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             ★ オリジナル問題解答 《第30回》 ★

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                      PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  会社法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第116号掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第116回はこちら
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 
 
   
 ★  参考文献

    会社法 神田秀樹 著 ・ 弘文堂
 
  リーガルマインド
  会社法 弥永真生 著 ・ 有斐閣

 
 ● 各肢の検討

   
  ○ アについて

      会社法は定款で定めることを条件として、すべての株式または
  一部の種類の株式の譲渡について会社の承認を要するという形で
  株式の譲渡の制限を認めている(107条1項1号・108条1
  項4号・107条2項1号・108条2項4号)。

     しかし、相続その他の一般承継による株式の取得については、
  定款において、当該会社の承認を要する旨の定めをすることがで
  きない(なお、134条4項参照、株式会社は、そのような者の
  請求による株主名簿の記載を拒むことはできない)。

    ただし、株式会社は、当該株式会社の株式が譲渡制限株式である
    場合に限り、当該株式の取得者に対して当該株式を当該株式会社に
    売り渡すことができる旨を定款で定めることができる(174条)。

 
                             
   被相続人     当該株式会社の株式の相続        取得者(相続人)
    A-------------------------↓-------------------------B
                譲渡制限株式

                     売渡しの請求 ↑
 
                         当該株式会社

     以上の記述に照らせば、本肢は妥当である。
       


  ※ 参考事項

   

 1 平成23年度 本試験問題38 肢 1 (メルマガ116号に
    おいて解説)は、妥当でないものとして、以下のとおり記述する。 

   株式会社は、合併および会社分割などの一般承継による株式の取
   得について、定款において、当該会社の承認を要する旨の定めをす
   ることができる。

   ここで吸収合併を例にとれば(新設合併、吸収分割、新設分割も
    これに準じる)、合併の対価として、消滅会社の株主は持株数に応
    じて存続会社の株式が与えられ、存続会社の株式の取得をするが、
    これに対して当該会社である存続会社の定款において、承認を要す
    る旨の定めをすることができるかどうかは、およそ問題にならない
    と思う。
   
    ×       ○
   消滅会社    存続会社      

    ↓

   株主=存続会社の株式の取得者

   
   これは、合併等の組織再編の過程において処理される問題であっ
    て、定款において、当該会社(存続会社)の承認を要する旨の定め
    をすることが問われるものではないと思う。換言するなら、107
    条1項1号などの適用外の問題であると思う。

   これに対して、本肢における相続その他の一般承継については、
  107条1条1号にいう譲渡に相続が含まれないので、当該会社
   の承認を要する旨の定めをすることができないということでピッ
     タリくる!!

   したがって、さきに掲げた平成23年度の肢は、本来は、つぎの
    ように改められるべきであろう。
   
   株式会社は、相続などの一般承継による株式の取得について、定
    款において、当該会社の承認を要する旨の定めをすることができる。

 2 本肢の場合には、自己株式を取得することができる場合に該当す
    る(155条6号)が、自己株式の取得については、後述する。


  ○ イについて

  承認を受けないでなされた譲渡制限株式の譲渡は、当該株式会社に対
  する関係では効力を生じないが、譲渡の当事者間では有効であるという
 という点については、判例 (最判昭和48・6・15民集27−6−
 700)がある。

  判例(最判昭和63・3・15判時1273−124、最判平成9・
 9・9判時1618−138)《前掲 神田 会社法第14版)は、こ
  れを進めて、本肢のとおり、会社は必ず譲渡前の株主を株主として取
  り扱わなければならないとする。

  
    以上の記述によれば、本肢は判例に照らし、妥当である。

  
  なお、当該株式の譲受け人が、譲渡の当事者間では有効であるというこ
 とを生かしたければ、当該株式会社に対し、当該株式を取得したことにつ
 いて、承認請求をし、承認を受け、その者の請求により、当該株式会社の
 株主名簿に記載してもらい、株式の譲渡について、株式会社に対抗するこ
 とである(137条以下・134条2号・133条・130条1項)。


 ○ ウについて

    株式会社が特定の株主から自己株式を取得する場合には、株主総会
  の特別決議を要する(156条1項・309条2項2号)が、子会社
  から自己株式を取得する場合は、取締役会設置会社にあっては、取締
  役会の決議で足りる。ただし、非取締役会設置会社では、株主総会の
  決議を要するが、この場合は、普通決議で足りる(163条・156
  条1項・309条1項・なお、309条2項2号( )内参照)。         
                  
    
 以上の記述に照らせば、本肢は妥当である。

 

 ※ 参考事項

    1 自己株式とは「株式会社が有する自己の株式」と定義されて
     いる(113条4項)。会社が自社の株式(自己株式)を取得
     するとその結果その株式は自己株式となる。会社法は、株式会
     社が自己株式を取得できる場合を規定する(155条・本肢の
     場合は、同条3号である)《前掲 神田・会社法》

    2 自己株式は出資の払戻しとなり、また会計上自己株式の資産
     性を認め配当規制をしないと債権者を害する等の弊害があるこ
      とが指摘されている(その他の弊害が前掲書神田96頁に3個
     掲載されているが、ここでは省略する)。
    
        3  子会社の定義は、2条3号に規定がある。要するに、親会社
     によって、総株主の議決権の過半数を所有される株式会社を子
          会社という。なお、親会社の定義は、2条4号に規定がある。


 ○ エについて

       親会社をAとし、事業譲渡の譲渡会社をBとし、譲受会社である子
     会社をCとすると、CがBの有するAの株式を譲り受けると、子会社
     であるCが、親会社Aの株式を取得することになり、子会社による親
     会社株式取得の規制に服するようにもみえる(135条1項)。
       しかし、本肢の場合には、135条2項1号の規定する例外事由に
      該当することになるが、135条3項の適用を受けることになる。
   
   
     譲渡会社      事業譲渡        譲受会社
     B---------------------------------------C
                                            (子会社)
     ↓所有
     
    A会社株式
  (親会社)

       
    以上の記述によれば、本肢は、会社法の規定に照らし、妥当で
   ある。
  
  
   ※ 参考事項

   1 前述したように、子会社による親会社の株式取得は原則的に禁
    止されているが(135条1項)、「子会社株式は親会社の資産
    に含まれるから、子会社による親会社株式取得は資本充実(会社
    財産確保)の点から問題がある・・子会社に対する支配力・・
    株価操作や投機的行為・・などの弊害を生ずるおそれがある」
    (前掲リーガルマインド 会社法 65頁)

   2 他の会社の事業の全部の譲渡については、譲渡会社・譲受会社
        いずれにおいても、株主総会の特別決議が必要になる(467条
        1項1号・3号・309条2項11号)。


  ○ オについて

     吸収合併においては、合併後の存続会社が、合併により消滅する会
     社の権利義務を承継することになる(2条29号)。

    本肢において、存続会社をAとし、消滅会社をBとすると、BがAの
   株式を所有していたとすると、合併により、AはBの権利を承継するこ
   とにより自己株式を取得することになる。


                吸収合併
    消滅会社B--------------------------------存続会社A
    
    ↓所有                  ↓
  
   A株式---------------------------------→自己株式

  
  本肢の場合は、155条11号に該当するので、自己株式を取得する
 ことができるが、「相当の時期にその有する自己会社株式を処分しなけ
 ればならない 」という規制はない。
  このような規制があるのは、子会社による親会社株式の取得の場合で
 ある(135条2項)。

  したがって、本肢は、会社法の規定に照らして、妥当でない。

  なお、吸収分割の場合も、本肢に準じて考察できる。

 

