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        ★  【過去問/応用問題・解説 第110回 】  ★

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                      PRODUCED BY 藤本 昌一
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 【テーマ】 民法 無権代理人の責任/取消し

        
 【目 次】 過去問/総則・応用問題 解説
              

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 ■ 平成25年度 過去問 問題 45 《記述式 》
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 問題

  Aは、Bに対し、Cの代理人であると偽り、Bとの間でCを売主と
 する売買契約(以下、「本件契約」という。)を締結した。ところが、
 CはAの存在を知らなかったが、このたびBがA・B間で締結された
 本件契約に基づいてCに対して履行を求めてきたので、Cは、Bから
 その経緯を聞き、はじめてAの存在を知るに至った。他方、Bは、本
 件契約の締結時に、AをCの代理人であると信じ、また、そのように
 信じたことについて過失はなかった。Bは、本件契約を取り消さずに、
 本件契約に基づいて、Aに対して何らかの請求をしようと考えている。
 このような状況で、AがCの代理人であることを証明することができ
 ないときに、Bは、Aに対して、どのような要件の下で(どのような
 ことがなかったときにおいて)、どのような請求をすることができる
 か。「Bは、Aに対して、」に続けて、下線部について、 40 字程
 度で記述しなさい(「 Bは、Aに対して、」は、40字程度の字数
 には入らない)。

 Bは、Aに対して、


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■ 解説
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 ●  条文

  (無権代理人の責任)
   
  第117条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を
   証明することができず、かつ、本人の承認を得ることができなか
   ったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害
      賠償の責任を負う。
  2 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有
   しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知
   らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能
   力を有しなかったときは、適用しない。
  
    ● 問題文の事例の図示


  以下の「本人」「相手方」は条文の用法による。
  
  同条2項の「他人の代理人として契約をした者が代理人を有しない
  ことを相手方をが知っていたとき、若しくは過失によって知らなか
  ったとき」に該当しない場合を以下において《善意・無過失》とし
  て、表示した。
  
 
   「本人」      無権代理人       「相手方」
                                            《善意・無過失》                                                    
   C=========A==============B
    ←--------------------------------------------→
   売主    売買契約(本件契約)          買主

 
  ●  本問の検討

  1 本問は、無権代理人の責任を規定する117条の規定を熟知し
   ていることを前提に、問題文の事例を117条に当てはめる作
   業(117条の解釈)を要求している。最初に、問題文の内容
   を順次、検討する。

   第1に、問題文をみると、本件契約がAの無権代理行為である
  ことは「Aは、Bに対し、Cの代理人であると偽り、Bとの間で
  Cを売主とする売買契約(以下、「本件契約」という。)を締結
  した。ところが、CはAの存在を知らなかった・・」という文言
  によって、明瞭に示されている。

   第2に、問題文によると、「Bは、本件契約を取り消さずに、
   本件契約に基づいて、Aに対して何らかの請求をしようと考えて
    いる」とあるが、この文言によって、Bは、115条による無権
  代理の相手方の取消を利用しないで、Aに対して、117条の無
  権代理人の責任を追求しようとしていることが明らかになる。

      第3に、117条は、Aが無権代理人の責任を負う要件として
  以下のとおり、定めている。

   その(1)は、Aが自己の代理権を証明できるときないときであ
  るが(117条1項)、問題文では、「AがCの代理人であること
  を証明できない」とあるので、これに該当する。

   その(2)としては、117条2項によれば、は、Bが善意・無
  過失でなかったときは、同条1項を適用せず、Aは責任を負わない
  ことになるが、、問題文では「Bは、本件契約の締結時に、AをC
  の代理人であると信じ、また、そのように信じたことについて過失
  はなかった」とあるので、Bが善意・無過失であったことにより、
  Aは無権代理人の責任の責任を負う。

  2 以上の問題文を前提として、本問の設問に応じて、前記以外の
   Aが無権代理人の責任を負う要件を検討すると、条文上二つ存在
   することが分かる。
    第1は、「本人の追認を得ることができなかったとき」(11
   7条1項)である。
    第2は、117条2項によれば、無権代理人が「行為能力を有
   しなかったときは」同条1項を適用しないことにより、責任を負
   わないことになるので、無権代理人が行為能力を有していること
   が、無権代理人が責任を負う要件になる。

 ● 本問の解答

   既述したことの理解があれば、本問を正解に導くことができるが、
  文言の修正など整理すべきことがある。ポイントは、二つある。

    第1は、設問では、要件として、(どのようなことがなかったとき
 において)という文言がわざわざ提示されていることからすると、本
 人の追認がないという要件は、いわば積極的要件であるから、そのま
 ま記載しても差し支えない。しかし、無権代理人が行為能力を有して
 いることは、いわば消極的要件であって、解答としては、「なかった
 とき」という否定形に改めなくはならない。ここが、本問の一番難し
 いところだ!行為能力を有しているということは、制限行為能力者で
 ないということである(20条参照・私に誤解がなければ、民法上、
 制限行為能力者の定義があるのは、当該条文のみだと思う)。従っ
 て、解答欄では、この表現を用いるのが適切であると思う。

  第2は、117条1項の無権代理人の責任は、履行又は損害賠償の
 責任であるが、設問では、相手方から無権代理人に対する請求という
 表現にしなくてはならない。


  したがって、解答例としては、つぎのようになる。
   

  Cの追認がなく、Aが制限行為能力者でなかったときは、履行
  または損害賠償の請求をできる。

     
     43字


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■ 総則・応用問題 解説
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  BがAに騙されてAから絵画を購入し、これをCに転売した場合、B
 がAの詐欺を理由としてAとの売買契約を取り消すことができないのは、
 どのような場合であって、これは何と呼ばれるかについて、40字程度
 で記述しなさい。
 
 
  ● 該当条文の摘出

  (追認の要件)

  124条1項 追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した
   後にしなければ、その効力を生じない。

  (法定追認)
 
  125条 前条の規定により追認することができる時以後に、取り
      消すことができる行為について次に掲げる事実があったと
      きは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめた
      ときは、この限りでない。  
   
   5号 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又
     一部の譲渡

 ● 図示

    騙されて絵画の購入   絵画の転売
   A------------------B-------------------C

 ● 本問の検討

  (1)BはAに騙されて絵画を購入したのであるから、96条の適
    用により、Bは、詐欺による意思表示を取り消すことできるの
    で、当該売買契約を取り消すことができる。

  (2)しかし、125条5号によって、絵画を転売した後は、追認
    したものとみなされるので、以後取り消すことができない(1
    22条参照)。しかし、ここでは、125条柱書は、考慮しな
    いことにする。

  (3)ただし、125条は、124条の規定により追認することが
    できる時以後に、取り消すことができる行為によって取得した
    権利の譲渡であったときは、追認をしたものとみなすとしてい
    る。本問は、詐欺の事例であるから、124条に関しては、同
    条1項の適用を受けることになる。

  ● 本問の解答

   本問では、BがCに転売した行為が125条の規定する法定追認
  に該当することを前提にして、「BがAの詐欺を理由としてAとの
  売買契約を取り消すことができないのは、どのような場合」かが問
  われているのだから、転売の時に焦点を合わせる必要がある。すな
  わち、124条1項の規定を表現することが重要になる。
   併せて、「これは何と呼ばれるか」という設問については、「法
  定追認」を明記する必要がある。     

   以上の考察にしたがって、解答例を示すと、

   ◆ Bが、Aの詐欺の状況が消滅した後、絵画をCに転売した
     場合であって、法定追認と呼ばれる。

   なお、124条1項の「詐欺の状況が消滅した後」というのは、
  具体的には、詐欺による意思表示した者が詐欺を知った後を意味
  するので(後掲書 民法 一 参照)、これを表すと、以下の解
  答例になるであろう。


     ■ Bが、Aの詐欺を知った後に絵画をCに転売した場合であ
     って、これは、法定追認と呼ばれる。

    
    ※ ちなみに、字数はともに43である。


 ● 参考事項

  本問は、平成23年度問題27肢イを基に作成したものであるが、
 本肢を解説した書物などでは、、私のみる範囲においては、論点を
 適確に把握して解説を行っているものに、遭遇しなかった。私の以
 上の個人的体験が、当該オリジナル問題の作成動機になっている。

 
 ★ 参考書籍 
  
  民法一・二・三 内田 貴 著・東京大学出版会
   
   民法1・2・3 我妻榮/有泉亨/川井健 著・勁草書房 


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 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
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            ★  【過去問解説第106回 】  ★

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  【テーマ】 行政法=行政契約

  【目 次】 過去問・解説
              
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 ■ 平成24年度・問題9
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   行政契約に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。見解が
 分かれる場合は、最高裁判所の判例による。

 1 行政契約でも、その内容が国民に義務を課したり、その権利を
   制限するものについては、法律の留保の原則に関する侵害留保理
   論に立った場合、法律の根拠が必要であると解される。

 2  地方公共団体が、地方自治法上、随意契約によることができな
   い場合であるにもかかわらず、随意契約を行ったとしても、かか
   る違法な契約は、私法上、当然に無効となるものではない。

 3 地方公共団体がごみ焼却場を建設するために、建設会社と建築
  請負契約を結んだ場合、ごみ焼却場の操業によって重大な損害が
   生ずるおそれのある周辺住民は、当該契約の締結行為について、
   当該地方公共団体を被告として、抗告訴訟としての差止めの訴え
   を提起することができる。

 4  地方公共団体の長が、指名競争入札の際に行う入札参加者の指
  名に当たって、法令の趣旨に反して域内の業者のみを指名する運
  用方針の下に、当該運用方針に該当しないことのみを理由に、継
  続して入札に参加してきた業者を指名競争入札に参加させない判
  断をしたとしても、その判断は、裁量権の逸脱、濫用には当たら
  ず、違法ではない。

 5   地方公共団体が、産業廃棄物処理施設を操業する企業との間で、
  一定の期日をもって当該施設の操業を停止する旨の公害防止協定
  を結んだものの、所定の期日を過ぎても当該企業が操業を停止し
  ない場合において、当該地方公共団体が当該企業を被告として操
  業差止めを求める訴訟は、法律上の争訟に該当せず、不適法であ
    る。

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 ■  解説 
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  ★  参考文献

  行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著

    ・有斐閣発行


 ■ 本問の位置づけ

    平成24年度過去問においては、行政法の分野においては、本問
 のほかに、最高裁判所判例と関連付けて、「行政法における信頼保
 護」(問題8)・「行政裁量」(問題26)という大きなテーマの
 出題が行われている。本問もまた、その趣旨に副った出題である。

