━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
                 ★ 過去問の詳細な解説  第87回  ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
----------------------------------------------------------
                                  PRODUCED BY 藤本 昌一
----------------------------------------------------------
 
  【テーマ】 民法・催告
  
     

    【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
     私が渾身の力をふりしぼって作成しました「行政書士試験直前予想
  問題」【平成22年度版】《有料》が、もう間もなく、発行されます
  ので、みなさま、よろしくお願いします。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成21年度 問題30
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   催告に関する次のア〜オの各事例のうち、民法の規定および判例に
 照らし、正しいものの組合わせはどれか。

 ア  Aは成年被保佐人であるBとの間で、Bの所有する不動産を購入す
    る契約を締結したが、後日Bが制限行為能力者であることを知った。
  Aは1ケ月以上の期間を定めて、Bに対し保佐人の追認を得るべき
    旨を催告したが、所定の期間を過ぎても追認を得た旨の通知がない。
   この場合、その行為は追認されたものとみなされる。

  イ  CはDとの間で、C所有の自動車を、代金後払い、代金額150万
  円の約定でDに売却する契約を締結した。Cは自動車の引き渡しを完
  了したが、代金支払期日を経過してもDからの代金の支払いがない。
  そこでCはDに対して相当の期間を定めて代金を支払うよう催告したが、
    期日までに代金の支払いがない。この場合、C・D間の売買契約は法
  律上当然に効力を失う。

 ウ  Eは知人FがGより100万円の融資を受けるにあたり、保証(単純
    保証)する旨を約した。弁済期後、GはいきなりEに対して保証債務の
    履行を求めてきたので、Eはまずは主たる債務者に催告するよう請求し
    した。ところがGがFに催告したときにはFの資産状況が悪化しており、
    GはFから全額の弁済を受けることができなかった。この場合、EはG
    が直ちにFに催告していれば弁済を受けられた限度で保証債務の履行を
    免れることができる。

  エ Hは甲建物を抵当権の実行による競売により買い受けたが、甲建物に
  は、抵当権設定後に従前の所有者より賃借したIが居住している。Hは
    Iに対し、相当の期間を定めて甲建物の賃料1ケ分分以上の支払いを催告
    したが、期間経過後もIが賃料を支払わない場合には、Hは買受け後6
    ケ月を経過した後、Iに対して建物の明け渡しを求めることができる。

  オ Jは、自己の所有する乙土地を、その死後、世話になった友人Kに無
  償で与える旨の内容を含む遺言書を作成した。Jの死後、遺言の内容が
    明らかになり、Jの相続人らはKに対して相当の期間を定めてこの遺贈
    を承認するか放棄するかを知らせて欲しいと催告したが、Kからは期間
    内に返答がない。この場合、Kは遺贈を承認したものとみなされる。

 
 1 ア・イ

 2 ア・ウ

 3 イ・エ

 4 ウ・オ

 5 エ・オ

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 
 ☆ 参照書籍

   民法 2・3   勁草書房
 

  ◆ 各肢の検討

 
  ○ 肢アについて

   本肢は、20条の制限行為能力者の相手方の催告権に関する条文
    の適用問題である。

   この場合は、被保佐人であるBに対する催告であるから、20条
   4項が適用適用される。
   すなわち、被被保佐人がその期間内に保佐人の追認を得た旨の通
  知を発しないときは、当該不動産の売買契約を取り消したものとみ
  なすことになる。したがって、これに反する本肢は誤りである。

   ★ 参考事項

    制限行為能力者とは、未成年者・成年被後見人・被保佐人・
      被補助人をいう(20条1項)。

    これら制限無能力者に対する催告権の効果に一定のルールがあ
      るので、把握しておきたい。
   
   1 制限行為能力者が行為能力者となった後に、その者に対する
    催告に確答なし→ 追認 (20条1項)

    2 ただし、だれかの同意を得るなどの特別の方式を要する場合
    その方式を具備した通知を発しない→取り消し(20条3項)

   3 法定代理人・保佐人・補助人に対しては、1・2と同様で
      ある(20条2項)。

    4 被保佐人・被補助人に対する催告に通知なし→取り消し(20
      条4項)=本肢の事例
   ≪成年被後見人は含まれないことに注意・9条によれば、成年被
    後見人に関しては、日常生活に関する行為は有効であると同時
    にその他の行為は、常に取り消すことができるので、追認の余
    地はなく、催告は想定し難いからである。≫


   ○ 肢イについて

   本肢は、541条の契約解除の要件を満たすので、Cは、Dに対
  して相当の期間を定めて代金を支払うよう催告したが、期日までに
    代金の支払いがない場合には、Cは、Dに対して、C・D間の売買
    契約を解除できる。

   したがって、この場合、C・D間の売買契約は法律上当然に効力
    を失うのではなく、契約の有効を前提として、売買契約を解除でき
    ることになるので、本肢は誤りである。

   ★ 参考事項

   1 同時履行の抗弁との関係について

    この場合、DがCに対して、自動車の引き渡しについて、533
   条の同時履行の抗弁権を有すると、Cは自動車の引き渡しという債
   務の履行を提供しなくては、契約の解除をできないことになる。
    しかし、本事例では、代金後払いの約定でCは自動車の引き渡し
   を完了しているので、同時履行の抗弁は考慮しなくてもよい。

   2 応用問題について

    履行遅滞による解除権と同時履行の抗弁の関係について、メルマ
      ガ有料版第7号において、オリジナル問題を出題したので、末尾に
   正誤を問う当該肢と解説を転載しておく。

 
   ○  肢ウについて

   本肢は、催告の抗弁に関する452条・455条の条文適用問題で
    ある。そのまま条文を適用すればよいが、ただし、454条で連帯保
  証に適用されないことになっていることに注意する必要がある。
   本肢では、(単純保証)であるとされているので、条文どおりであ
  り、正しい。


   ★ 参考事項


   保証債務はその従たる性質から、債権者に対して第二次的の地位に
    あり、主たる債務者の履行しないときに、はじめて履行すればよいの
  が常である(446条1項参照)。
   これを保証債務の補充性というが、その法律的な現れの一つとして、
  催告の抗弁権があることになる。

   もう一つが、検索の抗弁権である(453条・455条)。これも
  また、連帯保証には適用されない(454条)

   以上により、連帯保証には、補充性はないことになる。

  (以上、前掲書2参照)


   なお、検索の抗弁について、以下の判例に注目

  「検索の抗弁のためには、主債務者の執行容易な若干の財産の存在の
   証明があれば足り、これによって得られる弁済が債権全額に及ぶこ
      との証明を要しない。」(大判昭8・6・13・・・)

  
   ○ 肢エについて

        本肢は、抵当権設定後における抵当権者に対抗できない賃借権者
  (競売の手続開始前から使用又は収益する者)の引き渡しの猶予に関
     する395条の適用事例である。
    本件では、同条2項の適用により、同条1項の6ケ月の猶予がない
   場合に相当する。

   以上に反する本肢の記述は誤りである。

  
  ○ 肢オについて

   受遺者に対する遺贈の承認又は放棄の催告について規定する987条
  の条文適用問題である。

   本事例では、987条の適用により、「承認したものとみなされる」
  ので、本肢は正しい。

   
   ★ 参考事項

 
  遺贈とは、遺言による財産の無償贈与である。

  遺贈には包括遺贈と特定遺贈がある(964条)。
  
  前者は、積極・消極の財産を包括する相続財産の全部またはその分数的
  部分ないし割合による遺贈であり(たとえば相続財産の2分の1、または
 4割がその例)、後者は、特定の具体的な財産的利益の遺贈である。
 
  両者はその効力において全く異なることを注意すべきである。

 (以上、前掲書3参照) 

  本件では、特定の土地を無償贈与するというのであるから、以上の記述
 に関しては、「特定贈与」であることを、この際、はっきり認識する必要
  がある。

  したがって、

  包括遺贈は、相続人と同一の権利義務を有する(990条)ので、遺贈
 の承認・放棄についても、相続に関する915条ないし940の適用があ
                               ・・・
 り、本件の「特定遺贈」の承認・放棄に適用される986条および987条
  は適用されないことに注意せよ!

------------------------------------------------------------ 
 
    以上のとおり、ウとオが正しいので、正解は4である。

------------------------------------------------------------ 

  
 ◎ 末尾記載の応用問題
 
  【肢】

   AはBとの間で、A所有の自動車を代金額120万円の約定でB
  に売却する契約を締結した。Aは、引き渡し期日を過ぎても、約束
  の引き渡し場所に、自動車を引き取りに来ないBに対して、自動車
  の引き渡しの準備を完了したことを通知するとともに、相当の期間
  を定めて代金を支払うよう催告したが、期日までに 代金の支払い
  がない。この場合、AはA・B間の売買契約を解除できる。

    【解説】

    関係する条文数は、6つである。主題は、履行遅滞による解除権と
  同時履行の抗弁である。
 
 それでは、順次検討する。

 1 民法573条によれば、自動車の引き渡し期日を定めたときは、
    代金の支払いについても同一の期限を付したものと推定される。
   この場合における代金の支払い場所は、その引き渡し場所で
   である(民法574条)。

   したがって、Bは、引き渡し場所において代金を支払う義務が
  ある。

   2 以上に従えば、代金の支払いを遅滞する(民法412条1項)
   Bに対して、Aは民法541条1項に基づき、相当の期間を定
   めて履行の催告をしたうえで、契約の解除をすることができる。
    しかし、本肢の場合、Bの代金支払いは、自動車の引き渡し
   と同時履行であるから、Bには民法533条の同時履行の抗弁
   権がある。
    このように、相手方が同時履行の抗弁権を有する場合には、
     解除しようとする者は、自分の債務を提供しておかなければ
   解除できない。「厳格な理論からいえば、解除しようとする者
     は、催告後の相当期間の間中この提供をしつづけなければなら
     ないことになる。」(勁草書房 2)

  3 しかし、この場合には、民法493条の規定に従えば、その
     提供の方法は、本肢のように、自動車の引き渡しの準備を完了
   したことを通知することで足りるので、相当の期間を定めて
   代金を支払うように催告した後に行う本件の解除は有効である。
   (大判大14・12・3が同旨)

    したがって、本肢は正しい。

  

   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 11:28コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
         ★ 過去問の詳細な解説  第86回  ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
----------------------------------------------------------
                        PRODUCED BY 藤本 昌一
----------------------------------------------------------
 
  【テーマ】 会社法

    【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
     本年9月末頃を目途に、過去問の分析に加え、近時の傾向も取り
  入れた「オリジナル模擬試験問題」(有料)を発行する予定をして
   います。
     とくに、関連部分に言及した解説にも力を込め、よりよいものを
   目差して、目下準備中です。