---------------------------------------------------------------
 
  妥当でないのは、オのみであるので、本問は、1が正解である。
 
---------------------------------------------------------------

 
 ● 付 言


  本問では、過去問形式に従えば、「妥当でないものはどれか」と問
 われオ(通常は5)が正解ということになるであろう。しかし、本講
 座では、練習のために、正確な知識を試される本形式によった。今の
 段階では、答えが合った、違ったは問題でなく、すこしでも正確な知
 識を取得するように努めるべきだと思う。
  

 

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
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            ★ オリジナル問題解答 《第19回 》 ★

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  【テーマ】  会社法

   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■   オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第105号に掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第105回はこちら 
           ↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
  
  

 

 ★ 参考文献
   
  会社法 弘文堂 / 会社法入門 岩波新書 ・ 神田秀樹著

 
 
 
 ▲  問題 1

   1について

    327条1項1号が公開会社における、取締役会設置会社の設
  置強制をしているが、非公開会社も、326条2項に基づき、任
  意に取締役会設置会社になることができる。後段が妥当でない。
   
   2 について
 
     株主総会の権限は、会社の意思決定に限られ、執行行為をするこ
  とはできない(執行は取締役または執行役)が、その意思決定の権
  限は、取締役会設置会社では、原則として法律上定められた事項に
  限られる(295条2項・ 3項)。
  
  それ以外の事項に関する業務執行の決定は取締役会にゆだねられる。
  
  しかし、取締役会設置会社でも、定款で定めれば、法定事項以外の
 事項を株主総会の権限とすることもできる(295条2項)。
 
  以上の記述を総合すると、法令・定款で株主総会の権限であると定
 められた事項は、取締役会の権限とすることはできないので、本肢は
 妥当でない。
 
   なお、「以上に対して、取締役会設置会社でない会社では、株主総
  会は一切の事項について決議できる万能の機関である(295条1項)。」
 (前掲会社法)ことに注意せよ。

 
  3について

  362条4項6号によれば、大会社以外においても、「内部統制シス
  テム」の整備については、代表取締役が決定することは許されないが、
  ただ、大会社においては、当該事項の決定が、取締役会の義務づけられ
  ることになるのである(362条5項)。

  以上の記述に反する本肢は、妥当でない。

   4について

    法定事項や重要な業務執行につぃての決定権限は、362条4項に
  規定があり、そのとおりである。
  特別取締役の制度については、373条に規定があるが、その概略は
  以下のとおりである。

  取締役のメンバーの一部を特別取締役としてあらかじめ選定してお
  き、取締役会で決定すべき事項のうちで迅速な意思決定が必要と考え
  られる重要な財産の処分・譲受けと多額の借財(362条 4項1号・
  2号)について特別取締役により決議し、それを取締役会決議とする
  ことを認める制度である(前掲 会社法)。

  本来、取締役会は全員の取締役で組織し、その会議により業務執行
  の意思決定を行う(362条1項・2項1号)のであるから、法定事
  項の 一部について、特別取締役による決議を取締役会決議とするのは、
  その 例外に属する(前掲書)。)。
 
  本肢は、妥当である。

   5について

    取締役会は、業務執行に関する意思決定を行う(362条2項1号)。
  そして、362条4項各号の法定事項は必ず取締役会で決定しなけれ
   ばならない。この決定権限のなかには、本肢が指摘するように、「具
   体的な法定事項のほか『重要な業務執行』を含む」(前掲会社法)こ
   とに注意する必要がある。
 「362条4項以外にも、会社法が取締役会の決議事項と定めている事
  項は多数ある。以上のような法定事項以外の事項についても取締役会で
  決定することはできるが(決定すれば代表取締役を拘束する)、取締役
  は招集によって会合する機関にすぎないため、それらの事項(日常的事
  項)の決定は代表取締役等に委譲されていると考えられる」(前掲書)。
    また、定款によって、法定事項以外を代表取締役にゆだねることもで
  きる。
 
 以上に反する本肢は、妥当でない。

------------------------------------------------------
 
 妥当であるのは、肢4であるから、本問の正解は4である。

---------------------------------------------------------

 


 ▲  問題 2


 
 (1)356条1項2号に該当する利益相反行為

     取締役みずから当事者として(=自己のため)または他人の代理
  人・ 代表者として(=第三者のため)会社と取引をする場合には
  (会社から財産を譲り受け、金銭の貸付を受け、会社に財産を譲渡
  する等)その取締役がみずから会社を代表するときはもちろん、他
  の取締役が会社を代表するときであっても、会社の利益を害するお
  それがある。
   ここでいう利益相反行為は、会社・取締役の直接取引である。

  (2)356条1項3号に該当する利益相反行為

     会社が取締役の債務につき取締役の債権者に対して保証や債務引
  受をする場合等の場合にも、会社の利益が害されるおそれがある。
  ここでいう利益相反行為は、間接取引である。

  (3)取締役会の承認

     取締役会設置会社では、(1)(2)のような利益相反行為をする
  場合には、その取引について重要な事実を開示して取締役会の事前の
  承認を得なければならない(356条1項2号・3号 365条)。
   その承認を受けた場合には、民法108条は適用せず、その取締役
  が同時に会社を代表することも認められる(356条2項)。


 (4) 本問の検討

 
    アについて

    (1)によれば、(代表)取締役が他人の代理人として(=第三者の
   ため)会社と取引をする場合には(会社に財産を譲渡する)その(代表)
   取締役がみずから会社を代表するときに相当する。自己ためでなく、第
   三者のためであっても、利益相反行為に該当する。取締役会の承認を要
   するので、本肢は妥当でない。


   イについて

    これは、(2)の間接取引に該当し、取締役会の承認を要するので、
   本肢は妥当である。

    
     ウ について

    (1)によれば、取締役がみずから当事者として(=自己のため)(金
  銭の貸付を受け)他の取締役が会社を代表するときも、利益相反行為にな
  るので、 取締役会の承認を要する。本肢は妥当でない。この場合は、自
  己契約にはならないが、会社の利益を害するのである。


    エについて

    これは、(1)の直接取引のうちの自己契約に該当するが、(3)で記
 述したとおり、取締役会の承認を受けた場合には、民法108条は適用せ
 ず、当事者であるAが、会社を代表し得る。妥当である。


   オについて  

    これは、(1)に当てはめると、(代表)取締役が他の会社の代表者
   として(=第三者のため)会社と取引をする場合(会社から財産を譲り
  受ける)、その(代表)取締役がみずから会社を代表するときに相当す
   る。
   したがって、(3)の取締役会の承認を要する。なお、この場合も、
  直接取引であって、ただ、第三者のための取引に該当する。

    本肢は、妥当でない。

 ----------------------------------------------------------------
  
  以上妥当であるのは、イ・エの二つであるから、3が正解である。

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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              ★ オリジナル問題解答 《第11回 》 ★

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  【テーマ】  民法
   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■ 民法オリジナル問題 解説
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  問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第97号に掲載してある。

 
 ☆ メルマガ第97回はこちら↓
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 ▲ 問題1

  
  ☆  参照文献

   民法 2  勁草書房


  ◆ 各肢の検討

  
  ○  アについて

     受任者は委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、
       事務を処理すべきである(644条)。

    対価の有無もしくは多少を問わずにこの義務が認められると
      ころに信任関係に基づく委任の本質が現れる(大判大正10・
      4・23・・)。

    したがって、無償の受任者も善管注意義務を負うので、本肢
      は妥当でない。

    ★ 参考事項

     善良な管理者の注意とは、社会人の一般人として取引上要
        求さされる程度の注意。

     自己の財産に対するのと同一の注意とは、その人の注意能
        力を標準としてその人が普通に用いる注意の程度を示す。
                ↓
     
     注意の程度を軽減し責任を軽くするのを妥当とする特殊な
        場合にだけこの程度の注意を標準とする(659条・無償の
        受寄者827条・親権者)。
   