  したがって、今後とも類似の問題が出題される蓋然性は高いと
 予測されるので、その対策として、本問を通じて、解答の要領を
 取得する必要がある。

  なお、「行政法における信頼保護」については、当サイト10
 2回において解説を行ったが、「行政裁量」については、同じく
 当サイト欄において、将来、折りをみて、解説を行うつもりであ
 る。
 
 
 ■ 本問のポイント

     肢2に注目。

  行政契約に関する肢1〜5の記述すべてについて、正しいか
 どうかの判断を適確に行うことは、かなり困難なことである。

  本問に関していえば、一般的な教科書で説明されている最高
 裁判所判例(昭和62年5月19日判決・民集41巻4号68
 7頁)の知識があれば、肢2の記述が正しいことが即座にわかる
 のであるから、今後とも、普段の本試験の準備段階において、教
 科書に載っている主要判例にはできるだけ目を通しておいて、本
 試験当日において、その判例知識が、頭の隅に留まっているよう
 に心がけたいものである。

   
 ■ 各肢の検討
  
  
 ○ 肢1について。

  侵害留保説・行政契約に関する基礎知識があれば、本肢が
 正しくないことが判明する。

 (1)侵害留保説とは、国民の権利や自由を権力的に侵害す
   る行政についてのみ法律の根拠を必要とする説であるの
    で、その妥当する分野は、権力的行政である。

 (2)これに対して、行政契約とは、行政(国・公共団体)
   が一方の当事者となって締結される契約である。非権力
   的法行為である。
  
   《読本54頁・177頁参照》
 
 (3)以上から導かれる帰結は、侵害留保説によれば、非権
   力的公行政行為である行政契約には、法律の授権は必要
   ない。このような非権力的公行政についても法律の授権
   を要するとする説は、公行政留保説である(読本55頁)。

   したがって、以上の記述に反する本肢は正しくない。

  
  ※ 参考事項

    (a)行政契約でも、その内容が国民に義務を課したり、
        その権利を制限するものについては、法律の授権を要
        するものもあるというのは、通説であるが、しかし、
        前述したとおり、侵害留保説によるかぎり、この場合
        でも法律の授権を要しないことになるのである。その
        ことに混乱を生じないことが、肝要である。
   
   (b)少々我田引水になるが、私の散見した範囲では、市販
      の解説書では、(a)に記載した混乱を脱して、侵害留
      保説の定義から導かれる当該自明の理について、明確に
      記されたものはなかった。

      (c)ついでに言っておくと、行政契約の内容よっては、強
     制の度合いの強いものは、法律の授権を要するという
     通説を疎外するのが、侵害留保説となるが、そういった
     定義ひいては理論が硬直した固定観念を生む危険をつと
     に主張されたのが故小林秀雄氏だった。


 ○ 肢2について。

    前記最高裁判所判例(昭和62年5月19日判決・民集
   41巻4号687頁)は、地方公共団体の行政契約の手続
   に関して、つぎのとおり判示した。

    入札手続をとるべきであるにもかかわらずこれをとらず
   随意契約によった公有財産の売却契約は、法令の規定の趣
   旨を没却する特段の事情がない限り、私法上無効ではない。

       本肢は、当該判例に照応するものであるから、正しいこと
   は、歴然としている。

  
  ※ 参考事項

  (a)一般的にいって、取締法規に違反した取引は無効ではな
     いとするのが最高裁の判例だという認識があれば、かりに、
     前記判例知識がなくても、本肢が正しいという結論を導く
     ことができるかもしれない。

  (b)本肢に関しては、その前提として、次のような知識の取
    得が要請される。
     地方自治法234条1項・2項によれば、「原則は一般
    競争入札であり、指名競争入札、随意契約、せり売りは政
    令に定めがある場合にのみ許される。
     しかし、一般競争入札は面倒な手続であるから行政とし
     ては指名競争入札や随意契約をとりがちである。」《読本》

     なお、それぞれの各手続の内容については、過去問平成
    19年度問題24を参考にするとよい。

     その肢1では「指名競争入札とは、・・政令に特段の定
    めのない場合にはこの方法によるものとされる」とあるが、
    前述したところにより、当該記述に相当するのは、一般競
    争入札であって、本肢は誤りであって、本肢が正解となる
    (このような過去問との連動関係を尊重する勉強≪研究≫
     方法を私は、芋づる方式と呼ぶ)。
  
  (c)関連する判例(平成昭和62年3月20日判決・民集41
    巻2号189頁)

         地方自治法施行令によると

     地方公共団体が随意契約よることのできることの要件の一
    つとして、以下のように定める。

      契約の性質又は目的が競争入札に適しないこと

    最高裁判所は、以下の場合、当該要件に該当すると判断した。

    「競争入札の方法によること自体が不可能又は著しく困難と
    は いえな」くとも随意契約の方法をとることが「当該契約の
       性質に照らし又はその目的を窮極的に達成する上でより妥当
       であり、ひいては当該地方公共団体の利益の増進につながる
       と合理的に判断される場合」

       《以上は、読本183頁参照)

     以上、本肢の判例では、法令違反の随意契約について、当該
    随意契約によった公有財産の売却契約は、特段の事情がない限
    り、私法上無効ではないとした。
     同時に前記関連判決では、法令で定める随意契約によること
    のできることの要件自体をゆるやか解釈することを認めたとい
    える。

 
    ○ 肢3について。

       地方公共団体が建設会社と結んだ建設請負契約は抗告訴訟の対象
   にならないため、当該契約の締結行為に対して、第三者である周辺
   住民は、行政事件訴訟法3条7号の抗告訴訟としての差止めの訴え
   を提起できない。以上の考え方は、当該行為について「処分」性を
   否定した最高裁判例(昭和39年10月29日民集18巻8号18
   09頁ー東京都ごみ焼却事件判決)に副うものである。

    ここでいう「処分」性については、種々の議論があるようである
   が、本肢については、以上の正確な知識があればよしとして、これ
   以上深入りしない。

    以上の記述に反する本肢は、正しくない。

 
   ○ 肢4について。

       本肢については、判例(最判平18・10・26判時1953−
  122)があって、それによれば、「指名競走入札に長年指名を受
    けて継続的に参加していた建設業者を特定年度以降全く指名せず参
    加させなかった措置の理由として、上記業者が域外業者であること
    のみである場合は違法である」とするものである。
 
   本肢は、当該判例に基づくものと思われるが、その記述内容が必
  ずしも明確でないこと、さらに一般に疎遠と思われる当該判例の知
  識まで要求されることに違和感があるが、常識に照らして、本肢は
  正しくないと判断せざるを得ないでろう。

  
  ○ 肢5について。

     行政契約の一つとしての公害防止協定は、事業者に対しては安全
  確保などのため義務を課することになるが、違法操業に対して、当
  該協約の当事者の一方である地方公共団体が訴訟で操業差止めなど
  の法的措置を求めることができるかという問題がある。
  しかし、協定は、行政処分ではないため、行政上の強制執行はで
 きないので、民事訴訟を提起せざるを得ないが、当該訴訟が、法律
 上の争訟に該当するかが、さらに問題となる。

  本肢は、以上の問題点を提起した記述であるが、公害防止協定に
  は、契約としての効力があるとして、当該協定に基づく義務の履行
 を求める訴訟を認めたのが最判平成21年7月10日判決のようで
 ある。

  したがって、当該訴訟が不適法であるとする本肢は、以上の記述
 に反するので、妥当でない。

  なお、細かい当該判例知識がないのは、一般的にいって極めて普
 通のことであるから、以上のような訴訟が認められなければ、「協
 定は法的意味を失うであろう」(読本183頁)という法常識(私
 は、これをリーガルマインドと呼びたい)があれば、本肢は正しく
 ないという判断が即座に可能となるであろう。

 ※ 参考判例

 ● 国または地方公共団体がもっぱら行政権の主体として(つまり
   公権力の行使の主体として)行政上の義務の履行を求める訴訟は、
  そういったことを認める特別の規定がない限り許されない(最判
  平14年7月9日民集56巻6号1134頁。いわゆる「宝塚パ
  チンコ条例事件判決」)。《入門173頁》

 ● 本件は、「ある市が、パチンコ店の建築に着手した者に対して、
  条例に基づき建築工事中止命令を発したが、相手方がそれに従わ
  なかったので、さらに工事の続行の禁止を求めて裁判所に出訴し 
  た事件」である。「市としては、法律上も条例上も、行政上の
  強制執行(この事件の場合は直接強制か執行罰)、刑罰、行政
  的措置のいずれも認められていなかったので、最後の手段とし
  て訴訟を提起したのであるが、最高裁判所は、・・現行の法律
  には「特別の規定」が存在しないことを認定して、理屈抜きで
  一刀両断的にこの訴訟が「法律上の争訟」に当たらないとした
  のである(読本141頁以下)。

 ● 「学説。判例は、従来一般に、行政庁であっても、行政法上の
  強制執行手段がないばあいには、私人とおなじように、通常の
  民事執行の手続によって、裁判所の手を借りた強制執行をする
  ことができるのだ、と考えてきました」が、最高裁判所は当該
  判決によって、これを覆したのである(入門173頁)。

 ● 当該判決によると、「訴訟で義務の履行を強制できるのは財
  産上の義務だけである」(読本184頁)ということになる。

  《当該判決は、大きな議論を招いた有名なものであるので、理
   解が深められるように、参考図書から該当箇所を引用し、列
   記した》

-------------------------------------------------------------
 
 ◆ 以上の参考判例に対して、本肢の判例では、本件公害防止協
  定(行政契約)については、義務の履行を求める訴訟が認めら
  れたので、裁判所による強制執行が行われることになる。

  私の記憶では、当該参考判例もまた、いずれかの過去問で出題
 されていたように思う。もし、私の記憶に誤りがあったとしても、
 当該判決は、将来の本試験で出題される可能性大であるといえる。
  そういう観点に立った場合、以上で述べた「本肢と参考判例の
 対比」もまた、前述した、過去問の連動関係を尊重する芋づる方
 式勉強方法に相当するであろう。

--------------------------------------------------------------

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  以上によれば、本問の正解は、肢2である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ★ 付 言


  私は、本問の解説には、丸3日間を要したのであり、みなさま
 の熟読を祈念いたします。


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 【発行者】 司法書士藤本昌一
 
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            ★ 過去問の詳細な解説  第81回  ★

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      問題・解説

    【ピックアップ】     
 
     本年9月末を目途に、過去問の分析に加え、近時の傾向も取り
  入れた「オリジナル模擬試験問題」(有料)を発行する予定をし
   ています。
     とくに、関連部分に言及した解説にも力を込め、よりよいもの
   を目差して、目下準備中です。