  《以上の予告につきまして、やむなく10月にずれ込みましたが、
 もう間もなく、発行いたしますので、よろしくお願いいたします。》

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成18年度・問題39
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  

   会社の合併に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものの組合せは
 どれか。


  ア 会社が合併するには、各当事会社の株主総会の特別決議による承認
    を要するが、存続会社に比べて消滅会社の規模が著しく小さい場合に
    は、各当事会社は株主総会を省略することができる。

  イ 合併の各当事会社は、会社債権者に対して、合併承認に異議があれ
  ば一定の期間内に述べるように官報に公告し、かつ電子公告した場合
  であっても、知れたる債権者には個別催告する必要がある。

  ウ 合併決議前に反対の意思表示をし、かつ合併決議に反対した株主は、
  合併承認決議が成立した場合には、株式買取請求権を行使することが
    できる。

  エ 会社の合併が違法である場合に、各当事会社の株主、取締役等、また
    は合併を承認しなかった債権者は、その無効を合併無効の訴えによって
  のみ主張することができ、合併無効の判決が確定した場合には、将来に
    向かってのみその合併は無効となる。

  オ 会社の合併により、消滅会社の全財産が包括的に存続会社に移転する
    ため、財産の一部を除外することは許されないが、消滅会社の債務につ
    いては、消滅会社の債権者の承諾が得られれば、存続会社は消滅会社の
    債務を引き継がないとすることも可能である。

 
  1 ア・エ

   2 ア・オ

  3  イ・ウ

  4  イ・エ

  5  ウ・エ
   

 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ☆ 参照書籍

     会社法  神田 秀樹 著   株式会社 弘文堂

 
 ◆  各肢の検討

 
  ○ 肢アについて

    会社の合併とは、2つ以上の会社が契約によって1つの会社に
     合体することである(会社法748条参照)

    その2つの場合

    ★  吸収合併(2条27号)
   
     当事会社の一つが存続して他の消滅する会社を吸収する場合

    ★ 新設合併(2条28号)

        当事会社のすべてが消滅して新しい会社を設立する場合

   
   本肢では、存続会社と消滅会社が対比されているのであるから、
    吸収合併が問題にされていいる。

     この場合、消滅会社・存続会社いずれにおいても、合併契約で
   定めた効力発生日の前日までに、各当事会社において、株主総会
   の特別決議を得ることを要する(消滅会社は783条・存続会社
   は795条・特別決議は309条2項12号)。

   しかし、略式合併・簡易合併の場合には、当事会社の一方におい
  て、総会決議は不要であるが、

     本肢に記載してある「存続会社に比 べて消滅会社の規模が著しく
   小さい場合には」、各当事会社において、総会決議不要とする規定
   は、会社法上存在しない。

   したがって、本肢は正しくない。


--------------------------------------------------------------
 
      吸収合併については、存続会社ないしは消滅会社の株主総会が
  ・・
  省略されることがあることが知るに止め、以下の細かい仕組みは、
  ・・
  省略してもよいのかもしれぬ。

   なお、新設合併においては、株主総会の決議省略はない(804
    条1項)。
 

 ◎ 参考事項

   略式合併とは?

    存続会社が特別支配会社である場合には、吸収合併の消滅
   会社において、株主総会決議不要(784条1項本文)


    消滅会社が特別支配会社である場合には、吸収合併の存続
      会社において、株主総会決議不要(796条1項本文)

     
     なお、いずれにおいても、その例外があって、総会決議を
        省略できない場合があるが、その場合には言及しない(784
    条1項ただし書・796条1項ただし書)。

      注 特別支配会社とは90%の親会社等を意味する(468条
    1項 参照)


      簡易合併とは?

    吸収合併の存続会社において総会決議不要
 
    すなわち、合併対価の額(簿価)が存続会社の純資産額の20
   パーセント以下の割合の場合において、存続会社の総会決議不要
   とされている(796条3項・これにも総会決議を省略できない
   例外がある796条3項ただし書)。

 -------------------------------------------------------------------

  
  ○ イについて
         

   合併の各当事会社は、会社債権者異議手続を行う(吸収合併の消滅
  会社は789条・存続会社は799条・新設合併の消滅会社は810
  条)。

   その手続において、各当事会社は、異議のある債権者は一定の期間
  内に述べるように官報に公告し、「知れている債権者」には格別に催
  告しなければならない(789条1項、2項・799条1項、2項・
  810条1項、2項)。

   ただし、官報に加えて日刊新聞による公告または電子公告をも行っ
  た場合には知れている債権者に対する個別催告は不要である(789
  条3項・799条3項・810条3項《平成16年改正≫)。

   本肢は、最後尾の記述に反するので、正しくない。
   
      しかし、私は、本肢に関しては、他の重要論点を外し、細かいこと
  を問うているという印象を有する。
  

   ○ ウについて

   反対株主には株式買取請求権が認められる。その要件は、本肢記載の
  とおりである(吸収合併の消滅会社785条2項1号イ、存続会社は
  797条2項1号イ、新設会社の消滅会社は806条2項1号)。

   本肢は正しい。


  ○ エについて

   「・・合併手続に瑕疵があれば、本来であれば無効であるが、その
    解決を一般原則にゆだねると法的安定性を害するので、会社法は、
       合併無効の訴えを用意し、合併無効の主張を制限する一方、無効
       の効果を画一的に確定し、その遡及効を否定する」(前掲書)。

     828条は無効事由を明記していないが、重大な手続違反が
        無効事由になると解されている(前掲書参照)。

     本肢は、単に「会社の合併が違法である場合」としていて、
        この点、疑問であるが、とくにこだわらないことにする。

         原告適格は、一定の者に限られるが(828条2項7号・8号)、
    各当事会社の株主等、本肢に掲げられた者はすべて含まれる。

    無効判決の効果として、第三者にも効力が及ぶ(対世効)と同時
      に遡及効が否定される(838条・839条)。 したがって、
   その効果としては、将来に向かってのみ生じる。

    以上の記述に照らすと、本肢は正しい。

  
  ○ オについて

    本問は、消滅会社の財産が存続会社に移転するとしているので、
      吸収合併の問題である。

    合併により存続会社は消滅会社の権利義務を包括的に承継する
       (750条1項)。したがって、消滅会社の権利義務はすべて一括
   して法律上当然に移転し、個々の権利義務について個別の移転行為
   は不要である。契約によりその一部について移転を留保することは
      できない(前掲書)。

    したがって、存続会社は消滅会社の債務を引き継がないとする
   ことはできないので、本肢は正しくない。


   ◎  参考事項

    新設合併においても、新設会社は消滅会社の権利義務を包括的に
      承継する(754条1項)ので、同様に、新設会社が消滅会社の債務
      を引き継がないとすることはできない。

      
    この債務引き継ぎについて、事業譲渡ではどうなるかを考察してみよ
   う。サイト81回の復習となる。

    事業譲渡の場合には、事業に属する個々の資産については個別に
   移転手続をする必要があり、債務を移転する場合、免責的債務引受
   けとするためには、一般原則に従って債権者の承諾が必要である。
    存続会社が、包括的に消滅会社の債務を承継するのとは、根本的
      に異なる。

    また、以上のような債務引受けがなされなかった場合でも、譲渡
      会社の商号を使用した場合、その譲受会社も債務を引き継ぐが、この
      場合であっても、当然に譲受会社の責任が消滅するのではない(22
      条1項・3項なお、23条1項・2項)。

   《以上のように、各事項に連動性を持たせ、体系的理解に努めよう
        とするのが、本講座の目的でもある≫

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー   
 
  以上によれば、ウとエが正しいので、正解は5である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ◆ 付 言

  会社の合併には、吸収合併と新設合併があり、各肢において、いずれ
 の場合を問題にしているのか、ないしは、いずれかを問わず、共通の問
  題としているのかという観点も大切である。

  アとオは、吸収合併 ・ イとウとエは、共通。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 09:37コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
         ★ 過去問の詳細な解説  第 84  回  ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
----------------------------------------------------------
                          PRODUCED BY 藤本 昌一
----------------------------------------------------------
 
  【テーマ】 会社法 

    【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
     本年9月末頃を目途に、過去問の分析に加え、近時の傾向も取り
  入れた「オリジナル模擬試験問題」(有料)を発行する予定をして
   います。
     とくに、関連部分に言及した解説にも力を込め、よりよいものを
   目差して、目下準備中です。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成18年度・問題38
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
   株主総会に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当
 でないものはどれか。

 1 招集権者による株主総会の招集の手続を欠く場合であっても、株主
   全員がその開催に同意して出席したいわゆる全員出席総会において、
   株主総会の権限に属する事項について決議したときには、この決議は
   株主総会の決議として有効に成立する。

 2 株主総会において議決権を行使する代理人を株主に限る旨の定款の
   規定は、株主総会が第三者により撹乱されることを防止して、会社の
   利益を保護する趣旨にでた合理的理由による相当程度の制限であって、
   有効である。

 3 株主は、自己に対する株主総会の招集手続に瑕疵がなくとも、他の
   株主対する招集手続に瑕疵がある場合には、株主総会の決議取消の訴
   えを提起することができる。

 4 株主総会の決議取消しの訴えを提起した場合において、その提訴期
  間が経過した後であっても、新たな取消事由を追加して主張すること
   ができる。

 5 株主総会の決議の内容自体に法令または定款違背の瑕疵がなく、単
   に決議の動機または目的において公序良俗に反する不法がある場合は、
  その株主総会の決議は無効とならない。  
   

 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ☆ 参照書籍

     会社法   神田 秀樹著   弘文堂

 ◆ 各肢の検討

  
  ○ 1について

    株主総会は、取締役が株主を招集して開催する(296条3項)。

    ただし、最判昭和60・12・20・・によれば、本肢で記述さ
   れている「全員出席総会」(代理人でも可とされていることに注意)
     おいては、招集の必要はないとされた。

    したがって、当該決議は、株主総会の決議として有効に成立する
      ので、本肢は妥当である。

    ★ 関連事項

     平成14年改正は、議決権を行使できる株主全員が同意した
 場合には、招集手続なしで開催できることを明文で認め、会社
        法もこれを引き継でいる(300条本文。なお同ただし書)。
    《前掲書》
 

  ○ 2について

   株主は代理人により議決権を行使できる(310条1項前段)。

   多くの会社では、定款で代理人の資格を株主である旨を限定し
    ているが、最判昭和43・11・1・・は、本肢で記述されてい
  る合理的理由があるとして、代理人を株主に限るという定款の規
  定は、有効であるとした。

   したがって、本肢は、妥当である。

   ★ 関連事項

    次の判例にも注意!

