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            ★ オリジナル問題解答 《第22回》 ★

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                    PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  民法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第108号に掲載してある。

 
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  ★ 参考図書
 
     民法 1・ 我妻栄/有泉亨著・勁草書房
 

 
 ◆ 図示
 
  
     A

     ↓ 抵当権《登記》

    甲土地(所有者B)→ C(第三取得者)
                《登記》

  ◆ 論点
 
 
 (1)前者の場合について。

   ズバリ本問前者では、396条の適用の問題になる。すなわち、
  前者のCは、債務者・抵当権設定者以外の抵当不動産の第三取得者
  に該当するため、この者との関係では、抵当権はその担保する債権
  から独立して時効消滅に係る。
   その時効期間は、20年である(167条2項)。

   ※ 参考事項

    ア 前記本文の記述は、396条の解釈によって、自然に導
     くことができるが、同趣旨の判例があることに注意(大判
     昭15・11・26民集19ー2100)。

    イ 396条について、もう少し分析してみると、以下のと
     おりである。
      
      担保物権はその担保する債権が時効消滅しない間は独立
     に消滅時効にかからないのが原則である。抵当権は債務者
     および抵当権設定者に対する関係においてはその原則に従
     うが、前記本文に明らかなように、その他の者である第三
     取得者・後順位権者などの他の債権者に対する関係におい
     ては、債権が消滅時効にかからない間においても、独立に
     消滅時効にかかるものとされるのである。

    ウ 本問の事例では、「被担保債権について時効中断を生じ
     た場合」に限定している それは、以下のような趣旨を含
     むものであることに注意すべきである。

      債権は一般に10年で消滅時効にかかるから(167条
          1項)、本事例のように抵当権が20年で時効消滅するの
          は、債権について時効中断の行われた場合に生ずることに
          なる(147条以下・特に157条参照)。

  (2)後者の場合について

    ズバリ本問後者では、397条の適用の問題になる。すなわち、
      後者のCも、債務者または抵当権設定者以外の者に該当するため、
      Cが抵当不動産について取得時効に必要な条件を具備する占有を
      したときは、抵当権はこれによって消滅する(397条)。

    本事例では、Cは無効であることに善意無過失であった場合に
      該当するので、その時効期間は、10年である(162条2項)。
     
   ※ 参考事項

    ア 397条について、もう少し分析してみると、以下のとお
     りである。  
     
     取得時効は原始取得として完全な所有権を取得させるものだ
        から抵当不動産について取得時効が完成した場合には、抵当権
        を消滅させることにしたのである。また、債務者または抵当権
        設定者を例外としたのは、「みずから債務を負担し、またはみ
        ずから抵当権の負担を受けた者について取得時効による抵当権
        の消滅を認めるのは不穏当だからである」(前掲書)。

    イ 162条2項の適用については、「善意・無過失」である
           ことが要件になっているが、そこで言う「善意」とは、占
           有者が自分の所有に属すると信ずることであり、「 無過失」
          とはこのように信じることについて過失のないことを意味す
     る。
      本事例では、売買に無効原因があるため、所有権は移転し
     ていないが、Cがそのことを知らなかったというのであるか
     ら、以後、甲土地を占有するCは当該土地が自分の所有に属
     すると信じていたのであり、そのように信じることに過失が
     なかったとされているので、本事例では、その点について、
     162条2項適用の要件を満たしていることになる。

  
   ◆ 解答例

    前に掲げた(1)(2)の本文を要約すると、本問の回答例が
   導かれることになる。以下、その過程を示しながら、最後に解答
   例を示すことにする。

    問題文は、「それぞれの場合において、CはAに対して、どの
   ような根拠に基づき、いかなる請求をすればよいか」ということ
   であるから、その質問内容に添って忠実に答えなくてはならない。

    まず、前者の場合については、CはA対して、Aが20年抵当
   権を行使しないことを根拠にして、抵当権の消滅を主張すればよ
   い(厳密には145条の時効の援用である)。

    次に、後者の場合については、Cが平穏に、かつ、公然と甲土
   地を占有したことを根拠にして、所有権の時効取得を主張する
  (前記と同様に145条の時効の援用をする)ことにより、抵当権
   の消滅を主張することになる。

    以上について、文言を省略して、解答例を示すと、以下のとお
   りである。
   
 
   Aが20年抵当権の不行使ため、抵当権の消滅時効。Cが10年甲
      占有のため、所有権の取得時効。(45字)
     

   ◆ 付言

     本問については、1、20年間抵当権を行使しないこと 
    2、抵当権の消滅時効 3、10年間甲土地を占有 4、
    所有権の取得時効 という4つのポイントが記載されてい
    れば、満点ないしはそれに近い点数を稼ぎだすことができ
    るであろう。

     なお、過去問としては、第三者が、抵当不動産の所有権
    を時効 によって取得した場合には、当該抵当権は確定的に
    消滅する(397条)という肢が、妥当なものとして呈示
    されている(平成21年度問題29肢エ)。
  

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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              ★ オリジナル問題解答 《第14回》 ★

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  【テーマ】  民法
   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■ 民法オリジナル問題 解説
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  ▲ 問題 1

     
 Aの相談について

  昭和37・4・20によると、無権代理人が本人を単独相続し、
  本人と代理人の資格が同一人に帰するに至った場合は、本人が自ら
  法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じると解される。

  以上のとおり、当然有効となるので、Aは当該無権代理行為を追
 認拒絶できない(民法113条参照)。
 
 「できません」に該当する。 

 
 Bの相談について                              

    本人が追認しないまま死亡し、無権代理人が他の相続人とともに本
 人を共同相続した場合に、その相続分について無権代理行為が当然有
 効となるかについて、

  最判平51・21は以下のとおり判示する。

  他の共同相続人全員の追認がない限り、無権代理行為は、無権代理
  人の相続分においても、当然に有効となるものではない。

  したがって、母の追認がなければ、Bの2分の1の相続分に相当す
 る部分について、本件連帯保証契約が有効になったことを前提とした
 貸金請求に対して、Bは支払いを拒絶できる。

  「できます」に該当する。

 
 Cの相談について
  
    本人が無権代理人を相続した場合に、本人は無権代理人が行った行為
 の無効を主張できるかについて、

 Aの相談でも掲げた最判昭37・4・20は、以下のとおり判示する。

   無権代理人が本人を相続した場合においては、自らした無権代理行為
 につき本人の資格において追認を拒絶する余地を認めるのは信義則に反
 するから、右無権代理行為は相続と共に当然有効となる解するのが相当
 であるけれども、本人が無権代理人を相続した場合は、これと同様に論
 ずることはできない。後者の場合においては、相続人たる本人は被相続
 人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはない
 から、被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然有効とな
 るものではないと解するのが相当である。

  したがって、Cは、当然有効として、家屋の明渡し等を求める相手方
 に対し、これを拒否できる。


  「できます」に該当する。
  


 Dの相談について

  最判平10・7・17によると、本人が無権代理行為の追認を拒絶し
 た後に死亡し、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、有効
 になるもではないと解するにが相当であるとした。

  この場合には、本人の追認拒絶により、無権代理行為の無効が確定し
 たからである。Aの相談では、本人が追認拒絶をしないまま にして、
 無権代理人が本人を単独相続した場合、当然有効となるとしたものであ
 り、その違いに注意する必要がある。

 Dの場合には、当然有効になるもではないので、履行を拒絶できる。

   「できます」に該当する。

 

  Eの相談について
               
  
  最判昭63・3・1によると、無権代理人を本人とともに相続した
 者が、その後さらに本人を相続した場合には、その者は本人の資格で
 無権代理行為の追認を拒絶する余地はなく、本人が自ら法律行為をし
 たのと同様の法律上の地位ないし効果を生じるとしている。

   したがって、Eは、本人の資格に基づいて、追認拒絶できない
  ため、当該無権代理行為は有効になるので、本件土地の意移転登記
  の抹消を請求できない。

  「できません」に該当する。
 
-----------------------------------------------------------------
  
  以上、「できません」に該当するのは、AとEであるから、2が
  正解である。

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 ▲ 問題 2


 ★ 総 説  
   
   遺贈とは、遺言者による財産の無償譲与である。

    遺贈には包括遺贈と特定遺贈とがある(964条)。前者は、積極
   ・消極の財産を包括する相続財産の全部またはその分数的的部分ない
     し割合による遺贈であり(たとえば相続財産の2分の1、または4割
     がその例)、後者は、特定の具体的な財産的利益の遺贈である(勁草
     民法3)。

   ★  各肢の検討

   
  ○ 1・2について

   「包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する」ものとされる
  (990条)。したがって、遺言で定められた割合の相続分を有す
   る相続人が一人ふえたと考えればよい(勁草民法3)。

   したがって、遺贈の承認・放棄についても、相続に関する915
  条ないし940条の適用があり、遺贈の承認・放棄に関する986
  条および987条の適用はない。

    包括受遺者=915条1項 であり、肢1は妥当である。

   包括受遺者に適用されない986条は、特定遺贈において適用され
   るので、肢2も妥当である。

 
  ○ 3・5について

   以下は、包括・特定を問わず、遺贈に共通することに注意!

