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              ★ オリジナル問題解答 《第8回 》 ★

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                         PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  行政法
   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■ 民法・行政法・オリジナル問題 解説
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   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第94号に掲載してある。

 ★ メルマガ第94回はこちら↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 


  ◆ 総説

  
  行政訴訟は、主観訴訟と客観訴訟に分かれる

 
 ○ 主観訴訟=権利保護の制度・つまり救済の制度。

  
    抗告訴訟と当事者訴訟に分かれる。

    「抗告訴訟」=取消訴訟・無効等確認訴訟・不作為の違法確認
           ・義務付け訴訟・差止訴訟


     「当事者訴訟」=実質的当事者訴訟・形式的当事者訴訟

 

 ○ 客観訴訟=権利救済のためでなく、国・公共団体の違法行為を
                是正し、その活動の適法性を確保することを目的と
                する。


     「民衆訴訟」・「機関訴訟」


 (前掲書・読本 266頁の図表を参考にした)

 
 ◆ 各肢の検討


  ○ 1・2について

   
    以下の記述を参照されたい。
 
 --------------------------------------------------------------
 
    行訴法4条前段規定は、「形式的当事者訴訟」である。
  これに対比されるのが同条後段の「実質的当事者訴訟」である。 

  いずれも、総説の「当事者訴訟」に含まれる。
 
   以下において、「形式的当事者訴訟」について説明する。
  
    まず、条文の意味するところは、難解であるが、「本来は取消訴
   訟であるべきところ、法律の規定により当事者訴訟とされているの
   で『形式的当事者訴訟』と呼ばれている。」(読本270頁)

  「この訴訟の代表例は、土地収用の場合において土地所有者に支払
   われる損失補償に関する争いである。損失補償は、都道府県に設
   けらている収用委員会の裁決によって定められるが、、裁決は
   行政処分であり・・従って土地所有者がその損失補償に不服がある
   場合には、本来収用委員会を被告として取消訴訟を提起しなければ
   ならないはずである。ところが、土地収用法133条2項は、損失
  補償に関する訴訟は、損失補償の法律関係の当事者つまり、土地
   所有者と土地所有権を取得し補償の義務を負担する起業者との間
   で行われるべきものとしている。」(読本270頁)

 
    これに対して、行訴法4後段の「実質的当事者訴訟」に関しては、
  最大判H17・9・14を参照すべきである。

   在外国民が「次回の衆議院の総選挙における小選挙区選出議員の
 選挙および参議院の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において、
 在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票できる地位にあ
 ること」の確認を求める訴えは「公法上の法律関係に関する訴え」
 として確認の利益が肯定され適法である。

 (入門211頁以下・読本337頁以下)

  なお、この他、当該訴訟の例として、「公務員の身分の確認を求
 める訴訟や公務員の俸給の支払を求める訴訟などがこれに該当する。」
 とされる(読本 269頁)

 
  ☆  関連事項

   過去問 平成19年度・問題19をみよ!!

  行政事件訴訟法4条の当事者訴訟に当たるものの組合せとして
 正しいものとして、次の肢が挙げられている。

  ア  土地収用法に基づいて、土地所有者が起業者を被告として
  提起する損失補償に関する訴え

 オ 日本国籍を有することの確認の訴え


 アが、形式的当事者訴訟であり、オが、実質的当事者訴訟である。

 -------------------------------------------------------------
 
  以上の記述に照らせば、1・2いずれも、妥当である。

  

 
 ○ 3について

   
    以下の記述を参照されたい。

  ---------------------------------------------------------------- 

    地方自治法242条の2に定める「住民訴訟」は、行訴法5条
  が規定する民衆訴訟である(総説・○客観訴訟「民衆訴訟」参照)。

   
   選挙に関する訴訟は公職選挙法(203条以下)で定められ、
   これもまた、民衆訴訟である(総説参照)。
  
  
   次の指摘に注意。

   「選挙に関する訴訟は公職選挙法(203条以下)で定められ、
    住民訴訟は地方自治法(242条の2)で定められている。
    行政事件訴訟法5条の規定は、それらの訴訟を行政訴訟に
    組み込むという意味を持っている」(読本271頁)
 
----------------------------------------------------------------
 
    以上の記述に照らせば、本肢は正しい。


 ○ 4について

  「義務付けの訴え」(行訴法3条6項)は、抗告訴訟に該当する
  行訴法3条1項・総説○主観訴訟「抗告訴訟」参照」

  抗告訴訟に該当するので、本肢は誤りである。

 ○ 5について
               
        行訴法6条の機関訴訟(総説・○客観訴訟「機関訴訟」)に
   いては、「法律が定めている場合に限り、法律で認められた者
      だけが提起することができる。その理由は、行政機関が法人格
   を持たず、権利義務の主体ではないことである。行政組織内部
      の紛争はその 内部で解決すべきであるという観念も作用して
   いるであろう」(読本271頁)

   したがって、本肢は正しい。

 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 以上によれば、妥当でないのは、4であるから、正解は4である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 
 ☆ 本問については、サイト69回を参照されたい。

 ◆サイト第69回はこちら↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/1355589.html

 
 
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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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         ★ 過去問の詳細な解説  第95回 ★

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【テーマ】  民法


【目次】    問題・解説

            余禄          
     

 

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 ■ 平成22年度・問題46(記述式)
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   以下の【相談】に対して、[  ]の中に適切な文章を40字程度で
 記述して補い、最高裁判所の判例を踏まえた【回答】を完成させなさい。


 【相談】

  私は、X氏から200万円を借りていますが、先日自宅でその返済に関
 してX氏と話し合いをしているうちに口論になり、激昂したX氏が投げた
 灰皿が、居間にあったシャンデリア(時価相当150万円相当)に当たり、
 シャンデリアが全損してしまいました。X氏はこの件については謝罪し、
 きちんと弁償するとはいっていますが、貸したお金についてはいますぐに
 でも現金で返してくれないと困るといっています。私としては、損害賠償
 額を差し引いて50万円のみ支払えばよいと思っているのですが、このよ
 うなことはできるでしょか。

 【回答】

   民法509条は「債務不法行為によって生じたときは、その債務者は、
 相殺をもって債権者に対抗することができない。」としています。その
 趣旨は、判例によれば[     ]ことにあるとされています。ですか
 ら今回の場合のように、不法行為の被害者であるあなた自身が自ら不法
 行為にもとづく損害賠償債権を自動債権として、不法行為による損害賠
 償債権以外の債権を受動債権として相殺することは、禁止されていませ
 ん。

  


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 ■ 解説
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 ●  序論


  1 本問においては、全体として考察すれば、【相談】内容に目を通す
   必要がない。

   【回答】欄において、「今回の場合ように 不法行為の被害者・・
   が自ら不法行為にも とづく損害賠償債権を自動債権として、不法行為
   による損害賠償債権以外の債権を受動債権として相殺することは、禁止
   されていません」として、相談内容を要約したものが呈示されているか
   らである。