    定款で議決行使の代理人資格を株主に限定している会社が、
      株主である地方公共団体または会社の職員または従業員に議
      決権を代理行使させても、違法ではない(最判昭和51・
   12・24・・・)。

    次の点と混同しないように!!

    定款で取締役の資格を株主に限定することはできない[公開
     会社は別](331条2項)。

 
  ○ 3について

    株主総会の招集通知もれは、831条1項1号により、株主総会
   の決議取消の訴えの取消事由になる。

   招集通知が他の株主になされず自分に来ている場合に取消しの訴
    えを起こせるかについては、株主は自分にとっての瑕疵だけを問題
    にできるとしてこれを否定する見解も有力であるが、これを肯定す
    るのが多数説・判例である(最判昭和42・9・28・・・)。
  (前掲書)
   

   以上の記述に照らせば、本肢は、妥当である。

 
  ○ 4について

   判例(最判昭和51・12・24・・)株主総会決議取消しの訴え
    を提起した後、831条1項の期間経過後に新たな取消事由を追加主
    張することは許されない。

   本肢は、以上の判例に反するので、妥当でない。

  
  ○ 5について

   830条2項の決議無効確認の訴えの無効事由については、本肢の
    記述どおりの判例がある(最判昭和35・1・12・・)。

   本肢は妥当である。


   ---------------------------------------------------------

       以上、妥当でないのは、4であるから、4が正解である。
   

   ---------------------------------------------------------

  注・判例に関しては、判決時期からして、旧商法の条文が該当する
    が、すべて会社法の該当条文を掲げた。

 


 ◆ 付 言

  
  すべての判例について、正確な知識がなくても、各肢の比較衡量に
  より正解を導くことができるだけの「会社法」の素養を身に着けてお
  きたい。

  そのためには、過去問等の各肢を検討しながら、できるだけ多くの
 問題に接することが大切である。おそらくは、その過程において、
  素養を獲得できると思う。

  あわただしい、条文の走り読みや薄い教科書の通読だけでは、会社
  法の膨大な量からして、点数を稼ぎだすのは困難かもしれない。 
 
 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 13:08 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
          ★ 過去問の詳細な解説  第83回  ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
----------------------------------------------------------
                         PRODUCED BY 藤本 昌一
----------------------------------------------------------
 
  【テーマ】 民法 

    【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
     本年9月末頃を目途に、過去問の分析に加え、近時の傾向も取り
  入れた「オリジナル模擬試験問題」(有料)を発行する予定をして
   います。
     とくに、関連部分に言及した解説にも力を込め、よりよいものを
   目差して、目下準備中です。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成21年度 問題 29
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
    Aに対して債務を負うBは、Aのために、自己が所有する土地に抵当
  権を設定した(他に抵当権者は存在しない)。この場合における抵当権
  の消滅に関する次のア〜オの記述のうち、民法の規定および判例に照ら
  し、妥当なものの組合せはどれか。

  
  ア  Aの抵当権が根抵当権である場合において、Bが破産手続開始の
     決定を受けたときは、被担保債権は確定して満足し、根抵当権は確
     定的に消滅する。

 イ Aの抵当権が根抵当権である場合において、元本が確定した後に、
  Bから土地の所有権をCが、極度額に相当する金額をAに支払い、
  根抵当権の消滅請求をしたときは、確定した被担保債権の額が極度
    額を超えていたとしても、Aの根抵当権は、確定的に消滅する。

  ウ BがAに対し、残存元本に加えて、最後の2年分の利息および遅
  延損害金を支払った場合には、Aの抵当権は、確定的に消滅する。

  エ  第三者Cが、土地の所有権を時効によって取得した場合には、A
    の抵当権は、確定的に消滅する。

  オ  第三者Cが、BのAに対する債務の全額を弁済し、その弁済と同
    時にAの承諾を得ていた場合には、CはAに代位することができる
    が、抵当権は、確定的に消滅する。

 
  1 ア・ウ

    2 ア・エ

  3 イ・エ

  4 イ・オ

  5 ウ・オ

 
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ☆ 参照書籍

    民法 1 勁草書房


--------------------------------------------------------------
      A

   ↓  抵当権
  
   土地 B所有
---------------------------------------------------------------

  
 ◆ 各肢の検討

  
   ● 肢アについて

      民法398条の20第1項第4号によると、当該事由は、根抵当権
    の元本の確定事由となる。

     本件根抵当権の債務者であり、根抵当権設定者であるBが破産手続
   開始の決定を受けているからである。

   しかし、その効果として、根抵当権が確定的に消滅するのではない。

  「根抵当権の確定とは、その時点において存在する元本だけが担保
   され、その後に生ずる元本は担保されなくなること、根抵当権が
   いわば流動性を失い特定の債権を担保するものとなることである。」
  (前掲書)。

     本肢は、妥当でない。

  ● 肢イについて  
 
    民法第398条の22第1項の規定する根抵当権の消滅請求のとおり
   であり、妥当である。

  
    ☆ 参考事項
  
    本肢は第三取得者の例であるが、同条同項によれば、他に物上
   保証人・賃借権を取得した者も消滅請求できる。

   それでは、次の場合はどうであるか。

    AがBに対し、根抵当権を設定する以前において、Bから当該土
    地を賃借したCが、その土地の上に登記した建物を有しているとき
  は、元本確定後、消滅請求できるか。

   この事例は、同条同項で規定される「第三者に対抗することがで
   きる賃借権を取得した第三者」に相当するので、消滅請求可である。
 
   建物保護ニ関スル法律によると、土地の賃借人がその土地の上に
   登記した建物を有するときは、土地の賃借権はその登記なくても、
   これをもって第三者に対抗できるのである。

    この建物保護法までは、射程距離であろう。

         
   ● 肢ウについて
 
     民法375条の規定は、後順位者に対して、優先弁済を主張する
  場合の制限であるから、他に抵当権者が存在しない本肢の場合には、
    最後の2年分の利息および遅延損害金に限らず、残存元本に加えて、
  全額を弁済しなければ、Aの抵当権は確定的に消滅しない。

   本肢は妥当でない。

   これは、設問の(他に抵当権者は存在しない)という記述が、
   伏線として、きっちりと利いている。


   ● 肢エについて

    民法397条によれば、債務者または抵当権設定者以外の者が、
   抵当不動産について取得時効に必要な条件を具備する占有をした
   ときは、抵当権はこれによってこれによって消滅する(前掲書)。

   したがって、第三者Cが土地の所有権を時効によって取得した
  場合には、Aの抵当権は、消滅する。

   本肢は、妥当である。

   なお、以下の記述に注意。

     抵当権が消滅するのは、「取得時効は原始取得として完全な所有権
   を取得させるものだからである。債務者および抵当権設定者について
   この原則を制限したのは、みずから債務を負担し、またはみずから抵
   当権の負担を受けた者について取得時効による抵当権の消滅を認める
   のは不穏当だからである」(前掲書)。

   したがって、債務者が物上保証人所有の不動産を時効取得したと
   したとしても、抵当権は消滅しない。

  ☆ 参考事項

   その他、抵当権が独立に時効消滅する例として、次のオリジナル
  問題の肢と解答を参考にされたい(有料メルマガから転載)。

  (事例は本問と同様)

   Aの債権が、時効中断により20年経過しても消滅時効にかから
  ない場合、Bから土地の所有権を取得したCが、20年後に抵当権
  の消滅時効を援用したときは、抵当権は確定的に消滅する。

   ≪解説≫

  Aの債権が、10年で時効消滅すれば(民法167条1項)、
 これを担保するAの抵当権も消滅する。しかし、時効中断により
 (民法147条)20年以上に時効期間が延びた場合、396条
  の適用を受ける。
 
   その解釈としては、以下のように解される。
 
    債務者・抵当権設定者以外の抵当不動産の第三取得者・後順位抵当権者
   との関係では、抵当権は債権から独立して20年の消滅時効にかかる。
  (大判昭和15・11・26)
  
   20年の根拠は、民法167条2項。
 
   本肢では、Bは第三取得者に該当するので、本肢は正しい。

   
  ● 肢オについて

     本肢では、Cは、弁済と同時にAの承諾を得ているので、民法49
     9条 により代位できる。
 
     弁済による代位の効果として、その債権の効力および担保として
   債権者の有する一切の権利が、求償権の範囲内において、代位弁済
     者に移転する(民法501条)。

     したがって、本肢では、Aの抵当権は、Cに移転するので、確定
   的に消滅しない。

       本肢は妥当でない。

      なお、「弁済をするについて正当な利益を有する者」の弁済の場合
  には、債権者の承諾を得なくても当然に法定代位をする(民法500条
  ・同499条参照)ことにに注意。

     したがって、たとえば物上保証人・抵当不動産の第三取得者・
  保証人・連帯保証人などについては、債権者の同意がなくても代位
  する。

-------------------------------------------------

   妥当であるのは、イとエであるから、正解は、3である。

-------------------------------------------------


 ◆  付 言

    本問では、設問によれば「・・判例に照らし」となっているが、
  いずれの肢も、条文の忠実な解釈によって、正解が得られる。

 

 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 12:44コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
          ★ 過去問の詳細な解説  第82回  ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
----------------------------------------------------------
                              PRODUCED BY 藤本 昌一
----------------------------------------------------------
 
  【テーマ】  民法 

    【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
     本年9月末頃を目途に、過去問の分析に加え、近時の傾向も取り
  入れた「オリジナル模擬試験問題」(有料)を発行する予定をして
   います。
     とくに、関連部分に言及した解説にも力を込め、よりよいものを
   目差して、目下準備中です。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成21年度・問題31
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   A、B、C三人がDに対して60万円の連帯債務を負っている場合に
 関する次のア〜オの記述のうち、妥当でないものの組合せはどれか。

 ア AがDに60万円を弁済した場合に、A、B、C三人の負担部分が
   平等であるときは、Aは、B、Cに20万円ずつ求償できるが、もし
   Cが無資力のときは、Bに対して30万円の求償をすることができる。

 イ AがDに60万円を弁済した場合に、A、B、Cの負担部分が1:1
  :0であり(Cには負担部分がない)、また、Bが無資力のときは、A
   は、B、Cに20万円ずつ求償することができる。

 ウ DがAに対して60万円の債務を免除した場合に、A、B、C3人の
   負担部分が平等であるときは、B、Cは、40万円ずつの連帯債務を負
  うことになる。

 エ DがAに対して連帯の免除をした場合に、A、B、C三人の負担部分
   が平等であったときは、Aは20万円の分割債務を負い、B、Cは、
   40万円ずつ連帯債務を負うことになる。

