察官ではない者が警察官を装って損害を与えた
 場合も都道府県の責任は認められないことにも注意せよ(読本)。

  以上の記述に反する本肢は正しくない。

 
  ○ 5について

  代置責任説は、公権力行使責任を、加害者である公務員が負うべき
 賠償責任を国・公共団体が代位したものと捉える。この説によると、国・
 公共団体の賠償責任が認められるためには、加害公務員を特定しその
 公務員に過失があったことを証明する必要があると言えそうである。
  
  他方、自己責任説(公権力責任を本来的に国・公共団体が負うべき
 責任として理解しようとする説)に立つとこの必要性はない。ここに、
 代置責任説と自己責任説の対立の一つの意味があると言える。
  
  もっとも、今日では、・・過失は客観的に捉えられ、組織過失・・が
 認められるようになっているので、代位責任説に立っても、加害公務員
 を特定してその公務員に過失があったことを証明する必要はないだろう。
 (読本)。判例も同様の立場に立つ。《最判昭57・4・1・》
  95)

    本肢は、代位責任説に引っ張られたたものであり、判例では加害公務
  員の特定を要しないとするから、本肢は正しくない。

    
-------------------------------------------------------------------

   以上により、本問は1が正しい。

------------------------------------------------------------------

 

 

   ▲ 問題 2
 
   ★  各肢の検討

  
    ○ 1について

    平成21年度問題20において、「権限の不行使と国家賠償責任」
  に関する最高裁判所判例が出題されたが、本肢は、当該テーマにつ
  いての最高裁が示す基本的見解である(最判平1・11・24・・)。

   平成21年度問題20肢3の示す以下の記述も同旨である。

   国または公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その権限を
  定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情
  の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性
  を欠くと認められるときは、その不行使により被害を受けた者との関
  係において国家賠償法1条1項の適用上違法となる。

   以上により、本肢は正しい。

  ○ 2について


   公定力とは。

    特定の機関が特定の手続によって取消す場合を除き、いっさいの者は、
  一度なされた行政行為に拘束されるという効力をいう。
                            ・・
     したがって、「違法な行政行為も取消されるまでは原則として有効で
            ・・
   ある」ことになる。原則論からいえば、「行政行為は公定力を有するから、
   正当な権限を有する行政庁又は裁判所により取り消されるまでは一応有効
   である」ことになる。

    以上、 「公定力」という観点 からすると、違法な行政行為も一応有効
  であることになる。そうすると、当該行政行為の違法性を理由に国家賠償
  を行う場合にも、あらかじめ当該行政行為の取消し等の判決を得て違法で
  あることが確定していなければならないことになる。

  しかし、そこまで、「公定力」を拡大すべきではない。当該国家賠償請
 求訴訟において、違法性を判断してもらえばよいといことになる(最判
   S36・4・21・・同旨)
  

  以上の記述からすれば、本肢は誤りである。

  ○ 3について


  本肢は、以下の判例を想定している。

  第三者が国道上に故障車を交通に危険な状態で放置して相当時間を
 経過したにもかかわらず、道路管理者がこれを知らず、道路の安全
 保持に必要な措置を全く講じなかったときは、道路の管理に瑕疵が
 ある(最判S50・7・25・・)。

  上記判例に照らし、本肢は正しい。

   ○ 4について

  最判S45・8・20・・によれば、「その過失の存在を必要と
 しない」としているので、本肢は正しい。

 
  ○ 5について

   最高裁判所は、本肢のとおり、外形主義の考え方をとっている
  ので、本肢は正しい(最判S31・11・30・・・)。


△ 参照サイト・過去問の詳細な解説 第42回・ 第70回・第71回

 ★ サイト・過去問の詳細な解説 42回 参照↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/870896.html

 ★第70回↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/1369392.html

 ★第71回↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/1394869.html

 

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  以上誤りは、2であるから、正解は2である。
 
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       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

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              ★ オリジナル問題解答 《第12回 》 ★

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  【テーマ】  民法
   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■ 民法オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第98号に掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第98回はこちら↓
  
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 


 ▲ 問題1

  
  ★ 参照書籍

  民法 2   勁草書房

 
 