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 ■ 平成21年度 問題39
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   株式会社の事業譲渡に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なものの
 組合せはどれか。

 
   ア 事業譲渡を行う場合には、譲渡会社と譲受会社との間で、譲渡
   する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項を包括
     的に定めた事業譲渡契約を締結しなければならない。

  イ 譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、譲受会
    社は、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負い、
    譲渡会社は当該債務を弁済する責任を免れる。

  ウ 譲渡会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村
    の区域内およびこれに隣接する市町村の区域内においては、その事
  業を譲渡した日から20年間は、同一の事業を行ってはならない。

 エ 会社がその事業の全部または重要な一部の譲渡を行う場合には、
    譲渡会社において株主総会の特別会議による承認を要するが、譲渡
    する資産の帳簿価格が譲渡会社の総資産の額の五分の一を超えない
  ときは、株主総会の承認は不要である。

 オ 会社が他の会社の事業の全部または重要な一部を譲り受ける場合
    には、譲受会社において株主総会の特別決議による承認を要するが、
  譲受会社が対価として交付する財産の帳簿価格の合計額が譲受会社
  の総資産の額の五分の一を超えないときは、株主総会の承認は不要
    である。

  1 ア・イ

    2  ア・オ

    3 イ・ウ

    4 ウ・エ

    5 ウ・オ 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ◆  参考文献

   会社法   神田 秀樹著   弘文堂


  ◆ 総説

    会社法21条〜24条は、事業譲渡に関する取引法的側面について
    規整を設けているが、組織法的側面[株式会社]については467条〜
   470条に規整が置かれている(前掲書)。

      本問は、両側面に関し、主に、条文を中心とした出題となっている。

 
  ◆ 各肢の検討

   ○ アについて

     事業譲渡の場合には、事業に属する個々の資産については個別に
   移転手続(第三者対抗要件の具備を含む)をする必要がある(不動
   産の登記や指名債権の対抗要件具備など)。また、債務を移転する
   場合、免責的債務引受けとするためには、一般原則に従って債権者
   の承諾が必要である(前掲書)。

   以上のとおり、事業譲渡は、個別の移転手続によって行われるの
   である。
   その根本的理由は、会社法が、事業譲渡を行う場合に、「・・
   権利義務に関する事項を包括的に定めた事業譲渡契約を締結しな
   ければならない」と定めていないからである。

  したがって、本肢は妥当でない。

   本肢は、事業譲渡の本質的理解を問うものだ!

  ☆ 参考事項

   それでは、株主総会の特別決議を要する(後述)この事業譲渡
    と「営業でない財産の譲渡」をどういう基準で区別することにな
    るのだろう。少なくとも、現象的には、両者とも、個別的な移転
    手続だからである。

   その基準は、「譲渡会社の営業が遂行できなくなるかどうか」と
   いう観点からなされる。このような当事者の意思に基づく「相手方
   からわからない事情で(株主総会の特別)決議の要否をきめるのは
  法律関係の明確性と取引の安全を害する」。

     このような観点から、判例は、会社法467条にいう株主総会の
   特別決議を要する(309条2項11号)事業譲渡について、一つ
   の基準を設ける。

  すなわち、

      判例(最大判昭和40・9・22・・)は、旧法において、営業の
    譲渡と呼ばれていたときに、商法245条1項1号によって、株主総
    会の特別決議を要する営業譲渡 (会社法では、467条1項1号に該
  当する)について、 商法25条(会社法では21条に該当する)に
  定める「競業避止義務を負う結果を伴うものをいう」としている。

   ≪つまり、会社法でいえば、会社法467条にいう事業譲渡は、
   同法21条以下にいう事業譲渡と同一意義である≫

     (以上、前掲書 参照)


    説明の順序からして、さきにウから行う。


 ○ ウについて

  会社法467条に該当する株主総会の決議を要する事業譲渡は、
  競業避止義務を負う結果を伴うものに該当する会社法21条と同一
  の意義を有すると肢アで述べた。

  本肢は、ズバリ、事業を譲渡した会社が競業避止義務を負うこと
  を規定した会社法21条の条文そのものである。

  本肢は妥当である。

  なお、以上で述べた説明によって、総説で述べた、会社法21条
  の事業譲渡に関する取引法的側面と467条の組織法的側面[株式
  会社]の合体が生じていることに注目せよ。
 
  
  ○ イについて

   本肢は、事業譲渡に関する取引法的側面である。

  会社法22条1項・同3項によれば、
  
   譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、譲受会社
  が債務を弁済することになるが、この場合、譲渡会社も責任がある。
  →原則 しかし、譲渡会社は、一定期間後には責任を消滅。

   したがって、前段は妥当であるが、譲渡会社は当然に債務を免れる
    のではなく、22条3項の規定により一定期間後に責任が消滅するの
    で、後段は妥当でない。

   本肢は妥当でない。


   ☆ 参考事項

   譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用しない場合には、23条
    参照。

     1項の広告をしなければ、譲受会社は債務を弁済する責任なし。
   
   2項 広告をした場合における、譲渡会社の一定期間後の責任消滅。


 
 ○ エについて

  本肢は、組織法的側面[株式会社]についての出題である。

   会社法467条1項1号・2号により妥当である。

  467条1項2号( )内により、事業の重要な一部の譲渡について、
    譲渡する資産の帳簿価格が譲渡会社の総資産の五分の一を超えないと
    きは、株主総会の承認は不要であるとなっているが、本肢では、そこ
    が問われている。

  ☆ 参考事項

   取締役会設置会社では、重要な財産の処分には取締役会決議が必要で
  ある(362条4項1号)。


 ○ オについて

   本肢もまた、組織法的側面[株式会社]についての出題である。

   会社法467条1項3号により、事業の重要な一部の譲受けの場合
   には、 株主総会の承認は不要であるので、妥当でない。

  ☆ 参考事項

   取締役会設置会社では、重要な財産の譲受けには取締役会決議が必
  要である(362条4項1号)。
 
   会社法467条1項3号により、他の会社の事業の全部の譲受けの
    場合には、株主総会の承認を要するが、この場合でも、譲受会社が支
  払または 交付する譲受けの対価の額(簿価)が譲受会社の純資産額
    の20%以下[定款で厳格化可]の場合は、株主総会の承認は不要で
  ある。 (本肢の後半部分は、この点においても、正確ではない)
    
-----------------------------------------------------

   以上、妥当であるのは、ウ・エであるから、正解は4である。

------------------------------------------------------


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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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 【E-mail】<fujimoto_office1977@yahoo.co.jp>
 
 ▽本文に記載されている内容は無断での転載は禁じます。
 
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          ★ 過去問の詳細な解説  第80 回  ★

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                              PRODUCED BY 藤本 昌一
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  【テーマ】 会社法 

    【目次】   問題・解説

           
    【ピックアップ】     
 
     本年9月初頭には、過去問の分析に加え、近時の傾向も取り入
   れた「オリジナル模擬試験問題」(有料)を発行する予定をして
  います。
     とくに、関連部分に言及した解説にも力を込め、よりよいもの
   を目差して、目下準備中です。


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 ■  平成21年度・問題38
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
   株主名簿に関する次のア〜オの記述のうち、会社法の規定および判例
 に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

 
  ア すべての株式会社は、株主名簿を作成して、株主の氏名または名称
  ならびに当該株主の有する株式の種類および数などを記載または記録
    しなければならない。

  イ  基準日以前に株式を取得した者で、株主名簿に株主として記載また
    は記録されていない者について、会社は、その者を株主として扱い、
  権利の行使を容認することができる。

 ウ 株券発行会社においては、株式の譲受人は、株主の名簿書換えをし
    なければ、当該会社および第三者に対して株式の取得を対抗できない。

  エ 会社が株主による株主名簿の名義書換え請求を不当に拒絶した場合
    には、当該株主は、会社に対して、損害賠償を請求することができる
    が、株主であることを主張することはできない。

  オ 会社が株主に対してする通知または催告は、株主名簿に記載または
    記録された株主の住所または株主が別に通知した場所もしくは連絡先
    に宛てて発すれば足り、当該通知または催告は、それぞれ通常到達す
    べきだあった時に、到達したものとみなされる。
  

  1 ア・イ

  2  ア・オ

  3  イ・ウ

  4  ウ・エ

  5 エ・オ

 

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 ■ 解説
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  ◆ 参考文献

   会社法  神田 秀樹 著    弘文堂

 
 ◆  各肢の検討

   
   △ 肢アについて
     
      株式会社は、株主名簿を作成し、121条各号に記載する
   事項を記載し記録しなければならない。

   妥当である。

   
   ▽ 肢イについて

 -------------------------------------------------------- 
     基準日とは

   議決権行使等の権利を有する株主は、その時点における株主名簿上の
  株主である。しかし、株主が多数いる会社では誰がその時点における名
  簿上の株主か把握することが容易でないので、会社法は、一時点におけ
  る株主に権利行使を認めるために基準日を設けることを認めている
  (124条1項)。
 ---------------------------------------------------------- 
  
    ただし、判例によれば、株式が譲渡され名義書換がなされるまでの間、
  会社が自己のリスクで名義書換未了の譲受人を株主を株主として取り扱
  うことができる(最判昭和30・10・20・・)。

  したがって、基準日以前に株式を取得した者で、株主名簿に株主とし
  て記載または記録されていない者について、会社は、その者を株主とし
 て扱い、権利の行使を容認することができる。

  
  以上の記述からして、本肢は妥当である。

    
    ☆ なお、次の点に注意せよ!
      ・
    基準日後に新たに株主となった者についても、会社のほうの判断
   で、総会の議決などを認めることはさしつかえない(124条4項
   [ただし書きに注意])。《 前掲書94頁参照》


  ▲ 肢ウについて


----------------------------------------------------------
  株式の譲渡

  1 株券発行会社

  (1) 株券の引き渡しは、権利移転の要件であり、第三者に対する
         対抗要件である(128条1項本文・130条2項)。

     (2) 株主名簿の名簿書換えが会社に対する対抗要件である(130
         条1項・2項)。

  2 株券不発行会社

    権利移転の要件は、意思表示であるが、会社その他の第三者に対す
     る 対抗要件は、株主名簿の名簿書換えである(130条1項)。

       
    注 130条の条文の仕組み

     会社は原則として株券を発行しないものとし、株券の発行を
        定款で定めた場合に限って株券を発行することにしたため
   (214条1項)、130条1項は、株券不発行会社に適用さ
       れる。権利移転の要件が意思表示であるというのは、私法の一般
    原則に従う( 2 参照)。