 オ A、B、Cの三人の負担部分が平等である事情の下で、DがAに対し
   て連帯の免除をした場合に、Bが債務全額を弁済したときに、もしCが
   無資力であったとすると、Cが弁済することができない部分のうちAが
   負担すべき10万円はDが負担する。


  1 ア・イ 

   2 ア・ウ

   3 イ・エ

   4  ウ・エ

   5  ウ・オ
  

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ☆ 参照書籍

     民法 2  勁草書房

 
 ◆ 要点と各肢の対比

  
  ▼ 連帯債務とは

    連帯債務は、数人の債務者が、同一の給付について、各自独立
   に全部の弁済をなすべき債務を負担し、そのうち一人が弁済すれ
   ば、他の債務者もことごとく債務を免れる債務関係である。
   (432条参照)
    
    連帯債務者の一人について生じた事由の他の債務者に及ぼす効果

       連帯債務は、目的は共同であるが、各独立の債務だから、債権者
     に満足を与える事由およびこれに関連するもののほかは相対的効力
     を生ずべきはずである。
   
    しかし、民法はかなり多くの例外を認めている。
    (433条・440条参照)

   (以上前掲書)

    ○ ウについて

     437条によれば、連帯債務者の1人に対する免除は、その
    例外に属し、絶対的効力を生ずる。

     したがって、債権者Dが債務を免除すれば、B・CもAの負担
    部分だけ債務を免れるので、B、Cは40万円ずつ連帯債務を負
        うことになるという本肢は妥当である。

    ★   参考事項

     以上の規定は、「当事者間の法律関係の決済を簡易にしようと
    する趣旨に基づくものである」(前掲書)。
     すなわち、この場合、B、Cが60万円の連帯債務を負い、
        たとえば、60万円を弁済したBから20万円の求償をされた
    Aがこれに応じた後、Dに対して20万円の支払いを求めると
    いった無用の循環を回避しようとするものである。

    ★ 過去問との対比

    (1)自動車の売買代金300万円について、A、B、Cの
      三人が連帯債務を負担する場合において、Aの債務について
      だけ消滅時効が完成したときは、Aの負担部分については、
      BおよびCも、その債務を免れる。
      (平成20年度問題33・肢エ)

       正しい。439条の絶対効・これも法律関係の簡易決済。

    (2)自動車の売買代金300万円について、A、B、Cの三人が
      連帯債務を負担する場合において、Aについては制限行為能力
            を理由に契約の取消しが認められるときには、Aの負担部分に
            ついては、BおよびCも、その債務を免れる。(前記肢オ)

       誤りである。433条の相対効。


     ▼ 連帯の免除とは、
       
         一種の免除であるから、債権者DからAにに対する意思表示によっ
       てできる(519条参照)。この連帯の免除とは、 A、B、Cが三
       人60万円の連帯債務を負担するときに、DはAから は、その負担
       部分20万円しか請求しないということである。このような場合にも、
       DはB、Cからは60万円を請求しうる。そこで、Bが全額弁済すれ
       ばBはAから20万円求償できることはいうまでもない。
       (以上 前掲書参照)

   ○ エについて

    以上の権利関係からすれば、B、Cは、なお60万円ずつの連帯債
       務を負い、A対し20万円を求償できることに変わりないので、本肢
    は妥当でない。

     この連帯の免除は、肢オの求償の対象となる者の無資力において、
       実際的な意味があることに注意せよ。

    
    ★ 参考事項


     A、B、C三人に対して連帯の免除をするときは、60万円ずつ
        の分割債務となるから求償の問題を生じないことに注意せよ。
   (前掲書参照)

    ▼ 求償の対象者が無資力の場合

   442条1項により、求償者は各自の負担部分に応じ、20万円ずつ
    求償できる。しかし、Cが無資力のときは、444条の規定により、無
  資力者Cの負担部分20万円はAとBとで負担部分に応じて分割負担と
    なる。

   ○ ア・イについて

    以上の記述に従えば、アは妥当である。
    
    イについては、A、Bの負担割合は、30万円ずつであり、Bが無資
   力であれば、本来その負担部分をCと負担することになるが、Cの負担
      部分が0であるから、AはB、Cに対して求償できないので、イは妥当
      でない。


   ▼ 求償の対象者の無資力と連帯の免除の関係

   445条によれば、Cが無資力であった場合には、DがAに対して連帯
    の免除をしたときは、Aが負担すべき10万円は、債権者Dが負担する。

  ○ オについて

   以上の記述に照らせば、本肢は妥当である。

   しかし、これについては、以下のような批判がある。

   DがAに対して連帯の免除をしたのは、単に自分が20万円しか請求し
  ないだけでなく、いかなる場合にも20万円以上の負担は負わないように
    してやるという意味だとみたのである。しかし、そうみることは普通の
  場合のDの意思に適するかどうかはすこぶる疑わしい。

    
--------------------------------------------------------------
 
   以上のとおり、妥当でないのは、イとエであるから、正解は3である。

--------------------------------------------------------------

 ◆  付 言

  本問は、連帯債務に関し、ポピュラーな、絶対的効力・相対的効力よりも、
  普段、馴染みのない、「連帯の免除・資力のない者」に重点が移っている。

  近年の民法の難化傾向に添うものであるが、全体として、疑問なしと
  しない。

  しかし、出題の批判をしても始まらない。翻って考えると、これらは、
 条文の理解の域を出ないので、これらに食いついてゆく気概を有するべ
 きであろう。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 15:02コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
            ★ 過去問の詳細な解説  第81回  ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
----------------------------------------------------------
                              PRODUCED BY 藤本 昌一
----------------------------------------------------------
 
  【テーマ】
  
     会社法 

    【目次】 

      問題・解説

    【ピックアップ】     
 
     本年9月末を目途に、過去問の分析に加え、近時の傾向も取り
  入れた「オリジナル模擬試験問題」(有料)を発行する予定をし
   ています。
     とくに、関連部分に言及した解説にも力を込め、よりよいもの
   を目差して、目下準備中です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成21年度 問題39
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
   株式会社の事業譲渡に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なものの
 組合せはどれか。

 
   ア 事業譲渡を行う場合には、譲渡会社と譲受会社との間で、譲渡
   する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項を包括
     的に定めた事業譲渡契約を締結しなければならない。

  イ 譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、譲受会
    社は、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負い、
    譲渡会社は当該債務を弁済する責任を免れる。

  ウ 譲渡会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村
    の区域内およびこれに隣接する市町村の区域内においては、その事
  業を譲渡した日から20年間は、同一の事業を行ってはならない。

 エ 会社がその事業の全部または重要な一部の譲渡を行う場合には、
    譲渡会社において株主総会の特別会議による承認を要するが、譲渡
    する資産の帳簿価格が譲渡会社の総資産の額の五分の一を超えない
  ときは、株主総会の承認は不要である。

 オ 会社が他の会社の事業の全部または重要な一部を譲り受ける場合
    には、譲受会社において株主総会の特別決議による承認を要するが、
  譲受会社が対価として交付する財産の帳簿価格の合計額が譲受会社
  の総資産の額の五分の一を超えないときは、株主総会の承認は不要
    である。

  1 ア・イ

    2  ア・オ

    3 イ・ウ

    4 ウ・エ

    5 ウ・オ 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ◆  参考文献

   会社法   神田 秀樹著   弘文堂


  ◆ 総説

    会社法21条〜24条は、事業譲渡に関する取引法的側面について
    規整を設けているが、組織法的側面[株式会社]については467条〜
   470条に規整が置かれている(前掲書)。

      本問は、両側面に関し、主に、条文を中心とした出題となっている。

 
  ◆ 各肢の検討

   ○ アについて

     事業譲渡の場合には、事業に属する個々の資産については個別に
   移転手続(第三者対抗要件の具備を含む)をする必要がある(不動
   産の登記や指名債権の対抗要件具備など)。また、債務を移転する
   場合、免責的債務引受けとするためには、一般原則に従って債権者
   の承諾が必要である(前掲書)。

   以上のとおり、事業譲渡は、個別の移転手続によって行われるの
   である。
   その根本的理由は、会社法が、事業譲渡を行う場合に、「・・
   権利義務に関する事項を包括的に定めた事業譲渡契約を締結しな
   ければならない」と定めていないからである。

  したがって、本肢は妥当でない。

   本肢は、事業譲渡の本質的理解を問うものだ!

  ☆ 参考事項

   それでは、株主総会の特別決議を要する(後述)この事業譲渡
    と「営業でない財産の譲渡」をどういう基準で区別することにな
    るのだろう。少なくとも、現象的には、両者とも、個別的な移転
    手続だからである。

   その基準は、「譲渡会社の営業が遂行できなくなるかどうか」と
   いう観点からなされる。このような当事者の意思に基づく「相手方
   からわからない事情で(株主総会の特別)決議の要否をきめるのは
  法律関係の明確性と取引の安全を害する」。

     このような観点から、判例は、会社法467条にいう株主総会の
   特別決議を要する(309条2項11号)事業譲渡について、一つ
   の基準を設ける。

  すなわち、

      判例(最大判昭和40・9・22・・)は、旧法において、営業の
    譲渡と呼ばれていたときに、商法245条1項1号によって、株主総
    会の特別決議を要する営業譲渡 (会社法では、467条1項1号に該
  当する)について、 商法25条(会社法では21条に該当する)に
  定める「競業避止義務を負う結果を伴うものをいう」としている。

   ≪つまり、会社法でいえば、会社法467条にいう事業譲渡は、
   同法21条以下にいう事業譲渡と同一意義である≫

     (以上、前掲書 参照)


    説明の順序からして、さきにウから行う。


 ○ ウについて

  会社法467条に該当する株主総会の決議を要する事業譲渡は、
  競業避止義務を負う結果を伴うものに該当する会社法21条と同一
  の意義を有すると肢アで述べた。

  本肢は、ズバリ、事業を譲渡した会社が競業避止義務を負うこと
  を規定した会社法21条の条文そのものである。

  本肢は妥当である。

  なお、以上で述べた説明によって、総説で述べた、会社法21条
  の事業譲渡に関する取引法的側面と467条の組織法的側面[株式
  会社]の合体が生じていることに注目せよ。
 
  
  ○ イについて

   本肢は、事業譲渡に関する取引法的側面である。

  会社法22条1項・同3項によれば、
  
   譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、譲受会社
  が債務を弁済することになるが、この場合、譲渡会社も責任がある。
  →原則 しかし、譲渡会社は、一定期間後には責任を消滅。