    したがって、わざわざ、時間を費やして、以下のように図示して、
   【相談】内容を解明する必要性に乏しい。


             ・
                       X

        
         200万円    150万円
          
         ↓ 貸金債権   ↑ 損害賠償債権

        (受動債権)   (自動債権)
             
                      私
                        ・

   2 ここでいう判例とは、「本条≪民法509条》は、不法行為に基
    づく損害賠償債権を自動債権とする相殺までも禁止する趣旨ではな
    い。(最判昭42・11・30民集28−9−2477)」

     模範六法 1059頁 509条 1 ▽ 参照

     一般的知識としては、通常このあたりまでの認識はあるであろう。
          
     しかし、
     
          このことを本問の解答として、記載しても、蛇足であるから、点数
    にはならない。

 ◎ ズバリ回答としては、

    前記最高裁判所の要旨を要約したものとなるであろう。
    
  
    その要旨

    民法第509条は、不法行為の被害者をして現実の弁済により損害の填補
   をうけしめるとともに、不法行為の誘発を防止することを目的とするもの
   であり、不法行為に基づく損害賠償債権を自働債権とし、不法行為による
   損害賠償債権請求権以外の債権を受働債権として相殺をすることまでも
   禁止するものではないと解するのが相当である


    その要約としての本問の回答

   --------------------------------------------

    不法行為の被害者に現実の弁済に
    よる損害の填補をうけさせるとと
    もに不法行為の誘発を防止する。

                45字

    ---------------------------------------------


 ○ 付言

  
   1 ズバリ回答をゲットしようとすれば、この問題を予想し、予め、最高裁判所
   図書館もしくは国立国会図書館所蔵の「最高裁判所民事判例集第21巻9号2
  477頁」を見て、暗記した希有な者に限られるであろう。

  2 それでは、判例の暗記という観点を離れて、標準的な法律書を基に本問を
   考察してみてみよう。

   民法509条によって、不法行為債権を受動債権として相殺が禁じられる
  のは、「不法行為の債務は必ず現実に弁済させようとする趣旨である」から
  である。

   もう一つは、仕返しを回避するためである。分かりやすく言えば、頭をぼこ
  にした相手に対し、自分も相手のかしらを同程度にボコボコにして帳消しにし
  ようとすることが許されないのである。
   あるいは、「任意に履行履行しない債務者に対して債権者が自力救済その他の
  不法行為をしたうえで、それによって相手方が取得する損害賠償債権を受動債
  権として相殺をもって対抗するようなことを許さないというねらいも含んでいる。」
             ・
   したがって、受験者の頭の隅に「現実弁済」とか「自力救済の禁止」という
  言葉が浮かべば、さきの最高裁の判例の要旨を知らなくても、何とか正解に達
  する可能性が開けてくるのである。

   以下は、【余禄】欄に譲る。

   
 ▲ 参考事項

  以下の判例あるので、参考までに掲げておく。

  双方の過失に基づく同一交通事故による物的損害の賠償債権相互間でも、
 相殺は許されない。(最判昭49・6・28 民集28−5−666)

 《22年度模範六法・民法509条 2 ▽ 》

  当該判決の判旨によれば、「民法509条の趣旨は、不法行為の被害者に
                       ・
 現実の弁済によって損害の填補を受けさせること等にあるから、およそ不
 法行為による損害賠償債務を負担している者は、被害者に対する不法行為に
 よる損害賠償債権を有している場合であっても、被害者に対しその債権をも
 って対等額につき相殺により右債務を免れることは許されないものと解する
 のが相当である」。
 

  
 ★ 参考文献

  民法 2 ・ 我妻栄/有泉亨著・勁草書房
   
    


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  ■ 余禄・先生と美里さんの会話(メルマガ配信から抜粋)

     《平成22年度問題 46 を巡って》

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 永宗美里さんの紹介

 花の独身・28歳・瞳がきらきら輝き、活発・行政書士受験歴2回・
 3回目に挑戦中。

 先生の事務所に勤務・先生の姪にあたるが、事務所内では、伯父を
 先生と呼ぶ。
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              どちらが先生?
              ーーーーーーーー
                 

 先生「平成22年度・問題46については、当日どう回答した?」

 美里「あまり答えたくありませんが、・・・【相談】の事例を読めば、
    受動債権が 貸金債権であって、不法行為による債権ではありま
       せんので、民法509条に照らして、相殺が可能だと考えまし
       た。」

 先生「それは、当然だ。例の最高裁の判決要旨は知らなかったんだね」

 美里「今では、その存在は分かっていますが、試験日には、その要旨に
    ついて、全然頭にありませんでした」
 
 先生「それも当然だ。その点、君は悪くない。それを知っていろという
    のは要求過多だ。それでは、なにを書いた?」

 美里「はい、509の立法趣旨として、不法行為の被害者に実際に弁済
    する必要があるから、相殺が禁止されていることは知っていまし
    たので、この場合は、自動債権が損害賠償債権ですから、相殺可
    と思い、そのことを書きました」
 
 先生「それはそれで、正しい」

 美里「でもね、先生。『不法行為の被害者に現実に弁済する必要がある』
    と書くと、空欄が半分なんです。仕方がないから、これに続けて、
   『・・・から、不法行為による債権を自動債権とするのは可』と
    かなんとか、書いたと思います。」

 先生「後半が蛇足だ」

 美里「分かってます。これは、まずいと思って、書いたんですから・・
    蛇足だと思って、空欄を埋めただけですから」

 先生「『自力救済の禁止』という文言は浮かばなかったんだな」

 美里「ちらりと、頭をかすめましたが、事例をみれば、受動債権が不法
   行為ではないわけですから、自力救済は関係ないと思ったんです」

 先生「なるほど。しかし、いまは、そのからくりはわかっているね」
   
 美里「先生。わたしが説明いたしますわ。まかせてください」

 先生「君が先生だ!どうぞ」

 美里「つまりですね。【相談]の事例によっても、受動債権が不法行為
    でなくて、貸金債権であることがポイントですね。【回答】でも、
   『不法行為による・・債権以外の債権を受動債権として』相殺可
   となっていますよね」
 
 先生「裏から言えば・・・・」

 美里「(みなまで言うなと制するように・・)受動債権が不法行為で
    ある場合には、自力救済禁止、判例によれば、「不法行為誘発
    防止」のため、相殺不可であるから、そのことも[  ]欄に
    記載しておく必要があるということですね」

 先生「Exactly! 最後に一言。じっくりこの問題をながめて
    ほしい。【回答】欄の記載だけで回答できる。かえって、【相談】
    の事例にひっぱられると、現実弁済しか念頭にうかばないことに
    なる。もうひとつ・・・・」 
             
      
       ↓    続き( 一週間後・・)

 