   受遺者は、遺言が効力を生じた時、つまり遺言者が死亡した時に
    生存していなければならない(同時存在の原則)。
   
   遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した場合には、受遺者たる地位
    の承継(一種の代襲受遺)は認められないから、結局その効力は生
    じない(994条1項)。

   したがって、この場合、受遺者の相続人がその財産を承継すると
    ことはないので、5は妥当でない。

   次に、胎児は遺贈に関してもすでに生まれたものとみなされる
  (965条・886条)ので、胎児に遺贈することができる。

   3は妥当である。

   ☆ 参考事項

    肢5について、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した場合
   には、受遺者の相続人はその財産を承継しないが、遺言中に
   特に受遺者の相続人に承継を認める旨を表示してあれば、
   (これを補充遺贈という)それに従うということに注意。

    なお、この補充遺贈のない場合には、受遺者が受けるべき
      であったものは、遺贈者の相続人に帰属するのである(99
   5条)。

     (以上は、勁草 民法 3 参照)

  ○ 4について

   本肢は、特定の不動産の遺贈であるから、特定遺贈になる。
   
   以下の判例がある。

   甲から乙への不動産の遺贈による所有権移転登記未了の間
  に、甲の共同相続人の1人の債権者が当該不動産の相続分の
  の差押えの申立てをし、その旨の登記がされた場合、当該債
  権者は、民法177条の第三者にあたる(受遺者は登記なし
  に遺贈を当該債権者に対抗できない。(最判昭39・3・6
  ・・・・・)

   以上の判例に従えば、本肢は妥当である。


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 本問については、妥当でないのは、5であるので、5が正解である。

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        ★ 過去問の詳細な解説  第 96 回  ★

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  【テーマ】  行政法
   
    
  【目次】    問題・解説

           
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 ■行政法・ 平成22年度・問題8
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   A市は、風俗営業のための建築物について、条例で独自の規制基準を
 設けることとし、当該基準に違反する建築物の建築工事については市長が
 中止命令を発しうることとした。この命令の実効性を担保するための手段
 を条例で定める場合、法令に照らし、疑義の余地なく設けることのできる
 ものは、次の記述のうちどれか。

  1 当該建築物の除去について、法律よりも簡易な手続で代執行を実施
  する旨の定め。

  2  中止命令の対象となった建築物が条例違反の建築物であることを公
   表する旨の定め。

  3  中止命令を受けたにもかかわらず建築工事を続行する事業者に対し
     て、工事を中止するまでの間、1日について5万円の過料を科す旨の
   定め。

  4  市の職員が当該建築物の敷地を封鎖して、建築資材の搬入を中止さ
   せる旨の定め。

  5 当該建築物により営業を行う事業者に対して1千万円以下の罰金を
   科す旨の定め。
 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
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  ○ 序説


  本問は、全体として、論点が把握し難いが、単純化すれば、その基準
  になるのは、主に行政代執行法第1条・同法2条および地方自治法14
 条3項である。各肢について検討する。


 ◎ 各肢の検討

  
  ● 肢 1


  条例に基づき、行政庁命じられた義務については代執行ができる(行政
  代執行法第2条第1項カッコ書きにおいて、条例を明示している)。
  したがって、市長の中止命令に反する当該建築物の除去義務は、代替
 作為義務であるから、代執行できる。

  しかし、法律よりも簡易な手続で代執行を実施する旨の規定を条例で
  設けることは、二重の意味で許されない。

  第一には、「法律の範囲内で条例を制定することができる」とする憲
 法の規定に反する(憲法94条なお地方自治法14条1項)。

  第二には、行政代執行法第1条に反する。当該規定の趣旨は以下のと
  おりである。

    地方公共団体に関して言えば、その「行政庁は、行政代執行法の規
 定により代執行ができるし、さらに、個別の法律の規定があれば、そ
 の法律で定められている強制執行を行うことができる。しかし、その
  反面、条例によって強制手段を創設することはできない。」(読本
 139頁)

  つまり、条例によって、簡易な手続による代執行を定めることは、条
 例による強制手段の創設に連なる。

     疑義の余地なく設けることはできない。

 
   ● 肢 3・4について(説明の便宜上、肢2を後に回す)

 
     ★ 強制執行制度

   原則→ 「行政代執行」(行政代執行法2条)


   別の法律の定め→「直接強制」・「執行罰」・「滞納処分」
  (同法1条)
 
 
  執行罰というのは、「義務を履行しない義務者に対して心理的
  強制を加えるために、金銭的な罰を科する方法である」(読本
 132頁))から、肢3がこれに該当する。

  行政上の直接強制とは、「義務者の身体や財産に直接に実力を
  行使して義務を履行させるという方法である」(読本132頁)
 から、4がこれに該当する。

  肢1第二で明らかにしたように、条例によって、強制手段を
  創設できないのであるから、執行罰(肢3)、直接強制(肢4)
 という強制手段の創設を条例で設けることはできない。

   
  いずれも、疑義の余地なく設けることのできるには該当しな
 い。


   ● 肢2


  公表とは、行政が持っている情報を公表することがである。
  
  本肢では、行政処分に従わない者に対する制裁(間接的強制
 手段)としての公表が対象になっているが、この公表というの
 は、刑罰とは異なり、比較的軽い措置である。

  ここにいう公表は、強制執行ではないので、条例で定めても
 前記肢3・4のように、「条例によって、強制手段を創設した」
 ことにはならない。

  また、行政手続条例において、その実効性を確保するために、
 公表の規定を置くことは望ましい(行政手続法46条参照)。
 
  (以上、前掲書参照)

  以上の記述に従えば、本肢は、「疑義の余地なく設けること
 のできるもの」に該当するので、本肢が正解である。


  ● 肢5

  地方自治法第14条第3項によれば、、条例違反の行為に対
 し、その条例中に百万円以下の罰金の規定しか設けられない。

  したがって、本肢の定め疑義の余地なく設けることはでき
 ない。

 
 ▲ 付言


  各肢を素早く比較して、直感的に肢2の「公表」を正解とし、
 あと、時間が余れば、前述した論拠を考察するのも一方法かも
 しれない。
  
  肢1~4の論拠の考察は、結構高度で、それなりに時間がか
 かると思料するから。

 
 
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                 ★ 過去問の詳細な解説  第87回  ★

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  【テーマ】 民法・催告
  
     

    【目次】   問題・解説

           
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  問題」【平成22年度版】《有料》が、もう間もなく、発行されます
  ので、みなさま、よろしくお願いします。


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 ■ 平成21年度 問題30
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   催告に関する次のア〜オの各事例のうち、民法の規定および判例に
 照らし、正しいものの組合わせはどれか。

 ア  Aは成年被保佐人であるBとの間で、Bの所有する不動産を購入す
    る契約を締結したが、後日Bが制限行為能力者であることを知った。
  Aは1ケ月以上の期間を定めて、Bに対し保佐人の追認を得るべき
    旨を催告したが、所定の期間を過ぎても追認を得た旨の通知がない。
   この場合、その行為は追認されたものとみなされる。

  イ  CはDとの間で、C所有の自動車を、代金後払い、代金額150万
  円の約定でDに売却する契約を締結した。Cは自動車の引き渡しを完
  了したが、代金支払期日を経過してもDからの代金の支払いがない。
  そこでCはDに対して相当の期間を定めて代金を支払うよう催告したが、
    期日までに代金の支払いがない。この場合、C・D間の売買契約は法
  律上当然に効力を失う。

 ウ  Eは知人FがGより100万円の融資を受けるにあたり、保証(単純
    保証)する旨を約した。弁済期後、GはいきなりEに対して保証債務の
    履行を求めてきたので、Eはまずは主たる債務者に催告するよう請求し
    した。ところがGがFに催告したときにはFの資産状況が悪化しており、
    GはFから全額の弁済を受けることができなかった。この場合、EはG
    が直ちにFに催告していれば弁済を受けられた限度で保証債務の履行を
    免れることができる。

  エ Hは甲建物を抵当権の実行による競売により買い受けたが、甲建物に
  は、抵当権設定後に従前の所有者より賃借したIが居住している。Hは
    Iに対し、相当の期間を定めて甲建物の賃料1ケ分分以上の支払いを催告
    したが、期間経過後もIが賃料を支払わない場合には、Hは買受け後6
    ケ月を経過した後、Iに対して建物の明け渡しを求めることができる。

  オ Jは、自己の所有する乙土地を、その死後、世話になった友人Kに無
  償で与える旨の内容を含む遺言書を作成した。Jの死後、遺言の内容が
    明らかになり、Jの相続人らはKに対して相当の期間を定めてこの遺贈
    を承認するか放棄するかを知らせて欲しいと催告したが、Kからは期間
    内に返答がない。この場合、Kは遺贈を承認したものとみなされる。

 
 1 ア・イ

 2 ア・ウ

 3 イ・エ

 4 ウ・オ

 5 エ・オ

 

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 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