   したがって、前段は妥当であるが、譲渡会社は当然に債務を免れる
    のではなく、22条3項の規定により一定期間後に責任が消滅するの
    で、後段は妥当でない。

   本肢は妥当でない。


   ☆ 参考事項

   譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用しない場合には、23条
    参照。

     1項の広告をしなければ、譲受会社は債務を弁済する責任なし。
   
   2項 広告をした場合における、譲渡会社の一定期間後の責任消滅。


 
 ○ エについて

  本肢は、組織法的側面[株式会社]についての出題である。

   会社法467条1項1号・2号により妥当である。

  467条1項2号( )内により、事業の重要な一部の譲渡について、
    譲渡する資産の帳簿価格が譲渡会社の総資産の五分の一を超えないと
    きは、株主総会の承認は不要であるとなっているが、本肢では、そこ
    が問われている。

  ☆ 参考事項

   取締役会設置会社では、重要な財産の処分には取締役会決議が必要で
  ある(362条4項1号)。


 ○ オについて

   本肢もまた、組織法的側面[株式会社]についての出題である。

   会社法467条1項3号により、事業の重要な一部の譲受けの場合
   には、 株主総会の承認は不要であるので、妥当でない。

  ☆ 参考事項

   取締役会設置会社では、重要な財産の譲受けには取締役会決議が必
  要である(362条4項1号)。
 
   会社法467条1項3号により、他の会社の事業の全部の譲受けの
    場合には、株主総会の承認を要するが、この場合でも、譲受会社が支
  払または 交付する譲受けの対価の額(簿価)が譲受会社の純資産額
    の20%以下[定款で厳格化可]の場合は、株主総会の承認は不要で
  ある。 (本肢の後半部分は、この点においても、正確ではない)
    
-----------------------------------------------------

   以上、妥当であるのは、ウ・エであるから、正解は4である。

------------------------------------------------------


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 10:45コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
               ★ 過去問の詳細な解説  第79回  ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
----------------------------------------------------------
                                  PRODUCED BY 藤本 昌一
----------------------------------------------------------
 
  【テーマ】   民法 

    【目次】     問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
     本年9月初頭には、過去問の分析に加え、近時の傾向も取り入
   れた「オリジナル模擬試験問題」(有料)を発行する予定をして
  います。
     とくに、関連部分に言及した解説にも力を込め、よりよいもの
   を目差して、目下準備中です。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ A・平成21年度 問題 27
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
  代理に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当な
 ものはどれか。

 
  1 Aは留守中の財産の管理につき単に妻Bに任せるといって海外へ単
  身赴任したところ、BがAの現金をA名義の定期預金としたときは、
    代理権の範囲外の行為に当たり、その効果はAに帰属しない。

  2  未成年者Aが相続により建物を取得した後に、Aの法定代理人であ
    る母Bが、自分が金融業者Cから金銭を借りる際に、Aを代理して行
    ったCとの間の当該建物への抵当権設定設定契約は、自己契約に該当
    しないので、その効果はAに帰属する。

  3 A所有の建物を売却する代理権をAから与えられたBが、自らその
    買主となった場合に、そのままBが移転登記を済ませてしまったとき
    には、AB間の売買契約について、Aに効果が帰属する。

  4 建物を購入する代理権をAから与えられたBが、Cから建物を買っ
    た場合に、Bが未成年者であったときでも、Aは、Bの未成年者であ
    ることを理由にした売買契約の取消しをCに主張することはできない。

  5 Aの代理人Bが、Cを騙してC所有の建物を安い値で買った場合、
    AがBの欺罔行為につき善意無過失であったときには、B自身の欺罔
    行為なので、CはBの詐欺を理由にした売買契約の取消しをAに主張
    することはできない。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ B・ 平成11年度 問題 27
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  

   民法上の代理に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。


 1 任意代理人は、本人の許諾又はやむを得ない事由がなければ復代理
  人を選任することはできないが、法定代理人は、本人の許諾を必要と
   せず、その責任において復代理人を選任することができる。

 2 同一の法律行為について、相手方の代理人となり、又は当事者双方
   の代理人となることは、いかなる場合であっても許されない。

 3 代理権は、本人の死亡により消滅するが、代理人の死亡、若しくは
   破産手続開始の決定又は代理人が後見開始の審判を受けたこと、若し
   くは保佐開始の審判を受けたことによっても消滅する。

 4 無権代理人が契約をした場合において、相手方は、代理権のないこ
   とを知らなかったときに限り、相当の期間を定め、当該期間内に追認
   するかどうか確答することを本人に対して催告することができる。

 5 表見代理が成立する場合には、本人は、無権代理人の行為を無効で
   あると主張することができないだけでなく、無権代理人に対して損害
   賠償を請求することもできない。 

  

 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  

  ◆  参照書籍

     勁草書房 民法 1
 

  ◆    AとBの問題の対比

   奇しくも、本試験において、10年間をおいて、問題27という同一
  番号で、代理に関して問われている。

   両者を比較して歴然としているのは、前者が、具体的事例に民法の条
   文を適用させるのに対して、後者は主に、単なる条文知識を問うのが主
   力であるということである。

   したがって、正確な条文知識を前提に、実践的な問題の処理能力を鍛
 錬することが、将来の民法に関する対策である。

  以上から、従来型に加えて、新傾向の問題をしっかりと解くことが肝要
  であると結論づけられる。


  ◆ A・平成21年度 問題

 
  ★ 各肢の検討

  
   ○ 肢1について
        
                   
             Aの現金をA名義の定期預金にした
  
   本人A---------妻B

   条文 103条2号

    本条は、代理権が授与されたことは明らかだがその範囲が特に定
      められなかなかった場合についての基準を明らかにしている。本肢
      の場合、財産管理について「単に任せる」となっているので、本条
   に該当する。
    
    この場合、民法103条2号によると「物または権利の性質を変
   じない範囲でそれを利用して収益をはかる行為(利用行為)」は許
      される。

    本肢では、現金を定期預金としたというのであるから、当該利用
      行為に該当するので、代理権の範囲内の行為に当たり、その効果は
      Aに帰属する。

    本肢は、誤りである。

     ☆ 参考事項

      (1)同じ利用行為でも、銀行預金を個人の貸金にするの
        は、危険の度合が大きくなり、性質を変ずるものでこ
        こ含まれない。

      (2)その他権限内の行為として ア 財産の現状を維持
                 する行為(保存行為・103条1号) イ さきの
                 利用行為と同じ範囲で使用価値または交換価値を増
                 加する行為(改良行為)がある。
    
      (以上 前掲書 参照)


   ○  肢2について
         

     A(未成年者)

        ↓代理行為 建物に対する抵当権設定契約    
     
     B(法定代理人)-----------------------C(金融業者)


            条文 民法826条

        親権を行う母(B)とその子(A)との利益が相反する
             行為(Bの借金のために、Aの所有不動産に抵当権を設定
             する行為)については、家庭裁判所で選任された特別代理
             人が代理行為を行うことになっているから、BがAを代理
       するのは、(818条・824条参照)、無権代理になる。

        したがって、Aに効果が帰属しないので、本肢は妥当
              でない。

        なお、本件は、A・B間の法律行為について、BがAを
              代理するという自己契約ではないが、実質的にみて、利益
              が相反するのである。、「自己契約に該当しないので、そ
              の効果はAに帰属する」と言う文言に惑わされないように。

 


    ○ 肢3について
 
                  
        本人A------------代理人兼買主 B

  
    条文 108条

    本肢は、本条の禁止する自己契約に該当し、同条ただし書きに
      も相当しないので、Aに効果が帰属しない。

      同条の禁止する自己契約も双方代理も、「代理の理論からみて
    不可能なわけではない。しかし、このような行為を無条件で許す
   と本人の利益が不当に害されるおそれがある。そこで民法は原則
      としてこれを禁じた。」(前掲・勁草書房)

     本肢は妥当でない。

 

      ○ 肢4について


       未成年者  
  
       本人A--------代理人B----------相手方C

      条文 102条

     本条の意味するところは、未成年者の行った代理行為も相手方C
    との関係では完全に有効であって、民法5条2項に基づ いて、取り
     消しうるものではない、とうことである。

     その理由→「代理人はみずから行為するものであるが、その効果
    はすべて本人が受けるのであるから、代理行為が判断を誤って行わ
   れても代理人自身は少しも損害を被らない。・・・未成年者が代理
   人であっては本人は損失を被ることになるかもしれない。しかし
    それは本人がこの者を代理人に選んだのであるから自業自得である。」
   (前掲 勁草書房)

      したがって、Aは、Bの未成年であることを理由にした売買契
    約の取消しをCに主張することはできないので、本肢は妥当であ
   る。
    
   ☆ 発展問題

    この場合に未成年者が本人との間の委任契約を取り消して
      はじめからなかったことにすると(5条・121条参照)、
   これに伴う授権行為も翻ってその効力を失うことになれば、
      どうなるか。
    そうすると、すでになされた代理行為も無権代理行為にな
      って、相手方が不測の損害を生じ、102条の趣旨が生かさ
      れなくなる。そのため、学者は、委任契約の取消しは過去の
      代理関係に影響しない、すなわち、代理関係は将来に向かっ
      て消滅するが、すでになされた代理行為には影響しないと解
      することによって、その不都合を解消しようとしている。
   (前掲書 参照)

 

   ○ 肢5について


                 詐欺 
   
    本人A-------代理人B---------相手方C

    条文 101条1項

      代理行為は代理人自身の行為である。本人の行為とみな
          されるのではない。詐欺というような、法律効果に影響
     を及ぼす法律行為の瑕疵の有無はことごとく代理人に自
          身について定めるべきであって、本人について定めるべ
          きではない。(前掲書・参照)
    
     したがって、本肢において、本人であるAが善意無過失
    であっても代理人Bから欺罔行為を受けたCは、Bの詐欺
        を理由に当該売買契約を取り消すことができる(民法96
        条1項)。

          以上の記述に反する本肢は、妥当でない。


 
         以上からして、正解は4である。
 


         
   ◆ A・平成11年度 問題
 
  
   ○  肢1について

    民法104条と106条の対比により、正しい。しかも、
   これが、正解である。実に、あっさりとしたものである。


     ○  肢2について

       民法108条のただし書きにより、正しくない。


   ○ 肢3について

        民法111条1項2号には、保佐開始の開始の審判をを受け
      たこと(11条参照)は、掲げられていない。 正しくない。

    ○ 肢4について

      民法114条によれば、悪意の相手方にも催告権が認められる。
   正しくない。

     なお、悪意の相手方には取消権が認められないことに注意
     (115条)。

  ○  肢5について   

      前段については、109条・110条・111条の規定の基づき
      本人は無効を主張できないが、この場合、本人が、無権代理人に対
   して、債務不履行ないし不法行為に基づき損害賠償を請求できるの
      は、当然である(415条・709条)。