    (前掲書)
 
  ○ イについて

    委任者は、受任者に対して、委任によって損害を被らせない
      ようにする義務がある。そのような委任者の義務として費用前
      払いの義務(649条)がある。

    本肢は妥当である。

  ○ ウについて

    原則→委任は信任関係に立つものであるから、受任者はみずか
              ら事務を処理すべきである。

    例外→任意代理人の復人権の規定を類推して、同一の条件と責
              任のもとに復委任を許すのが至当(104条・105条)。
       判例・通説もこのように解する(前掲書)。

     本肢では、104条の類推により、やむを得ない事由があるとき
    は、第三者をして代わって事務を処理させることができるので、妥
    当でない。

  ○ エについて

    委任契約において、報酬の特約があるときは(648条1項)、
   履行の中途で終了したときでも、本肢の場合には、報酬請求がで
   きる(648条3項)。なお、この点が請負と異なるところであ
     る。

   本肢は妥当である。

  
    ○ オについて

   650条3項が規定する委任者の損害賠償義務は、委任者の責に
  帰すべものかどうかを問わない無過失賠償責任である。
  
   本肢は妥当でない。

------------------------------------------------------------------

   妥当であるのは、イとエであるから、正解は3である

-----------------------------------------------------------------  

  ◆ 付 言

  委任契約に関しては、委任の特質を念頭において、本試験直前に
  条文を読み込んでおくとよい。

 


  ▲ 問題2


  ☆ 参考書籍

   民法2  勁草書房 ・ 民法二 内田貴著  東京大学出版会

 
  ◆ 各肢の検討

   ア・イは、請負の目的物の所有権の帰属に関して、請負人帰属説に
  立つ判例の見解の成否が問われているである。

   
  ◎ アについて
  
   判例は、請負人帰属説に立ちながらも、注文者が材料を提供した
    場合には、注文者に帰属するとする(大判昭7・5・9・・・)。
   この場合には、加工(246条1項ただし書き)の適用はない、

   したがって、本肢は前段は正しいが、後段は誤りであり、全体と
    して、誤りである。

   ☆ 過去問の検討

    建物新築の請負契約に当たり、注文者が材料の全部を供給した
      場合には、特約の有無にかかわらず、注文者に所有権が帰属する。
    (1998年問31・肢1)

    上記判例は「特約がない限り、原始的に注文者に所有権が帰属
      する」としているので、「特約の有無にかかわらず」ではない。

    ×

  ◎ イについて

    建築請負では、注文者の土地の上に請負人が材料を提供して建物
   を建築するのが通常である。
   
    この場合には、請負人が所有権を取得し、引渡によって注文者
   に移転することになる(大判大正3年・12・26・・)。

    以上が、請負人帰属説の骨子である。

    しかし、請負人の材料提供の場合でも、特約があれば、竣工と
   同時に注文者の所有となるというのが、判例である(大判大正
   5・12・3・・)。

    したがって、本肢は正しい。
   
   ☆ 参考事項

    請負人の材料提供の場合のおける、特約について、以下の判例
      が注目される。

    注文者が代金の全部または大部分を支払っている場合には、特
     約の存在が推認され、特段の事情のない限り、建物所有権は完成と
     同時原始的に注文者に帰属する(大判昭和18・7.20・・最判
     昭和44・9・12・・)。

    以上の判例を基準に出題された2002年問29 肢5。

   最高裁判例によれば、仕事完成までの間に注文者が請負代金の大部
  分を支払っていた場合でも、請負人が材料全部を供給したときは、完
    成した仕事の目的物である建物の所有権は請負人に帰属する。

   本肢は、上記判例に照らし、×


   学説の多数は、以下のとおり、注文者帰属説に立つ。

   目的物の所有権に関しては、むしろ当事者の通常の意識を尊重して、
    完成と同時または工事の進捗に応じて注文者に帰属すると考えるべき
    である。


  (以上、前掲書 内田 貴著 参照)

 
  ◎ ウについて

    請負人の担保責任として、瑕疵修補請求権および損害賠償請求権が
    ある。両者の関係は以下のとおりである。

   瑕疵修補請求権→相当の期間を定めて修補できるのを原則とするが、
   瑕疵が重要でなく、しかもその修補に過分の費用を要するときは、
   損害賠償請求権があるだけである(634条1項)

   損害賠償請求権→瑕疵の修補とともにまた修補に代えて、常に請求
   できる(634条2項)。

   (前掲書 民法 2)


      当該瑕疵修補に代わる損害賠償請求権については、本肢のとおり
  の判例がある(最判平9・7・15・・)ので、本肢は正しい。

   
   ☆  関連する過去問について

     請負契約の履行に当たり生じた瑕疵の修補に代わる注文者の
    損害賠償請求権と請負人の報酬請求権は相殺することができる。
   (1998年問31・肢3)

     前記判例は、両者は同時履行の関係にあり、相互に現実の履行
    をなすべき特別の利益はないとして、相殺を認めた。(533条
    ・505条)

     ○


     完成した仕事の目的物である建物に瑕疵があった場合、注文者
    は修補か、損害賠償のいずれかを選択して請負人に請求すること
    ができるが、両方同時に請求することはできない(2002年
    問29・肢5)。

     前記記述に照らし、注文者の選択によるのでもなく、両方同時
    に請求できる。

     ×


  ◎ エについて

    判例によれば、本事例において、「注文者が期日に報酬を提供
   しないときでも、請負人は当然遅滞の責めに任ずべきものである。」
    (大判大正13・6・6・・)とする。

    したがって、本肢は誤りである。


     ☆ 関連する過去問

    請負人が約定期日までに仕事を完成できず、そのために目的物
   の引渡しができない場合でも、報酬の提供がなければ、履行遅滞
   とならない(1998年問31・肢5)。

     前記判例によれば、履行遅滞になるので、×

   ◎ オについて

   本肢は、ウで掲げた請負人の担保責任である瑕疵修補請求権・
  損害賠償請求権と並ぶ契約の解除権に関する問題である。

  契約の解除権→瑕疵が重要なもので、これがため契約の目的を達す
  ることができないときにだけ解除できる。ただし、修補の可能なと
  きはまずこれを請求すべきものと解さねばならない。のみならず、
  建物その他の土地の工作物の請負においては、解除は許されないこ
  とに注意 すべきである(635条)。
 
    (前掲書 民法2 )
  
   
     本肢は、請負の目的物が建物であるから、注文者は解除できない。
  したがって、誤りである。


-----------------------------------------------------------------

  正しいのは、イとウであるから、正解は4である。
   
-----------------------------------------------------------------

 
 ◆ 付 言

   請負については、見過ごされがちであるが、重要論点満載であるので、
  注意されたい。

 

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              ★ オリジナル問題解答 《第8回 》 ★

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                         PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】  行政法
   
    
  【目次】    解説

              
   
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 ■ 民法・行政法・オリジナル問題 解説
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   問題は、メルマガ・【行政書士試験独学合格を助ける講座】
 第94号に掲載してある。

