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行政事件訴訟法=第123回続編など 過去問解説 第124回
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★ 【過去問・解説 第124回】 ★
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PRODUCED BY 藤本 昌一
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【テーマ】 行政事件訴訟法 =第123回続編/被告適格/
義務付け訴訟
【目 次】 過去問・解説
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■ 平成27年度 記述式問題44
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Xは、Y県内で開発行為を行うことを計画し、Y県知事に都市計画法
に基づく開発許可を申請した。しかし、知事は、この開発行為によりが
け崩れの危険があるなど、同法所定の許可要件を充たさないとして、申
請を拒否する処分をした。これを不服としたXは、Y県開発審査会に審
査請求をしたが、同審査会も拒否処分を妥当として審査請求を棄却する
裁決をした。このため、Xは、申請拒否処分と棄却裁決の両方につき取
消訴訟を提起した。このうち、裁決取消訴訟の被告はどこか。また、こ
うした裁決取消訴訟においては、一般に、どのような主張が許され、こ
うした原則を何と呼ぶか。40字程度で記述しなさい。
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■ 解説
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【過去問・解説 第123回】の続編
前回において、以下について述べることを予告したので、実行する。
2 その他関連する事項
(1)前回の説明によると、本件の裁決取消訴訟の被告は、Y県であ
ると判明した。条文としては、11条1項柱書・同項2号が適用
された。
(2)これは、裁決取消訴訟の被告適格に焦点を合わせた問題であっ
たが、第1に当該被告適格と類似する過去問二題を以下に掲げて、
検討してみよう。
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A 行政事件訴訟法に関する次のア〜オの記述のうち、正しいもの
はいくつあるか。
ア 国の行政庁がした処分に関する取消訴訟の被告は、国である。
イ 国の行政庁が行うべき処分に関する不作為の違法確認訴訟の被告は、
当該行政庁である。
ウ 国の行政庁が行うべき処分に関する義務付け訴訟の被告は、当該行
政庁である。
エ 国の行政庁が行おうとしている処分に関する差止め訴訟の被告は、
当該 行政庁である。
オ 国又は地方公共団体に所属しない行政庁がした処分に関する取消
訴訟の被告は、当該行政庁である。
1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
5 五つ
(2009年問題16)
B Xは、Y県内に産業廃棄物処理施設の設置を計画し、「廃棄物の処理
及び清掃に関する法律」に基づき、Y県知事に対して設置許可を申請し
た。しかし、Y県知事は、同法所定の要件を満たさないとして、申請に
対し拒否処分をした。これを不服としたXは、施設の設置を可能とする
ため、これに対する訴訟の提起を検討している。Xは、誰を被告として
いかなる種類の訴訟を提起すべきか。40字程度で記述しなさい。
(2008年問題44・記述式)
Ж 前回において、検討した冒頭に記載の平成27年度 記述式問題44
については、A・Bと対比して、「本件」と称する。
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● Aについて
a
ポイント1 本件と同様にAについても、行訴法11条の被告適
格等に関する規定が適用される。
ポイント2 この11条の規定は、取消し訴訟以外の抗告訴訟に
も適用される(同法38条1項)
b 各肢の検討
○ アについて。
本件の裁決取消訴訟の被告については、11条1項柱書・同項
2号が適用されたのに対して、本肢の処分の取消訴訟では、同条
同項柱書・同項1号が適用される。=ポイント1
したがって、この場合の被告は、当該処分をした行政庁の所属す
る国になる。本肢は、正しい。
○ イについて。
本肢は、抗告訴訟の一つである「不作為の違法確認の訴訟」に
関するものである(同法3条5項)。したがって、11条1項柱
書・同項1号・同法38条1項の適用によって、この場合の被告
は、当該行政庁ではなく、国である。本肢は、誤りである。
= ポイント1・2
○ ウについて。
本肢は、抗告訴訟の一つである「義務付け訴訟」に関するもの
である(同法3条6項)。この場合には、イと同様に、被告は国
になる。本肢は誤りである。= ポイント1・2
○ エについて。
本肢は、抗告訴訟の一つである「差止め訴訟」に関するものであ
る(同法3条7項)。この場合も、イ・ウと同様に、被告は国にな
る。本肢も誤りである。 = ポイント1・2
○ オについて。
本肢は、11条2項の条文どおりであって、正しい。
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本問では、以上のとおり、ア・オが正しいので、正解は2である。
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参考事項
a 民事訴訟のの原則からいえば、処分をした行政庁の被告が、国
・地方公共団体になることは、当然であるが、行訴法では、改正
前11条では、被告は処分等を行った行政庁であった。しかし、