      正解は、1である。

 
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 17:51コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
           ★ 過去問の詳細な解説  第77回  ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
----------------------------------------------------------
                        PRODUCED BY 藤本 昌一
----------------------------------------------------------
 
  【テーマ】  行政組織・行政庁 

    【目次】    問題・解説


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成13年度問題8
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
 行政組織についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1 決定権限を有する大臣をトップとする各省庁は、公法人であり、公法
    上の権利・義務の帰属主体としての役割を担う。

  2 公団・公庫・事業団などは、特殊法人と呼ばれているが、法的には国
  という公法人に所属する、その一機関に過ぎない。

  3 行政主体の意思を決定し、これを外部に対して表示する権限を有する
    行政機関のことを行政庁という。

  4  行政機関が、行政主体のために行うことのできる事柄・活動の範囲は
    権限と呼ばれ、私法上の権利と同様に、その権限行使を担当する公務員
    に効果が帰属する。

  5 行政組織の長である大臣と、その組織に服する職員との間には、公法
  上の服務関係が成立し、私企業における雇用関係・労働関係は成立しな
    い。

 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 ◆ 基本

   「行政機関」については、「理論上の行政機関」と「制定法上の
   行政機関」がある。

   「理論上の行政機関」⇒≪学術用語≫

     大臣、次官、局長などは、法令などによって設けられている、
       ある一定の権限と責務とを与えられた一つの法的地位に就いて
    活動しているが、この法的地位のことを、行政法学では、一般
       に「行政機関」と呼ぶ。

   「制定法上の行政機関」

     「国家行政組織法」の別表第一によれば、11の「省」、
         四つの「委員会」、そして13の「庁」を「国の行政機関」
     と呼んでいる(同法3条)。


     これらは、学術用語としての「行政機関」が集まることに
        よってできあがっているのであって、その意味では「機関」
    というよりは、一つの「組織体」との性格を有する。

    (前掲 「入門」21頁以下)

  ◆ 各肢の検討

  
  ○ 肢1について

   前記基本に照らせば、以下のようになる。

   法定権限を有する大臣をトップとする次官、局長など=理論上の
   行政機関

   各省庁=制定上の行政機関

   
    まず、本肢では、各省庁は、ひとつの組織体であって、公法上の
     権利・義務の帰属主体となる公法人ではない。

    公法上の権利・義務の主体となる「行政主体」は、法律上「国」
     と総称される(憲法17条以下、行訴法・国賠法など各種法律)。

    本肢は妥当でない。

  
 ○ 肢2について

    国や地方公共団体≪憲法17条・国賠法=公共団体を含む≫は、
    「行政機関(理論上の)」を通じて、「行政活動」を行うだけでなく、
   独立の法人格を有する団体を設置して一定の「活動活動」を行わせ
   ている。

    本肢に掲げられている特殊法人もまた、国や地方公共団体と並ん
      で「行政主体」とされるものであるから、国に所属する一機関では
      ない。

    本肢は妥当でない。


   注 

     公社・公団も今では、行政改革の結果、「独立行政法人」にな
        っている。

      憲法17条ないし法律にいう「公共団体とは、・・行政主体
     の国以外のものを含むから、この語は、住民団体である地方
                ・・・・・・
     公共団体をも独立行政法人などと同列に扱うという意味合いを
     持っている」(前掲読本 29頁)。

     「行政主体」としては、国・地方公共団体・公社、公団、独立
     行政法人のほかに、「公共組合」があることに注意!

      公共組合とは、土地区画整理組合や健康保険組合のように、
     組合員によって構成され、一定の行政を行うこと目的とする団体
     である(前掲読本 31頁)。

   ○ 肢3について

   「行政機関(理論上)」のうち、「行政庁」とは、行政理論でいう
    専門用語としては、次のように定義づけられている(前掲 入門
  25頁)。

   「行政庁」とは、みずからの名で、しかし行政主体のために意思決定
     をし、対外的に(つまり私人に対して)これを表示する権限を、法令
     上与えられている行政機関のことをいう。

    会社が会社(法人)としての権利・義務を行使する場合と同様で
      ある。


       本肢は、この記述に沿うものであり、妥当である。

  
   ○ 肢4について

   前段は、行政機関が法令上与えられた権限を行使するについて、
    述べていて妥当であるが、その効果が帰属するのは、行政主体で
  ある。

   その理は、会社の機関の行為が、法人である会社に帰属するの
    と同様である。

        本肢は妥当でない。

  ○ 肢5について

   前段の「公法上の服務関係が成立」するというのは、妥当で
  ある。その服務関係は、国家公務員法や地方公務員法で定めら
    れているが、公務員についても、憲法28条の勤労者に該当す
  る(憲法27条も参照)。

   したがって、公務員にも労働基準法や労働組合法が適用され
    る。

     公務員については、国家公務員法等が特別法に該当し、労働組
   合法等が一般法に属することに注意する必要がある。

   したがって、公務員にも私企業におけるような雇用関係・労働
   関係が成立する。
 (前掲入門 28頁)
    

   本肢は妥当でない。

 

 ◆ 付 言   

      本問は平易な問題であるとして、さっと読み飛ばしがちであるが、
  基本に立ち返り、この際じっくりと取り組むことも肝要である。

   特に肢5については、憲法・行政各法を概観するには、好個の
    資料を提供する。

 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成18年度・問題9
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   行政庁などの行政機関の概念に関する次の記述のうち、妥当なものは
 どれか。

 1 行政庁は独任制でなければならず、委員会などの合議体が行政庁と
   しての役割を果たすことはない

 2 行政庁、諮問機関、参与機関などの行政機関の定義は、国家行政組
    織法において定められている

 3 諮問機関が示した答申・意見について、行政庁はそれを尊重すべき
   ではあるが、法的に拘束されることはない。

 4 行政庁の権限を補助機関が専決する場合には、代決の場合と異なり、
   処分権限は行政庁ではなく、補助機関に帰属することになる。

 5 補助機関とは行政主体の手足として実力を行使する機関であり、警察
   官、収税官などがこれに当たる。

  

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解 説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 ◆ 参照書籍

     前掲書

 
  ◆ 総説

  行政庁は、行政処分などの行為を自己の名において対外的に行う権限
  を持っている行政機関をいう(読本 34頁)。


  より詳しくは、

  「行政庁」とは、みずからの名で、しかし行政主体のために意思決定
    をし、対外的に(つまり私人に対して)これを表示する権限を、法令
    上与えられている行政機関のことをいう(入門 25頁)。

 ◆ 本問の検討

 ○ 肢1について

  (理輪上の)行政機関は、a・「独任制の行政機関」とb・「合議制の
  行政機関」に分かれる。

   aは、○○大臣、○○次官、○○局長、○○税務署長のように一人の
    自然人つまり公務員によって構成される。

   これが、行政庁が独任制であることの意味である。

   bは、内閣、公正取引委員会、都道府県公安委員会のように、複数の
    自然人の合議体によって運営される行政機関である。

   これは、合議体が行政庁としての役割を果たすために設けられた機関
    である。

   したがって、本肢後段は妥当でない。

 ○ 肢2について

  本肢に掲げられている行政機関の定義は、国家行政組織法において定
  められていない。

   本肢は妥当でない。

  なお、諮問機関は、審議会と呼ばれることが多いようであるが、これ
  については、国家行政組織法8条に規定があることに注意。

  諮問機関・参与機関の定義については、肢3参照。
    

   ☆ 本肢は、単なる知識を問う問題としても、不適当であるように
    思われる。

 
 ○ 肢3について

  諮問機関である「審議会とは、大臣・・などが意思決定を行うに当た
  って意見を求める(諮問する)合議制の機関である。合議制行政機関で
  あるが、諮問に対して答申をするにとどまり、独自の対外的行為権限を
 持っていない。また、この答申は法的拘束力を持たないのが通例である」
(読本36頁)。

  本肢は、この記述の趣旨に沿うので、妥当である。

  なお、「答申に法的拘束力を持つ合議制機関を参与機関というが、
 その例は少ない」(読本 36頁)。

  「国の場合、審議会の設置は法律または政令によることいなっている
 が(国家行政組織法8条)、こうした正規の手続によらない諮問機関も
  数多く設置されている」(読本 36頁)

  本肢は、あるいは正規の手続によらない諮問機関を対象としているの
  かもしれない。

  ☆ 諮問機関の概念が明確でない。本肢も不適当であるように思える。
      特に、正規の手続の審議会であれば、答申について、法的拘束力を
   持たないのが、通例であるとは言えても、「法的に拘束されること
   はない」と言 い切れるのか。
    正規の手続によらない場合には、法的拘束力を持たないのは、
      当たり前である。


 ○ 肢4について

  行政庁の補助スタッフを補助機関という。大臣が行政庁になる場合には、
  事務次官以下の職員は補助機関である。数から言うと、この補助機関が行
  政組織の大部分を占めている(読本 34頁)。

  以上の補助機関の性格からすれば、処分権限のある行政庁を補助する
 ため、補助機関が決裁を専決しても、代決しても、処分権限が補助機関
  に帰属することはない。

   権限の委任には法律の委任が必要であるため、日常的には、補助機関が、
 行政庁に代わって決裁することが多いが、この場合には、行政庁の決裁と
 同様に扱われることになるのである。

 以上の代わって決裁する場合を専決といい、特に、行政庁不在等の場合
 に行われるものを代決という。

 (読本 40頁以下 参照)

 
   以上の記述からすれば、「専決」「代決」を問わず、処分権限が補助
 機関に帰属することはないので、妥当でない。

  
    ☆ 専決・代決という聞たこともない、実務上の用語を持ちだし、
         区別を問う本肢も、妥当性に欠けると思われる。
 

 ○ 肢5について

  総説の定義からすれば、行政庁は、行政主体のために意思決定をする
  ことになっているため、補助機関もまた当該意思決定を補助する。

  したがって、補助機関は、行政主体のために手足として実力を行使する
  機関ではない。

  本肢は妥当でない。

  なお、本肢においては、肢4の決裁を想定すれば、行政庁の意思決定
  に対する補助機関の態様が明らかになる。

   
  以上正解は、3である。


  ◆ 付 言

  本問は、専門的知識がなくても、常識に基づいて正解が導かれると思わ
  れるが、さっと読み飛ばさないで、この際、知識の再確認をしていただき
  たい。

  その意味において、本解説では、極力、関連する基礎事項に言及した。
 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 09:41コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
           ★ 過去問の詳細な解説  第76回  ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
----------------------------------------------------------
                        PRODUCED BY 藤本 昌一
----------------------------------------------------------
 
  【テーマ】  行政組織法   

    【目次】   問題・解説


  【ピックアップ】   

    「行政書士試験独学合格を助ける講座」は、無料メルマガにおいては、
 過去問を、有料メルマガにおいては、“オリジナル予想問題”で“今年
  の試験のポイント”を、それぞれ攻略できるように設計されているのが
  特徴です!