     130条2項は、株券発行会社に適用される。
     会社に対する対抗要件が、株主名簿の書換えであることを規定
    したものであるが、その前提として、株券の引き渡しが(権利
        移転要件であると同時に)第三者対抗要件であることを読み取る
    必要がある
        ( 1 (1)(2) 参照)

     しかし、いずれにせよ、まどろっこしい規定の仕方である。
   -------------------------------------------------------
   
     
          以上の記述からすると、株券発行会社については、株式の譲受人
        は、株券の交付を受ければ株式の取得を第三者に対抗できるが、当
    該会社 に対しては、株主名簿の名簿書換えをしなければ、株式の
        譲受けを対抗できないことになる。

     したがって、株主名簿の名簿書換えを第三者対抗要件としている
    本肢は妥当でない。


    ▼ エについて

     判例によれば、会社が不当に名義書換えを拒絶した場合や過失により
  名義書換えを怠った場合のように、例外的に名義書換未了の者が会社に
    対して自己が株主であることを主張できる場合があることを認める(最
    判昭和41・7・28)。《前掲書95頁》

    したがって、株主であることを主張することができるので、本肢は
   妥当でない。

   
    ★ 次の点に注意せよ

   (1) 一般原則により、当該株主は、名義書換え請求を不当拒絶
           した会社に対して、損害賠償請求できるできるであろう。

   (2) 当該判決によれば、過失により名義書換えを怠った場合も
   含む。

   
   △ オについて

    会社の株主に対する通知または催告については、126条1項・
      2項において、本肢の通りの規定がある。

     本肢は妥当である。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

   本問については、妥当でないのは、ウ・エであるから、正解は4
  である。
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー    
         
 ◆ 付 言 

    本問を概観すると、株主名簿に関し、条文と基本的な判例が把握されて
  いれば、正解に達する。   

  しかし、そのことは、後から条文を繰り、判例に当たって言い得るこ
  とであって、広範囲であり、しかも、会社法の準備に充てる時間の少な
  さを考慮すると、すべてに用意万端というのは困難であろう。

  会社法対策としては、時間の許すかぎり、丁寧に問題集をこなし、それ
  でも本番で知らない問題が出れば、普段に培った応用力でもって、失点を
  減らすことに心がけるべきであろう。

  会社法に関しては、以上ごとき、開き直りも肝要と、わたしは思料する。

 

 

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          ★ 過去問の詳細な解説  第78回  ★

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  【テーマ】
  
      会社法 

    【目次】   問題・解説

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成21年度 問題37
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
   株式会社の定款に関する次の記述のうち、会社法の規定および判例に
 照らし、妥当なものはどれか。

 1 会社設立時に株式会社が発行する株式数は、会社法上の公開会社の
    場合には、発行可能株式総数の4分の1を下回ることができないため、
  定款作成時に発行可能可能株式総数を定めておかなければならないが、
    会社法上の公開会社でない会社の場合には、発行株式数について制限
    がなく、発行可能株式総数の定めを置かなくてもよい。

  2 株式会社は株券を発行するか否かを定款で定めることができるが、
    会社法は、株券を発行しないことを原則にしているので、株券を発行
    する旨を定款に定めた会社であっても、会社は、株主から株券の発行
  を請求された段階で初めて株券を発行すれば足りる。

  3  株主総会は株主が議決権を行使するための重要な機会であるため、
  本人が議決権を行使する場合のほか、代理人による議決権行使の機会
    が保障されているが、会社法上の公開会社であっても、当該代理人の
  資格を株主に制限する旨を定款に定めることができる。

  4 取締役会は、取締役が相互の協議や意見交換を通じて意思決定を行
    う場であるため、本来は現実の会議を開くことが必要であるが、定款
    の定めにより、取締役の全員が書面により提案に同意した場合には、
    これに異議を唱える者は他にありえないため、当該提案を可決する旨
    の取締役会の決議があったものとみなすことができる。

  5 取締役会設置会社は監査役を選任しなければなっらないが、会社法
    上の公開会社でない取締役会設置会社の場合には、会計監査人設置会
    社であっても、定款で、監査役の監査権限を会計監査に限定すること
    ができる。
  
 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 平成21年度 問題 40
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
   取締役会の選任および解任に関する次の記述のうち、正しいものは
 どれか。


  1 すべての株式会社は、定款において、取締役の資格として当該
    株式会社の株主である旨を定めることができる。

  2  取締役の辞任により員数が欠けた場合、当該取締役は、直ちに
    取締役としての地位を失うのでなく、新たな取締役が就任するま
  での間は、引き続き取締役としての権利義務を有する。

  3 解任された取締役であっても、正当な事由なく解任された場合
    には、新たな取締役が就任するまでの間は、当該取締役は引き続
    き取締役としての権利義務を有する。

  4 利害関係人の申立により裁判所が一時取締役を選任した場合、
    当該一時取締役が株式会社の常務に属しない行為をするには、裁
    判所の許可が必要である。

  5 取締役が法令もしくは定款に違反する行為をし、当該行為によ
    って株式会社に著しい損害を生じるおれがある場合には、株主は
  直ちに当該取締役の解任の訴えを提起することができる。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解 説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
   ■   参考図書

   会社法  神田 秀樹 著   弘文堂

 
   ■   平成21年度 問題37

 
     ◆   各肢の検討

  
   ○ 肢1について
  
   
      ここでは、以下の二つのルールを把握していればよい。

   その1・発行可能株式総数は、27条1項1号〜5号と並んで定款の
       絶対的記載事項であるが、他と異なり、定款認証時には、不
       要で、会社成立時までに発起人全員の同意で定めることが認
              められる(37条1項なお、2項も参照)。

          以上は、公開会社・公開会社でない場合に共通である。

   その2・公開会社では、「設立時発行株式の総数」は発行可能株式総
              数の4分の1以上でなければならない(37条3項)。いわ
              ゆる4倍ルールが働くのは、公開会社のみである。

           この二つのルールが把握されていれば、以下のabcが判明
              する。
 
     a 4倍ルールは妥当であるとしても、
 
     b 公開・公開でない場合を問わず、定款作成時に発行可能株式
       総数を定めておかなくてもよいので、これに反する記述は妥当
             でない。

        c 公開会社でない場合には、発行可能株式総数の定めを置かなく
           ても よいというのは、デタラメである。

          以上により、本肢は妥当でない。 
 

         ☆ 参考事項
 
    (1) 絶対的記載事項⇒定款に必ず記載しなければならない事項を
       いう。その記載がないと定款全体が無効になる。

     (2) 公開会社⇒2条5号に定義ある。要するに全部株式譲渡制限
       会社以外の会社である。会社法上は、上場会社を意味しないこ
            とに注意!

       (3) 授権株式制度⇒会社が将来発行する予定の株式の数(これが、
       ここでいう「発行可能株式総数」である)を定款で定めておき
     (37条1項・2項)、その「授権」の範囲内でか会社が取締役
           会決議等により適宜株式を発行することを認める制度。
      
             会社法の採用する制度である。

       (以上、前掲書 39頁・62頁参照)

 
  ○ 肢2について

      ここでは、以下の2点が把握されていればよい。   

   その1・会社法上、会社は原則として株券を発行しないものとし、株券
       の発行を定款で定めた場合に限って株券を発行することにした
      (214条)。
 
  
   その2・このような株券発行会社は、遅滞なく株券を発行しなければな
       らないのが原則であるが(215条1項)、
       公開会社でない株券発行会社には、本肢のような例外が認めら
       れる(215条4項・平成16年改正による)。

                                 ・・
      以上のとおり、株券の発行を定款で定めれば、株券の発行が原則
     であることが念頭にあれば、本肢が妥当でないのは明らかである。

  ○ 肢3について

   
   「株主は代理人により議決権を行使できる(310条前段)。多くの会社で
  は、定款で代理人の資格を株主に限定しているが、そのような限定は許さ
  れると 解されている(最判昭和43.11.1・・・)。」
      (前掲書 156頁) 

   したがって、公開会社の場合においても、限定が許されることはない
    とはいえない。

   判例もあり、この点について、確りとした知識があれば、他を無視し
  ても本肢を正解とすることができる。


   ☆ 参考事項

   (1) 定款で議決権行使の代理人資格を株主に限定している会社が、
           株主である地方公共団体または会社の職員または従業員に議決権
           を代理行使させても、違法ではない(最判昭和51・12・24
           ・・・)。

       (2) 関連するものとして、
     
      定款で取締役の資格を株主に限定することは許されない[公開会社
     以外は別](331条2項)。

  
   ○  肢4について 

     370条の条文と本肢を対比すれば、原則的には妥当である。
   しかし、同条( )書きに反する。
 
    本肢は、妥当でない。しかし、本肢をみていて、出題の不適切さに
   やるせなさを感じるのは、私だけであるのか。

  
    ☆ 参考事項

    「改正前商法では、決議は適法に開催された取締役会での決議でなけ
      ればならず、書面による決議や持ち回り決議は認められなかった(最
      判昭和44・11・27・・・)」(前掲書180頁)。
   
     しかし、会社法では、定款で定めれば、取締役会 開催の省略を認め
    たのである。

  ○ 肢5について

   本肢は、正確に理解しようとすれば、難しいが、順序立てて、説明して
    おく.