   民法 2・3   勁草書房
 

  ◆ 各肢の検討

 
  ○ 肢アについて

   本肢は、20条の制限行為能力者の相手方の催告権に関する条文
    の適用問題である。

   この場合は、被保佐人であるBに対する催告であるから、20条
   4項が適用適用される。
   すなわち、被被保佐人がその期間内に保佐人の追認を得た旨の通
  知を発しないときは、当該不動産の売買契約を取り消したものとみ
  なすことになる。したがって、これに反する本肢は誤りである。

   ★ 参考事項

    制限行為能力者とは、未成年者・成年被後見人・被保佐人・
      被補助人をいう(20条1項)。

    これら制限無能力者に対する催告権の効果に一定のルールがあ
      るので、把握しておきたい。
   
   1 制限行為能力者が行為能力者となった後に、その者に対する
    催告に確答なし→ 追認 (20条1項)

    2 ただし、だれかの同意を得るなどの特別の方式を要する場合
    その方式を具備した通知を発しない→取り消し(20条3項)

   3 法定代理人・保佐人・補助人に対しては、1・2と同様で
      ある(20条2項)。

    4 被保佐人・被補助人に対する催告に通知なし→取り消し(20
      条4項)=本肢の事例
   ≪成年被後見人は含まれないことに注意・9条によれば、成年被
    後見人に関しては、日常生活に関する行為は有効であると同時
    にその他の行為は、常に取り消すことができるので、追認の余
    地はなく、催告は想定し難いからである。≫


   ○ 肢イについて

   本肢は、541条の契約解除の要件を満たすので、Cは、Dに対
  して相当の期間を定めて代金を支払うよう催告したが、期日までに
    代金の支払いがない場合には、Cは、Dに対して、C・D間の売買
    契約を解除できる。

   したがって、この場合、C・D間の売買契約は法律上当然に効力
    を失うのではなく、契約の有効を前提として、売買契約を解除でき
    ることになるので、本肢は誤りである。

   ★ 参考事項

   1 同時履行の抗弁との関係について

    この場合、DがCに対して、自動車の引き渡しについて、533
   条の同時履行の抗弁権を有すると、Cは自動車の引き渡しという債
   務の履行を提供しなくては、契約の解除をできないことになる。
    しかし、本事例では、代金後払いの約定でCは自動車の引き渡し
   を完了しているので、同時履行の抗弁は考慮しなくてもよい。

   2 応用問題について

    履行遅滞による解除権と同時履行の抗弁の関係について、メルマ
      ガ有料版第7号において、オリジナル問題を出題したので、末尾に
   正誤を問う当該肢と解説を転載しておく。

 
   ○  肢ウについて

   本肢は、催告の抗弁に関する452条・455条の条文適用問題で
    ある。そのまま条文を適用すればよいが、ただし、454条で連帯保
  証に適用されないことになっていることに注意する必要がある。
   本肢では、(単純保証)であるとされているので、条文どおりであ
  り、正しい。


   ★ 参考事項


   保証債務はその従たる性質から、債権者に対して第二次的の地位に
    あり、主たる債務者の履行しないときに、はじめて履行すればよいの
  が常である(446条1項参照)。
   これを保証債務の補充性というが、その法律的な現れの一つとして、
  催告の抗弁権があることになる。

   もう一つが、検索の抗弁権である(453条・455条)。これも
  また、連帯保証には適用されない(454条)

   以上により、連帯保証には、補充性はないことになる。

  (以上、前掲書2参照)


   なお、検索の抗弁について、以下の判例に注目

  「検索の抗弁のためには、主債務者の執行容易な若干の財産の存在の
   証明があれば足り、これによって得られる弁済が債権全額に及ぶこ
      との証明を要しない。」(大判昭8・6・13・・・)

  
   ○ 肢エについて

        本肢は、抵当権設定後における抵当権者に対抗できない賃借権者
  (競売の手続開始前から使用又は収益する者)の引き渡しの猶予に関
     する395条の適用事例である。
    本件では、同条2項の適用により、同条1項の6ケ月の猶予がない
   場合に相当する。

   以上に反する本肢の記述は誤りである。

  
  ○ 肢オについて

   受遺者に対する遺贈の承認又は放棄の催告について規定する987条
  の条文適用問題である。

   本事例では、987条の適用により、「承認したものとみなされる」
  ので、本肢は正しい。

   
   ★ 参考事項

 
  遺贈とは、遺言による財産の無償贈与である。

  遺贈には包括遺贈と特定遺贈がある(964条)。
  
  前者は、積極・消極の財産を包括する相続財産の全部またはその分数的
  部分ないし割合による遺贈であり(たとえば相続財産の2分の1、または
 4割がその例)、後者は、特定の具体的な財産的利益の遺贈である。
 
  両者はその効力において全く異なることを注意すべきである。

 (以上、前掲書3参照) 

  本件では、特定の土地を無償贈与するというのであるから、以上の記述
 に関しては、「特定贈与」であることを、この際、はっきり認識する必要
  がある。

  したがって、

  包括遺贈は、相続人と同一の権利義務を有する(990条)ので、遺贈
 の承認・放棄についても、相続に関する915条ないし940の適用があ
                               ・・・
 り、本件の「特定遺贈」の承認・放棄に適用される986条および987条
  は適用されないことに注意せよ!

------------------------------------------------------------ 
 
    以上のとおり、ウとオが正しいので、正解は4である。

------------------------------------------------------------ 

  
 ◎ 末尾記載の応用問題
 
  【肢】

   AはBとの間で、A所有の自動車を代金額120万円の約定でB
  に売却する契約を締結した。Aは、引き渡し期日を過ぎても、約束
  の引き渡し場所に、自動車を引き取りに来ないBに対して、自動車
  の引き渡しの準備を完了したことを通知するとともに、相当の期間
  を定めて代金を支払うよう催告したが、期日までに 代金の支払い
  がない。この場合、AはA・B間の売買契約を解除できる。

    【解説】

    関係する条文数は、6つである。主題は、履行遅滞による解除権と
  同時履行の抗弁である。
 
 それでは、順次検討する。

 1 民法573条によれば、自動車の引き渡し期日を定めたときは、
    代金の支払いについても同一の期限を付したものと推定される。
   この場合における代金の支払い場所は、その引き渡し場所で
   である(民法574条)。

   したがって、Bは、引き渡し場所において代金を支払う義務が
  ある。

   2 以上に従えば、代金の支払いを遅滞する(民法412条1項)
   Bに対して、Aは民法541条1項に基づき、相当の期間を定
   めて履行の催告をしたうえで、契約の解除をすることができる。
    しかし、本肢の場合、Bの代金支払いは、自動車の引き渡し
   と同時履行であるから、Bには民法533条の同時履行の抗弁
   権がある。
    このように、相手方が同時履行の抗弁権を有する場合には、
     解除しようとする者は、自分の債務を提供しておかなければ
   解除できない。「厳格な理論からいえば、解除しようとする者
     は、催告後の相当期間の間中この提供をしつづけなければなら
     ないことになる。」(勁草書房 2)

  3 しかし、この場合には、民法493条の規定に従えば、その
     提供の方法は、本肢のように、自動車の引き渡しの準備を完了
   したことを通知することで足りるので、相当の期間を定めて
   代金を支払うように催告した後に行う本件の解除は有効である。
   (大判大14・12・3が同旨)

    したがって、本肢は正しい。

  

   
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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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【テーマ】 実質的意味の憲法


【目次】  問題・解説

 

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 ■ 平成21年度問題3
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   次の文章のうち、そこで想定される「実質的意味の憲法」の理解の仕方
 が、憲法学における伝統的な分類に従えば、他とは異なっているものは
 どれか。

   1 権利の保障が確保されず、権力の分立がなされていない社会は、
   憲法をもっているとはいえない。

   2 固有の意味での憲法を論ずるには、古代憲法、中世憲法、近代憲法、
   現代憲法の順で、社会の基本構造を歴史的に叙述する必要がある。

   3 日本の憲法の歴史は、大日本帝国憲法の制定につながる、西洋諸国
   に対する「開国」を出発点として、叙述されなくてはならない。

  4 近代立憲主義が定着したフランス第三共和制においては、その体制
   の基本を定める法律を「憲法的」と形容して、憲法的法律と呼んでいた。

   5 絶対君主制とは区別された意味での立憲君主制が、19世紀ヨーロッパ
   の憲法体制では広く普及し、明治時代の日本もこれにならった。
 
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
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 ○ 参考図書

 芦部信喜著 憲法 岩波書店
 
 ○ 序論

  平成21年度の問題も、すでに過去問となった。
  本問は、パッと見た感じでは、2から5まで、「憲法思想史」について
 述べられていて、1だけ毛色が違う、よし1だと若干の疑問を感じつつも
 確信を持って、1を塗りつぶしたら、答えは2であるという。そういう
 体験をした受験生が多かったと思われる。
 憲法に関しては、他の問題が比較的正解を導きやすかったのに比して
 これだけは特殊であるという印象がある。

 ○ 本論

 出題者の意図を探ってみよう。
 
 「実質的意味の憲法」に対比されるのは、「形式的意味の憲法」である。
 「形式的意味の憲法」とは、「憲法という名前で呼ばれる成文の法典
(憲法典)を意味する」(前掲書)。ということは、肢1から5までは、
 成文の憲法に関する叙述ではないことになる。