 ◆有料版はコチラからご確認ください。
  ↓↓
 http://www.mag2.com/m/0001058900.html

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 行政組織法・平成21年度過去問
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
 
 問題25  国家公務員についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

    1 国家公務員には、一般職と特別職があるが、国家公務員法は、
         両者に等しく適用される。

       2 独立行政法人は、国とは独立した法人であるから、その職員
         が国家公務員法上の公務員としての地位を有することはない。

       3  その不法行為について国が国家賠償法1条1項により賠償責
         償責任を負うのは、国家公務員法上の公務員にに限られる。

       4   国家公務員の懲戒免職は、行政処分であると解されており、
          行政不服審査法による不服申立ての対象となる。

       5   国家公務員の人事行政に関する各種の事務をつかさどるため、
          総務省の外局として人事院が設置されている。


 問題26  国の行政組織に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

   
     1 国家行政組織法は、内閣府を含む内閣の統轄の下における行政
     機関の組織の基準を定める法律である。

       2  内閣府は、内閣に置かれる行政機関であって、その長は内閣総
         理大臣である。
  
       3 省には外局として、委員会及び庁が置かれるが、内閣府にはそ
         のような外局は置かれない。

       4  各省および内閣府には、必置の機関として事務次官を置くほか、
         内閣が必要と認めるときは、閣議決定により副大臣をおくことが
         できる。
     
    5  内閣府は、政令を制定するほか、内閣府の所掌事務について、
         内閣府の命令として内閣府令を発する権限を有する。
 

 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 ◆ 総 説

  「行政主体」と「私人」の相互関係を「行政の外部関係」と呼び、
   これを規律するのが「行政作用法」である。

          注
  これに対し、「行政機関」相互の間の法関係について定めるのが、
  「行政組織法」である。

  中心になるのは、「行政作用法」の分野であり、従来は主にこれを
  とりあげてきたが、これからはしばらく、「行政組織法」をとりあげ
  る。

  
  注

    「行政機関」については、「理論上の行政機関」と「制定法上の
    行政機関」がある。

   「理論上の行政機関」⇒≪学術用語≫

     大臣、次官、局長などは、法令などによって設けられている、
       ある一定の権限と責務とを与えられた一つの法的地位に就いて
    活動しているが、この法的地位のことを、行政法学では、一般
       に「行政機関」と呼ぶ。

   「制定法上の行政機関」

     「国家行政組織法」の別表第一によれば、11の「省」、
         四つの「委員会」、そして13の「庁」を「国の行政機関」
     と呼んでいる(同法3条 塾読せよ! 特に、委員会及び
     庁は、省の外局であることに注意)。

     これらは、学術用語としての「行政機関」が集まることに
        よってできあがっているのであって、その意味では「機関」
    というよりは、一つの「組織体」との性格を有する。

    (前掲 「入門」21頁以下)
  
   
  ☆ 付 言

 問題26は、「制定法上の行政機関」が対象になっているが、
     本問では、二つの区別を意識してか、国の「行政組織」という
     表示 になっている

    問題25では、「国家公務員」が対象になっているが、これは、
  「(理論上)の行政機関」という一種のポストに就いて働いている
   現実の人間」を考察していることになる。

     (前掲 読本 28頁参照)

    
    以上の考察方法は、他の類書にはないユニークさであると思われ
     るが、過去問を通じ、行政法の体系的理解を目指すという本講座の
   の特徴の顕れである。
    
    なお、「理論上の行政機関」は、以降おいて、その他の「過去
     問」を通じて、とりあげることにする。

 
 ◆ 問題25・各肢の検討

   
    ○ 肢1について

       国家公務員には、一般職と特別職がある(国家公務員法2条1項〜
  3項)
    
   国家公務員法によれば、同法は、一般職に属するすべての職員に
    適用することになっているので、特別職にも等しく適用されること
  はない (同法2条4項)。

   したがって、本肢は妥当でない。 

     本肢は、普段考たことはないことが、条文をよくみれば、同法2条
    3項に掲げられる内閣総理大臣を始めとする特別職については、その
    特別職ごとに、特別の定めを要することは、常識に属するのかもしれ
    ない。

  
  ○ 肢2について

      本肢については、以下の記述を引用する。

      ・・「公務員」は、ふつう国または地方公共団体の職員の身分に
    ついて用いられる観念なのですが、例外的に、その他の行政主体の
  場合でも、その職員に公務員としての身分を与えているケースがあ
  ります(たとえば、独立行政法人通則法51条をみてください)。

   (前掲 入門 29頁)

    したがって、本肢は妥当でない。

  
    ○ 肢3について

   国家賠償法1条1項の公務員は、正規の公務員であることを要
   しないというのが、判例である。

   「例えば、県が社会福祉法人の児童養護施設に児童の養育看護を
     を委託し、その施設においてその児童が他の児童から暴行を受けた
     という事件で、社会福祉法人の職員は正規の公務員ではないが、
   児童の養育監護は本来都道府県が行うべき事務であることを根本
     的理由にして、県の賠償責任が認められている(最高裁判所2007
  (平成19年1月25日判決・・・)」
     (前掲 読本 362頁)

   この判例は、直接には、地方公務員に該当すると思われるが、
    本肢の国家公務員にも適用されるであろう。

   したがって、本肢は妥当でない。

 
  ☆ 過去問との対比

   当該主題については、過去問でも2度問われている。
 
   サイト42回 「B 公務員 」参照
 
 ★サイト42回はコチラ↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/870896.html


  ○ 肢4について

 
    国家公務員の懲戒処分に対しては、人事院に対して、行政不服審
      査法による不服申し立てをすることができる(国家公務員法89条・
   同90条)。

    行政不服審査法1条の規定する行政不服審査の適用対象となる
      のは「行政処分」である(読本254頁参照)。

       以上からすれば、本肢は妥当である。

    
    ☆ 関連事項

     (1)行政不服審査の対象となる「行政処分」は、行政事件
       訴訟法3条に規定する「抗告訴訟」の対象ともなるので、
       「取消訴訟」も提起できることに注意せよ!
              (前掲 読本254頁参照)
       
      (2)国家公務員法によれば、人事院に対してのみ行審法に
       よる不服申立てができる(同法90条1項)。
        また、職員に対する処分に対する不服申立てが限定さ
       れていることに注意せよ(同法90条2項)。
        以上は、行審査法1条2項における「 他の法律に特別
       の定めがある場合」に該当する(国家公務員法90条3項
              参照)。

     (3)公務員の懲戒には、行政手続法に基づく事前の手続は
              適用されないことに注意せよ(行手法3条9号により適用
    除外)。(前掲読本 38頁)。

           (4)なお、ここで重要な問題を提起する。
               
         さきにあげた「外部関係」「内部関係」を分ける考えに
               たてば、公務員に対する懲戒処分は、「訓令」「通達」
        などが、行政機関相互のものであって、裁判を起こせない
               のと同様に、行政訴訟の訴訟の対象にならないのではない
               かという疑問を生じる。

         この疑問を解決するための学者の奮闘がある(入門29
                頁・読本21頁)。

         このあたりについては、余禄欄において、先生と美里の
                会話を通じて、次回以降で明らかにする。

       
        なお、一言のみ開陳させていただくならば、類書にみられな
       い(1)〜(4)にわたる行政法全体を見渡した巾広い解説は、
       「将来の本試験を見据えた」本講座の特徴を顕すものである。

        (1)〜(4)はいずれも、一つの肢を構成し得る重要
               論点である。

     
 ○  肢5について。

           
      肢4において、述べたとおり、人事院が「国家公務員の人事
     行政に関する事務をつかさどる」」というのは、正しい。

      しかし、総務省の外局として置かれているのは、国家行政組
          織法別表第一によれば、公害等調査委員会・消防庁である
        (国家行政組織法3条3項)。

            人事院は、公正取引委員会、国家公安委員会などと並んで、
     内閣 から多かれ少なかれ独立して活動する独立行政委員会である。

      公正取引委員会や国家公安委員会は、内閣府の外局として所属
          しているのに対して(内閣府設置法64条)、人事院は、内閣の所
          轄の下にある(国家公務員法3条1項)。

      人事院には、国家行政組織法も内閣府設置法も適用されず、人
     事院の所管する国家公務員法自体が人事院の設置法となっており
        (国家公務員法3条1項)、人事院の独立性は裁判所や下会計検査
     院に準ずるものとなっている。

      以上、人事院について判明するところを詳述したが、本肢は
         以上の記述に反するので、妥当でない。

      
      サイト第4回の憲法問題において、人事院が主題になっている
     ので、この際併せて参照願います。

 ★サイト第4回はコチラです↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/70949.html


      全体として、4が正解となる。


  ◆  問題26・各肢の検討


     本問は、総説でいう、「制定法上の行政機関」が対象になっているが、
   「理論上の行政機関」との区別を意識してか、国の「行政組織」という
  表示 になっている。


  ○ 肢1について

   国家行政組織法は、内閣府以外の(制定上の)行政機関の基準を定
    める法律である(同法1条)

   本肢は誤りである。

   ☆ 関連事項

    内閣府は、平成13年(2001年)、中央省庁再編に伴い、内閣
   機能強化のため新設されたもので、他省庁が国家行政組織法の規律を
      受けるのと異なって、内閣設置法によって、その組織が定められて
   いる(同法1条)。