     公開会社は取締役会が必要であるが(327条1項1号)、公開会社
   でない会社であっても、定款の定めにより、取締役会を任意に置くことが
   できる(326条2項)。

   したがって、「会社法上の公開会社でない取締役会設置会社の場合」は、
  存在し得る。

    取締役会設置会社は、原則として、監査役を置かなければならない
 (327条2項)。

  以上から、公開会社でない会社-----取締役会-------監査役 という線
  が成立する。


  そこから、条文は、389条1項に飛ぶ。

  そこでは、原則として、公開会社以外の会社では、定款で、監査役の監査
  権限の範囲を(業務全般の監査≪381条1項≫のうち)会計監査に限定す
  ることが認められる(389条1項)。
                            (注)
  しかし、その例外として、同条同項の括弧書きにおいて、会計監査人
  設置会社《監査役会設置会社も》 が掲げられているので、本肢にあっ
 ては、「会計監査に限定することができない」ことになる。

  これも、最終的には、389条1項の(  )書きからの出題である。

   
  本肢は、以上の記述に反するので、妥当でない。

 
   注 会計監査人の規定は、337条以下にある。

 
------------------------------------------------------------
  以上妥当であるのは、3であるから、これが正解である。
--------------------------------------------------------------

 ★ 付 言

   本問を概観すると条文の細かい規定を問うものであり、要求過多の
    面がある。
   肢3については、基本判例もあり、ズバリ、ここで、わたりがつけ
  られるとよいのだが・・・。
  

 
  ■   平成21年度 問題40

    ◆   各肢の検討

  
   ○ 肢1について

    定款で、取締役の資格を株主に限定することは許されないが、公開
     会社以外の会社は別である(331条2項)。

      以上のとおり、公開会社以外の会社は限定が許されるので、誤りで
    ある。

   なお、公開会社においても、株主を取締役に選任することはもちろん
    認められ、実際にもそのような場合が多いことに注意。
  (前掲書 170頁)


   ○ 肢2について 

    346条1項によれば、取締役の欠員の場合の処置として、正しい。

    当該規定の役員は、取締役のほか、会計参与及び監査役である
     (329条1項)。

   本肢が正解である。

    なお、この間、退任の登記もできないことに注意。
     (最判昭和43・12・24・・・)
    (前掲書 174頁)

  ○ 肢3について
 
    346条1項によれば、後任者が就任するまで引き続き取締役
   としての権利義務を有するのは、任期満了または辞任により退任
   した場合である。

    解任の場合には、裁判所に請求して一時取締役として職務を
   行う者(仮取締役)を選任してもらうことができる。
  (346条2項・3項)。

    本肢は誤りである。

  ○ 肢4について

   肢3の仮取締役の権限は、普通の取締役と同じであるから、
    裁判所の許可は不要である。誤りである。

  
  ○ 肢5について 

   会社法854条が規定する役員の解任の訴は、以下のとおり規定
  する。
   
   株主総会において、取締役に対する解任の決議が成立しなかった
   場合でも、その取締役が不正の行為をしたとき、または法令・定款
    に違反する重大な事実があったときは、少数株主は、30日以内に
  その取締役の解任の訴えを提起することができる。 

   したがって、株主は直ちに当該取締役の解任の訴えを提起するこ
    とができるのではない。

   本肢は誤りである。

   ☆ 参考事項

  (1) 当該解任の訴は、株主総会で多数が得られず解任決議が成立
       しなかったときに、少数株主にその修正を求める制度であるこ
     とに注意!(前掲書 174頁)。
    
     (2) 少数株主に株主総会の招集権あることに注意!(297条)

     通常、少数株主は、総会の招集を求め、総会で解任決議が成功
       しなかったときに、解任の訴えを提起する(前掲書 174頁)

  
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        以上により、本問の正解は、2である。
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 【発行者】司法書士 藤本 昌一

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           ★ 過去問の詳細な解説  第77回  ★

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  【テーマ】  行政組織・行政庁 

    【目次】    問題・解説


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 ■ 平成13年度問題8
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  
 行政組織についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

  1 決定権限を有する大臣をトップとする各省庁は、公法人であり、公法
    上の権利・義務の帰属主体としての役割を担う。

  2 公団・公庫・事業団などは、特殊法人と呼ばれているが、法的には国
  という公法人に所属する、その一機関に過ぎない。

  3 行政主体の意思を決定し、これを外部に対して表示する権限を有する
    行政機関のことを行政庁という。

  4  行政機関が、行政主体のために行うことのできる事柄・活動の範囲は
    権限と呼ばれ、私法上の権利と同様に、その権限行使を担当する公務員
    に効果が帰属する。

  5 行政組織の長である大臣と、その組織に服する職員との間には、公法
  上の服務関係が成立し、私企業における雇用関係・労働関係は成立しな
    い。

 
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 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 ◆ 基本

   「行政機関」については、「理論上の行政機関」と「制定法上の
   行政機関」がある。

   「理論上の行政機関」⇒≪学術用語≫

     大臣、次官、局長などは、法令などによって設けられている、
       ある一定の権限と責務とを与えられた一つの法的地位に就いて
    活動しているが、この法的地位のことを、行政法学では、一般
       に「行政機関」と呼ぶ。

   「制定法上の行政機関」

     「国家行政組織法」の別表第一によれば、11の「省」、
         四つの「委員会」、そして13の「庁」を「国の行政機関」
     と呼んでいる(同法3条)。


     これらは、学術用語としての「行政機関」が集まることに
        よってできあがっているのであって、その意味では「機関」
    というよりは、一つの「組織体」との性格を有する。

    (前掲 「入門」21頁以下)

  ◆ 各肢の検討

  
  ○ 肢1について

   前記基本に照らせば、以下のようになる。

   法定権限を有する大臣をトップとする次官、局長など=理論上の
   行政機関

   各省庁=制定上の行政機関

   
    まず、本肢では、各省庁は、ひとつの組織体であって、公法上の
     権利・義務の帰属主体となる公法人ではない。

    公法上の権利・義務の主体となる「行政主体」は、法律上「国」
     と総称される(憲法17条以下、行訴法・国賠法など各種法律)。

    本肢は妥当でない。

  
 ○ 肢2について

    国や地方公共団体≪憲法17条・国賠法=公共団体を含む≫は、
    「行政機関(理論上の)」を通じて、「行政活動」を行うだけでなく、
   独立の法人格を有する団体を設置して一定の「活動活動」を行わせ
   ている。

    本肢に掲げられている特殊法人もまた、国や地方公共団体と並ん
      で「行政主体」とされるものであるから、国に所属する一機関では
      ない。

    本肢は妥当でない。


   注 

     公社・公団も今では、行政改革の結果、「独立行政法人」にな
        っている。

      憲法17条ないし法律にいう「公共団体とは、・・行政主体
     の国以外のものを含むから、この語は、住民団体である地方
                ・・・・・・
     公共団体をも独立行政法人などと同列に扱うという意味合いを
     持っている」(前掲読本 29頁)。

     「行政主体」としては、国・地方公共団体・公社、公団、独立
     行政法人のほかに、「公共組合」があることに注意!

      公共組合とは、土地区画整理組合や健康保険組合のように、
     組合員によって構成され、一定の行政を行うこと目的とする団体
     である(前掲読本 31頁)。

   ○ 肢3について

   「行政機関(理論上)」のうち、「行政庁」とは、行政理論でいう
    専門用語としては、次のように定義づけられている(前掲 入門
  25頁)。

   「行政庁」とは、みずからの名で、しかし行政主体のために意思決定
     をし、対外的に(つまり私人に対して)これを表示する権限を、法令
     上与えられている行政機関のことをいう。

    会社が会社(法人)としての権利・義務を行使する場合と同様で
      ある。


       本肢は、この記述に沿うものであり、妥当である。

  
   ○ 肢4について

   前段は、行政機関が法令上与えられた権限を行使するについて、
    述べていて妥当であるが、その効果が帰属するのは、行政主体で
  ある。

   その理は、会社の機関の行為が、法人である会社に帰属するの
    と同様である。

        本肢は妥当でない。

  ○ 肢5について

   前段の「公法上の服務関係が成立」するというのは、妥当で
  ある。その服務関係は、国家公務員法や地方公務員法で定めら
    れているが、公務員についても、憲法28条の勤労者に該当す
  る(憲法27条も参照)。

   したがって、公務員にも労働基準法や労働組合法が適用され
    る。

     公務員については、国家公務員法等が特別法に該当し、労働組
   合法等が一般法に属することに注意する必要がある。

   したがって、公務員にも私企業におけるような雇用関係・労働
   関係が成立する。
 (前掲入門 28頁)
    

   本肢は妥当でない。

 

 ◆ 付 言   

      本問は平易な問題であるとして、さっと読み飛ばしがちであるが、
  基本に立ち返り、この際じっくりと取り組むことも肝要である。

   特に肢5については、憲法・行政各法を概観するには、好個の
    資料を提供する。

 
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 ■ 平成18年度・問題9
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   行政庁などの行政機関の概念に関する次の記述のうち、妥当なものは
 どれか。

 1 行政庁は独任制でなければならず、委員会などの合議体が行政庁と
   しての役割を果たすことはない

 2 行政庁、諮問機関、参与機関などの行政機関の定義は、国家行政組
    織法において定められている

 3 諮問機関が示した答申・意見について、行政庁はそれを尊重すべき
   ではあるが、法的に拘束されることはない。

 4 行政庁の権限を補助機関が専決する場合には、代決の場合と異なり、
   処分権限は行政庁ではなく、補助機関に帰属することになる。

 5 補助機関とは行政主体の手足として実力を行使する機関であり、警察
   官、収税官などがこれに当たる。

  

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解 説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 ◆ 参照書籍

     前掲書

 
  ◆ 総説

  行政庁は、行政処分などの行為を自己の名において対外的に行う権限
  を持っている行政機関をいう(読本 34頁)。


  より詳しくは、

  「行政庁」とは、みずからの名で、しかし行政主体のために意思決定
    をし、対外的に(つまり私人に対して)これを表示する権限を、法令
    上与えられている行政機関のことをいう(入門 25頁)。

 ◆ 本問の検討

 ○ 肢1について

  (理輪上の)行政機関は、a・「独任制の行政機関」とb・「合議制の
  行政機関」に分かれる。

   aは、○○大臣、○○次官、○○局長、○○税務署長のように一人の
    自然人つまり公務員によって構成される。

   これが、行政庁が独任制であることの意味である。

   bは、内閣、公正取引委員会、都道府県公安委員会のように、複数の
    自然人の合議体によって運営される行政機関である。

   これは、合議体が行政庁としての役割を果たすために設けられた機関
    である。

   したがって、本肢後段は妥当でない。

 ○ 肢2について

  本肢に掲げられている行政機関の定義は、国家行政組織法において定
  められていない。

   本肢は妥当でない。

  なお、諮問機関は、審議会と呼ばれることが多いようであるが、これ
  については、国家行政組織法8条に規定があることに注意。

  諮問機関・参与機関の定義については、肢3参照。
    

   ☆ 本肢は、単なる知識を問う問題としても、不適当であるように
    思われる。

 
 ○ 肢3について

  諮問機関である「審議会とは、大臣・・などが意思決定を行うに当た
  って意見を求める(諮問する)合議制の機関である。合議制行政機関で
  あるが、諮問に対して答申をするにとどまり、独自の対外的行為権限を
 持っていない。また、この答申は法的拘束力を持たないのが通例である」
(読本36頁)。

  本肢は、この記述の趣旨に沿うので、妥当である。

  なお、「答申に法的拘束力を持つ合議制機関を参与機関というが、
 その例は少ない」(読本 36頁)。

  「国の場合、審議会の設置は法律または政令によることいなっている
 が(国家行政組織法8条)、こうした正規の手続によらない諮問機関も
  数多く設置されている」(読本 36頁)