 それでは、実質的意味とは何か。「ある特定の内容をもった法を憲法と
 呼ぶ場合である」とされる。(前掲書)
  ここで、憲法学における伝統的な分類に従った場合には、「実質的
 憲法」の理解の仕方がどうなるかという本題にたどりつく。

  実質的意味の憲法には、二つのものがある。ひとつは「固有の意味」
 である。これは、国家の統治の基本を定めた法であり、この意味の憲法
 はいかなる時代のいかなる国家にも存在するとされる(前掲書)。

  これが、肢2の「固有の意味での憲法」であって、「古代憲法・・現代
 憲法」までのいかなる時代にも存在する国家の統治の基本を定めた法に
  関する記述であることは明らかである。

 実質的意味の憲法の第二は、「立憲的意味での憲法」である。これは、
 自由主義に基づいて定められた国家の基礎法であって、この意味の憲法は、
 固有の意味の憲法とは異なり、 歴史的な観念であり、その最も重要なね
 らいは、政治権力の組織化というよりも権力を制限して人権を保障する
 ことにあるとされる(前掲書)。

   ここでのポイントは、「歴史的観念」ないし絶対君主制に対する立憲
 君主制に基づく「人権保障」にある。
 
  肢3・4・5に当てはめると、「歴史的観念」に基づいた記述である
 ことがわかる。また、いずれも、立憲君主制に基づく「人権保障」に
 焦点を当てた記述である。明治憲法においても、不完全ながらも、立憲
  的制度も採用されており、権利自由は保障されていたのである(前掲書)。


  肢1は、フランス人権宣言によって示されたものであって、この言葉は、
「専断的な権力を制限して広く国民の権利を保障するという立憲主義の
 思想に基づく憲法」と同一の趣旨である(前掲書)。

 そうすると、肢1・3・4・5は同類であって、肢2だけは、異種であり
 2が正解ということになる。

 ○ 付言

  本問については、普段あまり考えたことのない分野であるから、即座
 に本論で述べた出題者の意図を読みとれというのは、要求過多のように
 も思われる。

 しかし、もし、実質的意味に固有の意味と立憲的意味があるというのが、
 憲法の基礎知識だとすると、肢2に「固有の意味」があることを手がかり
 にスパッと2を割り出すことができるのかもしれない。

  インターネットをみていると、本問について、1or2が正解というのが
 あった。出題者の意図とは離れるが、1を正解とみる(序論参照)のにも
 合理的理由があり、あまりにも1を正解とするものが多だとすると、or
 もありかなとも思う。

  いずれにせよ、憲法全体を眺めたばあい、肢1・3・4・5が「基本的
 人権」に該当し、肢2が「統治機構」に相当することだけは、明確に把握
 しておきたい。
 


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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第44回 】★      
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 2009/7/21


             
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【テーマ】株式会社の設立
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 平成19年度過去問・問題36

   株式会社の設立に関するア〜オの記述のうち、正しいものの組合
 せはどれか。

 ア 会社の設立に際しては、発起設立または募集設立のいずれの
   方法による場合も、創立総会を開催しなければならない。

 イ 会社の設立に際して現物出資を行うことができるのは発起人
   のみであるが、財産引受については、発起人以外の者もその
   相手方となることができる。

 ウ 設立時募集株式の引受人が払込をせず、当該引受人が失権した
  場合には、発起人は、自らその株式を引き受けなければならない。

 エ 設立時取締役は、その選任の日から会社の設立の登記がなされる
   までの期間において、発起人に代わって設立中の会社のすべての
   業務を行う権限を有する。

 オ 会社の設立手続が行われたにもかかわらず会社が成立しなかった
   ときは、発起人は、連帯して、会社の設立に関してした行為について
  その責任を負い、会社の設立に関して支出した費用を負担する。 

  


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
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 ▽ 参考書籍

 会社法 神田 秀樹 著 ・弘文堂   リーガルマインド 会社法
 
  弥永真生著 著・有斐閣


 アについて

   募集設立の場合においてのみ、創立総会を開催しなければならない。
 誤りである。

 その根拠等
 
  発起設立は、設立の企画者であり設立事務の執行者である発起人が
 設立の際に発行する株式(設立時発行株式)のすべてを引き受け、会
 社成立後の当初株主になる形態の設立方法(会社法25条1項1号)。

   募集設立は、発起人は設立の際に発行する株式の一部だけを引き受
 け、残りについては発起人以外の者に対して募集を行い、そのような
 発起人以外の者が株式の引受けを行い、発起人とそのような者とが会
 社成立後の当初株主になる設立方法(法25条1項2号)。
 (神田会社法)

   発起設立は、発起人の出資の履行(34条)後,発起人だけで設立時
 取締役等の選任を行い(38条以下)選任された設立時取締役等が、
 設立経過の調査を行う(46条・93条)。

   募集設立にあっては、発起人の出資履行(34条)・設立時募集株式
 の引受人による払込(63条)後、 創立総会(設立時株主≪設立時に
 株主となる株式 引受人≫からなる議決機関)が招集され、そこで、
 設立時取締役等の選任を行い(88条)、定められた設立経過等の調査
 を行う(93条2項・96条)。

   以上により、創立総会は、募集設立に特有なものであることが分かる。

   簡単にいうと、発起人だけだとすっと行くが、募集となると、株主の
 募集や創立総会という面倒な手続がつきまとうことになる。

 総括

  創立総会が開催されるのは、募集設立だけという結論を知っていれば
 よいともいえるが、「その根拠等」によりその流れを把握しておくと、
 知識がより強固になり、応用がきくと思う。


 イについて

  会社の設立に際しての現物出資者は、発起人に限る。財産引受について
 は第三者も相手方になることができる。
   正しい。

 その根拠等

  現物出資は、金銭以外の出資者である(28条1項)。財産引受は、
 発起人が、 設立中の会社のために、株式引受人または第三者との間で
 会社成立後に財産を譲り受けることを約することである(28条2号)。
(リーガル)
  財産引受については、当該定義から、相手方である譲渡人は、第三者
 でもよいということになる。

   いずれも、目的物を過大に評価して会社の財産的基礎を危うくしては
 ならないため、法28条の変態設立事項として、厳格な規制が設けられ
 ている
(神田会社法)。

  会社設立に際しては、現物出資者が発起人に限られるというのは、
 次のとおり条文解釈によって導かれる(リーガル)。34条と63条
 とを対照。34条1項では、発起人の現物出資に関する規定があるのに
 63条の設立時募集株式の引受人には、現物出資を想定した規定はない。
   212条1項2号・2項において、会社成立後の募集株式の引受人
 の責任に関し、現物出資財産に不足を生じた場合について規定している
 が、設立時募集株式の株式引受け人に関しては、これに相当する規定
 がない。

   もうひとつ重要な論点がある。財産引受けは、通常の売買契約で
 あるから、会社成立後は、一般の業務執行になる。会社成立後の
 募集株式の発行の際、現物出資に関する規制がある(207条等)
 のに対して、募集株式の発行等の関連では、財産引受けにあたる
 制度はない。(リーガル)

  総括

  本肢についても、結論だけ覚えておけばよいともいえるが、その
 根拠を知っておくことに越したことはない。また、関連部分は、本
 試験の射程距離であると思う。


 ウについて

  株式引受人が失権した場合、発起人は、その株式を引き受けなくても
 よい。誤りである。

 その根拠等

  設立時募集株式の引受人が払込をしなかった場合は、当然に失権する
 (63条3項)。当然失権することの意味は、条文にあるとおり、「設立時
 募集株式の株主となる権利を失う」ことである。発起人の引受け責任は
 ない。払込があった分だけで会社の設立をしてよい(神田会社法)。

  この点には沿革がある。旧商法では、発起人等に引受け・払込み責任
 が認められていたのを新法である会社法では、これを廃止したのである。
  「 旧商法においては、設立に際して発行する株式総数が定款の絶対的
 記載事項とされており、設立時に発行する株式全部の引受や払込がなさ
 れていない場合は、定款違反として設立無効の原因となるため、その
 ような場合に発起人らに引受・払込責任を負わせて設立の瑕疵を治癒し、
 会社の設立が無効とならないように」していたたのである(非公開会社
 のための新会社法・商事法務)。
 しかし、現行法では、前述のとおり、当然失権とし、払込のあった分
 だけで、設立手続の続行を認めたのである。

 関連事項として、以下の3つを掲げる(神田会社法参照)。

 (1) 発起人が払込をしなかった場合は、失権予告付で払込みを催告
   し、払込がなければ引受人を失権させる(36条)。
(2) 発起人・設立時募集株式の引受人の失権があった場合、他の
      出資者により出資された財産の価格が定款で定めた「設立に際して
      出資される財産の価格またはその最低額」(27条4号)を満たして
   いないときは、設立手続を続行できない。ないしは、設立無効事由
      になる。
 (3) 失権により発起人が1株も権利を取得しなくなるような場合には、
     法25条2項に反するので、設立無効事由となる。