          
           二丁拳銃と二刀流
       ーーーーーーーーー


 美里「先生、もうひとつとはなんですの。1週間も待たされたんです
    もの。先生あんまり勿体ぶらないで!」

 先生「そんなつもりはない。ただ誌面の都合でそうなっただけだ。
    つまり、私の言いたかったことは、この問題の採点基準につい
    てだ。前に掲げた最高裁判所の判例(最判昭42・11・30)
    の判旨を機械的に当てはめて、そのとおりかどうかを基準にし
    てほしくないということだ」

 美里「そうですね。『現実弁済』のほか、『自力救済の禁止』『仕返し
    の禁止』でもいいわけですよね。現実の弁済による損害の填補
       とか、不法行為の誘発防止でなければ、減点というのは、お笑
         ・
    い草ですよね!}

 先生「君も八つ当たり気味だね。そんな草は見たこともないが・・。
    いずれにしても、採点者が、この事案を咀嚼し、柔軟に対処
    できるかどうかが鍵だと思うな」

 美里「例えば、『不法行為の被害者に現実の弁済をさせるとともに、
    自力救済を禁止する』(33字)でもいいわけですよね」

 先生「私には、減点の対象が見当たらない。自力救済・・が仕返し
    の禁止であっても、一向にかまわないじゃないか」

 美里「わたし、古い西部劇で、二丁拳銃で、一度に同時に二人を殺す
   場面見ていて、この問題を連想しましたわ」

 先生「なるほど、正面の敵は、現実弁済の自動債権だ」

 美里「横には、自力救済禁止という敵ですね」

 先生「面白いね。敵は、不法行為の衣を被っている。・・それでは、
    チャンバラ映画の二刀流は、どうだ」

 美里「先生、同じことですわ。蛇足です」

 先生「(むっとして・・)もう止めておこう」

 

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      ★ 過去問の詳細な解説  第92回 ★

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  【テーマ】 民法
   
     ー過去問に関して、登記にまつわる諸問題・その3(終)−
     
     平成10年度以降の登記のからむ肢を順次とりあげ、解説を行い
   ます。本試験準備の有力な武器になることを祈念します。
    
    試験日直前になりましたので、今回は過去問の抜粋をして、締め
   とさせていただきます。
    
 
  【目次】   問題・解説


    【直前予想問題】

   現在販売中の行政書士試験直前予想問題【平成22年度版】につきまし
  ては、多数の読者に恵まれ、深謝しております。

 

  ◆藤本式直前行政書士試験予想問題【平成22年度版】はこちら!
           ↓↓↓
  http://www.examination-support.com/2010/


   
   この問題・解説集は、本試験直前対策として、現時点における最適・最
  良を目差して、わたしが作成したものであり、残部に限りはありませんの
  で、まだ購入されていない方はぜひお買い上げいただき、この期間中、本
  誌を伴侶としていただき、本試験合格の栄誉に輝かれることを祈念いたし
  ます。 

           
   
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
■  問題集(過去問の出典は省略)・○×を付すること

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 1 Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却した後、Aが重ねて
  甲土地を背信的悪意者Cに売却し、さらにCが甲土地を悪意者Dに売
  却した場合に、第一買主Bは、背信的悪意者Cからの転得者であるD
  に対して登記をしていなくても所有権の取得を対抗できる。(  )

 2 Aの所有する甲土地につきAがBに対して売却したが、同売買契約
  が解除され、その後に、甲土地がBからCに売却された場合に、Aは、
  Cに対して、Cの善意悪意を問わず、登記をしなくしては所有権の復
   帰を対抗することはできない。(    )

 3 Aの所有する甲土地につきAがBに対して遺贈する旨の遺言を死亡
  した後、Aの唯一の相続人Cの債権者DがCに代位してC名義の所有
  権取得登記を行い、甲土地を差し押さえた場合に、Bは、Dに対して
  登記をしていなくても遺贈による所有権の取得を対抗できる。(   )

 4 遺産分割前に共同相続人の一人Dから相続財産に属する不動産につ
  いて共有持分を譲り受けた第三者Hは、登記がなくても他の共同相続
  人B・C・Eに共有持分の取得を対抗することができる。(   )
 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
■  解説集(判例に関しては、三省堂発行の平成22年度 模範六法
       から引用≪模 、、条1、2、3・・・で表す≫)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 1 不動産二重売買における背信的悪意者からの転得者は、その者自身
  が第一買主との関係で背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該
  不動産の所有権取得をもって第一買主に対抗することができる(最判
  平8・10・29 摸 177条 33)。×

    末尾 オリジナル問題 1 参照

 2  解除をした売主と解除後の第三者である買主から当該不動産を取
  得した者は、対抗関係に立ち、第三者の善意悪意にかかわらず、登
  記の先後により優劣を決する(最判昭35・11・29 摸
  177条  4) ○ 
  

   末尾 オリジナル問題 2 参照

 3  甲から乙への不動産の遺贈による所有権移転登記未了の間に、甲
  の共同相続人の一人の債権者が当該不動産の相続分の差押えの申立
  をし、その旨の登記がされた場合、当該債権者は、本条(177条)
  の第三者にあたる(受遺者は登記なしに遺贈を当該債権者に対抗で
  きない)。(最判昭39・3・6 摸 177条 25)×

   なお、本肢は、判例とは異なり、単独相続の事例であるが、結論
  は同一であることに注意せよ。

 4 不動産の共有者の一員が自己の持分を譲渡した場合における譲受 
  人以外の他の共有者は本条(177条)にいう第三者に該当する。
  ( 最判昭46・6・18 摸 177条 26)

   したがって、共有持分を譲受けた者は、登記なくして、共有相続人
  に対抗できない。  ×

 

 ◆ 末尾

  
 《問題1》

  最高裁判所は、「不動産二重売買における背信的悪意者からの
 転得者は、その者自身 が第一買主との関係で背信的悪意者と評
 価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって第一
 買主に対抗することができる。」という見解に立っている。
 
  上記の最高裁判所の見解は、いかなる考えを前提としたものと
 いえるか。 40字程度で記述しなさい。
 
  なお、具体的事例としては、Aの所有する土地につきAがBに
 対して売却した後、Aが重ねてその土地を背信的悪意者Cに売
 却し、さらにCがその土地を背信的悪意者でないDに売却し、
 Dが登記を得た場合を想定し、記述にあたっては、ABCDを
 使用すること。

 
 
 《問題2》


  売買契約の解除と登記に関する次の記述のうち、判例の趣旨
  に照らして、妥当でないものはどれか。


 1 AからBに不動産の売却が行われたが、Bに代金不払いが生じ
   たため、AはBに対し相当に期間を定めて履行を催告したうえで、
   その売買契約を解除した。解除後にBからその不動産を買い受け
   たCに対し、Aは、登記 なくしては所有権の復帰を対抗できない。

  2  AからBに不動産の売却が行われたが、その後A・Bの売買契
    約が合意解除された。解除後にBからその不動産を買い受けたC
    に対し、Aは、登記なくしては所有権の復帰を対抗できない。

  3 AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売
    したところ、A・Bの売買契約がA・Bにより合意解除された場
    合に、Cは善意であれば登記を備えなくても保護される。