 ★ メルマガ第94回はこちら↓
   http://archive.mag2.com/0000279296/index.htm
 


  ◆ 総説

  
  行政訴訟は、主観訴訟と客観訴訟に分かれる

 
 ○ 主観訴訟=権利保護の制度・つまり救済の制度。

  
    抗告訴訟と当事者訴訟に分かれる。

    「抗告訴訟」=取消訴訟・無効等確認訴訟・不作為の違法確認
           ・義務付け訴訟・差止訴訟


     「当事者訴訟」=実質的当事者訴訟・形式的当事者訴訟

 

 ○ 客観訴訟=権利救済のためでなく、国・公共団体の違法行為を
                是正し、その活動の適法性を確保することを目的と
                する。


     「民衆訴訟」・「機関訴訟」


 (前掲書・読本 266頁の図表を参考にした)

 
 ◆ 各肢の検討


  ○ 1・2について

   
    以下の記述を参照されたい。
 
 --------------------------------------------------------------
 
    行訴法4条前段規定は、「形式的当事者訴訟」である。
  これに対比されるのが同条後段の「実質的当事者訴訟」である。 

  いずれも、総説の「当事者訴訟」に含まれる。
 
   以下において、「形式的当事者訴訟」について説明する。
  
    まず、条文の意味するところは、難解であるが、「本来は取消訴
   訟であるべきところ、法律の規定により当事者訴訟とされているの
   で『形式的当事者訴訟』と呼ばれている。」(読本270頁)

  「この訴訟の代表例は、土地収用の場合において土地所有者に支払
   われる損失補償に関する争いである。損失補償は、都道府県に設
   けらている収用委員会の裁決によって定められるが、、裁決は
   行政処分であり・・従って土地所有者がその損失補償に不服がある
   場合には、本来収用委員会を被告として取消訴訟を提起しなければ
   ならないはずである。ところが、土地収用法133条2項は、損失
  補償に関する訴訟は、損失補償の法律関係の当事者つまり、土地
   所有者と土地所有権を取得し補償の義務を負担する起業者との間
   で行われるべきものとしている。」(読本270頁)

 
    これに対して、行訴法4後段の「実質的当事者訴訟」に関しては、
  最大判H17・9・14を参照すべきである。

   在外国民が「次回の衆議院の総選挙における小選挙区選出議員の
 選挙および参議院の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において、
 在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票できる地位にあ
 ること」の確認を求める訴えは「公法上の法律関係に関する訴え」
 として確認の利益が肯定され適法である。

 (入門211頁以下・読本337頁以下)

  なお、この他、当該訴訟の例として、「公務員の身分の確認を求
 める訴訟や公務員の俸給の支払を求める訴訟などがこれに該当する。」
 とされる(読本 269頁)

 
  ☆  関連事項

   過去問 平成19年度・問題19をみよ!!

  行政事件訴訟法4条の当事者訴訟に当たるものの組合せとして
 正しいものとして、次の肢が挙げられている。

  ア  土地収用法に基づいて、土地所有者が起業者を被告として
  提起する損失補償に関する訴え

 オ 日本国籍を有することの確認の訴え


 アが、形式的当事者訴訟であり、オが、実質的当事者訴訟である。

 -------------------------------------------------------------
 
  以上の記述に照らせば、1・2いずれも、妥当である。

  

 
 ○ 3について

   
    以下の記述を参照されたい。

  ---------------------------------------------------------------- 

    地方自治法242条の2に定める「住民訴訟」は、行訴法5条
  が規定する民衆訴訟である(総説・○客観訴訟「民衆訴訟」参照)。

   
   選挙に関する訴訟は公職選挙法(203条以下)で定められ、
   これもまた、民衆訴訟である(総説参照)。
  
  
   次の指摘に注意。

   「選挙に関する訴訟は公職選挙法(203条以下)で定められ、
    住民訴訟は地方自治法(242条の2)で定められている。
    行政事件訴訟法5条の規定は、それらの訴訟を行政訴訟に
    組み込むという意味を持っている」(読本271頁)
 
----------------------------------------------------------------
 
    以上の記述に照らせば、本肢は正しい。


 ○ 4について

  「義務付けの訴え」(行訴法3条6項)は、抗告訴訟に該当する
  行訴法3条1項・総説○主観訴訟「抗告訴訟」参照」

  抗告訴訟に該当するので、本肢は誤りである。

 ○ 5について
               
        行訴法6条の機関訴訟(総説・○客観訴訟「機関訴訟」)に
   いては、「法律が定めている場合に限り、法律で認められた者
      だけが提起することができる。その理由は、行政機関が法人格
   を持たず、権利義務の主体ではないことである。行政組織内部
      の紛争はその 内部で解決すべきであるという観念も作用して
   いるであろう」(読本271頁)

   したがって、本肢は正しい。

 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 以上によれば、妥当でないのは、4であるから、正解は4である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 
 ☆ 本問については、サイト69回を参照されたい。

 ◆サイト第69回はこちら↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/1355589.html

 
 
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 ■       一般知識  アラカルト(2)
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   日本の雇用・労働  その1


   ○ 日本型雇用システム

    
    日本雇用制度の三種の神器

     日本の雇用制度を象徴する、「終身雇用制度」、「年功序列型
    賃金」、「企業別労働組合」

   
    ★ 三種の神器の盛衰 

      年功型賃金や終身雇用制度がみられるようになったのは、第
     一次大戦後の1920年代(大正2年〜)ごろからの大企業か
     らである。
      さらに、企業別労働組合を加えて普及したのは戦後のことで
     ある。

      こうした日本的雇用制度は、少なくても大企業の正社員に限
     ってみればかなり一般的であったが、1990年代中盤以降(
     平成7年〜)徐々に崩れてきた。

    ★  日本の労働組合

          ・・・・・
     欧米では、職業別組合(同一職種の熟練工を中心とした組合)
      ・・・・・
    から産業別組合(職種や企業の枠をこえた同一の産業の組合)
        へと発展してきた。

     これに対して日本では、終身雇用制を背景として、会社ごと
                  ・・・・・
    の従業員組合という性格をもつ企業別組合である。
      そのため、組合員に会社あっての組合という企業意識が強く、
    交渉力や他労組との連帯行動に弱点がある。

   
   ○ 日本の労働者派遣制度ー労働者派遣法を中心にしてーについて
    の要点

    
     ▲ 労働者派遣法とは


    1 「労働者派遣法」※は、「派遣労働者の就業条件の整備等」を
     図るため、1985(昭和60年)に制定されたが、施行当初、
     対象は高度な専門業務に限られていた。

    2 「労働者派遣法」は、労働者派遣事業者(派遣元企業)が、労
     働者をほかの企業(派遣先企業)に派遣して、その(派遣先)企
     業における業務を遂行させる仕組みを規定する。

      同法の定める二つの形態

      「常用型派遣」⇒派遣元企業が労働者と長期の雇用契約を結び、
      派遣元企業が自ら雇用する常用労働者を派遣する。

      「登録型派遣」⇒派遣元企業には、派遣労働者の登録だけして
      おいて、仕事のあるときにのみ派遣される。

      
    △ 1999年(平成11)年改正

     当該改正法により、派遣業務の対象が専門業務以外にも拡大し、
    一定の業務を除き原則として自由化した。
     
     その結果、人材ビジネスとしての派遣事業は拡大を続け、究極
    の細切れ雇用の「日雇い派遣」も増加。「ネットカフェ難民」
    「ワーキングプア」の温床になっているとの指摘もある。

   
    ▼  その近時の傾向

     2010(平成22)年に政府は労働者派遣法の改正案を閣議
    決定し国会に提出に提出したが、その後、継続審議になり、現在
    まだ成立していない。

     その内容は、

     専門26業種などを除き「登録型派遣」の原則禁止。
     長期の雇用契約を結ぶ「常用型派遣」を除き製造業派遣禁止。

     つまり、「それまでの規制緩和(自由化)に対する見直しとして、
    労働者派遣法の規制強化策が現在の検討課題になっている」と、し
    っかり覚えておくこと。