 総括

 本肢に関し、結論だけではなく、沿革も知っていれば、知識は強固になる。
 また、関連事項は、本試験の射程距離にある。

 エについて

   発起人は、会社の設立の企画者であって、設立事務を執行し、会社の
 成立を目指す(神田会社法)のであるから、設立時取締役が、設立中の
  会社のすべての業務を行う権限を有するものではない。
  誤りである。

  設立時取締役(会社の設立に際して取締役となる者)の設立中の業務は、
  以下のとおり、一定ものである。
    法46条1項・93条1項の設立事項の調査である。募集設立にあって
 は、 当該調査結果の創立総会への報告を行う(93条2項)。

  なお、本肢は、設立中の会社に関する基本的理解を問うものであり、
 誤ってはならない。

 
 オについて

  会社不成立の場合における、発起人の責任は、法56条に規定がある。
 発起人がした設立に必要な行為はすべて発起人の連帯責任になる。設立
 費用として支出したものは、・・すべて発起人の負担となる(神田会社法)。
   本肢は正しい。

  なお、会社の[不成立」について付言しておく。
 
     会社の設立が途中で挫折し設立の登記まで至らなかった場合を、会社の
 「不成立」という。設立無効の訴えによるまでもなく、誰でもいつでも会社
  が存在しないことを主張できる(神田会社法)

 
 以上、正しいものは、イとオであり、正解は4である。


   
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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第41回 】★      
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 2009/7/9


             
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【テーマ】行政事件訴訟法
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 A  平成17年度過去問・問題16

  平成16年の行政事件訴訟法改正では、行政訴訟における国民の救済
 範囲の拡大と国民にとっての利用しやすさの増進がはかられた。次の
 記述のうち、改正法でのなお実現されなかったものはどれか。


 1  従来、抗告訴訟における被告は行政庁とされていたが、改正後
   は、国家賠償法と同様に、国または公共団体を被告とすることに
   なった。 

 2  従来、無名抗告訴訟の一種として位置づけられたてきた義務付け
   訴訟や差止訴訟が、改正後は法定抗告訴訟とされたのにともない、
   仮の義務付けおよび仮の差止めの制度が設けられた。

 3  従来、きわめて厳格であった「回復の困難な損害を避けるため緊急
   の必要があるとき」という執行停止の要件が「重大な損害を避ける
   ため緊急の必要があるとき」とされ、改正前に比べ緩和された。

 4  従来、原告適格の要件としての「法律上の利益」が厳格に解釈され
   て いたが、当該法令と目的を共通にする関係法令も参酌すべきこと
  などとされ、その拡大がはかられた。
 
 5  従来、厳格に解釈されてきた取消訴訟における処分性について、
   具体的な効果など諸事情を総合的に考慮し判断すべきとの解釈規定
  が加えられ、その拡大がはかられた。

 

 B  平成18年度・問題18

  平成16年の行政事件訴訟法改正後の行政事件訴訟制度の記述として、
 正しいものはどれか。

 
1  従来、法令に基づく申請についてのみ認められていた不作為違法
   確認訴訟が、規制権限の不行使についても認められることになった。

 2  仮の義務付けまたは仮の差止めは、処分の執行停止と同様の機能を
   有するので、内閣総理大臣の異議の制度が準用されている。

 3 処分が、国または公共団体に所属しない行政庁によって行われた
   場合、 当該処分の取消しを求める訴えは、処分取消訴訟に替わり、
  民事訴訟によることとなった。

 4  法令に基づく申請に対して相当の期間内に何らの処分もなされない
  場合は、原告の判断により、不作為違法確認訴訟または義務付け
    訴訟のいずれかを選択して提起することができる。

 5  処分もしくは裁決の存否またはその効力の有無を確認する判決
 (無効等の確認判決)は、第三者に対しても効力を有することが
  明文上認められた。
 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ▼ 参考書籍は、第2コース第40回に掲載した。

 ▼ 今回、A・Bで取り上げたのは、Aでいう「救済範囲の拡大と利用
  しやすさの増進」のため、平成16年に改正(同17年4月1日から
   施行)された行政事件訴訟法である。これからもここに焦点を当てた
   出題は当然予想されるのであり、この際、当該改正の内容を把握して
   おくべきである。

 Aの17年度過去問

 1について

  これは、被告適格の問題である。
  改正された行政事件訴訟法11条1項によると、処分または裁決をした
 行政庁が国または公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、それぞれ、
 国またはその公共団体を被告として提起しなければならないことになって
 いるので、正しい。なお、この11条の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟
 にも適用されることになっていることに注意せよ!!(同法38条1項)。
 内容を明確にするため、「入門」から次の文章を引用する。
 
 「民事訴訟法の原則からいえば、これはあたりまえのことですが、じつは
 今回の法改正の以前においては、『処分の取消しの訴えは、処分をした
 行政庁を、裁決の取消しの訴えは、裁決をした行政庁を被告として提起
 しなければならない」とされてたのでした(改正前11条)。・・
 『行政庁』は、『処分または裁決をおこなう権限を与えられている行政
 機関』のことだ、と考えておけばよいでしょう。こうして旧法のもとでは、
 たとえば、課税処分の取消訴訟だったら、『国』を相手として訴えを起こ
 すのではなく、その課税処分をした税務署長を相手としなければならない。
 運転免許取消処分の取消訴訟だったら、知事ではなくて、免許を取り消し
 た公安委員会を被告として訴えを起こさなければならない、という状態
 でした。これは大変まぎらわしいことですが、ここのところをまちがえ
 ると、それだけで訴えは門前払い(却下)になってしまったわけで、
 国民の権利救済制度という見地からは、大きな問題がありました。そこで、
 今回の法改正では、これを改めて、民事訴訟の原則に戻すことにした・・」
 本肢では、国家賠償法が挙がっているが、これは民事訴訟法の適用を受け
 るので、以上述べたことは、国家賠償法にも妥当する。
  なお、「入門」による次の指摘にも注意せよ。
  「国または公共団体が被告になる場合でも、訴訟において、実質的には
 行政庁が主体となって活動することとなっています(法11条4項〜6項を
 参照)。」
 

 2について

  法律上明文で定められていないが、従来から理論的に可能であると
 考えられてきた「無名抗告訴訟」が当該法改正によって、法律上正面
 から認められた(法3条6号の「義務付け訴訟」・法3条7号の「差
 し止め訴訟」)。これに伴い、37条の5により「仮の義務付け及び
 仮の差し止め」も認められることになった。注1・2

 正しい。

 注1・「義務付け訴訟」の概念については、第2コース第36回A・
        肢3の解説で述べたので、再説しない。また、「差し止め
        訴訟」については、同 肢2で述べた。
 注2・「仮の義務付け等」とは、仮の処置であって、緊急性など
       厳格な要件のもとに、裁判所は、本案の審理の前に行政庁に
    仮の義務付けを命じ得るとしたものである。

 3について
 
  法25条1項は、取消訴訟につき、執行不停止原則を定めているが、
 同法2項において、取消訴訟のほかに、特別に「執行停止の申立」を
 すれば、例外的に裁判所がこれを認めることがある。この執行停止の
 要件が当該改正により、本肢のとおり、緩和された。

 正しい。

 
 4について

  法9条1項に原告適格の規定があり、その要件としての「法律上の
 利益」については、最高裁判所の判例により緩められてきた。当該
 改正によって、法9条2項が、考慮事項として、最高裁の判例が示
 した内容をとりいれた。そこでは、「関係法令の参酌」も規定され
 た(入門)。注

 正しい。

 注・ここで規定されているのは、第三者が訴えを起こす場合である。
  処分の相手方自身が起こす場合には、取消しについて原則的に
    「法律上の利益」があるのは、処分が不利益なものである限り
  当然のことだからである(入門)。

 5について

  取消訴訟における処分性についての本肢の見解は、最高裁判所の
 判例の立場であるが、これは、4と異なって、当該法改正により
 解釈規定として加えられたという事実はない。

  したがって、平成16年の改正法で実現されていないので、これが
 正解である。

 
 Bの18年度過去問

 
 1について

  法3条5項によれば、不作為違法確認訴訟は、「法令に基づく申請」
 のみにしか認められていない。規制権限の不行使にまで拡大されたと
 いう事実はない。注

 正しくない。

 注 規制権限の不行使についての不作為違法確認訴訟の内容は、第2
   コース第36回A・肢1の解説参照。

 2について

  内閣総理大臣の異議といえば、私には、懐かしい。時は、昭和40年
 代後半。若かった私は、法務省勤務で、当該業務の一端に関わった。
  学生のデモで国会周辺が騒然となった時代。学生らは、東京都公安委
 員会に対し、デモの許可申請。不許可になる。そこで、彼らは、取消
 訴訟提起。同時に、不許可処分の執行停止の申立を行う。許可申請した
 デモの日時より遅い取消しでは無意味であるから、「回復の困難な損
 害を避けるため」(平成16年改正前の要件)処分の効力・執行の停止
 を申し立てる(法25条2項)。そこで、当該異議の登場。このデモの
 不許可を続行しなければ、国会周辺の治安は維持できない(法27条3項
 の「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれ」を理由にする)。この
 起案の作業が、法務省職員によって遂行されるのである。これは、デモ
 の開始前までに行われなくてはならないので、たいてい、徹夜作業だ
 った。この内閣総理大臣の異議があれば、執行停止をすることは
 できない(法27条4項)。
  それデモ、学生らは、デモを強行。そこで、治安当局は、当該異議
 を楯に、楯をもって無許可デモの取り締まり。騒然の度合の増大。
 その繰り返し。
  さて、本題。何らかの不許可処分のあった場合、仮の義務付けにより
 本案の審理なしで、許可を義務付けるのだから、不許可処分の執行停止
 と同様の機能を有する。また、本案の審理なしに、行政処分の差し止め
 が行われると、処分の執行停止の機能を有するというのは、もっと分か
 りやすい。そこで、当該異議の制度の登場となることは、前述したとおり。
 条文でいえば、法37条の5第4項による27条の準用である。
 平16年の改正により、仮の義務付けなどが認められたことにより、
 当該規定が設けられた。