  本肢は、あるいは正規の手続によらない諮問機関を対象としているの
  かもしれない。

  ☆ 諮問機関の概念が明確でない。本肢も不適当であるように思える。
      特に、正規の手続の審議会であれば、答申について、法的拘束力を
   持たないのが、通例であるとは言えても、「法的に拘束されること
   はない」と言 い切れるのか。
    正規の手続によらない場合には、法的拘束力を持たないのは、
      当たり前である。


 ○ 肢4について

  行政庁の補助スタッフを補助機関という。大臣が行政庁になる場合には、
  事務次官以下の職員は補助機関である。数から言うと、この補助機関が行
  政組織の大部分を占めている(読本 34頁)。

  以上の補助機関の性格からすれば、処分権限のある行政庁を補助する
 ため、補助機関が決裁を専決しても、代決しても、処分権限が補助機関
  に帰属することはない。

   権限の委任には法律の委任が必要であるため、日常的には、補助機関が、
 行政庁に代わって決裁することが多いが、この場合には、行政庁の決裁と
 同様に扱われることになるのである。

 以上の代わって決裁する場合を専決といい、特に、行政庁不在等の場合
 に行われるものを代決という。

 (読本 40頁以下 参照)

 
   以上の記述からすれば、「専決」「代決」を問わず、処分権限が補助
 機関に帰属することはないので、妥当でない。

  
    ☆ 専決・代決という聞たこともない、実務上の用語を持ちだし、
         区別を問う本肢も、妥当性に欠けると思われる。
 

 ○ 肢5について

  総説の定義からすれば、行政庁は、行政主体のために意思決定をする
  ことになっているため、補助機関もまた当該意思決定を補助する。

  したがって、補助機関は、行政主体のために手足として実力を行使する
  機関ではない。

  本肢は妥当でない。

  なお、本肢においては、肢4の決裁を想定すれば、行政庁の意思決定
  に対する補助機関の態様が明らかになる。

   
  以上正解は、3である。


  ◆ 付 言

  本問は、専門的知識がなくても、常識に基づいて正解が導かれると思わ
  れるが、さっと読み飛ばさないで、この際、知識の再確認をしていただき
  たい。

  その意味において、本解説では、極力、関連する基礎事項に言及した。
 

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           ★ 過去問の詳細な解説  第75回  ★

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  【テーマ】 行政審判   


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 ■ 平成21年度 問題13
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   次の手続のうち、私人間紛争の裁定的性格を有する行政審判に該当する
 ものの組合せはどれか。

 ア 海技士等に対する懲戒処分を行うための海難審判所における審判・
    裁決の手続

  イ 不当労働行為に係る救済命令のための労働委員会における尋問・命令
  の手続

  ウ 免許取消しのために実施される電波監理審議会における意見聴取手続

  エ 特許無効審判が請求された場合に行われる特許庁における審判・裁決
    の手続

  オ  暴力主義的破壊活動を行う団体に対する規制処分のための公安審査
    委員会における審査手続

 
  1 ア・イ

   2 イ・ウ

   3  イ・エ

   4  ウ・エ

   5  エ・オ

 

  
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 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣


 ◆ 総 説

    本問は、さまざまなことを考えさせられる素材を提供している。
  以下、巾広い考察に心がけたい。

 
 ◆ 論 点

  1 行政審判とは

     これは、公正取引委員会とか中央労働委員会といった、いわゆる
   「行政委員会」またはそれに似たような行政機関が、ふつう「準司
    法手続・・」とよばれる、特殊の手続によっておこなう審査手続の
    ことをいいます。

     行政審判というのは、行政機関がおこなう審理手続であるけれど
   も、じつは、裁判所が裁判をおこなうばあいと似たような、組織上
   または手続上の保障をして・・、審査の中立・公正さを守り、権利
   救済制度として十分に機能させようというものなのです。

  (前掲書 入門243頁)

   次に、平成17年問37の旧記述式問題の一部を抜粋する。
      みごとに、行政審判の定義が記述されている。

   独占禁止法による公正取引委員会の審判・裁決、特許法による
    特許庁の審判・裁決、土地収用法による収用委員会の審理・裁決、
    労働組合法による労働委員会の諮問・命令の手続など、独立性・
    中立性の高い行政委員会が、準司法的手続に従って、争訟の裁定
    などの特定の処分をする手続を総称して  A  と呼ぶ。
 
      もちろん、A=行政審判 である。
  
   本問に照らせば、イの「労働委員会」、エの「特許庁」の記述
    がある。
       

  2 その分類(前掲 入門による・243頁以下)

   (1) これからある処分をおこなうための手続=行政の事前
      手続としておこなわれるもの=「処分先行型」

       これは、行政手続法に対応するものであり、「行政審判」
      は、行手法1条2項により、他の個別法によって定められ
            る。   

        本問に即していえば、ア・イ・オがこれに該当するで
            あろう。

   (2) もうすでにおこなわれている行政処分をあとから審査す
            る不服申立手続=「後行型」

       これは、行審法1条2項の規定する「個別的な法律に
            よって定められた特別の不服申立制度」である。

       本問に即していえば、ウ・エがこれに該当するであろう。

       
       エは、すでに行われた特許庁の特許の査定(行政処分・
            特許法51条参照)が無効かどうかを審査するものだから
            である。

       ウは、電波法に基づく総務大臣の処分に対して、異議が
             あった場合において、電波監理審議会の議決を要すること
       になるから、これは、「後行型」になるのであろう(しかし、
       ここまでの知識は、要しないであろう)。

 

 ◆  本問の検討


    本問のア〜オまですべて、論点1の「行政審判」に該当する。
  
  本問では、これら手続のうち、「私人間紛争の裁定的性格を行政審判」
  に該当するものの選択を要する。
  
    これもまた、論点2とは違った観点からの分類に属する。

  ○ 肢イについて
 
    本肢は、使用者の労働者に対する行為が、不当労働行為にあたるか
  どうかを審査するのである(労働組合法27条・7条)から、私人間
 紛争の裁定に当たる。

  特に労働組合法の細かい条文を知らなくても、使用者・労働者間の
  紛争に対する裁定であるという認識があれば、容易に正解に達し得る。

  ○ 肢エについて

  これは、特許の査定を受けた者とこれを無効とする者の私人間紛争
  の裁定に当たることは容易に察しがつく(特許法123条参照)。
 

  以上によれば、イ・エの組合せによる3が正解であることが判明
  する。


  ○ その他ア・ウ・オについて

   アとオは、論点2における(1)の行政の事前の手続における
  処分先行型のものであり、具体的な紛争を前提としない行政処分
    の発動において採用される方式である。

   ただし、ウに関しては、総務大臣の免許取消(処分)について
   の異議申立があった場合において実施される電波監理審議会の審理
  であって、紛争解決のための裁定の面がある。

  しかし、これは、私人と行政庁の紛争であるから「私人間紛争」
  には該当しない。

  本問の出題意図は、このウとイ・エの対比にあるのかもしれないが、
 そうなれば、要求過多である。ウを無視して、イ・エを素早く抽出す
 るしかないのであろう。

 

 ◆ その他、関連する過去問の検討

  
 ○ 前記平成17年問題37における旧記述式問題の後半部分の抜粋。


    この手続(筆者注 行政審判)に基づく決定(裁決)に関しては、
 それについての訴訟の局面でも、「委員会の認定した事実は一定の場合
 に裁判所を拘束するという  B  の法則」や審級の省略など、通常
 の行政処分取消訴訟に対する特例が法定されていることがある。

  ≪解説≫  

   B=実質的証拠 である。

  たとえば、独占禁止法77条では、公正取引委員会の審判(行政審判)
 の結果なされた審判に対して、行政事件訴訟法に基づく取消訴訟を提起
 し得るものとしているのは、通常の処分や裁決と異ならない。
   
  ただし、同法80条1項では、この訴訟については、「公正取引委員会
 の認定した事実は、これを立証する実質的な証拠があるときには、裁判所
 を拘束する」と定めている。

  その意味は、公正取引委員会の審判が準司法的な性格を有していること
 から、これをいわば、裁判審級の上での事実審(第一審)と見立てて、一
 部、裁判所に代わる役割を与えようということである。

 ( 前掲 入門 244頁参照)

  以上記述したところが、要するに、「実質的証拠法則」と呼ばれるもの
 である。


 ○  平成21年度問題14抜粋

  行政上の不服申立てについての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

    肢4 憲法は、行政機関が裁判を行うことを禁止しているから、裁判手続
          に類似した行政上の不服申立てを整備することによって地方裁判所
     における審級を省略することは許されない。

     ≪解説≫

   本肢では、論点2における分類に従えば、(2)の不服申立手続が問わ
    れている。
   
  これらの行政審判は、準司法的な性格を持っていて、実質的証拠法則を
   採用しているので、これらの審判に対する訴訟においては、地方裁判所の
  審級が省略されて、専ら東京高等裁判所の専属管轄とされることがある。
 
 (入門 245頁参照) 

    したがって、本肢は妥当でない。

  なお、本肢前段については、憲法は、行政機関の終審としての裁判を禁止
  している(76条2項後段)のに過ぎないので、裁判手続に類似した行政上
 の不服申立てを整備することによって地方裁判所における審級を省略するこ
  とは許される。


  ◆ 付 言

    以上記述した「行政審判」に関しては、一般に教科書ではふれられてい
 ない。 しかし、過去問では、繰り返し、出題されている。
 
    その意味では、本試験と教科書では、範囲にずれがある。
   
  その隙間を本講座 によって、埋めてほしいと思う!!