      

   (注)※ 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業
       条件の整備等に関する法律

     
      =次回に続く。


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         ★ 過去問の詳細な解説  第 94 回  ★

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  【テーマ】  民法
   
    
  【目次】    問題・解説

           
 
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 ■  平成22年度問題45(記述式)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   Aは、Bから金銭を借り受けたが、その際、A所有の甲土地に抵当権が
 設定されて、その旨の登記が経由され、また、Cが連帯保証人となった。
 その後、CはBに対してAの債務の全部の全部を弁済し、Cの同弁済後に、
 甲土地はAからDに譲渡された。この場合において、Cは、Dを相手に
 して、どのような権利の確保のために、どのような手続を経た上で、ど
 のような権利を行使することができるか。40字程度で記述しなさい。
 
  
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  

  ● 図示
                    B 債権者兼抵当権者

         ↓     ↓

    C 連帯保証人    A 債務者兼抵当権設定者

                         甲土地 →  第三取得者 D

 ○ ポイント

    1 連帯保証人Cの債務者Aに対する求償権

    「CはBに対してAの債務の全部を弁済し」たのだから、Cは、
    Aに対して求償権を有する(459条以下・ただし、連帯は問題
       にしなくてよい))。

   2 弁済者CによるBの有する抵当権の行使(500条 ただし、
    Cは≪連帯≫保証人であるから、法定代位になることに注意!
    ・501条本文)

     弁済による代位または代位弁済により、弁済者Cの求償権を
    確実にするため、弁済を受けた債権者Bの有する抵当権を代位
    できるのである。

   3 代位の付記登記

    ア 「保証人の弁済後に第三取得者が生じたときは第三取得者の
         出現前に代位の付記登記をしておかなければ、保証人は第三
         取得者に対して代位できない(501条但書1号・「あらか
         じめ」とはこのような趣旨と解されている)。保証人が弁済
         したから抵当権は実行されないと思って買った第三取得者を
         保護するためである」【後掲 内田民法 参照】。

    イ 弁済の後、付記登記前に、第三取得者を生じたときは、もは
     や代位の付記登記はできない(昭和11・5・19)

    ウ 第三取得者の出現後に保証人が弁済したときは、付記登記は
     不要とされる(昭和41年11月18日)。抵当権付で不動産
         を取得した第三取得者は、もともと抵当権の負担を覚悟してい
     るべきだからである。【後掲 内田民法 参照】。

 

        B Cの代位          時の順序
                 
                 ア 弁済→付記登記→Dの出現
        ↓
                 イ  弁済→Dの出現→付記登記不可

                 ウ Dの出現→弁済→付記登記不要
    C   A  →  D  

    弁済
 

  
  ◎ 本問の解答


      本問の事例は、前記 ○ ポイント 3 イ によれば、付記登記
   不可に該当する。
            ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・
    本問において、「求償権の確保のため、代位の付記登記手続を経た
   ・・ ・・・・・・・・・・・・・・
   上で、抵当権を行使することができる」という解答を求めるならば、
   事例自体を 前記 ○ ポイント 3 ア に変更しなくてはならな
   い。

    つまり、付記登記に関していえば、
    
    Cの弁済後に、甲土地がAからDに譲渡される前に、Cはどのよう
   な手続きを経る必要があるかということが問われなくてはならない。

    もし、

     弁済後、第三取得者Dが出現すれば、この後、付記登記はできないの
    だから、付記登記は、Dの出現前に行うことは当然の前提であるという
       のであれば、正解は前述した、・・・・・・・ということになる。

    しかし、
   
    前述したように、時の順序は本問では重要な論点であるのに、これを
   無視した出題には疑問が残る。また、本問では連帯保証となっているの
   にこれが利いておらず、連帯に特有な論点がないことにも疑問が残る。

 

 ★ 参考文献

  民法三 内田 貴 著・東京大学出版会
   
    民法 2 ・ 我妻栄/有泉亨著・勁草書房
  
 

 

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        ★ 過去問の詳細な解説  第 91 回  ★

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  【テーマ】  民法
   
     ー過去問に関して、登記にまつわる諸問題・その2−
     
     平成10年度以降の登記のからむ肢を順次とりあげ、解説を行い
   ます。本試験準備の有力な武器になることを祈念します。

    
 
  【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
      現在、販売されている 行政書士試験直前予想問題【平成22年度版】
    につきましては、現在もなお、たくさんの方々に購入頂きつつあり、深
   謝いたしております。

 

   ◆藤本式直前行政書士試験予想問題【平成22年度版】はこちら!
           ↓↓↓
  http://www.examination-support.com/2010/

 

      私といたしましては、来るべき本試験と類似する良問に絞った選りす
   ぐりのオリジナル問題を作成・呈示させていただいたつもりであります。

    ひとりでも多くの方が、本誌を活用されることにより、本年度の試験
   に合格されることを祈念いたします。
 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
■  問題集(過去問の出典は省略)・○×を付すること

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 1 A所有の甲地がBに売却され、さらに善意のCに売却された後、AB
  間の売買契約が詐欺を理由に取り消された場合、Aは登記なくしてCに
   取消しを対抗することができる。(  )
  
 2 A所有の甲地がBに譲渡されたが甲地には賃借人Cがいた場合、Bは
  登記なくしてCに対抗することができる。(   )

 3 A所有の甲地がBに譲渡されたが甲に不法占拠者Cがいた場合、Bは
  登記なくしてCに対抗することができる。(    )

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
■  解説集(判例に関しては、三省堂発行の平成22年度 模範六法
       から引用≪模 、、条1、2、3・・・で表す≫)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ◎ 1について

  民法96条3項によれば、詐欺による意思表示の取消しは善意の第
 三者に対抗できないのであるから、Aは登記の有無にかかわらず、C
 に対抗できない。   ×

 ◆ 発展問題

 a 詐欺による取消しに際して、Cが第三者として保護されるためには
  登記を要するか。ここで問題になるのは、対抗要件としての登記では
  なく、資格要件としての登記であることに注意する必要がある。

   もし、この資格要件としての登記を要するということになればどう
  なるか、皆様、よく考えて欲しい。Aが詐欺による取消しを理由にB
  の登記を抹消して自己に回復すれば、もはや、Cは自己に登記を移転
  できないのだから、善意の第三者であるCは保護されない。
   したがって、この場合、AはCに登記がないことを理由にCに対し
  取消しを対抗できることになる。

   「登記必要説の根拠は、96条3項は詐欺にあった被害者の犠牲に
  において、取引安全のため善意の第三者を保護しようというのである
  から、保護される第三者は、権利の確保のためになしうることを全て
  して、ほぼ確定的に権利を取得したといえる程度まで達している必要
  があるのではないか、特に、第三者より先に表意者が登記を回復して
                  (注)
  しまったような場合、いくら善意・無過失の第三者でも、その登記の
  抹消まで要求することを認めるのは行き過ぎではないか、という判断
  である。」(内田 民法一)
 
    なお、一般には、判例(最判昭和49年9月26日)は、登記不要
     説に立っているいるとされるが、内田氏は、登記を不要とする当該判
   決の説示には、事案の関係から、先例としての価値に疑問を呈してお
   られる(前掲書)。