 正しい。これが正解である。


 3について

  これは、被告適格に関するAの肢1と連動する。法11条1項では
 当該行政庁の所属する国または公共団体に被告適格があるが、本肢
 の場合には、11条2項により、当該行政庁を被告とする抗告訴訟
 を提起することになる。平成16年の改正により追加された条項で
 ある。

 したがって、本肢は正しくない。


 4について

 法3条6項2号の「申請型不作為」に対する義務付け訴訟にあっては、
 不作為違法確認訴訟も一緒に起こさなければならない(法37条の3第3項第
 1号)。これが16年改正法である。選択の問題ではない。詳しくは、第
 2コース第38回C肢2の解説参照。

 正しくない。


 5について

  本肢は、判決の第三者効の問題であって、訴訟法として、高度な
 テーマ。理論的には確認判決に第三者効はないといわれている。
  16年改正により、第三者効が明文化された事実はない。
   これについては、これ以上深入りする必要はない。

 正しくない。
 


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第38回 】★      
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 2009/6/24


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
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【テーマ】行政事件訴訟法
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題
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 A 平成18年度過去問・問題17

  取消訴訟と審査請求の関係についての次の記述のうち、妥当なもの
 はどれか。

 1 個別法が裁決主義を採用している場合においては、元の処分に対
   する取消訴訟は提起できず、裁決取消訴訟のみが提起でき、元の
   処分の違法についても、そこで主張すべきこととなる。

 2 行政事件訴訟法は原処分主義を採用しているため、審査請求に対
  する棄却裁決を受けた場合には、元の処分に対して取消訴訟を
   提起して争うべきこととなり、裁決に対して取消訴訟を提起する
  ことは許されない。

 3 審査請求ができる処分については、それについての裁決を経ること
   なく取消訴訟を提起することはできないとするのが行政事件訴訟法
  の 原則であるが、審査請求から3か月を経過しても裁決がなされ
  ないときは、裁決を経ることなく取消訴訟を提起できる。

 4 審査請求の前置が処分取消訴訟の要件とされている場合には、
  その 審査請求は適法なものでなければならないが、審査庁が誤って
  不適法として却下したときは、却下裁決に対する取消訴訟を提起すべ
   きこととなる。

 5 審査請求の前置が処分取消訴訟の要件とされている場合には、その
   出訴期間も審査請求の裁決の時点を基準として判断されることとなる
  が、それ以外の場合に審査請求しても、処分取消訴訟の出訴期間は
  処分の時点を基準として判断されることとなる。
 

 B・Aに関連する問題(例により、過去問の出典を明らかにしない)
   ○×で解答いてください。

(1) 行政事件訴訟法によれば、取消訴訟は、必ず審査請求を経て
    からでなければ提起することができない。

 (2) 処分の取消しの訴えと当該処分の審査請求を棄却した裁決の取消
  しの訴えとを提起できる場合は、どちらの訴訟においても当該処分
  の違法を理由として取消しを求めることができる。 

 (3)処分の取消の訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決
     の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消
     しの 訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求める
    ことはできない。

 (4)処分の取消しの訴えは、審査請求に対する裁決を経て提起する
    ことが法律で定められている場合であっても、審査請求があった
  日から3箇月を経過しても裁決がないときは提起することができる。

 (5)「裁決の取消しの訴え」を「処分の取消しの訴え」と併合して
   提起するようなことは、許されない。

 (6)取消訴訟について不服申立ての前置が要件とされている処分に
     ついては、無効確認訴訟についても、それが要件となる。

 
 C 平成20年度過去問・問題16

 
 不作為の違法確認訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

 1 不作為の違法確認訴訟は、処分の相手方以外の者でも、不作為の違法
   の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者であれば、提起すること
   ができる。

 2 不作為の違法確認訴訟を提起するときは、対象となる処分の義務付け
   訴訟も併合して提起しなければならない。

 3 不作為の違法確認訴訟は、行政庁において一定の処分を行わないことが
   行政庁の義務に違反することの確認を求める公法上の当事者訴訟である。

 4 平成16年の行政事件訴訟法の改正によって義務付け訴訟が法定された
   のと同時に、不作為の違法確認訴訟の対象も、申請を前提としない規制
  権限の不行使にまで拡大された。

 5 不作為の違法確認訴訟自体には出訴期間の定めはないが、その訴訟係属
   中に、行政庁が何らかの処分を行った場合、当該訴訟は訴えの利益がなく
   なり却下される。


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■ 解説
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 △ 参考書籍 

 「行政法入門」藤田 宙靖 著 ・「行政法読本」芝池 義一 著
  ・ともに有斐閣発行

 △ 過去問の検討

  今回も前回に引き続き「行政事件訴訟法」を採用した。

 
 A・平成18年度過去問

 a 根本問題・用語解説

 ○不服申立ての前置

 「訴願前置主義」
  
   昭和37年に現在の行政事件訴訟法が制定される前の制度である。
  行政庁に対して、異義などができる場合には、それを行ってから
  でなければ処分の取消訴訟を起こすことはできない。

 「自由選択主義」
 
   行政上の不服申立てを先にするかいきなり訴訟を提起するか、両者
  を平行して行うかすべて私人の自由な選択に任せるべきである。
    行政事件訴訟法8条1項が規定する現在の制度。

   同法8条1項ただし書きは、例外を認めている。個別の法が例外を
  定めている場合がたいへん多くなっていて、「その結果、現実には
 不服申立ての前置という要件がふたたび取消訴訟の重要な訴訟要件
  となってしまっているということを否定できない状況」(入門)                
  である。
 


 ○「原処分主義」と「裁決主義」

   裁決を経て取消訴訟を提起する場合、最初の処分(原処分)と裁決
  のいずれを争いの対象とすべきかという問題である。なお、さきの
 「前置」主義とは、直接関係ないと思う。「前置」に基づいて、裁決
  を経る場合もあれば、「自由選択」に基づいて裁決を経る場合もある
  からである。

   たとえば、ある営業許可申請に対して、拒否処分がされたのを不服
  として、審査請求をしたところ、これが棄却された場合を想定する。
   まず、現行法は、「処分の取消しの訴え」と「裁決の取消しの訴え」
(注) を規定している。(3条2号・3号)。
 
  注・行政不服審査法によると、異義申立てには決定がなされ、審査
   請求には裁決がなされることになっているが、行政事件訴訟法では、
     両者を含めて、「審査請求」「裁決」という言葉に統一されている
     ことに注意せよ。

  申請者としては、拒否処分を取り消してもらえばよいことになるが、
 考え方として、あとの裁決を争いの対象とし、その中で、最初の処分
 が違法であることを裁判所に認めてもらえばよいことになる。しかし、
 前述したとおり、法は、「処分の取消し」という独自の方法を認めて
 いるのだから、あくまで、拒否処分という 原処分を取消す「処分の
 取消し」を提起すべきことになる。これが、行政事件訴訟法10条
 2項の規定する「原処分主義」である。原処分主義で目的を達する
 ので あれば、「裁決の取消し」は不要ではないかという疑問を生ずる。
  しかし、個別の法律において、原処分に不服がある場合であっても、
 裁決について取消訴訟を提起することが定められていることがある。
  これが、例外として認められている裁決主義である。この場合には、
 この訴訟の中で原処分を取り消してもらうことになる。また、原処分
 の取消しの外にに審査請求の手続自体に違法があるのでこれを取り
 消しておきたいときは、両者の訴えを同時に行うことになる。
 (このような説明は、一般の教科書ではみかけないが、それぞれできる
 だけご自分で具体的に考察されることを勧める。)

 b 各肢の検討。

   以上aの記述を前提に解説をする。全体を見ると、1・2が「原処
 分主義」と「裁決主義」の問題であり、3・4・5が「前置」の問題
 であることが分かる。

 1について

  これは、まさに例外としての裁決主義であり、妥当である。この知識
 が正確に把握されていれば、後の肢はパスして、次の問題に進み、最後
 に時間が残れば、2〜5を確認すれば、随分時間の節約になる。

  2について

  法10条2項の原処分主義のの説明として、前段は正しい。しかし、
 裁決に対して同時に取消訴訟を提起できるので、後段は妥当でない。

  3について

  自由選択主義が原則であるから、前段は妥当でない(法8条1項本文)。
 後段については、8条2項1号に注意。この規定は、例外としての
「前置」 の場合に適用されるのである。紛らわしい肢である。