  4 AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売
    したところ、Bに代金不払いが生じたため、AはBに対し相当の
    期間を定めて履行を催告したうえで、その売買契約を解除した場
    合に、Cは善意であっても登記を備えなければ保護されない。

  5 AからBに不動産の売却が行われ、BはこれをさらにCに転売し
    たところ、A・Bの売買契約が解除され、BからAに所有権移転登
    記が復帰した場合には、Cが善意であっても保護されない。


 
 《解説》

  
 ◎ 問題 1


  ■ ポイントは、背信的悪意者Cの所有権取得が無効であれば、
     Dも所有権を取得しないため、Dに登記があっても、Bに所
     有権の取得を対抗できないということ(逆に言うなら、Bは、
     登記なくしても、無権利者Dには所有権を対抗できる=無効
     はだれでも主張可。登記なくしても可)。
 
      しかし、最高裁判所は、DはBに対抗できるとしているのだ
    から、その考えの前提として、AからCに有効に所有権が移転
    し、CからDへの所有権移転も有効であるということが是認さ
    れなくてはならない。

   ■ そこで、最高裁判所の考えの前提について、その解答例を
      示すと以下のようになる。


      Cが背信的悪意者であっても、AからCに所有権が移転して
    いるため、Dも所有権を有している。 44字

 


 ◎ 問題 2

 

  法定解除=合意解除

 
       解除前の転売      ・   解除後の転売

    A−−−C        A−−−−C
           ↓
          保護されるには
      登記要         対抗関係
        
    ●結局、先に登記           ●先に登記した
    した方が優先           方が優先

 

 1について。

   法定解除であり、解除後の転売であるから、AとCは対抗関係。
 Aは、登記なくして対抗できない。

 妥当。

 2について。

   合意解除であり、解除後の転売であるから、AとCは対抗関係。
 Aは、登記なくして対抗できない。

 妥当。

 3について。

   合意解除であり、解除前の転売であるから、Cが保護されるには
 Cに登記必要。
 
 妥当でない。正解。

 4について。

   法定解除であり、解除前の転売であるから、Cが保護されるには
 Cに登記必要。

 妥当。

 5について。

   法定解除か合意解除か不明。どちらでも同じであるから、詮索する
 要なし。解除前の転売であるから、Cに登記必要。Aがさきに登記
 したのだから、Aが優先。

 妥当。

   なお、以前に、詐欺による取り消し前の善意の第三者(96条3項)は、
 登記を要しないという判例があるといいましたね。この5との対比で
 いいますと、AがBの詐欺を理由に取り消し、登記もAに復帰して
 いても、取り消し前の善意の第三者が優先するということなんですね。
 解除前の第三者と同様、保護されるには、登記が必要とした方がよい
 のではないかとも思いますが、皆さんはどう考えられますか。


  以上 3 が正解

 

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
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         ★ 過去問の詳細な解説  第86回  ★

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  【テーマ】 会社法

    【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
     本年9月末頃を目途に、過去問の分析に加え、近時の傾向も取り
  入れた「オリジナル模擬試験問題」(有料)を発行する予定をして
   います。
     とくに、関連部分に言及した解説にも力を込め、よりよいものを
   目差して、目下準備中です。

  《以上の予告につきまして、やむなく10月にずれ込みましたが、
 もう間もなく、発行いたしますので、よろしくお願いいたします。》

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成18年度・問題39
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  

   会社の合併に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものの組合せは
 どれか。


  ア 会社が合併するには、各当事会社の株主総会の特別決議による承認
    を要するが、存続会社に比べて消滅会社の規模が著しく小さい場合に
    は、各当事会社は株主総会を省略することができる。

  イ 合併の各当事会社は、会社債権者に対して、合併承認に異議があれ
  ば一定の期間内に述べるように官報に公告し、かつ電子公告した場合
  であっても、知れたる債権者には個別催告する必要がある。

  ウ 合併決議前に反対の意思表示をし、かつ合併決議に反対した株主は、
  合併承認決議が成立した場合には、株式買取請求権を行使することが
    できる。

  エ 会社の合併が違法である場合に、各当事会社の株主、取締役等、また
    は合併を承認しなかった債権者は、その無効を合併無効の訴えによって
  のみ主張することができ、合併無効の判決が確定した場合には、将来に
    向かってのみその合併は無効となる。

  オ 会社の合併により、消滅会社の全財産が包括的に存続会社に移転する
    ため、財産の一部を除外することは許されないが、消滅会社の債務につ
    いては、消滅会社の債権者の承諾が得られれば、存続会社は消滅会社の
    債務を引き継がないとすることも可能である。

 
  1 ア・エ

   2 ア・オ

  3  イ・ウ

  4  イ・エ

  5  ウ・エ
   

 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ☆ 参照書籍

     会社法  神田 秀樹 著   株式会社 弘文堂

 
 ◆  各肢の検討

 
  ○ 肢アについて

    会社の合併とは、2つ以上の会社が契約によって1つの会社に
     合体することである(会社法748条参照)

    その2つの場合

    ★  吸収合併(2条27号)
   
     当事会社の一つが存続して他の消滅する会社を吸収する場合

    ★ 新設合併(2条28号)

        当事会社のすべてが消滅して新しい会社を設立する場合

   
   本肢では、存続会社と消滅会社が対比されているのであるから、
    吸収合併が問題にされていいる。

     この場合、消滅会社・存続会社いずれにおいても、合併契約で
   定めた効力発生日の前日までに、各当事会社において、株主総会
   の特別決議を得ることを要する(消滅会社は783条・存続会社
   は795条・特別決議は309条2項12号)。

   しかし、略式合併・簡易合併の場合には、当事会社の一方におい
  て、総会決議は不要であるが、

     本肢に記載してある「存続会社に比 べて消滅会社の規模が著しく
   小さい場合には」、各当事会社において、総会決議不要とする規定
   は、会社法上存在しない。

   したがって、本肢は正しくない。


--------------------------------------------------------------
 
      吸収合併については、存続会社ないしは消滅会社の株主総会が
  ・・
  省略されることがあることが知るに止め、以下の細かい仕組みは、
  ・・
  省略してもよいのかもしれぬ。

   なお、新設合併においては、株主総会の決議省略はない(804
    条1項)。
 

 ◎ 参考事項

   略式合併とは?

    存続会社が特別支配会社である場合には、吸収合併の消滅
   会社において、株主総会決議不要(784条1項本文)


    消滅会社が特別支配会社である場合には、吸収合併の存続
      会社において、株主総会決議不要(796条1項本文)

     
     なお、いずれにおいても、その例外があって、総会決議を
        省略できない場合があるが、その場合には言及しない(784
    条1項ただし書・796条1項ただし書)。

      注 特別支配会社とは90%の親会社等を意味する(468条
    1項 参照)


      簡易合併とは?