    最後に、当該説に立っても、本肢において、「 Aは登記なくして
   Cに取消しを対抗することができる。」とするのは、×である。
  
   注 内田説によると、96条3項の「規定も権利外観法理の一環で
   あるから、94条2項の解釈論と同様、無過失を要求すべきだろ
   う。」とされる。


      ★ 参考事項

    民法545条1項によれば、解除にも第三者保護規定が設けられて
   いるが、判例によれば、第三者が保護されるには登記を要するとされ
   ていることに注意!!(最判昭33・6・14 摸545条 13)。

 
  b  AB間の売買契約が詐欺を理由に取り消された後に、Bが善意のCに
  売却した場合には、Bを起点とする二重譲渡があったのと同じであるか
  ら、対抗問題となり、登記の先後で優劣を決するのが通説判例である
  (大判昭17・9・30 96条 3・177条 3)。

  しかし、現在では、94条2項類推説が有力に主張されているため、
 むしろ、この説の方が通説とも言えることに注意する必要がある。

  当該論点に立脚したオリジナル問題を末尾に掲げておく。

 
 ◎ 2について 

   他人に賃貸している土地を譲り受けた者は、その所有権の取得に
  つき登記を経ない限り、賃料不払いによる解除を賃借人に主張する
  ことはできない。(最判昭49・3・19 摸六 605条 9)
   
   土地の賃借人として賃借上に登記ある建物を有する者は、その
  土地の所有権の得喪につき、本条の第三者にあたる。(大判昭8・
  5・9 前記判例 177条 22)

   いずれの判例に照らしても、本肢において、Bは登記なくして
  賃借人Cに対抗できないという結論になる。 ×


   ★ 参考事項

   後の判例における「土地の賃借人として賃借上に登記ある建物
  を有する者」に注目されたい。

   民法605条によれば、不動産賃貸借の対抗力として登記を要
  する。したがって、旧所有者から賃借した者が新所有者に当該賃
  借権を対抗するためには、登記を要する。

   しかし、 

   建物保護法によると、土地の上に登記した建物を有するときは、
  土地の賃貸借はその登記がなくても、これをもって第三者に対抗
  することができる(このあたりまでは、本試験の射程距離だ!!)。

   以上のとおり、賃借人側から新所有者に対抗できるのかという
  視点から捉えると、賃借人に土地の賃借権の登記もなく、賃借上
  の建物の登記もない場合は、新所有者に賃借権を対抗できない。
   
   この場合、本肢3でいえば、対抗力としての登記を有しない賃
  借人Cは、民法177条の第三者にあたらないことになるので、
  Aは登記なくしてCに対抗できることになる。本肢では、Cが
  対抗力を有していることが前提になっているのだろう。

   
  
  ◎ 3について 

    何らの権原なく不動産を占有する不法占有者は、本条にいう
  「第三者」に該当せず、これに対しては登記がなくても所有権
   の取得を対抗しうる。(最判昭25・12・19 摸六 177
   条  21)

    当該判例に照らせば、本肢は○

  ★ 関連事項

  
   平成21年度記述式問題 46から。

   XはA所有の甲建物を購入したが未だ移転登記は行ってはいない。
  現住甲建物にはAからこの建物を借り受けたYが居住しているが、
  A・Y間の賃貸借契約は既に解除されている。XはYに対して建物
  の明け渡しを求めることができるか。

   【解説】

   本問におけるYは、本肢3における不法占拠者Cとは異なるが、
  賃貸借契約が解除された後も建物を占有する者であるから、前記
  判例に照らせば、何らの権原なく不動産を占有する不法占有者に
  該当するため、、民法177条にいう「第三者」に該当せず、こ
  れに対しては登記がなくても所有権の取得を対抗しうることにな
  る。

   従って、XはYに対して建物の明け渡しを求めることができる。

   本問は、記述式の解答として、判例によれば、「第三者」の
  範囲をどのように定義しているかを40字程度にまとめる作業を
  求めるものであった。

   判例(大連判明41・12・15 摸177条 20)は、
  以下のように判示する。

   本条(民法177条)の第三者とは、当事者もしくはその包括
  承継人ではないすべての者を指すのではなく、不動産物権の得喪
  および変更の登記欠缺を主張するにつき正当の利益を有する者を
  いう。

   従って、正解は、以上の文言を40字程度で表現して、呈示
  することなのであった。必ずしも容易な作業ではない。
  
   「不動産物権の得喪および変更の登記欠缺」という言葉が、手
   元に資料のない状態においては、すっとはでてこないであろう。

   一例を示せば、以下のような表現では、どうであろうか。

   第三者とは、不動産物権変動の登記を欠いていることを主張
   するのに正当な利益を有する者  
          
    41字
   


  ★  末尾 

  《問題》

   AからBに不動産の売却が行われた後に、AがBの詐欺を
 理由に売買契約を取り消したにもかかわらず、Bがこの不動
 産を善意のCに転売してしまった場合において、第三者 (C)
 の取り扱いについては、二つの立場がある。

  甲説(判例の考え方)

  「民法177条の対抗問題の視点を導入する立場」

  乙説(判例に反対する考え方)

  「民法94条2項の類推適用という手段を導入する立場」

   次の記述のうち、乙説の考え方に立つものの組み合わせ
 はどれか。

 
 ア Cがさきに登記をすれば、Aに優先する。

 イ Cが保護されるためには、登記は不要である。
 
 ウ  第三者(C)の善意・悪意や過失の有無を考慮した
   きめこまやかな調整ができる。
 
 エ Aの取り消しの時点で、BからAに所有権の復帰
    があったかのように扱うことができる。

 オ  取り消しによる復帰的変動というのは擬制であって、
  取り消しの効果である遡及効に適合しない。


 1 ア・イ・ウ   
 
 2 イ・ウ・エ   
 
 3 イ・ウ・オ

 4 ア・オ

 5 イ・エ

 
 《解説》

   この事例は、取り消し後の転売ですから、AとCは対抗関係に
  立つというのが、甲説です。
 
    しかし、近時の有力説(乙説)は、94条2項の類推適用説を
 採用します。

      売却  登記   転売
   A−−−−−−B−−−−−−C
      取り消し    94条2項
      121条    登記の外観を信頼した
     初めから無効   第三者保護

  AとBに通謀があったとは言えないため、虚偽表示が適用される
 事例とは言えませんが、「取消後に放置された実体関係に合わない
 登記の外観を信頼した第三者保護」という「権利外観法理」に従っ
 て、94条を類推適用をしようというのが、その主張の骨子です。

  以上のとおり、甲説が前者の対抗関係説ともいうべきものであり、
 後者が乙説の94条2項の類推適用説であることが明らかになりま
 した。

 

 アについて。

 AとCと先に登記した方が優先するというのは、
 「対抗問題」の甲説です。

 イについて

  94条2項の善意の第三者として保護されるには、登記
 を要しないというのが通説です。これは、乙説です。

 ウについて。

  94条2項には無過失は要求されていませんが、権利外観法理
 に従えば、無過失であることを要する、などの議論があります。
 これは、乙説です。

 エについて。

   このように、所有権の復帰(移転)があったと扱うことに
 を前提にした場合に初めて対抗問題とすることができる。
 甲説の立場です。

 オについて。

   取り消しの効果である遡及効(始めから無効)を前提にする
 のは、94条類推適用の乙説です。
 
 
 したっがて、乙説は、イ・ウ・オであり、正解は3です。

 

  ★ 参考文献

  民法 一 内田 貴著  東京大学出版会 発行 

 

---------------------------------------------------------------

   近時の民法の問題は、難化傾向にありまた事例問題としての出題である
  ため複雑化しているので、本講座においても、過去問の各肢を素材に応用
 力を養成するようにこころがけた。