 

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        ★ 過去問の詳細な解説  第74回  ★

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  【テーマ】 行政手続法    

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 ■ 問題 平成21年度問題11
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
   行政手続法の定める不利益処分に関する次の記述のうち、正しい
 ものはどれか。

  1 弁明の機会の付与による弁明は、行政庁が書面ですることを
   認めたときを除き、指定された日時及び場所において、口頭で
     行うものとされている。

 2 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき、聴聞を行
     わなければならないとされているが、ここにいう許認可等を取り
   消す不利益処分には、行政学法学上の取消しと撤回の双方が含ま
   れる。

 3 行政指導に従わない場合に行われる当該事実の公表は、行政手
     続法上、不利益処分とされ、それを行う場合には、弁明の機会の
     付与を行わなければならないと規定されている。

  4 聴聞において、当事者が利害関係者の参加を求めたにもかかわ
     らず、行政庁がこれを不許可とした場合には、行政不服審査法に
     基づく不服申立てをすることができる。

  5 申請に対して拒否処分を行う場合には、行政手続法上、不利益
     処分に該当するので、弁明の機会の付与を行わなければならない。

 

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 ■ 解説
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 ★ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 ●サイト30回・聴聞と弁明の機会の付与参照。
  
 ☆サイト第30回はコチラです↓
 http://examination-support.livedoor.biz/archives/683857.html


 ◆ 各肢の検討

  
  1について

    弁明手続は、略式手続である。行政庁が口頭であることを認めた
  場合を除き弁明書の提出によって、つまり書面で行われる(行手法
  29条1項)。
  指定された聴聞の期日における、口頭の審理が原則(法21条
 1項参照)であるのは、丁寧な手続である聴聞である(法20条)。

   本肢は誤りである。

  
 ☆ 参考事項

   平成18年度過去問・問題18 肢1

  弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、書面の提出
  によってするのが原則であるが、聴聞は、口頭かつ公開の審理による
  のが原則である。

   ×

  非公開である(法20条4項)。しかし、その余は正しい。

 

  2について
                  ・・
    丁寧な手続である聴聞は、許認可を撤回したり 資格 または地位
  を 剥奪するといった相手方に重大な不利益を与える不利益処分に
 ついて行われる。これが「特定不利益処分」であり、行手法13条
 1項1号に列挙されている。
  
  本肢は、法13条1項1号ロに該当するが、「許認可等を取り消す」
 には、相手方の蒙る不利益を考慮すれば、撤回を含む。

  したがって、この不利益処分には、行政法学上の取消しと撤回の
  双方が含まれることになる。

  以上、本肢が正しくて、正解である。

  
   3について

     「公表」の行政法上の地位を考えると、行政処分に該当するもの
    ではなく、非権力的行為である行政指導の実効性を確保するため
    に行政庁によって事実上採用される手段である。

    「公表」には、 法的拘束力もない。

  ≪読本 149頁、入門 178頁参照、≫

   以上のとおり、「公表」は、行手法上「不利益処分」とされる
    ことはないので、本肢は誤りである。


   4について

  条文は、行手法17条1項・同法27条1項である。
  
    つまり、同法17条1項に違反する違法な処分(行審法1条の行政
   庁の違法処分に該当する)は、行手法27条1項により、行審法に
  よる不服申立てをすることはできない。

     本肢は誤りである


   ☆ 参考事項

  (1) 本肢は、行訴法から行審法に至る問題である。

   同様の問題として、次の肢の正誤が、過去問(平成18年度問題11
   ・肢4)で問われた。

      聴聞を経てなされた不利益処分についいては、行政不服審査法による
  異議申立てや審査請求をすることはできないが、弁明の機会を賦与した
    に過ぎない不利益処分については、こうした制限はない。

   《解説》

     聴聞を経てなされた不利益処分については、行政不服審査法に基づく
    不服申立てはできないが、弁明の機会付与の不利益処分にはこうした
    制限がないという大枠の文言は正しい(27条2項・29条以下にはこう
    した規定もなく、準用もされていない)。

    しかし、27条2項をよく見ると、「異議申立て」ができないだけ
    だから、 「審査請求」はできることになり、結局妥当でないことに
      なる。

     「異議申立て」は処分庁に対する不服申立てであるから(不服審査法
   3条2項)、聴聞という丁寧 な手続を経た処分が覆る可能性がほとん
     どないことが立法趣旨であろう。

 
 (2) 次の区別を明確にすること!

    本肢は、聴聞の手続そのものに対する不服。これに対し、(1)の
      過去問は、聴聞・弁明を経てなされた不利益処分に対する不服申立て
      の問題。
 

 5について

    これは、本講座の「余禄」でテ−マになっている。当該個所を
 通読すれば、誤りは明白である。

  行手法10条において、公聴会の開催について規定があるが、
 行手法は、許認可等を拒否する場合であっても、相手方の意見
  を聴くことを予定しない(前掲読本224頁)。

  次回、「余禄」で公聴会が話題になると思う。


 ◆ 付 言

   本問題を解説してみて思うことは、これは、行政法の標準的理解を問う
 良問だということである。
 
   こういう問題を素材に、じっくりと考察を進めることによって、一歩
 一歩,本試験合格に近づいていくのだろう。


 
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 ■ 平成21年度問題12
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   行政手続法1条が定める同法の目的に関する次の記述のうち、正
 しいものはどれか。

  1 行政手続法は、政府の活動について国民に説明する責務が全う
    されるようにすることを主な目的とする。

 2 行政手続法は、行政運営における公正の確保と透明性の向上を
    図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。

  3 行政手続法は、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を
    図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。

  4  行政手続法は、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主
    的な行政の推進に資することを目的とする。

  5 行政手続法は、国の行政事務の能率的な遂行のために必要な組
    織を整えることによって、公務の民主的かつ能率的な運営を保障
    することを目的とする。
 

  

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 ■ 解説
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  ☆ 参照書籍

     前掲書

 
  ◆ 各肢の検討


  ○  肢1・4 について

      情報公開法1条の目的規定をみよ!

   肢1の「国民に説明する責務の全う」

   肢4の「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政
      の推進」

        以上が、同法目的規定のなかで謳われている。

    したがって、これらの肢は、誤りである。

   
  ○ 肢2について

   行政手続法1条の目的規定をみよ!

   「国民の権利利益の保護」・「公正の確保」・「透明性の向上」が
   規定されている。

    従って、本肢が正しい。


     ★ 付 言 

        (1) 「国民の権利利益保護」の規定について、以下のような批判が
            あることに注意せよ。
                           ・・・・・・
       この目的規定の中において、行政手続法が権利保護手続に
                      ・・・・・・・・・・
           ついてだけ規定をおき、民主主義的な参加手続については、規定
           をおいていないことは不当である。
      2005(平成17)年の法律改正により、行政立法手続(
           命令等制定手続)たる意見公募手続が導入され、参加手続の
      欠如という状況はなくなった(行手法38条以下参照)。
      
       以上「意見公募手続が権利保護に資することは確かであるが、
           『国民の権利利益の保護』を挙げるだけでは、行政手続法の規定
            内容を忠実に反映していないのではないかという疑問がある。」
      
      (前掲読本 216頁)

              たとえば、次のような肢が出題されると、どうなるか。

            行政手続法は、国民の権利保護手続についてだけ規定をおき、
           民主主義的な参加手続については規定をおいていない。

      これだけ、抜き書きされると、なかなかの難問である。しかし、
          前述の問題意識があれば、「意見公募手続」が念頭に浮かび、×
     となる。

        (2)「透明性」については、次の指摘があることにも注意!

      「透明性については、『行政上の意思決定について、その内容
           及び過程が国民にとって明らかであることをいう。』と定義され
      ているが、国民とは一定の一定の利害関係人だけを指していると
      いうことになる」(前掲読本 217頁)

      ○ 肢3について

    本肢は、行政不服審査法1条1項の目的規定である。

       本肢は誤りである

        なお、行政手続法が事前手続であるのに対し、行政不服審査法が
      事後手続であるというのも重要な論点である。


   ○  肢5について

         本肢は、国家行政組織法1条の目的規定であり、誤りである。

     なお、行政法の分類に従えば、行政の作用を規定する「作用法」
    に対して、「組織法」に属する。

    組織法とは、行政を担当する団体である国や地方公共団体の組織
   に関する法である。国の組織を定めた法律としては、これ以外に、
      内閣法、内閣府設置法がある。
    地方公共団体の組織についての基本は、地方自治法で定められて
   いる。

   (前掲 読本12頁)


    以上からすれば、正しいものは、肢2である。

 
  ◆ 過去問との比較

  
   ○ 平成14年度問題12

   肢1 行政手続法は、いわゆる情報公開法に先んじて施行された。

   肢3 行政手続法は、その第1条(目的)で行政運営における公正・
   透明の原則と並んで、説明責任(アカウンタビリテイ)を明示
            している。
 
  ≪解説≫

   順序としては、事前手続としての行政手続法が整備され、そのあと、
    行政の保有している行政情報の公開を求める制度が確立された。
   
   したがって、肢1は○

   ちなみに、行手法の施行は、平成6年であるのに対して、情報公開法
    は、平成13年に施行された。


   肢3が×であることは、前記記述からして、歴然としている。

 
   ○ 平成15年度問題38

   
      次に示す条文(行政不服審査法第1条第1項)中の A(漢字4字)、
  B(漢字2字)に該当する正しい語を記入しなさい。

   「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使
    に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立
    てのみちを開くことによって、簡易迅速な手続による国民の A  
        の救済を図る とともに、行政の B な運営を確保することを
    目的とする」

   ≪解説≫

    答えは、条文をみれば、歴然としているので、省略する。
       それにしても、行政書士試験の歴史を感じさせる出題である。
 
    このように目的規定は、過去問から、平成21年度、将来へと脈々
     と引き継がれていく。
  

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       ★ 過去問の詳細な解説  第71回 ★

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  【テーマ】 国家賠償法=営造物管理責任(前回の続き)
  
             地方自治法


  【目次】   問題・解説


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 ■ 問題 平成19年度問題20 肢3・4抜粋
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   国家賠償法2条の定める営造物管理責任に関する次の記述のうち、
 妥当なものはどれか。

 3 営造物の管理責任は、営造物の物理的瑕疵を問うものであり、
  営造物を管理する公務員の管理義務違反は国家賠償法1条の責
    任であって、同法2条の責任が問われることはない。

 4  営造物の瑕疵は、営造物そのものに物理的瑕疵がある場合を
   元来指すが、第三者の行為により営造物が瑕疵がある状態にな
   った場合にも、その状態を速やかに改善して瑕疵のない状態に
  回復させる責任が営造物管理者にはある。

  
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 ■ 問題 平成21年度問題21
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   以下の記述のうち、地方自治法に規定されている内容として、誤
 っているものはどれか。

 1 地方自治法に定める「自治事務」とは、地方公共団体が処理
  する事務のうち、法定受託事務以外のものをいう。

  2 地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の
    福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げ
  るようにしなければならない。

  3 地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努めると
    ともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を
  図らなければならない。

  4 市町村が当該都道府県の条例に違反して事務を処理した場合
    には、その市町村の行為は無効とされる。

  5 市町村は、その事務を処理するに当たり、当該都道府県知事
    の認可を得て、総合的かつ計画的な行政の運営を図るための基
    本構想を定めなければならない。

 

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 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
  ■ 平成19年度問題・解説

   前回やり残した問題について、解説を行う

 
 ○ 肢3について

  国家賠償法2条の「設置・管理の瑕疵」の文言の意味

                    ・・
  行為瑕疵説→営造物の設置・管理という行為に瑕疵がある。

  営造物瑕疵説→営造物それ自体に瑕疵がある場合に営造物管理
         責任が認められる。

   本肢は、営造物瑕疵説に基づく見解であるが、以下の説明に
  注目!