    吸収合併の存続会社において総会決議不要
 
    すなわち、合併対価の額(簿価)が存続会社の純資産額の20
   パーセント以下の割合の場合において、存続会社の総会決議不要
   とされている(796条3項・これにも総会決議を省略できない
   例外がある796条3項ただし書)。

 -------------------------------------------------------------------

  
  ○ イについて
         

   合併の各当事会社は、会社債権者異議手続を行う(吸収合併の消滅
  会社は789条・存続会社は799条・新設合併の消滅会社は810
  条)。

   その手続において、各当事会社は、異議のある債権者は一定の期間
  内に述べるように官報に公告し、「知れている債権者」には格別に催
  告しなければならない(789条1項、2項・799条1項、2項・
  810条1項、2項)。

   ただし、官報に加えて日刊新聞による公告または電子公告をも行っ
  た場合には知れている債権者に対する個別催告は不要である(789
  条3項・799条3項・810条3項《平成16年改正≫)。

   本肢は、最後尾の記述に反するので、正しくない。
   
      しかし、私は、本肢に関しては、他の重要論点を外し、細かいこと
  を問うているという印象を有する。
  

   ○ ウについて

   反対株主には株式買取請求権が認められる。その要件は、本肢記載の
  とおりである(吸収合併の消滅会社785条2項1号イ、存続会社は
  797条2項1号イ、新設会社の消滅会社は806条2項1号)。

   本肢は正しい。


  ○ エについて

   「・・合併手続に瑕疵があれば、本来であれば無効であるが、その
    解決を一般原則にゆだねると法的安定性を害するので、会社法は、
       合併無効の訴えを用意し、合併無効の主張を制限する一方、無効
       の効果を画一的に確定し、その遡及効を否定する」(前掲書)。

     828条は無効事由を明記していないが、重大な手続違反が
        無効事由になると解されている(前掲書参照)。

     本肢は、単に「会社の合併が違法である場合」としていて、
        この点、疑問であるが、とくにこだわらないことにする。

         原告適格は、一定の者に限られるが(828条2項7号・8号)、
    各当事会社の株主等、本肢に掲げられた者はすべて含まれる。

    無効判決の効果として、第三者にも効力が及ぶ(対世効)と同時
      に遡及効が否定される(838条・839条)。 したがって、
   その効果としては、将来に向かってのみ生じる。

    以上の記述に照らすと、本肢は正しい。

  
  ○ オについて

    本問は、消滅会社の財産が存続会社に移転するとしているので、
      吸収合併の問題である。

    合併により存続会社は消滅会社の権利義務を包括的に承継する
       (750条1項)。したがって、消滅会社の権利義務はすべて一括
   して法律上当然に移転し、個々の権利義務について個別の移転行為
   は不要である。契約によりその一部について移転を留保することは
      できない(前掲書)。

    したがって、存続会社は消滅会社の債務を引き継がないとする
   ことはできないので、本肢は正しくない。


   ◎  参考事項

    新設合併においても、新設会社は消滅会社の権利義務を包括的に
      承継する(754条1項)ので、同様に、新設会社が消滅会社の債務
      を引き継がないとすることはできない。

      
    この債務引き継ぎについて、事業譲渡ではどうなるかを考察してみよ
   う。サイト81回の復習となる。

    事業譲渡の場合には、事業に属する個々の資産については個別に
   移転手続をする必要があり、債務を移転する場合、免責的債務引受
   けとするためには、一般原則に従って債権者の承諾が必要である。
    存続会社が、包括的に消滅会社の債務を承継するのとは、根本的
      に異なる。

    また、以上のような債務引受けがなされなかった場合でも、譲渡
      会社の商号を使用した場合、その譲受会社も債務を引き継ぐが、この
      場合であっても、当然に譲受会社の責任が消滅するのではない(22
      条1項・3項なお、23条1項・2項)。

   《以上のように、各事項に連動性を持たせ、体系的理解に努めよう
        とするのが、本講座の目的でもある≫

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー   
 
  以上によれば、ウとエが正しいので、正解は5である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ◆ 付 言

  会社の合併には、吸収合併と新設合併があり、各肢において、いずれ
 の場合を問題にしているのか、ないしは、いずれかを問わず、共通の問
  題としているのかという観点も大切である。

  アとオは、吸収合併 ・ イとウとエは、共通。


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        ★ 過去問の詳細な解説  第85回  ★

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 ■ 平成21年度・問題28
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
   時効に関する次のA〜Eの各相談に関して、民法の規定および判例に
 照らし、「できます」と回答しうるものの組合せはどれか。


 Aの相談「私は13年前、知人の債務を物上保証するため、私の所有す
  る土地・建物に抵当権を設定しました。知人のこの債務は弁済期から
  1 1年が経過していますが、債権者は、4年前に知人が債務を承認して
  いることを理由に、時効は完成していないと主張しています。民法によ
  れば、時効の中断は当事者及びその承継人の間においてのみその効力を
 有するとありますが、私は時効の完成を主張して抵当権の抹消を請求で
  きますか。」


  Bの相談「私は築25年のアパートを賃借して暮らしています。このア
  パートは賃貸人の先代が誤って甲氏の所有地を自己所有地と認識して建
  てしまったものですが、これまで特に紛争になることもなく現在に至っ
  ています。このたび、甲氏の相続人乙氏が、一連の事情説明とともにア
  パートからの立ち退きを求めてきました。私は賃貸人が敷地の土地を時
  効取得したと主張して立ち退きを拒否できますか。」


 Cの相談「30年程前に私の祖父が亡くなりました。祖父は唯一の遺産
  であった自宅の土地・建物を祖父の知人に遺贈したため、相続人であっ
  た私の父は直ちに遺留分を主張して、当該土地・建物についての共有持
  分を認められたのですが、その登記をしないまま今日に至っています。
 このたび父が亡くなり、父を単独相続した私が先方に共有持分について
  の登記への協力を求めたところ、20年以上経過しているので時効だと
 いって応じてもらえません。私は移転登記を求めるころはできますか。」


  Dの相談「私は他人にお金を貸し、その担保として債務者の所有する土地 
  ・建物に2番抵当権の設定を受けています。このたび、1番抵当権の被
  担保債権が消滅時効にかかったことがわかったのですが、私は、私の貸金
  債権の弁済期が到来していない現時点において、この事実を主張して、私
  の抵当権の順位を繰り上げてもらうことができますか。」


 Eの相談「叔父は7年ほど前に重度の認知症になり後見開始の審判を受け
  ました。配偶者である叔母が後見人となっていたところ、今年2月10日
  にこの叔母が急逝し、同年6月10日に甥の私が後見人に選任されました。
  就任後調べたところ、叔父が以前に他人に貸し付けた300万円の債権が
  10年前の6月1日に弁済期を迎えた後、未回収のまま放置されているこ
  とを知り、あわてて本年6月20日に返済を求めましたが、先方はすでに
  時効期間が満了していることを理由に応じてくれません。この債権につい
  て返還を求めることができますか。」
   

  1 Aの相談とBの相談

  2 Aの相談とCの相談

  3 Bの相談とDの相談

  4 Cの相談とEの相談

 5 Dの相談とEの相談
 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   ◆ 参考書籍

  民法 1  勁草書房

 
  