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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

 【運営サイト】http://examination-support.livedoor.biz/
       
 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
 ▽免責事項:内容には万全を期しておりますが、万一当サイトの内容を
       使用されたことによって損害が生じた場合でも、
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         ★ 過去問の詳細な解説  第86回  ★

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                        PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 会社法

    【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
     本年9月末頃を目途に、過去問の分析に加え、近時の傾向も取り
  入れた「オリジナル模擬試験問題」(有料)を発行する予定をして
   います。
     とくに、関連部分に言及した解説にも力を込め、よりよいものを
   目差して、目下準備中です。

  《以上の予告につきまして、やむなく10月にずれ込みましたが、
 もう間もなく、発行いたしますので、よろしくお願いいたします。》

 

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 ■ 平成18年度・問題39
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  

   会社の合併に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものの組合せは
 どれか。


  ア 会社が合併するには、各当事会社の株主総会の特別決議による承認
    を要するが、存続会社に比べて消滅会社の規模が著しく小さい場合に
    は、各当事会社は株主総会を省略することができる。

  イ 合併の各当事会社は、会社債権者に対して、合併承認に異議があれ
  ば一定の期間内に述べるように官報に公告し、かつ電子公告した場合
  であっても、知れたる債権者には個別催告する必要がある。

  ウ 合併決議前に反対の意思表示をし、かつ合併決議に反対した株主は、
  合併承認決議が成立した場合には、株式買取請求権を行使することが
    できる。

  エ 会社の合併が違法である場合に、各当事会社の株主、取締役等、また
    は合併を承認しなかった債権者は、その無効を合併無効の訴えによって
  のみ主張することができ、合併無効の判決が確定した場合には、将来に
    向かってのみその合併は無効となる。

  オ 会社の合併により、消滅会社の全財産が包括的に存続会社に移転する
    ため、財産の一部を除外することは許されないが、消滅会社の債務につ
    いては、消滅会社の債権者の承諾が得られれば、存続会社は消滅会社の
    債務を引き継がないとすることも可能である。

 
  1 ア・エ

   2 ア・オ

  3  イ・ウ

  4  イ・エ

  5  ウ・エ
   

 
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 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

     会社法  神田 秀樹 著   株式会社 弘文堂

 
 ◆  各肢の検討

 
  ○ 肢アについて

    会社の合併とは、2つ以上の会社が契約によって1つの会社に
     合体することである(会社法748条参照)

    その2つの場合

    ★  吸収合併(2条27号)
   
     当事会社の一つが存続して他の消滅する会社を吸収する場合

    ★ 新設合併(2条28号)

        当事会社のすべてが消滅して新しい会社を設立する場合

   
   本肢では、存続会社と消滅会社が対比されているのであるから、
    吸収合併が問題にされていいる。

     この場合、消滅会社・存続会社いずれにおいても、合併契約で
   定めた効力発生日の前日までに、各当事会社において、株主総会
   の特別決議を得ることを要する(消滅会社は783条・存続会社
   は795条・特別決議は309条2項12号)。

   しかし、略式合併・簡易合併の場合には、当事会社の一方におい
  て、総会決議は不要であるが、

     本肢に記載してある「存続会社に比 べて消滅会社の規模が著しく
   小さい場合には」、各当事会社において、総会決議不要とする規定
   は、会社法上存在しない。

   したがって、本肢は正しくない。


--------------------------------------------------------------
 
      吸収合併については、存続会社ないしは消滅会社の株主総会が
  ・・
  省略されることがあることが知るに止め、以下の細かい仕組みは、
  ・・
  省略してもよいのかもしれぬ。

   なお、新設合併においては、株主総会の決議省略はない(804
    条1項)。
 

 ◎ 参考事項

   略式合併とは?

    存続会社が特別支配会社である場合には、吸収合併の消滅
   会社において、株主総会決議不要(784条1項本文)


    消滅会社が特別支配会社である場合には、吸収合併の存続
      会社において、株主総会決議不要(796条1項本文)

     
     なお、いずれにおいても、その例外があって、総会決議を
        省略できない場合があるが、その場合には言及しない(784
    条1項ただし書・796条1項ただし書)。

      注 特別支配会社とは90%の親会社等を意味する(468条
    1項 参照)


      簡易合併とは?

    吸収合併の存続会社において総会決議不要
 
    すなわち、合併対価の額(簿価)が存続会社の純資産額の20
   パーセント以下の割合の場合において、存続会社の総会決議不要
   とされている(796条3項・これにも総会決議を省略できない
   例外がある796条3項ただし書)。

 -------------------------------------------------------------------

  
  ○ イについて
         

   合併の各当事会社は、会社債権者異議手続を行う(吸収合併の消滅
  会社は789条・存続会社は799条・新設合併の消滅会社は810
  条)。

   その手続において、各当事会社は、異議のある債権者は一定の期間
  内に述べるように官報に公告し、「知れている債権者」には格別に催
  告しなければならない(789条1項、2項・799条1項、2項・
  810条1項、2項)。

   ただし、官報に加えて日刊新聞による公告または電子公告をも行っ
  た場合には知れている債権者に対する個別催告は不要である(789
  条3項・799条3項・810条3項《平成16年改正≫)。

   本肢は、最後尾の記述に反するので、正しくない。
   
      しかし、私は、本肢に関しては、他の重要論点を外し、細かいこと
  を問うているという印象を有する。
  

   ○ ウについて

   反対株主には株式買取請求権が認められる。その要件は、本肢記載の
  とおりである(吸収合併の消滅会社785条2項1号イ、存続会社は
  797条2項1号イ、新設会社の消滅会社は806条2項1号)。

   本肢は正しい。


  ○ エについて

   「・・合併手続に瑕疵があれば、本来であれば無効であるが、その
    解決を一般原則にゆだねると法的安定性を害するので、会社法は、
       合併無効の訴えを用意し、合併無効の主張を制限する一方、無効
       の効果を画一的に確定し、その遡及効を否定する」(前掲書)。

     828条は無効事由を明記していないが、重大な手続違反が
        無効事由になると解されている(前掲書参照)。

     本肢は、単に「会社の合併が違法である場合」としていて、
        この点、疑問であるが、とくにこだわらないことにする。

         原告適格は、一定の者に限られるが(828条2項7号・8号)、
    各当事会社の株主等、本肢に掲げられた者はすべて含まれる。

    無効判決の効果として、第三者にも効力が及ぶ(対世効)と同時
      に遡及効が否定される(838条・839条)。 したがって、
   その効果としては、将来に向かってのみ生じる。

    以上の記述に照らすと、本肢は正しい。

  
  ○ オについて

    本問は、消滅会社の財産が存続会社に移転するとしているので、
      吸収合併の問題である。

    合併により存続会社は消滅会社の権利義務を包括的に承継する
       (750条1項)。したがって、消滅会社の権利義務はすべて一括
   して法律上当然に移転し、個々の権利義務について個別の移転行為
   は不要である。契約によりその一部について移転を留保することは
      できない(前掲書)。

    したがって、存続会社は消滅会社の債務を引き継がないとする
   ことはできないので、本肢は正しくない。


   ◎  参考事項

    新設合併においても、新設会社は消滅会社の権利義務を包括的に
      承継する(754条1項)ので、同様に、新設会社が消滅会社の債務
      を引き継がないとすることはできない。