  4について

  この肢も題意が掴みにくい。審査庁がもともと不適法な審査請求を却下
 (注)したときは、その審査請求は適法なものでなければならないから、
 前置としての裁決があったとは言えない。しかし、審査庁が誤って
 不適法 として却下したときは、却下裁決に対する取消訴訟を経ること
 なく、前置 としての審査請求があったものとして原処分の取消訴訟を
 提起できる。
  同旨の判例があるようである。本肢は妥当でない。

 注 不服申立て要件を満たしていない不服申立てに対し、本案の審理を
    拒否する門前払いとしての「却下」裁決がなされる。これは、本案
    の審理を行ったうえで、言い分を認めない「棄却」裁決と異なる。

 5について

  これも即座に題意がつかみにくい。本肢にいう「それ以外の場合」とは
 前置が処分取消訴訟の要件とされていない場合において、いきなり処分
 取消訴訟を提起しないで、審査請求を選択した場合に相当する。
  換言すると、「自由選択主義」に基づいて、行政上の不服申立てを先行
 させた場合である。審査請求があったときの出訴期間に関する14条3項
 の規定は、前置の場合に限っていないので、「それ以外の場合」にも適用
 されることになり、この場合にも、処分取消訴訟の出訴期間は裁決の時点
 を基準として判断されることになる。おそらく、当該規定は、裁決の結果
 をみて、原処分の取消訴訟を提起しようとする相手方の意思を尊重した
 ものであろう。そうであれば、なおさら前置に限定する必要はない。
 妥当でない。
 なお、これは、教科書では一般に触れられていないもので、常識によって、
 解答を導くことになるだろう。

 1が正解である。4とか5の紛らわしさを考慮すれば、1の正確な知識が
 切め手になる。
 

 B 関連問題

 (1)について

 法8条1項の「自由選択主義」に反する。×

  (2)について

 法10条2項の「原処分主義」に反する。×

  (3)について

 法10条2項の「原処分主義」のとおり ○

  (4)について

 法8条第2項1号のとおり。○

  (5)について

  原処分の取消しの訴を提起するに当たり、裁決の手続に違法性がある場合
 には、「裁決の取消の訴」を併合することが許されるというのが、「原処分
 主義」の帰結である(19条1項参照)。  ×

  (6)について

  法8条第1項ただし書きによれば、不服申立ての「前置」は「処分取消し
 の訴」 に該当する。法38条は、法8条1項ただし書きを無効確認訴訟に
 準用していない。無効確認訴訟については、まさに「前置」といった制限
 を設けず、いつでも起こせる抗告訴訟であるところにこそ、この訴訟の
 ほんらいの意味があるからである。(入門参照)したがって、個別の法
 において、前置の規定があっても、無効確認訴訟には適用がない。

 
 C 平成20年度過去問 

 1について

  行政事件訴訟法第3条第5項によれば、この訴訟は、不作為一般に関する
 訴訟ではなく、「法令に基づく申請」が行われたにもかかわらず行政庁が
 応答しない場合に認められる訴訟である。例えば、許認可の申請や年金の
 給付の申請をしたが、行政庁の応答がない場合、その違法の確認を求める
 ための訴訟がこの不作為の違法確認訴訟である(読本)。したがって、
 処分の相手方以外の者は提起できない。正しくない。

 2について

  法3条6項2号の「申請型不作為」に対する義務付け訴訟にあっては、
 不作為違法確認訴訟も一緒に起こさなければならない(法37条の3第3項
 第1号)。しかし、不作為の違法確認確認訴訟は、単独で提起できる。
 (24号オリジナル問題1肢3・36回過去問A肢3参照)正しくない。
 不作為の違法確認訴訟だけでは効果が薄いので、これを補充するために
                                                     ・・・・・・
 義務付け訴訟が認められるという理屈が分かっていれば、義務付け訴訟
 提起にあって、不作為違法確認訴訟を併合して提起しなければならない
 ことが自然に導かれる。本肢は逆である。

 3について

  法3条5号に規定される不作為違法確認訴訟は、「抗告訴訟」である。
 正しくない。

 4について

  平成16年改正法により、「義務付け訴訟」(そして「差止め訴訟」)
 が「抗告訴訟」として法定されたというのは正しい。しかし、現在も
 法3条6項1号の「直接型不作為」(申請を前提としない規制権限の
 不行使)は、不作為違法確認訴訟の対象にならない。この「直接型
 不作為」に該当する事例としては、過去問36回A肢1の「違法建築」
 オリジナル24号の問題1肢1の「公害」を参照されたい。
  本肢は正しくない。
  なお、平成18年度過去問18 肢1において、本肢と同様のこと
 を問うている。

 


 5について

  法14条の出訴期間の定めは、処分などがあったことを前提にして
 いるから、不作為違法確認訴訟については、そもそも行政処分がない
 場合が問題になるから、出訴期間の定めがなくて当然である(入門)。
  後段については、処分がなされたのであるから、「裁判所が裁判を
 するに値する客観的な事情ないし実益が」(読本)ない場合に相当
 し、訴えの客観的利益を欠く。訴訟要件を欠くことになり、門前払
 いである却下がなされる。正しい。


  本問は5が正解である。
 


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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 28回 】★      
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 2009/5/5


             
             PRODUCED by  藤本 昌一
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【テーマ】行政法・申請に対する処分と不利益処分についての仕組み
 

【目 次】問題・解説 
           
      
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■ 問題・解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 ▲ 参照書籍 行政読本 芝池義一著 行政法入門 藤田宙靖著
   ともに有斐閣発行


 ▲ 本コーナでは、標題に掲げたテーマに絞り、過去問の肢を参照
   しながら、解説を進める。なお、各肢が過去問のいずれに該当
   するかの指摘は省くことにする。

 スタート! 解答は○×で表示する。

 


 《問題》


 ◎ 行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする
   場合は、申請者に対し、当該処分の理由を示さなければならない。
 ー(1)

 ◎ 行政庁は、不利益処分の理由を示さないで処分をすべき差し迫った
   必要がある場合においても、当該理由を示さないで当該処分を行う
  ことはできない。ー(2)

 ◎ 申請拒否処分の理由については、理由を示さないで処分すべき差し
   迫った必要がある場合には、処分後相当の期間内に示せば足りる。
   ー(3)

 ◎ 行政手続法において、「申請に対する処分」の手続として、次の
   ものは、義務的と定められていない。ー(4)

  拒否処分の通知における理由の提示


 《解説》

 ポイント

 A 申請に対する処分と不利益処分の違い。

 申請に対する処分とは、2条3号に規定があり、「国民の側からの
 申請があってはじめて行われる処分のことで、具体的には、認可・
 許可 や社会保障の給付決定を指している」(読本)。

 不利益処分とは、行手法2条4号で定義がなされていて、「例えば、
 ホテル業などの営業の免許を撤回する処分、営業停止命令、工場の
 施設の改善命令などがこれに当たる」(読本)。

 本問では、(1)(3)(4)が申請に対する処分であり、(2)が
 不利益処分である。

 
  
 B 理由の提示を必要とする行政処分の範囲

 行手法8条1項は、許認可等を拒否する処分、いわゆる拒否処分
 について、理由の提示を行政庁に義務づけている。

 同法14条1項は、不利益処分について理由の提示を義務づけている。
 
 
 注
 行政手続法の理由提示の義務は、許認可処分にまでは及んでいない。
 しかし、許認可処分であっても、理由の提示が要請される場合がある。
 「原子炉の設置の許可や公共料金の値上げの認可のように第三者利害
 関係人である住民の生活への影響が大きく、あるいは住民の関心が強い
 ものについては、理由提示の必要性は強い。・・・これは(理由提示
 の義務が許認可処分処分にまで及んでいないのは)、第三者利害関係人
 のことをあまり考慮していないという同法の限界の一つの表れである。
 (読本)

 C 各肢の検討 

 (1)について  

 8条1項は、申請に対する拒否処分について、行政庁に理由の提示を
 義務づけている。この義務は法的義務である。

  ○

 (2)について

 14条1項は、不利益処分についても、行政庁に理由の提示を義務づけ
 ていて、これも法的義務である。ただし、14条ただしがきに照らせば、
 このような場合において、理由の提示を要しない。

  ×

 (3)について

 14条1項ただしがき、2項に照らせば、不利益処分には該当しても、
 申請拒否処分については、8条1項の適用を受ける。同条には、この
 ような規定はない。

 ×


 (4)について


 8条1項において、義務的として定められている。

 ×

 なお、不利益処分の手続として、「不利益処分の通知における理由
 の提示」が挙がっていても、14条1項に照らし、×

 

 《問題》

 ◎ 許認可の申請にあたっては、申請者には申請権があり、行政庁には
   申請に対する審査・応答義務があるので、形式要件に適合している
   限り、申請書類の返戻は許されない。ー(5)

 ◎ 行政庁は、法令に定められた申請の形式上の要件に該当しない申請
   については、申請した者に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を
   求めなければ、当該申請により求められた許認可等を拒否できない。
    ー(6)

 ◎ 行政庁は、申請がその事務所に到達したときは、遅滞なく当該申請
  の審査を開始しなければならない。ー(7)