   ◆ 各肢の検討


  ● Aの相談について

  これは、物上保証人が担保する債権が時効中断によって時効消滅しな
 い場合、担保物権たる抵当権はどうなるかという問題である。

  この場合、担保物権における付従性の原則(消滅における付従性)に
  より、その担保する債権が時効消滅しない間は独立に消滅時効にかから
 ない。
 
  本件では、私は、時効の完成を主張して抵当権の抹消を請求できない。

  したがって、「できます」と回答しうるものではない。

  以上、本件では、付従生の原則が頭にあれば、すっと、正解に達する。
  

   ★ 参考事項
 
  
  (1) 時効中断

     消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する
   (166条1項)から、債務の弁済期から進行する。本件では、
       弁済期から11年経過しているので、時効消滅する(167条)
    はずであるが、4年前の債務の承認による時効中断のため、
    その時から10年間は時効消滅しない(147条3号、157
    条1項)。以上により本件では、現在、当該債権の時効は完成
       していないことが前提になっている、

     本件では、時効中断の効力が及ぶ範囲が問題とされているが
   (148条)、当事者間に中断の効果が及びそのため、当該債権
       の時効が完成していないことになるだけの話である。結論に変
    わりはない。このよな文言に惑わされてはならない。

    (2) 396条との関係

     これは、その担保する債権が時効消滅しない間であっても、
      抵当権が独立に消滅することを定めているので、消滅における付
      従性の原則の例外である。

    しかし、債務者及び抵当権設定者には、本条の例外規定の適用
   はないので、本件における物上保証にあっては、その担保する債
   権が時効消滅しない間は独立に消滅にかからないという原則に従
   うのである。

    それでは、本条はどのような場合に適用されるか。これについ
   ては、以下のとおりである。

   「たとえば第三取得者または他の債権者に対する関係においては、
    債権が消滅時効にかからない場合においても、(抵当権は)独
    立に消滅時効にかかるものとされる(396条)。その時効期
    間は20年である(167条2項)。債権は一般に10年で消
    滅時効にかかるから(167条1項)、右の事例は債権につい
    て時効の中断の行われた場合に生ずるわけである。」(前掲書)


     ● Bの相談について
                 ・・・
        145条によれば、時効は、当事者が援用することを要する。
                  ・・・
    本件では、当事者である先代から賃貸人の地位を引き継いだ
      現在の賃貸人が、当該土地の取得時効を主張することは問題ない
     (162条1項)。

    本件のポイントは、当該土地を敷地とする建物の賃借人である
     私が、援用権者である賃貸人が時効を援用しない場合に、当該土
   地の所有権の取得時効取得時効を援用できるかということである。

   以下の判例がある。

   土地の所有権を時効取得すべき者から、その土地上に同人の所有
    する建物を賃借しているに過ぎない者は、右土地の取得時効の完成
  によって直接利益を受ける者ではないから、右土地の取得時効を援
    用することはできない(最判昭和44・7・15・・)。

   したがって、「私は賃貸人が敷地の土地の時効取得をしたとし
  て立ち退きを拒否『できます』」と回答しうるものではない。

  
   ★ 参考事項

    その他、争点になる点は、以下のとおりである。

  (1) 本件では、当該土地について、先代の賃貸人の占有を相続
    した原賃借人が両者合わせて25年間「特に紛争になること
    もなく」すなわち、「平穏に、かつ、公然と」占有を継続し
        ているので、162条1項の適用が前提になっている。
     なお、当該占有は賃借人による占有であるので、代理占有
    であることに注意せよ(181条)。

   (2)本件においては、当該賃借人は、時効の援用権が認められ
       なかったのであるが、当事者以外において、時効によって取
    得される権利に基づいて権利を取得した者も広く援用権者に
    含まれるとする判例の立場からは、次の記述が参考になる。

   「この見地からは、取得時効についてみると、たとえばAの所
    有地を時効によって取得するBから地上権等の設定を受けた
        CにはBの取得時効の援用権がある。つまり、この場合Bが
        援用しなければ、Cは独自にBの取得時効を援用して、Aに
        対し、当該の土地の上に地上権等を有することを主張できる
        ことになる。」(前掲書)

         以上の理からすれば、

     時効取得される土地の賃借人(当該地上の建物の所有者)も
    また、援用権者に含まれることになるであろう。

     本件と以上の事例を比較すれば、

     時効の完成によって直接利益を受けるのかどうかが、時効の
        援用権者の範囲に関する判例の基準になるのであろう。


  
   ● Cの相談について

     167条2項によれば、所有権は消滅時効にかからない。

   以上を前提にした判決がある。

   遺留分権利者が減殺請求によって取得した不動産の所有権に基づく
   登記手続請求権は時効によって消滅することはない(最判H7・6・9
  ・・)。

   この判決を本件に照らすと、本件における先方の言い分である「20
   以上経過しているので時効だ」というのは、妥当でないので、私は移転
  登記を求めることは「できます」と回答しうる。

  
   ★ 参考事項


   (1) 本件では、祖父による知人の受遺者に対する遺贈に関する父の
     遺留分請求は、共有持分2分の1について認められることになる
     (1028条2号・1031条)。

    (2) つぎに、所有権が時効消滅しないことに関連する判決(最判
      昭和51・11・8・・)があるので、以下にその判旨を掲げ
      ておく。
     
      不動産の譲渡による所有権移転登記請求権は、右譲渡によって
     生じた所有権移転に付随するものであるから、所有権移転の事実
     が存する限り独立して消滅時効にかかるものではないと解すべき
     である。

  
  ● Dの相談について

   本件は、消滅時効の援用権者に関する問題である。

   判例は、145条の当事者に該当しなくても、時効によって消滅した
  時効の完成によって、利益を受ける者も広く援用権者に包含する。

   しかし、本件に関しては、以下の判例がある。

  「後順位抵当権者は先順位抵当権者の被担保債権の消滅時効を援用する
      ことができない」(最判平11・10・21・・・)

   したがって、本件において、私は1番抵当権の被担保債権の消滅時効
  を援用して「私の抵当権の順位を繰り上げてもらうことが『できます』」
    と回答しうるものではない。

   
   ★ 本題に関しては、以下の記述を参照せよ。

   「連帯保証人(439条参照)や保証人(大判大正4・12・11・・)
 は、直接の当事者として主たる債務の消滅時効を援用できるとされて
    いるが、物上保証人や抵当不動産の第三取得者(最判昭和48・12・
        14・・・)も、自分の負担する抵当権の基礎としての債務の消滅時
    効を援用して、抵当権を消滅させることができる。」(前掲書)

  
  ● Eの相談について

   本件は158条の規定する成年被後見人と時効の停止の問題である。

   本件において、158条1項前段を適用すれば、成年被後見人である
    叔父の法定代理人である成年後見人がないときは、成年後見人に付され
    た叔母の死亡によって成年後見が終了した今年の2月10日から甥の私
    が成年後見人選任された同年6月10日の間である(7条・8条参照)。