      
    この債務引き継ぎについて、事業譲渡ではどうなるかを考察してみよ
   う。サイト81回の復習となる。

    事業譲渡の場合には、事業に属する個々の資産については個別に
   移転手続をする必要があり、債務を移転する場合、免責的債務引受
   けとするためには、一般原則に従って債権者の承諾が必要である。
    存続会社が、包括的に消滅会社の債務を承継するのとは、根本的
      に異なる。

    また、以上のような債務引受けがなされなかった場合でも、譲渡
      会社の商号を使用した場合、その譲受会社も債務を引き継ぐが、この
      場合であっても、当然に譲受会社の責任が消滅するのではない(22
      条1項・3項なお、23条1項・2項)。

   《以上のように、各事項に連動性を持たせ、体系的理解に努めよう
        とするのが、本講座の目的でもある≫

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー   
 
  以上によれば、ウとエが正しいので、正解は5である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ◆ 付 言

  会社の合併には、吸収合併と新設合併があり、各肢において、いずれ
 の場合を問題にしているのか、ないしは、いずれかを問わず、共通の問
  題としているのかという観点も大切である。

  アとオは、吸収合併 ・ イとウとエは、共通。


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          ★ 過去問の詳細な解説  第83回  ★

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 ■ 平成21年度 問題 29
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
    Aに対して債務を負うBは、Aのために、自己が所有する土地に抵当
  権を設定した(他に抵当権者は存在しない)。この場合における抵当権
  の消滅に関する次のア〜オの記述のうち、民法の規定および判例に照ら
  し、妥当なものの組合せはどれか。

  
  ア  Aの抵当権が根抵当権である場合において、Bが破産手続開始の
     決定を受けたときは、被担保債権は確定して満足し、根抵当権は確
     定的に消滅する。

 イ Aの抵当権が根抵当権である場合において、元本が確定した後に、
  Bから土地の所有権をCが、極度額に相当する金額をAに支払い、
  根抵当権の消滅請求をしたときは、確定した被担保債権の額が極度
    額を超えていたとしても、Aの根抵当権は、確定的に消滅する。

  ウ BがAに対し、残存元本に加えて、最後の2年分の利息および遅
  延損害金を支払った場合には、Aの抵当権は、確定的に消滅する。

  エ  第三者Cが、土地の所有権を時効によって取得した場合には、A
    の抵当権は、確定的に消滅する。

  オ  第三者Cが、BのAに対する債務の全額を弁済し、その弁済と同
    時にAの承諾を得ていた場合には、CはAに代位することができる
    が、抵当権は、確定的に消滅する。

 
  1 ア・ウ

    2 ア・エ

  3 イ・エ

  4 イ・オ

  5 ウ・オ

 
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    民法 1 勁草書房


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      A

   ↓  抵当権
  
   土地 B所有
---------------------------------------------------------------

  
 ◆ 各肢の検討

  
   ● 肢アについて

      民法398条の20第1項第4号によると、当該事由は、根抵当権
    の元本の確定事由となる。

     本件根抵当権の債務者であり、根抵当権設定者であるBが破産手続
   開始の決定を受けているからである。

   しかし、その効果として、根抵当権が確定的に消滅するのではない。

  「根抵当権の確定とは、その時点において存在する元本だけが担保
   され、その後に生ずる元本は担保されなくなること、根抵当権が
   いわば流動性を失い特定の債権を担保するものとなることである。」
  (前掲書)。

     本肢は、妥当でない。

  ● 肢イについて  
 
    民法第398条の22第1項の規定する根抵当権の消滅請求のとおり
   であり、妥当である。

  
    ☆ 参考事項
  
    本肢は第三取得者の例であるが、同条同項によれば、他に物上
   保証人・賃借権を取得した者も消滅請求できる。

   それでは、次の場合はどうであるか。

    AがBに対し、根抵当権を設定する以前において、Bから当該土
    地を賃借したCが、その土地の上に登記した建物を有しているとき
  は、元本確定後、消滅請求できるか。

   この事例は、同条同項で規定される「第三者に対抗することがで
   きる賃借権を取得した第三者」に相当するので、消滅請求可である。
 
   建物保護ニ関スル法律によると、土地の賃借人がその土地の上に
   登記した建物を有するときは、土地の賃借権はその登記なくても、
   これをもって第三者に対抗できるのである。

    この建物保護法までは、射程距離であろう。

         
   ● 肢ウについて
 
     民法375条の規定は、後順位者に対して、優先弁済を主張する
  場合の制限であるから、他に抵当権者が存在しない本肢の場合には、
    最後の2年分の利息および遅延損害金に限らず、残存元本に加えて、
  全額を弁済しなければ、Aの抵当権は確定的に消滅しない。

   本肢は妥当でない。

   これは、設問の(他に抵当権者は存在しない)という記述が、
   伏線として、きっちりと利いている。


   ● 肢エについて

    民法397条によれば、債務者または抵当権設定者以外の者が、
   抵当不動産について取得時効に必要な条件を具備する占有をした
   ときは、抵当権はこれによってこれによって消滅する(前掲書)。

   したがって、第三者Cが土地の所有権を時効によって取得した
  場合には、Aの抵当権は、消滅する。

   本肢は、妥当である。

   なお、以下の記述に注意。

     抵当権が消滅するのは、「取得時効は原始取得として完全な所有権
   を取得させるものだからである。債務者および抵当権設定者について
   この原則を制限したのは、みずから債務を負担し、またはみずから抵
   当権の負担を受けた者について取得時効による抵当権の消滅を認める
   のは不穏当だからである」(前掲書)。

   したがって、債務者が物上保証人所有の不動産を時効取得したと
   したとしても、抵当権は消滅しない。

  ☆ 参考事項

   その他、抵当権が独立に時効消滅する例として、次のオリジナル
  問題の肢と解答を参考にされたい(有料メルマガから転載)。

  (事例は本問と同様)

   Aの債権が、時効中断により20年経過しても消滅時効にかから
  ない場合、Bから土地の所有権を取得したCが、20年後に抵当権
  の消滅時効を援用したときは、抵当権は確定的に消滅する。

   ≪解説≫

  Aの債権が、10年で時効消滅すれば(民法167条1項)、
 これを担保するAの抵当権も消滅する。しかし、時効中断により
 (民法147条)20年以上に時効期間が延びた場合、396条
  の適用を受ける。
 
   その解釈としては、以下のように解される。
 
    債務者・抵当権設定者以外の抵当不動産の第三取得者・後順位抵当権者
   との関係では、抵当権は債権から独立して20年の消滅時効にかかる。
  (大判昭和15・11・26)
  
   20年の根拠は、民法167条2項。
 
   本肢では、Bは第三取得者に該当するので、本肢は正しい。

   
  ● 肢オについて

     本肢では、Cは、弁済と同時にAの承諾を得ているので、民法49
     9条 により代位できる。
 
     弁済による代位の効果として、その債権の効力および担保として
   債権者の有する一切の権利が、求償権の範囲内において、代位弁済
     者に移転する(民法501条)。

     したがって、本肢では、Aの抵当権は、Cに移転するので、確定
   的に消滅しない。

       本肢は妥当でない。

      なお、「弁済をするについて正当な利益を有する者」の弁済の場合
  には、債権者の承諾を得なくても当然に法定代位をする(民法500条
  ・同499条参照)ことにに注意。

     したがって、たとえば物上保証人・抵当不動産の第三取得者・
  保証人・連帯保証人などについては、債権者の同意がなくても代位
  する。

-------------------------------------------------

   妥当であるのは、イとエであるから、正解は、3である。

-------------------------------------------------


 ◆  付 言

    本問では、設問によれば「・・判例に照らし」となっているが、
  いずれの肢も、条文の忠実な解釈によって、正解が得られる。

 

 


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