 ◎ 行政手続法において、「申請に対する処分」の手続として、次のもの
   は、義務的と定められていない。ー(8)

  
   申請到達後遅滞なく審査を開始すること

 


 《解説》

 
 本問全体おいて、対象になっているのは、前記ポイントAにおける、
「申請に対する処分」である。

 さらに、ここで焦点になっているのは、行手法7条の申請に対する
 行政庁の審査および応答の義務である。

 (5)について


 7条の立法趣旨は、申請が事務所に到達した時点で審査義務が発生し、
 申請が形式的要件に適合している限り、返戻は許されないことである。
(入門参照)
 
 ○

 注
 返戻は、へんれいと読み、へんぼうとは読まない。蛇足ながら、国語
 の勉強。

 (6)について

 7条の条文上、「補正を求め、又は・・許認可等を拒否しなければなら
 ない]となっている。したがって、補正を求めないで、許認可等を拒否
 できる。

 ×

 (7)(8)について

 7条は、「審査を開始しなければならず」としていて、当該審査義務は
 法的義務である。

 (7)は○ (8)は×

 

 《問題》


 ◎ 行政手続法上の申請のうち、行政庁が諾否の応答を義務づけられる
   のは、許可あるいは認可を求めるもののみに限られる。ー(9)


 ◎ 補助金の交付申請は、法令に基づかない申請であっても、行政手続
   法上の申請とみなされる。ー(10)

 ◎ 申請拒否処分は、不利益処分の一種であるから、こうした処分にも、
   不利益処分に関する規定が適用される。ー(11)

 ◎ 行政庁は、申請者の求めに応じ、当該申請の進行状況・処分の時期
   の見通しを示すように努めなければならない。ー(12)

 ◎ 行政庁は、申請に対する処分であって申請者以外の者の利害を考慮
   すべき場合は、公聴会の開催その他適当な方法により、当該申請者
   以外の者の意見を聞く機会を設けるよう努めなければならない。
  ー(13)

 ◎ 行政手続法において、「申請に対する処分」として、次のものは
   義務的と定められていない。ー(14)

  関係国民の意見陳述のための手続

 ◎ 申請拒否処分が許されない場合において、それをなしうるとして
   申請の取下げを求める行政指導は、違法な行政指導である。ー(15)


 《解説》

 ここでは、全体として、「申請に対する処分」の仕組みを問う問題を
 掲げた。

 (9)について

 2条3号によると、申請とは、行政庁の許可、認可、免許その他
 の自己に対し何らかの利益を付与する処分(この全体をひっくるめて
 許認可等)を求める行為であって、これに対して、行政庁が諾否の
 応答を義務づけられている。したがって、応答義務は、許可・認可
 に限られない。
      ・
 注 許認可等になっていることに注目。

 ×

 (10)について

 
 2条3号によれば、法令に基づかない申請は、行政手続法上の申請では
 ないので、行手法第2章の申請に対する処分の適用を受けない。

 ×

 (11)について

  申請拒否処分は、申請者に不利益を及ぼすので、広い意味での不利益
 処分である。(読本)しかし、「申請に対する処分」と「不利益処分」
 は条文と構造を異にしているので、「申請に対する処分」である
「申請拒否処分」に対し、「不利益処分」の規定が適用されることは
 ない。

 注
 申請拒否処分については、行手法第2章の「申請に対する処分」が適用
 されるのであり、同法第3章の「不利益処分」の規定が適用されるので
 はない。

 2条4号ロの[不利益処分」除外規定は、注意的なものであろう。

 
 (12)について

 9条1項の条文のとおり。この行政庁による情報提供義務は、法的義務
 ではなく、努力義務であることに注意すべきである。

 ○

 (13)(14)について
 
 10条の条文のとおり。この公聴会の開催等は、努力義務である。
 (13)は○        

 行手法において、「申請に対する処分」として、当事者以外の者
 の意見陳述のための手続は、10条以外に規定がなく、これは
 努力義務である。法的義務ではない。また、これ以外に、行手法
 に「関係国民の意見陳述のための手続」を定めた規定はない。
 (14)も○。


 (15)について

 
 これは、34条の適用例である。すでに卒業した行政指導の問題で
 あるが、「申請に対する処分」すなわち「申請拒否処分」の問題でも
 るので、ここでとりあげる。
 34条は難解な規定であるが、例えば、ここにあるように、「当該
 権限を行使することができない場合」すなわち、申請拒否処分が許
 されない場合において、「当該権限を行使し得る旨を殊更示すこと
 により」すなわち、それをなしうるとして、「相手方に当該行政
 指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない」
 すなわち、申請の取下げ を求める行政指導に従わせることを
 してはならないことになる。この公務員の行いは、法的義務に
 違反するので、違法な行政指導になる。

 ○ 

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【発行者】司法書士 藤本 昌一

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   ★【 過去問の詳細な解説≪第2コース≫ 第 12回 】★      
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 2009/2/16

             
             PRODUCED by  藤本 昌一
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【テーマ】 民法・物権変動と登記


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■ 過去問を中心とした「物権変動と登記」 問題と解説(その3)
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 ◆ 今回も前回に引き続き「物権変動と登記」をテーマにして、
 過去10年間の過去問を題材に、問題提出と解説を行います。
 
 過去問の肢の出典を省くのも、いままで同様です。

 以下、○か×かで答えてください。


 [問題1]


 A所有の甲地につきBの取得時効が完成した後に、Aが甲地を
 Cに譲渡した場合、Bは登記なくしてCに対抗できる。


 [解説]

                  ( )内の数字は、
 甲地                時系列の順序を示す。
   
          (1)       
          時効完成  162条・20年間ないし10年間
  A----------B        の占有継続により取得時効
                   完成=所有権取得。    
      (2)           
      譲 渡
   ----------C

 
 ア 144条によると、時効の効力は、その起算日にさかのぼるため、
 Bは占有開始時において、所有権を取得したことになります。

 イ しかし、177条により、Bは取得時効にる不動産所有権を
 第三者に対抗するには、登記をしなければならないことになります。

 ウ 本問におけるCは、時効完成後、当該不動産につき旧所有者
 から所有権を取得した者に該当しますが、この者も、177条の
 第三者に該当します。

 エ 以上の原理は、177条の典型的適用例である二重売買の場合
 と同じことですね。

 オ 判例もあります(最判昭和33・8・28・・H21模六 177条
 14 1003頁)。

 以上から、Bは登記なくしてCに対抗できないので、本問は、
 ×です。

 なお、市販の解説書をみますと、「判例があります」で事足れり
 
 としていますが、理屈とか原理が先行すると思います。判例
 は、原理適用の結果なのです。判例がありますではなくて、
 判例もありますという勉強をしよう。

 
 [問題2]


 Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却し、B
 は、その後10年以上にわたり占有を継続して現在に
 至っているが、Bが占有を開始してから5年が経過した
 ときにAが甲土地をCに売却した場合に、Bは、Cに
 対して登記をしなくては時効による所有権の取得を対抗
 することはできない。

 
 甲土地       ( )内は前記同様順序
          
    

    売却    10年以上占有継続   
                (2)
 A----------B 162条 取得時効完成
                 =所有権取得

        (1)
     5年 売却 
 A   ----C


 イ 本問では、いくつか気になることがあります。
 
 ここで、時効を除外して考えますと、二重売買になり、
 BはCに対して登記なくしては所有権を対抗できません。
 
 しかし、本問では、 売買が無効となったため、Bは時効
 を主張しているのでしょう。ここでは、10年の占有継続が
 問題になっていますから、162条2項の適用が適用され、Bが
 売買契約の瑕疵について、善意無過失であったと思われます。

 ロ ここから、本題です。だから、皆さんは、イの余計な
 考察は省略して、ズバリここから突入してください。
 [問題1」が、時系列からして、Bの時効完成後にCに譲渡
 されたのに対して、本問は、Bの時効期間進行の中途にCに
 譲渡されています。この場合どのように考えるかについては、
 難しい問題がありますので、この場合は、判例が頼りです。

 判例を、上記事例をあてはめますと、

 時効期間進行の中途にAからCへの譲渡があり、登記がなされ、
 その後にBの時効期間が満了した場合にも、Cは時効による
 権利変動の当事者であるから、Bは登記なくしてこれに対抗
 できる。(最判昭和35・7・27ほか多数・・一粒社 民法 1)

 要点が二つあります。
 
 一つには、[問題1]では、BとCが177条の対抗関係に立つ
 ため、Cに登記を要するのに対して、本問では両者が当事者
 の関係に立つため、Cに登記を要しないことになります。

 二つには、本問では、Cに登記が具備されても、BはCに
 対抗できます。

 したっがて、本問では、BはCに対し登記なくして、時効
 による所有権取得を対抗できることになりますので、×です。

 ハ 本問は、二重売買において、引き渡しを受けた未登記の
 第一の買主が、占有を継続し、時効を主張することにより、
 登記を具備した第2の買主(本来177条により、優先)
 に対抗し得ることの不当性が問題になる事例ですが、深入り
 する必要はありません。問題意識としては、大切ですが・・。


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