   他方叔父が以前に貸し付けた債権の時効が完成したのは、弁済期から
  10年経過した今年の6月1日ということになる(167条1項)。

   したがって、時効の期間満了前6箇月以内の間に成年後見人がない
   ときに該当するため、私が後見人に就職した時から6箇月を経過するま
   での間は、時効は完成しないことになる(158条1項後段)。

   以上、本件においては、私が成年後見人に選任されてから10日後
   の6月20日に債権について返還を求めることは「できます」と回答し
   うる。

 
   なお、本件は単純な158条の条文適用の問題であるが、この条文
    自体がなじみの薄いものであるため、即座に回答を導くのは困難であ
    ると思われる。

 ------------------------------------------------------

   「できます」と回答しうるものは、Cの相談とEの相談であるから、
 4が正解である。 

 ------------------------------------------------------


  ◆  付 言

  事案における事実関係を素早く把握し、簡潔な構成へと再構成する訓練
  が望まれる。

  逆に、参考事項に掲げられた判例などを素材にして、ご自分で事実関係
  を構築し、それぞれに、相談内容を作成してみるのも一考であろう。

   

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          ★ 過去問の詳細な解説  第82回  ★

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                              PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  民法 

    【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
     本年9月末頃を目途に、過去問の分析に加え、近時の傾向も取り
  入れた「オリジナル模擬試験問題」(有料)を発行する予定をして
   います。
     とくに、関連部分に言及した解説にも力を込め、よりよいものを
   目差して、目下準備中です。


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 ■ 平成21年度・問題31
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   A、B、C三人がDに対して60万円の連帯債務を負っている場合に
 関する次のア〜オの記述のうち、妥当でないものの組合せはどれか。

 ア AがDに60万円を弁済した場合に、A、B、C三人の負担部分が
   平等であるときは、Aは、B、Cに20万円ずつ求償できるが、もし
   Cが無資力のときは、Bに対して30万円の求償をすることができる。

 イ AがDに60万円を弁済した場合に、A、B、Cの負担部分が1:1
  :0であり(Cには負担部分がない)、また、Bが無資力のときは、A
   は、B、Cに20万円ずつ求償することができる。

 ウ DがAに対して60万円の債務を免除した場合に、A、B、C3人の
   負担部分が平等であるときは、B、Cは、40万円ずつの連帯債務を負
  うことになる。

 エ DがAに対して連帯の免除をした場合に、A、B、C三人の負担部分
   が平等であったときは、Aは20万円の分割債務を負い、B、Cは、
   40万円ずつ連帯債務を負うことになる。

 オ A、B、Cの三人の負担部分が平等である事情の下で、DがAに対し
   て連帯の免除をした場合に、Bが債務全額を弁済したときに、もしCが
   無資力であったとすると、Cが弁済することができない部分のうちAが
   負担すべき10万円はDが負担する。


  1 ア・イ 

   2 ア・ウ

   3 イ・エ

   4  ウ・エ

   5  ウ・オ
  

 

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 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

     民法 2  勁草書房

 
 ◆ 要点と各肢の対比

  
  ▼ 連帯債務とは

    連帯債務は、数人の債務者が、同一の給付について、各自独立
   に全部の弁済をなすべき債務を負担し、そのうち一人が弁済すれ
   ば、他の債務者もことごとく債務を免れる債務関係である。
   (432条参照)
    
    連帯債務者の一人について生じた事由の他の債務者に及ぼす効果

       連帯債務は、目的は共同であるが、各独立の債務だから、債権者
     に満足を与える事由およびこれに関連するもののほかは相対的効力
     を生ずべきはずである。
   
    しかし、民法はかなり多くの例外を認めている。
    (433条・440条参照)

   (以上前掲書)

    ○ ウについて

     437条によれば、連帯債務者の1人に対する免除は、その
    例外に属し、絶対的効力を生ずる。

     したがって、債権者Dが債務を免除すれば、B・CもAの負担
    部分だけ債務を免れるので、B、Cは40万円ずつ連帯債務を負
        うことになるという本肢は妥当である。

    ★   参考事項

     以上の規定は、「当事者間の法律関係の決済を簡易にしようと
    する趣旨に基づくものである」(前掲書)。
     すなわち、この場合、B、Cが60万円の連帯債務を負い、
        たとえば、60万円を弁済したBから20万円の求償をされた
    Aがこれに応じた後、Dに対して20万円の支払いを求めると
    いった無用の循環を回避しようとするものである。

    ★ 過去問との対比

    (1)自動車の売買代金300万円について、A、B、Cの
      三人が連帯債務を負担する場合において、Aの債務について
      だけ消滅時効が完成したときは、Aの負担部分については、
      BおよびCも、その債務を免れる。
      (平成20年度問題33・肢エ)

       正しい。439条の絶対効・これも法律関係の簡易決済。

    (2)自動車の売買代金300万円について、A、B、Cの三人が
      連帯債務を負担する場合において、Aについては制限行為能力
            を理由に契約の取消しが認められるときには、Aの負担部分に
            ついては、BおよびCも、その債務を免れる。(前記肢オ)

       誤りである。433条の相対効。


     ▼ 連帯の免除とは、
       
         一種の免除であるから、債権者DからAにに対する意思表示によっ
       てできる(519条参照)。この連帯の免除とは、 A、B、Cが三
       人60万円の連帯債務を負担するときに、DはAから は、その負担
       部分20万円しか請求しないということである。このような場合にも、
       DはB、Cからは60万円を請求しうる。そこで、Bが全額弁済すれ
       ばBはAから20万円求償できることはいうまでもない。
       (以上 前掲書参照)

   ○ エについて

    以上の権利関係からすれば、B、Cは、なお60万円ずつの連帯債
       務を負い、A対し20万円を求償できることに変わりないので、本肢
    は妥当でない。

     この連帯の免除は、肢オの求償の対象となる者の無資力において、
       実際的な意味があることに注意せよ。

    
    ★ 参考事項


     A、B、C三人に対して連帯の免除をするときは、60万円ずつ
        の分割債務となるから求償の問題を生じないことに注意せよ。
   (前掲書参照)

    ▼ 求償の対象者が無資力の場合

   442条1項により、求償者は各自の負担部分に応じ、20万円ずつ
    求償できる。しかし、Cが無資力のときは、444条の規定により、無
  資力者Cの負担部分20万円はAとBとで負担部分に応じて分割負担と
    なる。

   ○ ア・イについて

    以上の記述に従えば、アは妥当である。
    
    イについては、A、Bの負担割合は、30万円ずつであり、Bが無資
   力であれば、本来その負担部分をCと負担することになるが、Cの負担
      部分が0であるから、AはB、Cに対して求償できないので、イは妥当
      でない。