  「営造物に物的欠陥はあるがその設置・管理上の措置に落ち度
      がないということはあまりないであろう。・・・
   他方、営造物に物的欠陥がなくてもその設置・管理に落ち度
   があるという事態は十分に考えられる。・・・
   従って、行為瑕疵説の方が、国家賠償法の文言に忠実である
      上、被害者救済を広く認めるという点でも優れていると言え
   る。」

   (前掲読本 391頁)

   以上の記述からすれば、「営造物の設置・管理という行為」
    に落ち度がある「営造物を管理する公務員の管理義務違反」は、
  国賠法2条の責任が問われることはあり得る。

   以上によれば、本肢は妥当でない。

  ★ 付 言

   営造物の管理行為について、「公権力の行使」に当たるものは、
  国賠法1条の適用をし、そうでない管理行為には、同法2条1項
    が適用されるのかという問題がある。

   以下の説に注目!
  
  「むしろ、営造物の管理行為である以上『公権力の行使』に当
   たるものであっても、同法2条1項を適用するという考え方
   が穏当ではないだろうか。」
   
   (読本 393頁)


   本肢の短い文言の中には、以上の論点がつまっている。将来の
 本試験対策のためには、このあたりまできっちりと、把握してお
 くことが望ましい。

 
 
 ○ 肢4について

   本肢は、肢3において、説明した「行為瑕疵説」に立つもので、
 妥当である。

  前回(70回)において、引用した判例を再度掲げておく.。

    判例としては、道路中央線付近に故障した大型自動車が長時間に
  わたって放置された事例について、最高裁は、道路管理に瑕疵が
    あったとして、国賠法2条の適用を認めている(最判昭50年
    7月25日)。(前掲入門 268頁)

  
 
  ■ 平成21年度問題・解説

   ○ 総説

    本問は、すべて、条文どおりの設問であるが、条文を知らなくても
  肢4・5に絞られるであろう。
  
  都道府県と市町村の関係は基本的には、協力・対等な関係にあり、
 都道府県が市町村を統括する事務を行うことはできない。

  という認識があれば、5が誤りであることを容易に見抜くことが
  できるあろう。

  ○ 各肢の検討

  
 ◆ 1について

  地方自治法22条8項のとおりであり、正しい。

  現実に地方公共団体が処理する事務は多種多様にわたるため、積極
 に定義することができないからであろう。

 参考事項

 ☆ 法定受託事務
 
   国などから地方公共団体に委託するものである。

  地方自治法において、第1号法定事務と第2号法定事務について
 定義されている(同法2条9号)。

   第1号は、「国が本来果たすべき役割に係るもの」であり、第2号
 は、「都道府県が本来果たすべき役割に係るもの」である。
  その概念を把握しておく必要がある。


 ◆ 2について

   同法2条14号のとおりであり、正しい。

  同法1条の目的規定では、「能率的な行政の確保」が記されている。
 
  同法1条の2の役割規定では、「住民の福祉の増進を図ること」が
 記されている。

 私は、以上の3つの条文は連動していると思う。

 ◆ 3について

 
 同法2条15号のとおりであり、正しい。

 参考事項

 ☆ 同法7条の市町村の廃置分合

 ☆ 市町村の合併の特例等に関する法律(平成16年法律59号・
  平成22年3月31日限りで失効する限時法)

  市町村の規模の適正化を目的とする。特に後者においては、条文で
  明記されている。

  7条の廃置分合→分割・分立・合体・編入を意味するが、平成の大
  合併は、合体と編入が行われた。両者を合わせて、合併という。


 ◆ 4について 

  同法2条16号・17号のとおりで正しい。

  その根拠は以下のとおりである。

  都道府県は市町村を包括する広域の地方公共団体として、市町村
  の連絡調整に関する機能を有している(同法2条5項)ことから、
  都道府県の条例に違反したす市町村の行為は無効になる。


  ◆ 5について

  同法2条4号によれば、「都道府県知事の認可」ではなく、「議会
  の議決を経て」となっている。誤りである。

  その根拠は、総説において記したが、以下の点も考慮すべきであろう。

  市町村優先の原則→普通公共団体の事務は、まず基礎的な普通地方公
 共団体である市町村が処理することになる(同法2条3項)。


   参考事項

   都道府県と市町村の関係

 
  市町村優先の原則(同法2条3号)

   都道府県→  広域事務・連絡調整事務・補完的な事務(同法2条5号)

   

 以上のとおり、正解は5である。


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            ★ 過去問の詳細な解説  第70回  ★

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  【テーマ】 国家賠償法=営造物管理責任

     
  【目次】   問題・解説


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 ■ 問題 平成21年度問題19
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   国家賠償法2条にいう公の営造物に関する次の記述のうち、妥当
 なものはどれか。

  1 公の営造物とは、国や公共団体が所有するすべての物的施設
    をいうわけではなく、公の用に供しているものに限られる。

  2 公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、公の営造物が通常有
  すべき安全性を欠いていることをいうが、賠償責任が成立する
    のは、当該安全性の欠如について過失があった場合に限られる。

  3 河川・海浜の自然公園は公の営造物に当たらないが、これに
    付随する堤防や防波堤は人工公物であり公の営造物に当たるの
    で、賠償責任が成立するのは、堤防等に起因する損害の場合に
    限られる。

  4 公の営造物の管理者と費用負担者とが異なる場合、被害者に
    対して賠償責任を負うのは、費用負担者に限られる。

  5 公の営造物の設置または管理に起因する損害について賠償を
  請求することができるのは、その利用者に限られる。

   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■ 解説
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 ☆ 参照書籍

    行政法読本 芝池 義一著・ 行政法入門 藤田 宙靖著
  /有斐閣

 
 ◆ 各肢の検討

 
   ○ 1・3にについて。

     国家賠償法2条1項にいう、「公の営造物」とは、以下のような物
   を指す。

   一般的には、国・公共団体によって設置・管理され公の目的に供さ
  れている物、つまり講学上の公物(公共施設と言われる物を含む)を
    指す。
    (前掲書 読本 389頁)

   したがって、肢1の「公の用に供しているものに限られる}という
  のは正しい。
   
   肢1が正解である。

   その意味では、本問は、極めて基本的知識が問われていることになる。

  
   具体的に、次のような物が「営造物」として認められている。
  
    すなわち、道路・河川(これらは、同条1項で「営造物」の例と
      して挙げられている)、国公立学校の教育施設、旧国鉄時代の新幹線、
   国営空港、自衛隊機、公用車、警察官のピストルといったものである。
    動産であるか不動産であるか、人工公物であるか自然公物であるか
      を問わない。
   (読本 389頁)

    以上のとおり、「営造物」には、「自然公物」・「人工公物」も含む
      ので、肢3は妥当でない。

   ★ 過去問との対比

    国家賠償法第2条に規定する「公の営造物」には、動産は含まれない。
    (平成10年度問37 肢3)

     前述のとおり、動産も含まれるので、×

     国家賠償法2条に定める営造物は、道路・河川などの不動産を指し、
   公共団体が管理する動産の瑕疵については、それを管理する公務員の
      同法1条に基づく責任が問題となるほかは、同法2条の適用を受ける
   ことはない。
    (平成19年度問20 肢1)

    動産も含まれるので、同法2条の適用を受けるので、×


    関連事項

    「営造物」に関しては、「・・国・公共団体がこれらについて所有権
       や管理の権限を有しているかどうかも問わない」
     (読本 389頁)

     したがって、以下の過去問の肢は×

     営造物の管理責任は、公物として正規に管理されている行政財産に
       ついてのみ及び、事実上私人によって道路として利用されているに過
    ぎない公有地の管理責任については、国家賠償法2条の適用を受ける
    ことはない。
    (平成19年度問20 肢2)

     判例としては、道路中央線付近に故障した大型自動車が長時間に
    わたって放置された事例について、最高裁は、道路管理に瑕疵が
        あったとして、国賠法2条の適用を認めている(最判昭50年7月
    25日)。
    (前掲入門 268頁)

  ○ 肢2について

    最高裁判所1970(昭和45)8月20日判決=高知落石事件

   国家賠償法2条1項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物
    が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国および
    公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としない。

   以上判例によれば、「当該安全性の欠如について過失があった場合
  に限られる」というのは、妥当でない。

   設置・管理の瑕疵の判断の枠組みの中で、予見可能性・回避可能
    性が判断されるので、不可抗力の場合には、国・公共団体の賠償責任が
  課されない。(読本 394頁)ことに注意せよ。

  
 ○ 肢4について

     国賠法3条1項によれば、公の営造物の設置管理者と費用負担者とが
   異なる場合には、被害者はいずれに対しても賠償を請求することができ
   できることになっているので、妥当でない。


  ★ 過去問との対比

      営造物の管理責任は、その営造物を設置し、管理する責任を有する
    公共団体が負い、営造物の設置、管理の費用を負担するに過ぎない公
  共団体が負うことはない。
  ( 平成20年度問20・肢5)

    当然×でる。

     
  ○ 肢5について

  道路の設置・管理に瑕疵が認められれば、ケガをした道路の利用者で
  ある通行人には、賠償が認められる。

  「これに加え、道路それ自体には瑕疵はないが、そこを走る自動車に
  よる騒音や排気ガスで沿道住民に健康上の被害が発生した場合、
    ここでは、沿道住民は非利用者としての立場において損害を被って
  いるのであるが、この場合も、道路の設置・管理に瑕疵があると
  して賠償が認められている。
  
  このような非利用者としての立場との関係で認められる瑕疵は「機能
  的瑕疵」、「社会的営造物瑕疵」あるいは「供用関連瑕疵」と呼ばれて
  いる。
    国家賠償法2条1項にいう営造物の管理は、非利用者との関係をも
  含んでいるのである(同旨 最高裁判所大法廷1981(昭和56年)
  12月16日判決=大阪空港訴訟、最高裁判所1955(平成7)7月
   7日判決=国道43号線訴訟)。」
 (読本 392頁)

   「その利用者に限られる」ことはないので、本肢は妥当でない。

   この肢5の短い記述の中には、前述した論点が含まれているのである。

   本講座では、本試験における、将来の発展的問題に対処するために、
  掘り下げた考察を行うことをその特徴としているのである。


   以上により、本問の正解は、1である。

   

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