   ● 総 説

     ○ 賃借権の譲渡

   賃借人が賃貸人の承諾を得て賃借権を譲渡したときは、賃借人は
    契約関係を脱退し、賃貸人と譲受人との間に賃貸借が継続する。

   ○ 転貸

   賃借人が賃貸人の承諾を得て転貸したときは、賃貸人と賃借人と
    の間には従前の関係が継続し、賃借人と転借人との間には新たに賃
    貸借関係が生ずる。

  
   ○ 無断譲渡・転貸の効果

   全然無効なのではなく、賃借人と譲受人または転借人との間では
  有効であって、ただ賃貸人に対抗できない。

   これらについては、賃貸人は賃貸借を解除できる。


  以上、民法612条参照。前掲書 参照。


   ○ 各肢の検討

   はじめに
     
      アとエにおいては、転貸が問題になっており、ウとオでは、賃借権
  の譲渡が問題になっている。

   

   △ アについて

    賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した
   場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に
   対して目的物の返還を請求した時に、転貸人の転借人に対する債務の
   履行不能により終了すると解するのが相当である(最判平成9年2月
   25日・・)。

     妥当である。

   ちなみに、本判決は、平成21年度問題33において、引用された。

   △ イについて

    参照条文 608条2項。
   
       賃借人が賃借建物に付加した増・新築部分が、賃貸人に返還さ
   れる以前に、賃貸人、賃借人いずれの責めにも帰すべきでない事
   由により滅失したときは、特段の事情のない限り、右部分に関す
   る有益費償還請求権は消滅する(最判昭和48・7・17・・・)。
 
        以上の判例に反する本肢は妥当でない。

   ちなみに、本判決は、平成21年度問題32肢エで主題にされた。

   
   △ ウについて


    本肢のポイントとして、

    AとBが夫婦関係にあり、協働して経営していた店舗をAが相続し、
   併せて土地の賃借権も相続した場合には、AはCに対して当該賃借権
   を当然対抗できる。

    本件の場合、Aが内縁の妻であるというだけで、Cが賃借権の無断
   譲渡を理由に土地の賃貸借の解除をすることは、Aにとり酷である。

    判例は、当該「借地権譲渡は、これについて賃貸人の承諾がなくて
   も、賃貸人に対する背信行為と認めるに足らない特段の事情がある場
   合にあたり」賃貸人による当該土地の賃借権の解除は許されないと判
      示した(最判昭和39・6・30・・)。

    したがって、この判決の趣旨に沿う本肢は、妥当である。 

     △ エについて

    肢アとの対比によれば、A・B間の賃貸借契約の解除が賃借人A
      の債務不履行ではなく、合意解除であるという違いがある。

    この場合については、賃貸借契約が合意解除されても、転貸借に
      は影響はなく、転借人の権利は消滅しないとする判決がある(大判
   昭和9・3・7・・)。

    したがって、この判決に従えば、Bは当該賃貸借契約の解除をC
   に対抗できないとになるので、本肢は妥当でない。

    なお、本肢との対比からすれば、Aが賃借権を放棄した場合には、
   BはそれをCに対抗することはできないことになる(398条・
   538条類推)。


  △ オについて

       賃借権の譲渡または転貸を承諾しない賃貸人は、賃貸契約を解除
     しなくても、譲受人または転借人に対して明渡しを求めることがで
   きる(最判昭和26・5・31・・・)。

   無断譲渡・無断転貸の場合には、賃貸人は原賃借との間の賃貸借
    を解除して、賃借人・譲受人・転借人のすべてに対して明渡しを請
  求できるできるだけではなく、原賃借人との間の賃貸契約をそのま
  まにして、譲受人・転借人に対して明渡請求をすることもできるの 
  である(前掲書 参照)

   本肢は妥当である。
   

-----------------------------------------------------------------
      
   以上、妥当でないのは、イとエであるから、正解は3である。

-----------------------------------------------------------------
  
 ▲ 問題2

  判例は、Xが土地の賃借権について対効要件を備えていれば、 
 不法占有者に対して、「土地賃借権」に基づいて妨害請求権を
 行使することを認める(最判昭和30・4.5・・)。

  また、Xが土地の引渡しを受けていれば、占有回収の訴えに
  より、不法占有者に対して、土地明渡請求ができる(200条)。

  しかし、本問では、Xは、土地の引渡しを受けず、対抗要件
 も備えていない。

  この場合においては、423条の債権者代位権の行使の可否
 が問題になる。判例は、債務者の無資力を要件としない、「債
 権者代位権の転用」を肯定している。

  以上の記述に従って、解答例として、以下のとおり提示し得
 る。
 
  