   ○ 肢2について

   以下の条文を参照すること。

      内閣府設置法2条

    内閣に、内閣府を置く。

   同法6条1項
  
    内閣府の長は、内閣総理大臣とする。

    
     以上により、本肢が正しい

   ☆ 関連事項

    内閣設置法と国家行政組織法の比較

        内閣設置法7条1項

     内閣総理大臣は、内閣府の事務を総括し、職員の服務について
        総括する。

       国家行政組織法10条

     各省大臣、各委員会の委員長及び各庁の長官は、その機関の事
        務を統括し、職員の服務について、これを総督する。

  ○ 肢3について

   以下の条文を参照すること。

   内閣設置法49条1項

    内閣府には、その外局として、委員会及び庁を置くことができる。

   国家行政組織法3条3項

    ・・・・・委員会及び庁は、省に、その外局として置かれるもの
         とする。

   
    本肢は、以上の記述に反するので、誤りである。

   
   ☆ 関連事項

    内閣府に置かれる外局としして、内閣設置法は、以下の委員会及び
      庁を掲げている(同法64条)

    公正取引委員会・国家公安委員会・金融庁・消費者庁

    省の外局は、国家行政組織法の別表第一に掲げられている。

  
         ◎人事院との比較

      人事院は、公正取引委員会、国家公安委員会などと並んで、内閣
     から多かれ少なかれ独立して活動する独立行政委員会である。

      公正取引委員会や国家公安委員会は、内閣府の外局として所属し
     ているのに対して(内閣府設置法64条)、人事院は、内閣の所轄
         の下にある(国家公務員法3条1項)。

      人事院には、国家行政組織法も内閣府設置法も適用されず、人
     事院の所管する国家公務員法自体が人事院の設置法となっており
        (国家公務員法3条1項)、人事院の独立性は裁判所や会計検査院
     に準ずるものとなっている。

 

      ○ 肢4について

    
    内閣府および各省においては、いずれも副大臣も事務次官も必置の
      機関である(内閣設置法13条1項、15条1項、国家行政組織法
     16条1項、18条1項)。

     本肢は誤りである。

    なお、いずれも、事務次官は1人であるが、副大臣については、各省
      では、人数の規定はないが、内閣府では、3人との規定がある。
    内閣の機能強化の現れか。

    
  ○ 肢5について

    政令を制定するのは、内閣である(憲法73条6号)。
   
    内閣府令については、以下条文に従い、発する権限があるのは、内閣
      総理大臣である。

    内閣総理大臣は、内閣府に係る主任の行政事務について、法律若しく
   は政令を施行するため、又は法律若しくは政令の委任に基づいて、内閣
   府の命令として内閣府令を発することができる(内閣府設置法7条3項)。

    以上の記述に反する本肢は、「政令「「内閣府」に関して、いずれも
      誤りである。

     なお、これは、各省大臣が、省令を発するのと同様である(国家行
      政組 織法12条1項)。

   
       ◎ ここで、皆様は、内閣総理大臣の二つの顔について、はっきり
     認識する必要がある。

    (1)内閣の代表ないし行政各部の指揮監督としての本来の顔
          (内閣法 5条、6条)

    (2)内閣府の主任の大臣としての顔
      これは、以下二つの条文を繋ぐことによって明確になる。

            内閣総理大臣は、内閣府に係る事項についての内閣法にいう
     主任の大臣とし、第4条3項に規定する事務を分担管理する
                           (注)
        (内閣設置法6条2項)。
        

      各大臣は、別に法律の定めるところにより、主任の大臣として、
     行政事務を分担管理する(内閣法3条1項)。
 
     
     ( 注 )この規定において、内閣府の任務達成のための事務が掲げ
               られている。


       
      以上により、本問の正解は2である。
 

 ◆  付 言 

   本稿を通じて、細かい条文を抜きに大まかにでも、内閣府および他の省
    ないしは人事院などの行政組織間の関係またはこれらを規律する法の仕組
  みを把握しておけば、本試験対策として有効であろう。
 
      なお、肢2および肢4では、理論上の「行政機関」がとりあげられて
    いることに注意!

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 22:03コメント(0)トラックバック(0) 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
       ★ 過去問の詳細な解説  第71回 ★

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
----------------------------------------------------------
                  PRODUCED BY 藤本 昌一
----------------------------------------------------------
 
  【テーマ】 国家賠償法=営造物管理責任(前回の続き)
  
             地方自治法


  【目次】   問題・解説


  【ピックアップ】     

 「行政書士試験独学合格を助ける講座」は、無料メルマガにおいては、
 過去問攻略を、有料メルマガにおいては、“オリジナル予想問題”で
 “今年の試験のポイント”を攻略できるように設計されているのが特徴
 です!

 ◆有料版はコチラからご確認ください。
  ↓↓
 http://www.mag2.com/m/0001058900.html

     
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 問題 平成19年度問題20 肢3・4抜粋
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   国家賠償法2条の定める営造物管理責任に関する次の記述のうち、
 妥当なものはどれか。

 3 営造物の管理責任は、営造物の物理的瑕疵を問うものであり、
  営造物を管理する公務員の管理義務違反は国家賠償法1条の責
    任であって、同法2条の責任が問われることはない。

 4  営造物の瑕疵は、営造物そのものに物理的瑕疵がある場合を
   元来指すが、第三者の行為により営造物が瑕疵がある状態にな
   った場合にも、その状態を速やかに改善して瑕疵のない状態に
  回復させる責任が営造物管理者にはある。

  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 問題 平成21年度問題21
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   以下の記述のうち、地方自治法に規定されている内容として、誤
 っているものはどれか。

 1 地方自治法に定める「自治事務」とは、地方公共団体が処理
  する事務のうち、法定受託事務以外のものをいう。

  2 地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の
    福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げ
  るようにしなければならない。

  3 地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努めると
    ともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を
  図らなければならない。

  4 市町村が当該都道府県の条例に違反して事務を処理した場合
    には、その市町村の行為は無効とされる。

  5 市町村は、その事務を処理するに当たり、当該都道府県知事
    の認可を得て、総合的かつ計画的な行政の運営を図るための基
    本構想を定めなければならない。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
  ■ 平成19年度問題・解説

   前回やり残した問題について、解説を行う

 
 ○ 肢3について

  国家賠償法2条の「設置・管理の瑕疵」の文言の意味

                    ・・
  行為瑕疵説→営造物の設置・管理という行為に瑕疵がある。

  営造物瑕疵説→営造物それ自体に瑕疵がある場合に営造物管理
         責任が認められる。

   本肢は、営造物瑕疵説に基づく見解であるが、以下の説明に
  注目!

  「営造物に物的欠陥はあるがその設置・管理上の措置に落ち度
      がないということはあまりないであろう。・・・
   他方、営造物に物的欠陥がなくてもその設置・管理に落ち度
   があるという事態は十分に考えられる。・・・
   従って、行為瑕疵説の方が、国家賠償法の文言に忠実である
      上、被害者救済を広く認めるという点でも優れていると言え
   る。」

   (前掲読本 391頁)

   以上の記述からすれば、「営造物の設置・管理という行為」
    に落ち度がある「営造物を管理する公務員の管理義務違反」は、
  国賠法2条の責任が問われることはあり得る。

   以上によれば、本肢は妥当でない。

  ★ 付 言

   営造物の管理行為について、「公権力の行使」に当たるものは、
  国賠法1条の適用をし、そうでない管理行為には、同法2条1項
    が適用されるのかという問題がある。

   以下の説に注目!
  
  「むしろ、営造物の管理行為である以上『公権力の行使』に当
   たるものであっても、同法2条1項を適用するという考え方
   が穏当ではないだろうか。」
   
   (読本 393頁)


   本肢の短い文言の中には、以上の論点がつまっている。将来の
 本試験対策のためには、このあたりまできっちりと、把握してお
 くことが望ましい。

 
 
 ○ 肢4について

   本肢は、肢3において、説明した「行為瑕疵説」に立つもので、
 妥当である。

  前回(70回)において、引用した判例を再度掲げておく.。

    判例としては、道路中央線付近に故障した大型自動車が長時間に
  わたって放置された事例について、最高裁は、道路管理に瑕疵が
    あったとして、国賠法2条の適用を認めている(最判昭50年
    7月25日)。(前掲入門 268頁)

  
 
  ■ 平成21年度問題・解説

   ○ 総説

    本問は、すべて、条文どおりの設問であるが、条文を知らなくても
  肢4・5に絞られるであろう。
  
  都道府県と市町村の関係は基本的には、協力・対等な関係にあり、
 都道府県が市町村を統括する事務を行うことはできない。

  という認識があれば、5が誤りであることを容易に見抜くことが
  できるあろう。

  ○ 各肢の検討

  
 ◆ 1について

  地方自治法22条8項のとおりであり、正しい。

  現実に地方公共団体が処理する事務は多種多様にわたるため、積極
 に定義することができないからであろう。

 参考事項

 ☆ 法定受託事務
 
   国などから地方公共団体に委託するものである。

  地方自治法において、第1号法定事務と第2号法定事務について
 定義されている(同法2条9号)。

   第1号は、「国が本来果たすべき役割に係るもの」であり、第2号
 は、「都道府県が本来果たすべき役割に係るもの」である。
  その概念を把握しておく必要がある。


 ◆ 2について

   同法2条14号のとおりであり、正しい。

  同法1条の目的規定では、「能率的な行政の確保」が記されている。
 
  同法1条の2の役割規定では、「住民の福祉の増進を図ること」が
 記されている。

 私は、以上の3つの条文は連動していると思う。

 ◆ 3について

 
 同法2条15号のとおりであり、正しい。

 参考事項

 ☆ 同法7条の市町村の廃置分合

 ☆ 市町村の合併の特例等に関する法律(平成16年法律59号・
  平成22年3月31日限りで失効する限時法)

  市町村の規模の適正化を目的とする。特に後者においては、条文で
  明記されている。

  7条の廃置分合→分割・分立・合体・編入を意味するが、平成の大
  合併は、合体と編入が行われた。両者を合わせて、合併という。


 ◆ 4について 

  同法2条16号・17号のとおりで正しい。

  その根拠は以下のとおりである。

  都道府県は市町村を包括する広域の地方公共団体として、市町村
  の連絡調整に関する機能を有している(同法2条5項)ことから、
  都道府県の条例に違反したす市町村の行為は無効になる。


  ◆ 5について

  同法2条4号によれば、「都道府県知事の認可」ではなく、「議会
  の議決を経て」となっている。誤りである。

  その根拠は、総説において記したが、以下の点も考慮すべきであろう。

  市町村優先の原則→普通公共団体の事務は、まず基礎的な普通地方公
 共団体である市町村が処理することになる(同法2条3項)。


   参考事項

   都道府県と市町村の関係

 
  市町村優先の原則(同法2条3号)

   都道府県→  広域事務・連絡調整事務・補完的な事務(同法2条5号)

   

 以上のとおり、正解は5である。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
       一切責任を負いかねますことをご了承ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


examination_support at 12:46コメント(0)トラックバック(0) 
記事検索
  • ライブドアブログ