それでは、行政庁を間違えて訴提起すると、それだけで、訴えは
門前払い(却下)になってしまい、国民の権利救済制度の見地か
ら問題があったので、法改正によって、民事訴訟の原則に戻した
のである(たとえば、旧法では、課税処分の取消訴訟であれば、
「国」を相手として訴えを起こすのではなく、その課税処分をし
た税務署長を相手にしなければならない。運転免許取消処分だっ
たら、免許を取り消した公安委員会を被告として訴え提起をしな
ければならない)。
b 国または公共団体が被告になる場合でも、訴訟において、実質
的には行政庁が主体となって活動することになっている(11条
4項〜6項をみておきたい)。
(以上は、後掲書「入門」参照)
● Bについて
a 総説
本問に関連するのは、前記A肢ウである。前年に出題された本問Bを
しっかりと検討していれば、義務付け訴訟の被告は、行政庁でなく、国
であることは明瞭であることになる。
b 本問の具体的検討(なお、条文はすべて行訴法である)
(a)本問では、三つのポイントに焦点が当てられている。その一つは、
誰を被告とすべきか、その二つは、行訴法で定められているいかな
る種類の訴訟つまり行訴法に定められているいかなる訴訟形式に基
づいて訴訟の提起を行うべきか、そして、最後にその要件として、
いかなる手続を採用すべきか、ということに焦点がある。
(b) 順序として、二つ目のポイントから説明する。本問では、申請に
対し拒否処分を受けた「施設の設置を可能とするするため」の訴訟
提起が問題になっているので、「施設の設置を可能とするする」行
政処分をすべき旨を行政庁に対して命ずることを求める訴訟である
義務付け訴訟を提起すべきである(3条6項)。
(c) 最後のポイントに移る。本問では、設置許可の申請に対する拒否
処分が先行しているので、前記義務付け訴訟を提起するときは、当
該義務付け訴訟に併合して、設置許可の拒否処分の取消訴訟を提起
しなければならない。条文としては、直接は、第37条の3第3項
柱書第2号であるが、そこに至る過程および関連する事項は、参考
事項として、後に述べる。
(d) ポイントの一つである、本問における設置許可を行政庁であるY県
知事に申請した本件訴訟を提起したXは、「誰を被告と」すべきか
と言う点については、言うまでもなく、Y県である。11条1項柱
書・同項2号および38条が適用されることによって、義務付け訴
訟の被告は、Y県知事の所属する(地方)公共団体であるY県であ
ることは、いまさら、説明するまでもないことである。
C 前記b(b)(C)(d)を繋ぐと、Xは、「誰を被告として、いか
なる種類の訴訟を提起すべきか」の解答としては、以下のとおりであ
る。
Y県を被告とする設置許可の義務付け訴訟に併合して設置許可の拒
否処分の取消訴訟を提起する。
(44字)
参考事項
a 行政事件訴訟法は、非申請型(または直接型)義務付け訴訟および
申請型義務付け訴訟として制度化している(前者が3条6項1号・
後者が3条6項2号)。本件は、申請型義務付け訴訟に属する。申請
型義務付け訴訟には、申請不応答《不服申立て不応答も含》)、およ
び許認可等の申請に対して拒否処分が行われた場合を指す(前者が3
7条の3第1項1号・後者が37条の3第1項2号)。本件では、申
請に対し拒否処分をした場合であるので、後者の37条の3第1項2
号に該当する。拒否処分に不服があって、義務付け訴訟を提起する本
件にあっては、当該義務付け訴訟に設置許可の拒否処分の取消訴訟を
提起する(37条の3第3項2号)。前記b(C)において、記述し
た当該結論を全条文を通じて、その過程を示すと、以上のとおりであ
る。
再度、その過程を条文によって示すと、3条6項2号⇒37条の3
第1項2号⇒37条の3第3項2号であって、これをかりに、申請型
・拒否処分型義務付け訴訟と名づけよう(なお、無効等確認訴訟を併
合提起することがあることにも注意!)
さらに、申請型・申請不応答型義務付け訴訟については、以下のと
おりである。
3条6項2号⇒37条の3第1項1号⇒37条の3第3項1号によ
り、義務付け訴訟に不作為違法確認訴訟を併合提起する。
最後に、非申請型(または直接型)義務付け訴訟については、3条
6項1項⇒37条の2(この場合は、前二者のように、併合提起を要
しないが、その提起に関し、強い制限がある。これは、工場から法定
基準以上のばい煙が出ているのに行政庁がなにもしないから住民が訴
訟提起しようとするような場合である)
Ж 37条の3第2項に注意。申請型義務付け訴訟では、申請した
者に限り、義務付け訴訟が提起できるのに対して、非申請型義務
付け訴訟については、このような制限はない。
Ж 条文に従って、整理すると、以上のとおり、三つのルートがあ
るのであって、迷路に入らないように、確りと当該ルートを把握
しておくことが肝要であると思う
b 市販の問題集の解答例を見ると、判で押したように、以下のとおり、
解答例が示されている。
「Y県を被告として、拒否処分の取消訴訟と設置許可の義務付け訴訟
とを併合して提起する。」(41字)
しかし、37条の3第3項に忠実に従えば、本講座の解答例にあるよ
うに、義務付け訴訟を提起するときは、義務付け訴訟に併合して取消訴
訟を提起しなければならないことになる。先に示した解答例は、結果と
しては、正しいのであろうが、取消訴訟と義務付け訴訟が並列的に述べ
てあるのが私には、気にかかる。主体はあくまで義務付け訴訟であって、
これに併合して、取消し訴訟を提起しなければならないのである。
=次回に続く=
★ 参考文献
行政法入門 藤田宙靖 著 ・ 行政法読本 芝池義一 著
・有斐閣発行
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【発行者】 司法書士藤本昌一
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