  XはYに対して、当該土地賃借権を保全するため、


    債権者代位権に基づき、AがYに
    対して有する所有権に基づく妨害
    排除請求権を行使し得る。

      42字

   
  
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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 23回 】★      
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 2009/4/14


             
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【テーマ】行政法・行政立法その3
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 平成19年度過去問

 問題42

 行政立法に関する次の文章の空欄ア〜エに当てはまる語句を、枠内
 の選択肢(1〜20)から選びなさい。

 
  行政立法は、学説上、法規命令と ア  の二つに分類される。
 ア にはさまざまな内容のものがある。例えば、地方公務員に対
 する懲戒処分について、「正当な理由なく10日以内の間勤務を
 欠いた職員は、減給又は戒告とする。」といった形の基準が定め
 られることがあるが、これもその一例である。
 このような基準は、処分を行う際の イ としての性格を有する
 ものであるが、それ自体は ウ としての性格を有するものではなく、
 仮に8日間無断欠勤した公務員に対して上掲の基準より重い内容の
 懲戒処分 が行われたとしても、当該処分が直ちに違法とされるわけ
 ではない。しかし、もし特定の事例についてこの基準より重い処分が
 行われたとき、場合によっては、エ などに違反するものとして違法
 とされる余地がある。

 1 執行命令 2 罪刑法定主義 3 条例 4 権利濫用 5 裁判規範

 6 公定力  3 自力執行力 8 平等原則 9 指導要領 

 10 行政規則 11 組織規範 12 適正手続 13 所掌事務

 14 営造物規則 15 委任命令 16 特別権力関係 17 裁量基準

 18 告示 19 施行規則 20 法令遵守義務
 

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■ 解説
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 ▲ 22回第2コースにおいて、本問の焦点になっている「行政規則」
  「通達」について、説明が行われているので、そちらも参照されたい。

 ▲ 本問を解くための基礎知識

 A 地方公務員に対する懲戒処分について、「正当な理由なく10日
 以内の間勤務を欠いた職員は、減給又は戒告とする」といった形の
 基準は、「行政内部規範」であって、通達に該当し(国家行政組織法
 14条2項に準じる)、学説上の分類に従えば、「行政規則」に該当する。

 B この通達の基準より重い内容の懲戒処分が行われたとしても、処分
  処分を受けた人が、通達に違反しているから違法であるとして、訴訟
  提起して争うことはできない。なぜなら、「通達は行政内部規範であり、
  法規範ではないので、法的拘束力を持たない。裁判所は、・・法規範
  に従って判断すべきであり、通達は、この法的な判断の基準にならない
  というのが基本的な考え方である」(読本)。
  したがって、通達それ自体は、「裁判規範」としての性格を有しない。

 C 行政庁は、自主的に行政裁量行使の基準を作成し、それを手がかりに
  審査をして、行政処分を行うことがある。この行政裁量行使の基準を
 「裁量基準」という(読本)。したがって、このような基準を定めた
  通達は、処分を行う際の「裁量基準」としての性格を有する。
 
  注 行政手続法において、行政庁に裁量が与えられている場合、
 裁量基準を設けることが規定されている。その内容は、以下の
  とおりである。許認可のような申請にに対する処分については
 「審査基準」を定めることさらに公表することを行政庁に義務
  づけている。また、許認可の取消しや 施設改善命令のような
 不利益処分については、「処分基準」を定め、かつこれを行政庁
  の努力義務としている(行手法5条・12条)《読本》

 D たとえば、ほかの地方公務員については、通達に基づいて懲戒処分
 が行われたのに、1人の地方公務員に対してだけ特別に通達の基準
  より重い停職の処分が行われた場合、「この処分は然るべき特別の
 理由がなければ、法の下の平等の原則に違反して、違法だということ
  になる だろう。ここでは、 通達は、直接に違法判断の基準になって
 いるのではなく、平等原則違反があるかどうかの判断において通達が
  役立っているのである。」(読本)

 ▲ 本問の解答

 Aは、アの「行政規則」の説明。したがって、アは10。

 Bは、ウの「裁判規範」の説明。したがって、ウは5。

 Cは、イの「裁量基準」の説明。したがって、イは17。

 Dは、エの「平等原則」の説明。したがって、エは8。

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 【発行者】 司法書士 藤本 昌一

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 【E-mail】 fujimoto_office1977@yahoo.co.jp
 
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