   ▼ 求償の対象者の無資力と連帯の免除の関係

   445条によれば、Cが無資力であった場合には、DがAに対して連帯
    の免除をしたときは、Aが負担すべき10万円は、債権者Dが負担する。

  ○ オについて

   以上の記述に照らせば、本肢は妥当である。

   しかし、これについては、以下のような批判がある。

   DがAに対して連帯の免除をしたのは、単に自分が20万円しか請求し
  ないだけでなく、いかなる場合にも20万円以上の負担は負わないように
    してやるという意味だとみたのである。しかし、そうみることは普通の
  場合のDの意思に適するかどうかはすこぶる疑わしい。

    
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   以上のとおり、妥当でないのは、イとエであるから、正解は3である。

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 ◆  付 言

  本問は、連帯債務に関し、ポピュラーな、絶対的効力・相対的効力よりも、
  普段、馴染みのない、「連帯の免除・資力のない者」に重点が移っている。

  近年の民法の難化傾向に添うものであるが、全体として、疑問なしと
  しない。

  しかし、出題の批判をしても始まらない。翻って考えると、これらは、
 条文の理解の域を出ないので、これらに食いついてゆく気概を有するべ
 きであろう。

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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          ★ 過去問の詳細な解説  第80 回  ★

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  【テーマ】 会社法 

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 ■  平成21年度・問題38
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   株主名簿に関する次のア〜オの記述のうち、会社法の規定および判例
 に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

 
  ア すべての株式会社は、株主名簿を作成して、株主の氏名または名称
  ならびに当該株主の有する株式の種類および数などを記載または記録
    しなければならない。

  イ  基準日以前に株式を取得した者で、株主名簿に株主として記載また
    は記録されていない者について、会社は、その者を株主として扱い、
  権利の行使を容認することができる。

 ウ 株券発行会社においては、株式の譲受人は、株主の名簿書換えをし
    なければ、当該会社および第三者に対して株式の取得を対抗できない。

  エ 会社が株主による株主名簿の名義書換え請求を不当に拒絶した場合
    には、当該株主は、会社に対して、損害賠償を請求することができる
    が、株主であることを主張することはできない。

  オ 会社が株主に対してする通知または催告は、株主名簿に記載または
    記録された株主の住所または株主が別に通知した場所もしくは連絡先
    に宛てて発すれば足り、当該通知または催告は、それぞれ通常到達す
    べきだあった時に、到達したものとみなされる。
  

  1 ア・イ

  2  ア・オ

  3  イ・ウ

  4  ウ・エ

  5 エ・オ

 

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 ■ 解説
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  ◆ 参考文献

   会社法  神田 秀樹 著    弘文堂

 
 ◆  各肢の検討

   
   △ 肢アについて
     
      株式会社は、株主名簿を作成し、121条各号に記載する
   事項を記載し記録しなければならない。

   妥当である。

   
   ▽ 肢イについて

 -------------------------------------------------------- 
     基準日とは

   議決権行使等の権利を有する株主は、その時点における株主名簿上の
  株主である。しかし、株主が多数いる会社では誰がその時点における名
  簿上の株主か把握することが容易でないので、会社法は、一時点におけ
  る株主に権利行使を認めるために基準日を設けることを認めている
  (124条1項)。
 ---------------------------------------------------------- 
  
    ただし、判例によれば、株式が譲渡され名義書換がなされるまでの間、
  会社が自己のリスクで名義書換未了の譲受人を株主を株主として取り扱
  うことができる(最判昭和30・10・20・・)。

  したがって、基準日以前に株式を取得した者で、株主名簿に株主とし
  て記載または記録されていない者について、会社は、その者を株主とし
 て扱い、権利の行使を容認することができる。

  
  以上の記述からして、本肢は妥当である。

    
    ☆ なお、次の点に注意せよ!
      ・
    基準日後に新たに株主となった者についても、会社のほうの判断
   で、総会の議決などを認めることはさしつかえない(124条4項
   [ただし書きに注意])。《 前掲書94頁参照》


  ▲ 肢ウについて


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  株式の譲渡

  1 株券発行会社

  (1) 株券の引き渡しは、権利移転の要件であり、第三者に対する
         対抗要件である(128条1項本文・130条2項)。

     (2) 株主名簿の名簿書換えが会社に対する対抗要件である(130
         条1項・2項)。

  2 株券不発行会社

    権利移転の要件は、意思表示であるが、会社その他の第三者に対す
     る 対抗要件は、株主名簿の名簿書換えである(130条1項)。

       
    注 130条の条文の仕組み

     会社は原則として株券を発行しないものとし、株券の発行を
        定款で定めた場合に限って株券を発行することにしたため
   (214条1項)、130条1項は、株券不発行会社に適用さ
       れる。権利移転の要件が意思表示であるというのは、私法の一般
    原則に従う( 2 参照)。


     130条2項は、株券発行会社に適用される。
     会社に対する対抗要件が、株主名簿の書換えであることを規定
    したものであるが、その前提として、株券の引き渡しが(権利
        移転要件であると同時に)第三者対抗要件であることを読み取る
    必要がある
        ( 1 (1)(2) 参照)

     しかし、いずれにせよ、まどろっこしい規定の仕方である。
   -------------------------------------------------------
   
     
          以上の記述からすると、株券発行会社については、株式の譲受人
        は、株券の交付を受ければ株式の取得を第三者に対抗できるが、当
    該会社 に対しては、株主名簿の名簿書換えをしなければ、株式の
        譲受けを対抗できないことになる。

     したがって、株主名簿の名簿書換えを第三者対抗要件としている
    本肢は妥当でない。


    ▼ エについて

     判例によれば、会社が不当に名義書換えを拒絶した場合や過失により
  名義書換えを怠った場合のように、例外的に名義書換未了の者が会社に
    対して自己が株主であることを主張できる場合があることを認める(最
    判昭和41・7・28)。《前掲書95頁》

    したがって、株主であることを主張することができるので、本肢は
   妥当でない。

   
    ★ 次の点に注意せよ

   (1) 一般原則により、当該株主は、名義書換え請求を不当拒絶
           した会社に対して、損害賠償請求できるできるであろう。

   (2) 当該判決によれば、過失により名義書換えを怠った場合も
   含む。

   
   △ オについて

    会社の株主に対する通知または催告については、126条1項・
      2項において、本肢の通りの規定がある。

     本肢は妥当である。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

   本問については、妥当でないのは、ウ・エであるから、正解は4
  である。
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー    
         
 ◆ 付 言 

    本問を概観すると、株主名簿に関し、条文と基本的な判例が把握されて
  いれば、正解に達する。   

  しかし、そのことは、後から条文を繰り、判例に当たって言い得るこ
  とであって、広範囲であり、しかも、会社法の準備に充てる時間の少な
  さを考慮すると、すべてに用意万端というのは困難であろう。

  会社法対策としては、時間の許すかぎり、丁寧に問題集をこなし、それ
  でも本番で知らない問題が出れば、普段に培った応用力でもって、失点を
  減らすことに心がけるべきであろう。

  会社法に関しては、以上ごとき、開き直りも肝要と、わたしは思料する。

 

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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